地歴・公民科 - 岡山県立岡山操山高等学校

地歴・公民科,社会科
新学習指導要領に対応した学習指導と評価に関する研究
1.はじめに
高等学校「地理歴史科」の主な改善事項として,世界史,日本史,地理相互の関連付けを図ること
が各科目の目標に明示された。特に必履修科目の世界史では,地理や日本史にかかわる内容を充実す
ること。また,各科目に課題を探求する学習を設けるとともに,論述,討論などの言語活動を充実さ
せ,地図,年表をはじめ様々な資料を活用した学習を一層重視することとなった。高等学校「公民科」
の主な改善事項は,各科目に課題を探求する学習を設けるとともに,論述,討論などの言語活動を充
実すること。また,人間としての在り方生き方について考察する学習を充実すること,法や金融,消
費者に関する学習を充実すること,伝統や文化,宗教に関する学習を充実すること等である。また,
改訂では “学力の要素”が明確化された。“学力の重要な要素”として (1)基礎的・基本的な知識・
技能の習得,(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,
(3)主体的に学習に取り組む態度の3点を挙げている。『学習評価の在り方報告』は,この改訂に
伴う「観点別学習状況の評価」について,評価の観点を大きく見直す必要はないとしつつも,学習指
導と学習評価の一体化を進めていくために,学力の3要素を踏まえて評価の観点を整理する必要があ
るとしている。学力の3要素と評価の“4 観点”との関連について,学力の 3 要素の上記(1)を「知
識・理解」「技能」,(2)を「思考・判断・表現」,(3)を「関心・意欲・態度」として整理して
いる。本教科の研究内容として,学力の3要素の学習指導や評価の一体化を推進することが上げられ
る。特に「社会的な思考・判断・表現」については,従来の「資料活用の技能・表現」の「表現」と
は異なり,「思考」「判断」との関係で捉える必要がある。中学校学習指導要領との関連では,中学
校「社会科」の学習時間が第3学年で増加したことで,高等学校の学習への連続性が期待できる。こ
の改訂を踏まえ,地歴・公民科の研究テーマを「新学習指導要領に対応した学習指導と評価に関する
研究」とし,大学入試を考慮した研究を深める。
2.評価・分析の方法
新学習指導要領に対応した学習指導の評価規準を作成する。観点別学習状況の評価の在り方を,生
徒の成績の評価だけでなく,指導の改善に生かす評価として活用する。従来の地理歴史・公民科の4
観点別評価から,①「知識・理解」「技能」,②「思考・判断・表現」,③「関心・意欲・態度」の
3観点を基本としつつ学習指導との一体化を図る。学力テスト等の成績を利用して,生徒の定性的・
定量的な変容を評価・分析する。
3.アドバイザリースタッフ
氏
名
所
属
職
名
備考(専門分野等)
ノートルダム清心女子大学
河
合
保
生
准教授
文学部現代社会学科
- 11 -
人文地理学・社会教育
4.年間計画
月
取組の内容
校内における取組
研修会・発表会等
その他
中高授業公開(実践発表会)
全員
4月
教科テーマ決定
5月
学習指導の開発
6月
学習指導の開発
7月
学習指導の開発と再検討
8月
学習指導の再検討
9月
学習指導・学習評価の実施
10 月
学習指導・学習評価の実施
中高授業公開(実践発表会)
発表者 河田
11 月
学習指導・学習評価の実施
研究授業(実践発表会)
発表者 渡邊
12 月
学習指導・学習評価の実施
1月
学習指導・学習評価再検討
2月
学習指導・学習評価再検討
3月
次年度に向けた総括
- 12 -
第3学年B組
社会科学習指導案
平成23年10月28日(金)第2校時
本
時
3B教室
指導者
河田
博雅
案(第九次の第2時)
○
目
学
1
よりよい答えを導き出すように,積極的に話し合うことができる。
【社会的事象への関心・意欲・態度】
○ 「効率」と「公正」という概念を踏まえて,話し合いを進め,裁判員としての自分
の意見をまとめ,説明することができる。
【社会的な思考・判断】
標
習
活
動
教
の
支
援
評価(方法)
【観点】
本時の活動のテーマの ○ 前時に「トリアージ制度」ついて話し合い、
確認。
「効率」と「公正」についてまとめたことを
復習させる。
○
2
師
教科書P101の「国民が参加する裁判員
制度」を読み,資料集P51の「裁判員制度」
のコーナーを参照させる。
裁判員制度について学 ○ プリント1配布
習する。
「裁判員制度導入の理由」から,裁判員制度
のメリットを「効率」「公正」に分類させる。
3 「ミニョネット号事件」 ○ 法律の専門家でない一般の人の意見を取り ○ 班の話しあい活動
についての思考活動
入れることで,より「公正」な判決を出すこ
が活発に行われてい
とができるという点に着目させ,実際に裁判
るか。(観察)
員になったつもりで,「ミニョネット号事件」 【社会的事象への関心
について考えさせる。
・意欲・態度】
○ 「有罪」であっても「無罪」であっても「な
ぜそう思うのか」を説明できるようさせる。
○ 班員全員が必ずどちらかの立場に立ち,意
見を述べるように指示する。
○ 班の代表が,司会・書記を務め,班ごとに
発表させる。
4
発
5
ま
と
表
○
生徒から出た意見が内容ごとにわかりやす
くなるように分類しながら板書する。
め
○
前時の「トリアージ制度」の場合と「ミニ
ョネット号事件」の場合で,自分の意見が変
化した生徒に,なぜ変わったのかを発表させ
る。また,同様に意見が変わらなかった生徒
にも意見を発表させる。
○
「国民の権利を守り,社会の秩序を守る」
ために「公正」な裁判が必要であることを確
認させる。
○ 「公正な判決」が被害者の救済,犯罪者の
更生にとっても重要であることを気付かせる。
○ 裁判員制度によって国民の司法への参加が
可能になった現代において,本時のような多
面的・多角的な思考や視点をもつ必要がある
ことを気付かせる。
○
6
感 想 を 書 く
○
プリント2の回収をする。
-- 13
1 -
-
プリントに自分の
意見がきちんと書け
ているか。(プリント)
【社会的な思考・判断】
- 14 -
-1-
船長たちはパーカーの殺害を隠蔽することも出来たのだが、
それは良心が許さなかった。潔くすべてを告白し、ダドリー船長
とスティーヴンは殺人の罪で起訴された。一方、ブルックスは
不起訴となった。彼はパーカーの肉を食べただけで、殺人には
加担していなかったからだ。
漂流生活16日目のことである。給仕のパーカーが喉の渇きに
堪えられず、海水をガブガブ飲んでひっくり返った。痙攣しな
がら身悶えている。明らかに瀕死だった。これを為すすべもなく
見守っていたダドリー船長がまず切り出した。
「彼はもう助からないだろう。だから、我々だけでも助かるた
めに、彼を食べようじゃないか」。
これにブルックスが猛反対した。そんな人の道を踏み外すよ
うなこと、出来る筈がないじゃないですか。
「船長としては全滅させるわけには行かないんだ。それに考え
てもみたまえ。君たちには扶養家族がいる。子供たちのために
も生き延びなければならないんだよ」。
スティーヴンは渋々ながらも同意したが、ブルックスは最後
まで拒み続けた。ところが、ダドリー船長が祈りを捧げてパー
カーの喉を掻き切ると、吹き出す血をブルックスも飲んだ。肉
も食べたのだ。(彼らは人の肉を食べるために殺人を犯したの
は事実であるが、そうしなければ彼ら全員が死亡していたのは
必定であり、たとえ若者が死亡するのを待っていたのならば、
その血は凝固してすすることはできなかった。)
彼らがドイツの貨物船モンテスマ号に救助されたのは、5日後
の7月28日のことである。
(事件のあらまし)
1884年5月19日、ミニョネット号というヨットがサザンプトンを
出帆した。行き先はオーストラリアのシドニーである。
このヨットは在オーストラリアの実業家J・H・ウォントが故郷
イングランドとの間を往復するために購入したもので、このたび
は試験的な処女航海だった。乗組員は4人。ダドリー船長とス
ティーヴンとブルックスの船員2人、そして、孤児でまだ17歳の
給仕リチャード・パーカーである。
航海は当初は順調だったが、喜望峰を経由したあたりから雲
行きが怪しくなり、やがて激しい嵐に襲われた。小さなヨットは
まるで木の葉のようにいたぶられて浸水、4人は辛うじて救命ボ
ートで脱出した。
本当の災いはここから始まる。持ち込んだ食料はカブの缶詰
2個だけだった。それも4日で喰い尽くし、(途中でウミガメを塚
まえて食べることができたが、一回だけであった。)飲み水も雨
に頼るありさまだった。やがて嵐が去ると天日干しの地獄の日
々が訪れた。
裁判員制度を考える…ミニョネット号事件を題材に
Q.この船員たちは有罪か無罪か。
・タドリー(船長)
・スティーブン
・ブルックス
公民
な
た
の
意
見
(
)組(
この授業の感想
理由
)番(
有罪
↓
よって、判決は…。その理由も書くこと。
あ
-2-
・
無罪
)
いわゆる「カルネアデスの板」である。これに基づき近代刑法学は「緊急避難」の理論を組み立てた。す
なわち、犯罪に該当する行為であっても、危難を避けるために已むを得ずにした行為であれば違法ではない、
という理論である。
「もし、一人が片方を押し退けて溺れさせたとしたら、彼は殺人者でしょうか?。そうではないでしょう。彼は
自分が助かるために精一杯だったのです。そして、これと同じことが救命ボートの上でも行われていたのです
よ」。
彼はまた、黒板に「一人しか支えられない板につかまる溺れた二人の男」の絵を書いて、ギリシャの哲学者
カルネアデスの言葉を引用した。
「二人は理由なく殺したわけではありません。必要性に迫られていたのです。それはまさに極限的なものでし
た。死から逃れる唯一の方法が、一人を犠牲にすることだったのです。他に取るべき道がなかったのです」。
弁護人のコリンズの弁護。
裁判員制度を考える
(
)組(
)番(
)
導入の目的
国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するととも
に,司法に
対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ること。
※「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」2004 年 5 月 21 日成立
導入の理由
従来から検察官や弁護士,裁判官という法律の専門家が中心となって行われ,丁寧で慎
重な検討がなされ,又その結果詳しい判決ができていた。
↓しかし,
専門的な正確さを重視するあまり審理や判決が国民にとって理解しにくいものであった
り,一部の事件とはいえ,審理に長期間を要する事件があるため,刑事裁判は近寄りがた
い面がある。
↓そのため,
裁判官と国民から選ばれた裁判員が,それぞれの知識経験を生かしつつ一緒に判断する
ことにより,より国民の理解しやすい裁判を実現する。
メリット
①
裁判が身近になる。
②
法的知識も培われる。
③
裁判の時間が短縮される。
④
裁判に市民感覚を取り入れ,常識的な結論を得る。ギャップ解消の面も。
⑤
「公判前整理手続」により,刑事裁判の時間短縮や争点の明確性を高める。
公
正
効
デメリットはないのか?
- 15 -
-1-
率
平成23年度岡山県立岡山操山中学校・高等学校公開授業
1.日
時
平成23年10月28日(金)
2.場
所
岡山操山高等学校
研究授業会議録
4限
第一研修室
3.出席者
指導助言者
河合
保生
氏(ノートルダム清心女子大学准教授)ほか 2 名
4.授業発表者
河田
博雅
(岡山県立岡山操山中学校教諭)「社会科」
中学校3年B組教室
5.研究協議会
○河田(授業者)
・「裁判制度を考える」のメリット,デメリットの箇所で,生徒に深く考えさせたため
時間をとった。板書ができなかったのが残念だった。生徒は良く話し合いが出来てい
たと思う。
○河合先生
・新学習指導要領では「社会的な思考・判断・表現」となり,従来の思考・判断に表現
が加わり,それがうまく展開できていた。50 分授業では時間が不足する内容であっ
た。班内の生徒の発言はしっかりと出来ており,研究授業のモデルとして良い授業で
あった。
・教師主導型であったので,もう少し生徒が参加すると良かった。
・「公正」か「効率」という観点を踏まえて,メリット,デメリットの部分でなぜその
ように考えたのかという問いに対して,先生のフォローが良かった。
○河田
・デメリットの予想はできていた。この部分を板書した方が良かったと思います。
○河合先生
・生徒の発言に,裁判官の立場からの意見が出たことは良かった。多様な意見が出るの
はさすがだと感じた。
・班内の討論を3分としたのは理由がありますか。
○河田
・事前の指導として,班内での司会に一人ひとり発言させることや発表の仕方など指示
をして経験を積ませました。5分間の討論も経験しさせましたが,中学3年生になる
と操山中学校の様々な取り組みで,話し合いする時間も増えて,3分で自分の意見を
うまく表現できるようになりました。
○河合先生
・ミニョネット号事件に 10 分とった。難しそうだったが,考える事の大切さが生徒に
伝わったのではないか。班内の特定の生徒が深い話をしていたが,教師のフォローが
必要なところもあった。
○A教諭
・自分の生命身体を,財産を守る行為が違法であっても正当であれば罪を問わないもの
に,「正当防衛」(刑法第 36 条)と「緊急避難」(刑法第 37 条)があります。「緊急避
難」が成立する要件の中に,切迫した状況の中では認められるというのがあります。
ミニョネット号事件の場合,どのような判決が下ったのでしょうか。船長は航海の危
- 16 -
-1-
険を承知でその場にいたのですから,当然に緊急避難に該当しないと思われますが…。
精神と物質を二元的に考える西洋では,死体は物として扱われますが,日本では人が
死ぬと仏様です。裁判員制度によって従来と異なる判決が出る可能性があると思いま
す。また,今日の臓器移植など臓器は人なのか物なのかという問題を考える上でも参
考になると思います。
・思考を深める学習法として参考にできるものを紹介していただけますか。
○河合先生
・5分前で評定をさせたのは良かった。ディベート的でもある。イエス,ノーを決めて,
理由の裏付けをする学習法がある。ジル・ドゥルーズの『意味の論理学』を参照して
みると良い。
・研究大会で発表されても良い内容でした。評価をどのようにされますか。
○河田
・「有罪・無罪」の理由に自分の意見が書かれていること。特に,自分の意見と違う,
対立する他の意見が書けたものなどを評価します。
○河合先生
・他の人の意見を聞き,自分の中に取り入れることも大切です。
○A教諭
・大変ですが評価規準を明記しておくと良いと思います。
○河合先生
・このような形態の授業を,どの程度実施されましたか。
○河田
・単元の終わりというのではなくて,単元の要所の部分を今までに7回実施しました。
○河合先生
・新学習指導要領となって,時間数が増えているので,学校の生徒の実態に応じた指導の
取り組みがし易くなった。今日は大変勉強になりました。今後ともご活躍下さい。
- 17 -
-2-
- 18 -
目標
2
第5章
指導者
(山川出版社:改訂版
2年 1 組教室
世界史学習指導案
イスラーム世界の形成と発展
第5校時
第2学年1組
達哉
詳説世界史B)
渡辺
【関心・意欲・態度】
【知識・理解】
イスラーム帝国の成立・・・・・・・・・・・・・・1時間
イスラーム世界の発展・・・・・・・・・・・・・・1時間
インド・東南アジア・アフリカのイスラーム教・・・1時間
イスラーム文明の発展・・・・・・・・・・・・・・1時間
まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間(本時)
第二次
第三次
第四次
第五次
【思考・判断・表現】
第一次
指導上の立場
指導計画
取り組んできた。本題材も新学習指導要領の「評価の方法」に着目して授業を展開した。
てきており,地歴公民科(高校)
・社会科(中学)では,新学習指導要領をテーマに授業改善に
本校では,この3年間,各教科がそれぞれのテーマに従って,授業改善のための研究を続け
(4)研究主題との関連
える能力を養いたい。
班活動,発表を通して,イスラーム世界を的確に理解するだけでなく,多面的・多角的に捉
(3)本題材で工夫する点や手だて
世界については,捉え方が難しいと思われる。
どがどの国・時代であるかを捉えることに難しさを感じている。この点からしてもイスラーム
世界史選択者は132名おり,本クラスはその1組の27名である。生徒は,人物や場所な
(2)生徒や学級の実態
大」についての理由・要因を理解できる授業展開になるように努力する。
ラシア諸地域間に活発な交流などの内容を扱っている。特に,授業では「イスラーム世界の拡
世界の拡大,また,イスラーム都市を核として海域及び内陸のネットワークが形成され,ユー
アラブ人によるイスラーム帝国の形成と展開,その後のトルコ系民族活動によるイスラーム
(1)題材について
4
3
様子を考察し,班で話し合ったことを自分の言葉で発表する。
(4)アラブ帝国からイスラーム帝国への性格の変化やイスラーム教国を構成する民族の変化の
【資料活用の技能】
動が広範に行われ,イスラーム化した時期や地域を資料・地図を活用して整理する。
(3)イスラーム教が国際貿易路の変化の影響を受け,アラビア半島におこったことや,征服活
わりも考察させ,イスラーム文明・学問の広範さを理解する。
(2)イスラーム文明の特色や重要性に関して,イスラーム圏だけでなくヨーロッパ文明への関
きる。
(1)班での学習活動を通じて,イスラーム世界への関心を高め,自発的に学習をすることがで
題材
1
平成23年11月 8日(火)
・発表の要点をまとめ,板書する。
ている点を班でまとめ,発表
【思考・判断・表現】
える発表ができる
る
【関心・意欲・態度】
を踏まえて再評価させる。
「発表」につ
いては,相手が理解しやすいものか,
また,他の発表者の発言を聞く姿勢が
の考えで評価し,後,指導者
の観点を踏まえた評価をす
る。
はなく,全体を踏まえた評価をさせる。
度」については,自分のテーマだけで
どうかということを踏まえさせ,
「理解
客 観的に 評価で き
ついては,
「積極的に行った」かどうか
・
「自分で調べる」
,
「班で話し合い」に ・自分の取り組みを
普遍性」に触れながらまとめていく。
※展開①②③において,
「イスラームの ・他の班に的確に伝
・評価をする。まずは,自分
5.まとめ(7分)
ていない。
※生徒にはこの問は知らせ
する。
発展したか」を班で考え発表
【知識・理解】
合的に理解する。
が発表でうまく表れるよう支援する。
・二つの発表を通して,「な
ぜ,イスラーム世界が拡大・ ・発表の要点をまとめ,板書する。
世 界への 影響を 総
・机間巡視を行って,答え・理由など
4.展開③(15分)
形 成過程 と他地 域
【思考・判断・表現】
・イスラーム世界の
する。
るテーマの発表を聞き,優れ
する。
ることができる
ている班には,発表ができるよう支援
・自分たちのテーマとは異な
・机間巡視を行って,話し合いに困っ ・班の内容をまとめ
【思考・判断・表現】
3.展開②(15分)
発展のポイントを発表する。
・他の班に的確に伝
える発表ができる
・発表の要点をまとめ,板書する。
2.展開①(10分)
評価【観点】
・班ごとのテーマに関連した
に説明する。
教師の支援
・本時の説明を聞く。
学習活動
授業プリント
補助教材:
『最新世界史図説タペストリー』
(帝国書院)
教科書:『詳説世界史B』
(山川出版社)
【知識・理解・思考・判断・表現】
察し,前時までの学習成果をもとにまとめたことを表現する。
○班での活動を主体的に取り組み,イスラーム世界の発展とその理由について考
・本時が円滑に進行するように,的確
材
標
1.導入(3分)
教
目
本時案(第五次の2時間目)
イスラーム世界の形成と発展 まとめのワークシート
メモ
テーマ
班
イスラーム世界の発展ポイント
他のテーマを聞いて、よくわかったこと
1
聖 戦
2
3
1
民 族
2
3
1
社 会
2
3
【 評 価 】 (A…よくできた B…できた C…あまりできなかった D…できなかった)
自分で調べる
A・B・C・D
自分で調べる
A・B・C・D
班で話し合い
A・B・C・D
班で話し合い
A・B・C・D
発表
A・B・C・D
発表
A・B・C・D
理解度
A・B・C・D
理解度
A・B・C・D
(
- 19 -
)組(
)番
氏 名(
)
平成23年度岡山県立岡山操山中学校・高等学校教育研究会 研究授業会議録
1.日 時 平成23年11月8日(火)6限
2.場 所 岡山県立岡山操山高等学校 第一研修室
3.出席者
アドバイザリースタッフ 河合 保生 氏(ノートルダム清心女子大学准教授)
ほか 14 名
4.授業発表者 渡辺達哉教諭 「世界史B」 2年生1組教室
○影山副校長
・平成25年度から始まる新学習指導要領を踏まえ,学習指導と評価について校内で研
究を進めている。
○渡辺(授業者)
・今日の生徒の様子は,自分たちが調べた内容を詳しく説明しようと力を入れていたた
め,最初の展開①の部分が時間がかかった。
・地歴公民科の評価の方法に関して,
「表現」活動の充実を考え,今回の公開授業では,
班活動の形態にした。発表した生徒の評価の基準は,分かりやすく説明したかどうか,
という点と,自分の伝えたいことをきちんと発表できたか,という点である。なお,
すべてのクラスで実施できていないため,今日の授業での自己評価は成績には入れな
いこととする。
○A教諭
・どういう風に生徒を動かしながら授業をしているのか,参考になった。
○B教諭
・各班3人ずつの生徒が全員発表した点がよかった。この後,どのように評価するのか
を聞きたい。
○C教諭
・言語活動の充実,班の構成,設問の設定などに関して,生徒はよく考え,自分の言葉
で発表し,他の発表を良く聞いていた。
○D教諭
・今日は時間不足だったが,イスラム世界の普遍性に関するまとめの時間の解説はする
のか。
・生徒の声が大きくないので,背中の位置にいた生徒には聞こえなかったのではないか。
○E教諭
・講義形式の一方的授業になりがちであり,グループ活動での授業の実施の方法が参考
になった。
○F教諭
・生徒のいろんな可能性を発揮できる授業の工夫だった。
・イスラム世界に関する4時間の授業の計画はどうなっているのか。
○G教諭
・生徒がいきいきした授業だった。
・イスラム世界に関して,生徒の発表は,自分たちと違う答えが出ており,多角的多面
的に理解させることができていた。
・インド・ヨーロッパの中での位置づけはどうなっているのか。
○H教諭
・イスラム世界の箇所は,ついつい王朝名の変遷に目がいって教えてしまう。
○渡辺(授業者)
・授業の展開・順番は,教科書通りである。2学期中間考査までにモンゴルの単元まで
進んだ。
・言葉として「普遍」「融合」は,普段の授業では使っていないが,生徒の発表の中に
は出ていた。
・世界史では,初の形式で,どのような形式にすればうまくいくのか分からない。35
1 --
-- 20
人のクラスのうちの27人で,少人数であるからできた形式だった。
○河合先生(アドバイザリースタッフ)
・普通科進学校として,意欲的な取り組みだった。
・大学生の意見を聞くと,
生徒全員に発表させ,一言ポイントを指摘して引き出しているところがすごい。
時間配分がむずかしいのですね。
・最初の展開①は10分の予定が17分かかっていた。生徒の姿勢が,調べたことをす
べて言うつもりでいたので,1つだけに絞るように調整すれば,時間内に収まってい
たのではないか。
・生徒に「なぜ」と考えさせるポイントを入れことが重要である。
・操山中学校からの内進生が約3分の1で,その成果を発揮していた。
・生徒の記入したワークシートを評価に取り入れることも必要。
・二次試験で問われる実力をつけるためには,こういう考え方・取り組みを,単元ごと
に少しずつ入れていくとよい。
○I教諭
・「なぜイスラーム世界が拡大・発展したか」という問を隠し3番目に持ってきて展開
していた。普通なら先に生徒に言っておいて,どう展開するかを考えるのだが,その
質問項目を隠した意図は何か。
・また,テーマを「聖域・民族・社会」と3つ設定していたが,それはなぜか。
○渡辺(授業者)
・イスラム教が広まった理由として,イスラム教でないとだめだ,というのではなく,
改宗しなくても税金を納めればよいなど,柔軟な対応をしたこと,戦争が単なる侵略
戦争ではなかったこと。また,王朝が,「アラブかどうか」から「イスラム教徒」か
どうかに変わっていったこと。
○J教諭
・授業した後でないと,今回の形式はとれないのが普通である。
土台となる基礎的知識があってから,まとめの中での班活動を行うという方が,理解
を深めることができる。二次試験の論述問題に対応するために,的確な解答を導き出
すことができる。
○B教諭
・生徒にとっては教科書と資料集だけでは考えるのが難しいこともある。
○I教諭
・思考判断に関して,思考の過程が表現できるとは,どのようなことか。
○河合先生(アドバイザリースタッフ)
・新学習指導要領では,「技能・表現」から「思考・判断・表現」となるが,「技能」
の中にも「表現」が隠れてあると理解している。資料を読みとって表現するという意
図がある。
○I教諭
・表現しようと思ったら,知識を持っていなければならない。
今回のような授業形態は,基礎的なことを勉強しおえた後で,章の終りでやるのが良
い。
○河合先生(アドバイザリースタッフ)
・最終的に知識理解の力がつけばよい。考える基となる知識,土台を作った上でないと
難しい。
2 --
-- 21
5.まとめ
(1)まとめ
本年度の研究は,5 月 11 日(水)の中高授業公開,10 月 28 日(金)の中高合同授業公開(河田教
諭),11 月 8 日(火)に中高教育研究会(渡邊教諭)を実施した。河田教諭は,中学校3年生を対象
に社会科の単元「裁判員制度を考える」を指導した。研究主題との関連では,学習指導要領(高校)
「個人の尊重と法の支配」の内容の取り扱いで「裁判員制度についても扱うこと」とあり,高校で
扱う法的思考力の育成へ繋がる内容であった。現在の法的理論に対して自分の意見を記述させ法的
関心を高め,具体的事件をもとに有罪・無罪の判断根拠を考えさせ,それを発表し,分類しながら
多様な意見を知ることで自分の考えを深めていく,法的考察や思考力を身に付けさせる授業展開で
あった。また,アドバイザリースタッフの河合先生から思考を深める学習法の紹介,評価方法を明
確にする等,学習指導について詳細に御指導をいただいた。渡邊教諭は,高校2年生文系生徒に世
界史Bの単元「イスラーム世界の形成と発展」を指導した。研究主題との関連は,新学習指導要領
の評価の方法,特に本時学習指導案の目標の1つ「アラブ帝国からイスラーム帝国への性格の変化
やイスラーム教国を構成する民族の変化の様子を考察し,班で話し合ったことを自分の言葉で発表
する」という観点別評価の「思考・判断・表現」に関する学習指導であった。この観点は,学力の
3要素の1つである「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力
等」に対応しており,また新学習指導要領で資料を活用することを求めていることにも関連する。
研究協議では,来校された先生方から貴重な御意見をいただいた。河合先生から単元末ごとにこの
ような授業を取り入れると良いこと,大学入試の二次試験で問われる学力が着くのではないか,考
える力の基になる知識を身に付けた上での実施が望ましいこと等,今後の研究主題に向けて御示唆
をいただいた。
(2)本年度の成果
①中学校社会科から高校の公民科への学習の連続性という観点からの取組が実施できた。特に,法
的な思考力を育成する取組が実施できた。
②新しい観点別評価「思考・判断・表現」と関連した学習指導として,思考力・判断力・表現力等
を高める取組が実施できた。
(3)来年度への課題
①学力の3要素を踏まえた学習指導や評価の一体化を図る取組を継続し,「言語活動の充実」を社
会科学的観点から育成する指導の工夫。
②新学習指導要領で新たに盛り込まれた内容の学習指導を開発する。
③中学社会科3年生の時間増加(85 時間から 140 時間)による中学から高校への学習の連続性を
もたせる工夫。
④大学入試に対応できる高校地歴・公民科の学習指導の工夫。
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