太 た 郎 を 眠 ねむ らせ、太郎の 屋 や 根 に雪ふりつむ。 次 じ 郎 を

雪
たろう
じろう
ねむ
や
ね
みよし
たつじ
三好
達治
﹂︵中央公論社︶
20
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
出典
﹁日本の詩歌
22
冬が来た
き
きっぱりと冬が来た
い ち ょ う
ほうき
八つ手の白い花も消え
こ
公孫樹の木も箒になった
そむ
るい
に
きりきりともみ込むような冬が来た
じ
う
たかむら
こうたろう
高村
光太郎
﹂︵中央公論社︶
21
人にいやがられる冬
えじき
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
ぼく
冬よ
僕に来い、僕に来い
とお
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
か
しみ透れ、つきぬけ
はもの
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た
出典
﹁日本の詩歌
10
ぼく
たとえば
このクラスのなかの
たった
ひとり
この学校のなかの
ちきゅう
たった
たった
ひとり
地球の上の
きむら
のぶこ
木村
信子
22
かずにならないくらいの
ひとり
の
ぼく
だけど
これ
ぜんぶ
ぼくなんだ
うちゅう
ぼくという
宇宙なんだ
出典
﹁ジュニアポエムシリーズ でていった﹂︵銀の鈴社︶
41
あなたへ
さけ
やったあ
と叫んでください
あああ
とくやしがってください
わあ
きれい
こいずみ
しゅうじ
小泉
周二
23
とうっとりしてください
なんだ
これ
と首をかしげてください
だま
きらきらおしゃべりしてください
むうむう黙っていてください
つた
伝えてください
あなたを
出典
﹁ジュニアポエムシリーズ 太陽へ﹂︵銀の鈴社︶
128
サッちゃん
サッちゃんはね
サチコって
いうんだ
ほんとはね
だけど
ちっちゃいから
じぶんのこと
サッちゃんって
よぶんだよ
おかしいな
サッちゃん
サッちゃんはね
バナナが
だいすき
ほんとだよ
だけど
ちっちゃいから
バナナを
はんぶんしか
たべられないの
かわいそうね
サッちゃん
サッちゃんがね
とおくへ
いっちゃうって
ほんとかな
だけど
ちっちゃいから
ぼくのこと
わすれてしまうだろ
さびしいな
サッちゃん
さかた
ひろお
阪田
寛夫
出典
﹁現代日本童謡詩全集8
サッちゃん﹂︵国土社︶
24
うち
知ってんねん
あの子
かなわんねん
かくれてて
おどかしやるし
そうじは
なまけやるし
わるさばっかし
しやんねん
そやけど
よわい子ォには
やさしいねん
うち
知ってんねん
あの子
かなわんねん
うちのくつ
かくしやるし
ノートは
のぞきやるし
わるさばっかし
しやんねん
そやけど
ほかの子ォには
せえへんねん
うち
知ってんねん
そやねん
うちのこと
かまいたいねん
うち
知ってんねん
しまだ
ようこ
島田
陽子
出典
﹁絵本かがやけ・詩
みんなのことば
うち
知ってんねん﹂︵あかね書房︶
25
ただいるだけで
あなたがそこに
ただいるだけで
その場の空気が
あかるくなる
あなたがそこに
ただいるだけで
みんなのこころが
やすらぐ
そんな
あなたにわたしも
なりたい
あいだ
相田
みつを
出典
﹁いちずに一本道
いちずに一ツ事﹂︵角川文庫︶
26
はつこい
初恋
りんご
そ
まえがみ
まだあげ初めし前髪の
ぐし
林檎のもとに見えしとき
きみ
前にさしたる花櫛の
花ある君と思いけり
やさしく白き手をのべて
うすくれない
み
林檎をわれにあたえしは
薄紅の秋の実に
人こい初めしはじめなり
かみ
わがこころなきためいきの
こい
さかずき
その髪の毛にかかるとき
なさけ
く
たのしき恋の盃を
こ
君が情に酌みしかな
ばたけ
林檎畠の樹の下に
た
ふ
おのずからなる細道は
と
誰が踏みそめしかたみぞと
問いたもうこそこいしけれ
しまざき
とうそん
島崎
藤村
出典
﹁日本の詩歌1﹂︵中央公論社︶
27
いつくしむ
じしょ
﹁いつくしむ﹂
辞書には、
﹁だいじにしてかわいがる﹂
と書いてあった。
おとうさんが、
﹁﹃いつくしむ﹄とは、こうすることだ。﹂
と、わたしの頭をなでてくれた。
﹁いつくしむ﹂
かん
なんとなく、
やさしい感じのすることばだ。
なんとなく、
さとう
ふさえ
佐藤
房江
古くから日本にあるような感じのすることばだ。
﹁いつくしむ﹂
おとうさんやおかあさんは、
いつもわたしをいつくしんでいてくれる。
﹁いつくしむ﹂ということば。
おとうさんやおかあさんの
あたたかい手で
つくりだされたことばだろう。
出典
﹁子どもの詩から見えるもの・1
家族の形﹂︵駒草出版︶
28
八十さい
おばあちゃんは
八十さい
あたまのなかは
八十ねんがいっぱい入ってる
さっきのこと
ばしょ
つ
げ
あいこ
柘植
愛子
29
わすれたりするのは
きっとはいる場所がなかったのね
おばあちゃんは
八十さい
からだのなかは
八十ねんがいっぱいつまってる
いまのこと
ゆっくりするのは
むかしのことがおもいからなのね
出典
﹁ジュニアポエムシリーズ
はずかしがりやコジュケイ﹂︵銀の鈴社︶
107
石ころ
石ころ
けったら
ころころ
ころげて
ちょこんと
とまって
ぼくを
見た
︱︱もっと
けってと
いうように
もいちど
けったら
ころころ
ころげて
それから
ぽかんと
空を
見た
︱︱雲が
行くよと
いうように
そうかい
石ころ
きみも
むかしは
天まで
とどいた
岩山だったか
︱︱雲を
ぼうしに
かぶってね
石ころ
だまって
やっぱり
ぽかんと
あかるい
あかるい
空を
見てる
︱︱星が
見えると
いうように
まど ・ みちお
出典
﹁まど・みちお全詩集﹂︵理論社︶
30
花
いちりんの花をとって
その中を
ごらんなさい
じっと
よく見てごらんなさい
き
ん
きゅうでん
花の中に町がある
ぼくじょう
黄金にかがやく宮殿がある
人がいく道がある
牧場がある
あい
みんな
いいにおいの中で
うつく
愛のように
ねむっている
へいわ
せかい
ああ
なんという美しさ
だいしぜん
なんという平和な世界
大自然がつくりだした
きよ
こんな小さなものの中にも
みちみちている清らかさ
この花の
けだかさを
生まれたままの美しさを
いつまでも
心の中にもって
わたくし
花のように
私たちは生きよう
むらの
しろう
村野
四郎
出典
﹁ポケット詩集Ⅱ﹂︵童話屋︶
31
朝のリレー
ゆめ
わかもの
カムチャッカの若者が
ま
きりんの夢を見ているとき
むすめ
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ね
ほほえみながら寝がえりをうつとき
そ
あさひ
ローマの少年は
ちゅうとう
ちきゅう
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では
まも
いつもどこかで朝がはじまっている
けいど
ぼくらは朝をリレーするのだ
こうたい
経度から経度へと
ねむ
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
めざまし
おく
う
しょうこ
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
だれ
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
たにかわ
しゅんたろう
谷川
俊太郎
出典
﹁詩と歩こう
谷川俊太郎詩集
いまぼくに﹂︵理論社︶
32
たいよう
も
心に太陽を持て
心に太陽を持て。
あらしが
ふこうと、
ふぶきが
こようと、
あらそ
た
天には黒くも、
地には争いが絶えなかろうと、
いつも、心に太陽を持て。
かる
くちびるに歌を持て、
軽く、ほがらかに。
自分のつとめ、
くろう
自分のくらしに、
よしや苦労が絶えなかろうと、
いつも、くちびるに歌を持て。
くる
苦しんでいる人、
なやんでいる人には、
ゆうき
うしな
こう、はげましてやろう。
﹁勇気を失うな。
くちびるに歌を持て。
心に太陽を持て。﹂
やまもと
ゆうぞう
――
山本
有三
フライシュレンによる
――
出典
﹁心に太陽を持て﹂︵新潮社︶
33
雨ニモマケズ
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
あつ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
じょうぶ
丈夫ナカラダヲモチ
よく
いか
慾ハナク
けっ
決シテ瞋ラズ
イツモシズカニワラッテイル
げんまい
やさい
ト少シノ野菜ヲタベ
そ
一日ニ玄米四合ト
み
味
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
かげ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
まつ
こ
や
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
かや
小サナ萓ブキノ小屋ニイテ
みやざわ
けんじ
宮澤
賢治
34
びょうき
東ニ病気ノコドモアレバ
かんびょう
行ッテ看病シテヤリ
たば
お
西ニツカレタ母アレバ
いね
行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ
し
南ニ死ニソウナ人アレバ
行ッテコワガラナクテモイイトイイ
北ニケンカヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイイ
﹂︵中央公論社︶
35
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
ソウイウモノニ
ワタシハナリタイ
出典
﹁日本の詩歌
18
ゆずり葉
こども
子供たちよ。
ゆず
き
お
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は
で
新しい葉が出来ると
かわ
かわい
すいめい
河井
酔茗
入り代ってふるい葉が落ちてしまうのです。
あつ
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
む ぞ う さ
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲って。
子供たちよ
ほ
お前たちは何を欲しがらないでも
すべ
まわ
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
たいよう
た
太陽の廻るかぎり
だいとかい
譲られるものは絶えません。
かがや
輝ける大都会も
う
そっくりお前たちが譲り受けるのです。
しょもつ
読みきれないほどの書物も
36
うけと
みんなお前たちの手に受取るのです。
こうふく
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど︱︱。
よ
世のお父さん、お母さんたちは
も
何一つ持ってゆかない。
うつく
みんなお前たちに譲ってゆくために
つく
いのちあるもの、よいもの、美しいものを、
いっしょうけんめい
一生懸命に造っています。
つ
今、お前たちは気が付かないけれど
の
ひとりでにいのちは延びる。
わら
鳥のようにうたい、花のように笑っている間に
気が付いてきます。
そしたら子供たちよ。
いちど
もう一度譲り葉の木の下に立って
譲り葉を見る時が来るでしょう。
出典
﹁少年少女日本文学館第八巻
明治・大正・昭和詩歌選﹂︵講談社︶
37
口のたいそう、一・二・三!
早口ことば
い
天武天皇
て ん む てんのう
よき人の
よしとよく見て
よしと言いし
よしの
吉野よく見よ
よき人よく見つ
となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ
︵隣の客はよく柿食う客だ︶
ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた
︵坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた︶
なまむぎなまごめなまたまご ︵生麦
生米
生卵︶
すもももももももものうちもももすももももものうち
︵スモモも桃もモモのうち
桃もスモモもモモのうち︶
あかまきがみあおまきがみきまきがみ
︵赤巻紙
青巻紙
黄巻紙︶
しんじんかしゅしんしゅんシャンソンショー
︵新人歌手新春シャンソンショー︶
三
カエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ
六
あわせてぴょこぴょこむぴょこぴょこ
38
❶
❷
❸
❹
❺
❻
❼
❽
竹
竹
となりのたけやぶにたけたてかけたのは
竹
竹
たけたてかけたかったからたけたてかけたのさ
こつそしょうしょうそしょうしょうそ
︵骨粗鬆症訴訟勝訴︶
とうきょうとっきょきょかきょくちょう
きょうきゅうきょきゅうかきょかきょひ
︵東京特許許可局長今日急遽休暇許可拒否︶
②∼⑪の出典
﹁みんなでワイワイ早口ことば
その1﹂︵汐文社︶
じ ゅ げ む
寿限無
ごこう
すいぎょうまつ
うんらいまつ
ふうらいまつ
寿限無寿限無、五劫のすりきれ、
かいじゃりすいぎょ
す
海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、
ね
食う寝るところに住むところ、
やぶらこうじのぶらこうじ、
パイポパイポ、パイポのシューリンガン、
シューリンガンのグーリンダイ、
ちょうすけ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの
ちょうきゅうめい
長久命の長助
出典
興津 要 編﹁古典落語
下﹂︵講談社︶
39
❾