・質量 分析計 に よ る 本邦天然 ガスの 分析

552.578.1(52):543.51
質量分析計による本邦天然ガ界の分併
賢甚
柴 田
Mass Spgctrometric Analysis of Natural Gas in Japan
by
Ken Shibata
Abstract
Some sixty samples of natural gas from varigus natural gasfields of Japan were analy−
zedbythe耳ITACHIRMU−4typemassspectr・meteLTheanalyticalpr・cedure・fnaturalgas
is briefly described. Trace components in naturalgas such as oxygen,argon,heavy hydrocar−
bons were determined with fair−acc皿acy. Therelationship between gascomposition and geolo‘
gical characteristics of natural gas was well ascertained upon the trigona1(玉iagram.Oxygen con−
tent is much higher in dissolved gas in water than in the related casing−head gas liberated from
water. The N2/A ratio of natural gas from Neogene and Quatemary systems is nearly equal to
or a Iittle lower than N2/A ratio of atmosphere,and N2/A ratio of disso1▽ed gas in water is
neαrly equal to N2/A ratio of dissolved gas which is equilibrated with atmosphere.The N2/A
ratio of most natural gas from Paleozoic and Mesozoic formations is much higher than that of
atmosphere,indicating relative concentration of nitrogen。
詳細に知ることはきわめて重要である。天然ガ界鉱床の
要 旨
調査研究を行なう際にも,H2,CO,A,重炭化水素等・
質量分析計を用いて本邦産天然ガス約60個の組成を求
一般にガス中に微量に含まれている成分が,天然ガスの
め,それについて若干の考察を行なつた。天然ガス成分
由来を考慮する場合に重要な意味を持つものとして注目
のうち微量成分である02,A,,重炭化水素が比較的精
されている。例えば,Aは天然ガスの生成,集積過程を
度よく分析できた。天然ガスのガス質とその地質学的な
考える際に一種のトレーサーとして利用できることが予
特徴との関係は,従来行なわれてきたように三角座標を
角いてよく示すことができた。02は溶存ガス中に著し
想され,また重炭化水素も天然ガスの生成環境問題に関
く多い尊とが確認された。Aの含有量をN2と比較検討
して重要視されている成分の一づである。
ところで,従来天然ガスの分析は,主としてオルザッ
することにより,N2/Aは新しい地質時代の天然ガスで
は大気のN2/Aと著しくは異ならないこと1また水中溶
れてきた.・しかしこれらの方法では微量成分の分析が困
存ガスのN2/Aは大気と平衡にある水中の溶存ガスが示
難で,特にAなど不活性気体の分析は不可能であり,また
すべきN2/Aにほy近いことがわかつた。地質時代の古
時間,、試料の量等にも難点があつた。しかし天然ガス分
ト法・ポドビリニアック低温分溜法などによつて行なわ
い地層から得られる天然ガスには,そのN2/Aが大気と
析の際のこれらの難点は質量分析法がとりいれられたこ
較べて著しく大きく,N2が相対的にかなり濃縮したこ
とによつてほとんど解決されたといつてよい。質量分析
とを示すものが多くあつた。
法は, (1)感度が高い,したがつて微量成分分析に適
する。 (2)精度が高い。(3)少阜の試料ですむ。(4)一
1.緒 言
同時に数成分の分析が可能.’(5)所要時問が少ない等
可燃性天然ガスが燃料資源のみならず化学工業原料と
の利点があるために,こんにちガス分析に広く利用され
して利用されるようになつたこんにち,その化学組成を
ている。ごく最近におけるガスクロマトグラフ法のめぎ
・ましい発展により,オルザット法等によっていた天然ガ
*技術部
ス分析の大部分はガスクロマ』トグラフ法によつておきか
23一(189)
〆
\
地質調査所月報
えられることであろうが,微量成分の分析等,質量分析
法の有する利点は今後も大いに生かされてゆくものと思
(第12巻 第3号)
報告がなされていて,一定した分析法が確立されている
1)3)7)8)。天然ガスの質量分析もそれに従つて行なうとと
ができる。
われる。
筆者は1958年2月,6月,F1959年3月の3回にわた
り,工業技術院資源技術試験所の日立製RMU−4型質
分析に使つた目立製RMU−4型質量分析計の概要を
量分析計を使用して,本邦産天然ガスの分析を行なつた
変磁場,イオン・軌道半径は135mm,記録は4素子オッ
第1図に示す。分析管はステンレス製goo型単収敏,可『
ので,それらの結果を報告し,天然ガス研究のための基
シロによる。測定の條件は,イオン加速電犀1,300V,
礎資料として広く各方面の利用に供したいと考える。分
電子加速電圧55V, 全電子電流300μA,貫通電流37
析結果の,うち山形ガス田の天然ガスは名古屋大学と共同
μAであつた。
調査の際採取したもので,詳細な検討は別に報告される
第1図に従つて分析法の大要を記せば,ガス試料は第
予定である。
1図上部の試料導入部¢)マノメータにて圧力が測定され
質量分析を行なうにあたつて色々便宜をはかつていた
だいた資源技術試験所大内公耳技官に厚く謝意を表する
た後,一定容積(約5cc)がガスだめ(約51)に膨脹さ
せられる。ガスだめの試料圧は20∼60μHg程度であ
る。試料ガスはこンからガスリーグをぺて高真空(10−6
次第である。
mmHg)に保たれた分析管に導入される。ガスはイオ
2.試 料
ン源でイオン化された後1,300飼1,500Vの電場で加速ざ
大部分の試料は筆者が天然ガス鉱床調査の際に,坑口,
れ,分析管中央部の電磁石によリイオンは進行方向に直
ガス徴地なギで直接採取したもので,空気の混入をでき
角にカを受け円弧を描く。この時次の関係式が成立する。
るだけさけるようにした。容器は30∼400ccのコック
72H2
刎6;482×10“5−r
つきのガラ、ス採取ビン1が大部分であるが,一部のものは
ビールビンに採取した。水中溶存ガスは菅原式溶存ガス
測定装置を用いて分析を行ない,酸素はピロガ穿一ルに
たゴし,郷=イオンの質量(g),.6;電荷(e,s,u),
7=イオンの軌道半径1(cm),H二磁場の強さ(ガウス),
7=加速電圧(ボルト)
吸収させ,残りのガスをコックつきのガラス容器に採取
質量分析計は7が固定してあるから,Vを一定にし’
し質量分析を行なつた。質量分析の際にはガス中の水分
てHを変えて刎6の異なるイオンを順次にイオンコ
を除く必要があり,試料はすべて五酸化燐または塩化カ
レクター上に収敏させ,このイオン流を増幅,記録する。
ルシウムにて脱水した後,質量分析計の試料導入部に入
このようにして各イオンの相対的な量を示すスペクトル
れられた。
が得られるが,これを質量スペクトルという。第2図に
記録の一例を示す。
3.質量分析
試料は通常数成分のガスの混合物であり,得られた混
低級炭化水素の質量分析に関してけこれまでに多くの
合試料の質量スペクトルを解析して各成分の含有百分率
を求める。それには各成分単独のスペクトルより感度註1)
およびパタン係数註2)を求めておけば次の計算で分圧が
言式料瓶
マノメータ
求められる。解析の一般的方法は,混合試料の質量スペ
クトルから適当なピークを成分数nだけ選び,次の池元
ポンフσ ガ又溜’
(試料導入蔀)
ガ’スリーク
一次連立方程式を解くことにある。
ゆ
物=Σ郷燭
イオン源
電源 i}イ才ン源
,ゴ=1
ポンフ。『
こNに
介斬管
物:刎6=乞におけるピークの高さ(div)
電磁石
イオンコレクター
電源
殉=成分ブの刎6におけるパタン係数
電磁石
(分析部)
国
記録計
註1) ある成分ガスの基準ピーク(通常最大ピーク)の、
高さ(div)をガスだめの圧力(μHg)で割つた
値。
イ才ン電流
増幅審
註2) ある成分の基準ピークの高きを100とした時の
他のピークの相対的な高さを示したもの。、
第1図 質量分析計の概要図
24一(190)
質量分析計による本邦天然ガスの分析 (柴田 賢)
第2・図 天然ガスの質量,スペクトル(1958,6・20,No,2青島中学)
(基準ピ)一クを1とする)
スについての結果を示した。第2表にはガス分析値のほ
5ブ:成分ブの感度(div/μ)
かに参考資料と』して附随水の性質も示してある。また水
紛;成分ノの分圧(μHg)
た∫し,他の成分による重複のないピークが各成分に
求めたもの,CO2の値は水に含まれている全炭酸よ,り,
ついて得られるならば,上の連立方程式を解かなくても・
pH,温度に基づV・てfree CO2の量を計算にて求め,含唖
解析ができる。今回の天然ガス分析においても,CO2は
有百分率としたものである。以下各成分について若干の
郷/8=44,Aは40,02は32,N2は28,cH4は16のピ
検討を行なつてみた。
ークを用い七比較的簡単に解析を行なうことができた。
4.1 CH4,R2,CO2
第1表に成分ガスのパタン係数と感度を示す。
天然ガスの主成分はCH4,N2,CO2の$成分であり・
CH4,N2,CO2を三角座標の頂点としてガス組成を標
第1表天然ガス成分の感度とパタン係数
刎6
12
13
.14
15
16
CH4
1.74
6.48
14.1
82.3
100
20
25
26
27
28
29
30
32
36
38
40
44
(div/μ)
N2
0,37
0,60
2,15 6.75
3,82 0.03
0.12
A
02
CO2
析した天然ガスの組成を炭化水素類(CH4,C2H6,C3H8)・
3』61
0.04
7.38
12.1
N2+02+A,CO2の3成分系として標示したものであ
る。今回の分析では天然ガスとして代表的な試料を集めー
た訳ではないから,必ずしも一般的なことがいい切細る
かどうかはわからないが,天然ガス組成に関して従来認
0.38
3,02
22.7
33.0
100
100
20.3 0.67
22,0
示することが行なわれ,それにより.ガス質と地質学的な
特徴との関係をよく現わすことができる4)1・第3。図は分
められてきた特徴が,第3図からもうか∫われる。その
19.1
、0。21
100
2,3の例をあげると,炭田ガスにおいては,そのガス組成
はほ9一定してV・て,CH4は90%前後でCO2がきわめ
て少なく,炭層ガスを除いてはすべて0ユ%以下である。
O.29
0.07
100
ヒホ 森
100
△ 古生代・中生㈹以
+炭田ガス(古俸三紀)
X 新第三紀ガス
ノ\惨
39.3
26.2
14.6
43.1
●口
感度粛22.2
C2H6
中溶存ガス分析値のうち02は菅原式溶存ガス測定法で
第四紀だス
温泉ガス
、’
24.0
2〃
躍
O水中濤存ガス
\
x 3〃
拶
*η一ブタンの7η/ε=43の感度(25.6div/μ)を基準にした値
o
ら
60
ω/
質量分析計にて炭化水素を分析した場合の精度はα2
δ〈
o
・4
\/
’》0.5モル%という報告がなされているが5),一今回め分
∬
\
ψ
その精度は主成分ではα5モル勿程度であり,また02,
40
50
哉
十
析においても少数の試料について繰り返し測定を行ない,
/・/
o
0 60
o
詔
z6
〆
o
A等微量成分では,(0.5±0.05)モル%,(0・05±0・02)
8〃
瀞
モル%程度であ?た。
\
/〃
、
30
、
4
4. 分析結果およびその検討
o
砺チの紹”
第2表に分析を行なつた天然ガスおよび若干の温泉ガ
25一(191)
口
口
口
/0
5〃
40
」0 ”
・8〃 潮 60 ” 40 」0 ” ” 002
oo
60
第3図 天然ガス組成図(voL%)
τ一、
一饗
…∫町一1
第2表 天然ガス質量分析結果
地域名
坑井名また
は測点番号
釧路炭田
1201
〃
1202
トンネル沢入口
〃
1203
〃
1301
トンネル沢入ロ
オレウケナイ沢入口
.No,106試錐
〃
1303
〃
0406
川原沢
No.26試錐
〃
0601
〃
0602
No.4試錐
庶路炭鉱、
釧路炭田
太平洋炭鉱
〃
ま
1 。石狩炭田
(
卜己 〃
) 〃
oN
採取地点’地質時代 産出状態
十 一、勝
山形ガス田
〃
〃
’〃
〃
〃
〃
〃
〃
常磐炭田
伊1香保
、0603
No.7水抜井
深度蚤 ガス量
(m)
(m3/d)
134
122
145 不明
150 0。8
93.5 6.37 0.08 0.03 0.00
96.1 3.74 0.05 0.02 0.09
212
〃
〃
〃
〃
〃
糸勺100 0.2 83.416.2
〃
〃
−490 1.、91
96.5 3.33
本岐No.45試錐
〃
〃
不明10.6
No.29試錐・.
〃
〃
140不明
〃
〃
約220450
S2
K2
北炭清水沢坑
北炭平和二坑.
〃
〃
〃
〃
〃
豊頃村
山形市中野
〃
〃
94.7 5.19
0.02 0.05 0.03
92.5 ’7.30
0.04 0.13 0.00
0.23 0.13 0。05
41.9 43.2
6.25 0.36 1.47
0.06 0.08 0.46
1
76 少量
1
6315, 000
0。01 0.55 0.63
62、40.4
9016.0
85.8 2.48
0.01 0.04 11.6
88.0 3.88
0.01 0.08 8.03
東村山郡中山町長崎
・〃
〃
14413.8
西村山郡河北町田井
,〃
〃’
126 0.54 71.7 F26.6
10
12
14
17
〃
山形市内表
中塩5号
好間
R3
C4
野田R1
日天60
一主 〃
、南関東ガス田
一
目 月
伊香保温泉
8017
〃
〃
100150
〃
〃
180 0.07 61.0 37.4
古第三紀
610.003
54.9 44.0
1353.3
30.3 65.4
〃
36013ラ000 88.0 11.7
第四紀 温泉ガス
〃長生郡白子町 〃
84.5 10.1
ノケ、
295 0.1
i安山岩
345 0.1
〃
〃 〃
千葉県野田市瀬戸 新第三紀 坑ロガス L125i780
東京都葛飾区
85.3 9.70
〃
.第四紀i 〃
3。94!47.2
1
901約200
∫
棚
4,030
ヨ
10,000’
−62153
不明
9.3
11,200
20
嵩
瞭
20.1 5.9
42.6
12.2
14.1
11.9
14.7
17.1 5.4
66 1.8・
0.01 0.62 0.52
0.73 0.72 2.84L
71 8.6
13.5
6.3
91 240
41.6
54.5
0.18 O.0!
0.28 0.81 47.7
.0.14
1。26
92.0 6.83
0.『04
0.04 1.07
14.9
2,620
(約一年後採取) 劃・
0.01 0.57 1.02
1。、58
81.4 1202と同じ坑井 ・璃
C3H8マ2。86% 難
13.7
1
4912L3
16.2
0.01 α45 1.27
59 29 19.6
0.11 0.20 4.68
49 120 14.8
0.01 0.20 5。22
51i 800 17.2
3.1576.0
50013,000 93.2 5.42
不明
66 0
5glo
64.427.5
94.4 5。05
9.6
2,000 不明 C2H6=1.11%, 血
一70270
〃
〃
56 1
80約
0.08 0.14 0.67
〃
〃
0.65 0.03
136
誌
11.4 5,440
8.8
21.8 6,190
104i O
90.9 8.21
150 0.04 64.5、34.3
〃
10.3
7324.8
一60 〃
〃
寒河江市仲町
46,1
1274.67
第四紀・
東村山郡豊栄村高櫛,
0
0.16 0.05
89.2 10.4
1.09 0.02
18.0!
0.23−
1、19 0.27 2.28
、
考
0.04 12.4 3ヲ180
93.5 6.33
0.0!
備
0
96.3 3.65
224不測
〃
187
Cl一
(mg/1)
5.98 10.3 2,700
111 26.5
新第三紀坑ロガス
〃
水量水温
O.04 0.35 0.02
0.10 0.03 0.01
0.03 0.05 、0.01
3
7
9
寒河江市本楯
附 随 水
(kl/d) 1 (。C)
93.6 6.12 0.24 0。05 0.00
〃
〃
N2/A
92.6 6.71 0.62 0.05 0.01
〃
春採坑
A
lCO2
140 156
No.29試錐
二卸No.4試錐孔1
02
約220450
〃
〃
1
2
N2
古第三紀 坑ロガス
No.10水抜井
茂岩中学校
CH4
No.4試錐
−320 約1
〃
−340約700
白璽紀
古第三紀 炭層ガス
−60少量
B348
ガス組成(▽・L%)
65
0
58…130
68.2 310
60、130
』63.3 209
171 1,400 39・7、7,434
2711250
不明不明一
55 約4
不明、8。2
鵬 鵬
ω
釦
)
・
炭酸温泉わき
有 馬
愛媛県
高知県
〃
宮崎ガス田
釧路炭田
庶路炭鉱
佐々連鉱山
中村右山1号
日南1号
花闘岩
ガス徴 不明
御荷鉾系 坑内ガス 十60
緑色変岩 ボーリング
吾川郡吾川村蕨谷 二畳紀 河床のガ
ス徴
〃 〃 猿橋 二畳紀
下2番西7号
中村市
日南市
グ
第四紀 坑ロガス
古第三紀 〃
宮崎市竹之内
曽山寺1号
〃 曽山寺
〃
青島中学
〃 青島
〃
1011
西卸
Q綿
)
〃
〃
9 .
〃
〃
〃
〃
西村山郡河北町溝延
第四紀
不明
不明
約1
61.3 38.4 0.06 0.09 0.20
427
〃
〃
不測
51.8 43、8 3.79 0.31 0。31
141
〃
〃
不明
86.2
1,34 0.07 0.03 12.4
45
〃
〃
235
69.8
0.88 0.13 0.00 29.2
6.79 87.3 5.30
0.74 96.8
第四紀
10
〃
11
〃
12
〃
13
〃
14
〃
15
山形市江俣
〃
16
寒河江市幸田
〃
17
新第三紀
第四紀
5.0
31。0 4,970
19.5 3,390
14
〃
300
14.4 71.3 24.4 3.80 0.36 0.14
68
86.4 25.6 529
〃
54,9 42,3 1.74
77.2 19.9 0.8!
一170
微量
1.15 0.00
37
0.48 1.59
41
〃
56。9 37.0 0.83
0.49 4.85
76
〃
62.9 22.7、0.00
0.58[13.8
39
〃
31.4
1.71 0.11
0.05 66.7
34
〃
40.1
5.53 0.38
27.7 49.7 1.18
0.09 53.9
61
1.!1 20.3
47
〃
29
0
57.0
ノク
80
1.4
〃
不明
0
〃
45
0
〃
第四紀
第四紀
200
23.1 25.0
〃
東村山郡豊栄村長岡
32
〃
66.7
62
〃
寒河江市平塩
2.27 0.03 0.07 0.80
〃
1.24 55.1 42.4 1.58 0.68 0.30
〃
〃
(・。)
不明 C2H6=0。15%
108
〃
寒河江市南町
0.23・
〃
81
0
〃
140
不明
〃
*+,一のついているものは海水面を基準とした高き,その他は地表からの深さを示す。
137
59.2 23.7 1.85
0.54 14.7
44
0.44 77.6 4.49
1.68 15.8
46
47.7 29.8 0.39
46
47
0.85 8.26
88
3.66 89.2
1.47 3.45
61
0.85 32.2
38
26.2 32.3 8.42
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頃
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29
13.6
6.5
辻
18.9
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24
28.2
不明
13.8
46
12.1
8.2
13.4
7.9
40.8
642
鮎
蕪
50
0.63 21.5
鮎
ユ
51
0.53 75.0 15.4
2.24.
14.9 135
40
0.25 0.45 24.3
38.8 10.6 0。86 0.23 49.5
54.0 8.68 0.12 0.17 37.0
50.9 9.08 0,26 0.18 39.6
0.88 86.4、 1.93 0.63 10.2
工8.0
150
臨
蹄
ゆ
%、
ミ
…
0
380
0.76 5.74 0.69 0.11 92。7
約0.5
坑ロガス
古第三紀 溶存ガス
1202
1
2
3
6
7
8
650
新第三紀 ガス徴
竹之内No.1
1303
山形ガス田
55、
52
0.24
不明
12,800
田
一環
161
約400
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.地質調査所月報. (第12巻『第3号)
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また地質時代の古い天然ガスもCO2が少ないことが特
をも知ることが必要であろう。
徴である。たゾし,日南1号井の天然ガスだけは例外的
にCO2が29%と多v’るこのCO2の多V・ことは火山活
4.3 A
Aは化学的に不活性であるために,地層中で化学的な
動に関係があるものと思われる。これらに対して第四紀
反応によつて加わつたり除かれたりすることはない.し
の天然ガスの組成ほガス田のポテンシャルの高い所,す
たがつて天然ガス中のAは一種のトレーサーとして利用
なわちCH4が80%前後のものではCOlが増加するが,
できることが考えられる、ところで天然ガス中のAは大
ポテンシャルの低い所のものはCO2が少なくなつてお
気に由来するものと思われるから註3),ガス中の他の成
もにCH4とN2とからなることがわかる。また山形ガ
分と比較しながら検討を行なうことによつて,その成分
l
ス田のNo.13,No.15は盆地の周辺にあり溶存塩類
のガス鉱床における行動をある程度知ることができる.
がきわめて少なく,避離ガスを伴参わないきれいな稼流
こ》に一つの例としてAとN2とをとりあげてみた。第
レ
水であるが,溶存ガス中にはすでにCH4をわずかでは
4図はN2とAとの相関図である。また第2表にはN2/A
あるが含んでいる。温泉ガスについては,CH4は伊香
が示してある。第4図より,天然ガスにはそのN2雄が、
ξ
保は3%台,有馬のはCO2を主成分とする中に0.76%
E
含まれており,ともに火成源のものかと思われる。重炭
E
F
レ
l一
し
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き
[
化水素に関しては,石狩炭田夕張地区北炭清水沢坑の炭
層ガスはC2H6,C3H8をかなり含んでおり’,炭田ガス
合 古生代、中生代ガ画ス・
中では特異な例である。同坑内には石油の露出がみられ,
質 新第三紀ガス
ガス中の重炭化水素は石油に関係があるものと思われる。
夢
がかなりあるが,CH46.79%に対してC2H6α15%と、
卜
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■算四紀万ス
ロ 温泉ガ叉
毒
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O 水中溶存ガス 、
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また四国佐々連鉱山坑内のボーリングガスは空気の混入
!
いう値は大きなもので,周囲の岩石が変成岩であること
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噺炭田がス〔古第三孝己)
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と考え併わせて詳しい検討が必要である。
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砂
“先灸 水中溶存ガスσ?ガス組成は,CO2の溶解度が他のガス
○
卜
に較べて大きいために,CO2の割合が著しく大きくなつ
ていることが特徴である。
4.2 02
ず・
天然ガス中の02は一般に少なく,0.0《・0.3%程度と
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グox
いわれているが,分析値をみると水中溶存ガスを除けば
70 30 40 50 60 〃 ’0 2レ z“ρ
〃2 r%ノ
大部分の試料について,その程度め値を持つているこ・と
第4図 天然ギスのN2とAとの・関・係P
がわかる。02の含量が0.5%を超すものは採取時に空
気混入の起こりやすい試料に多い。一般に空気の混入は,
大気のN2/Aに比較的近い値を示すもの・と,・大気と較
採取時,保存の不備のため,あるいは質量分析の際に起・ べてN2がAに対してかなり濃縮されノζものとがあるこ
とがわかる・前者をさらに詳しくみると,第4図におい
こることが予督されるが,02がα5%程度以上のもの
は上記の原因によつて空気が混入し,酸素が増加したも
て測点はA線(大気と同じN2/A値を示す線)とB線
のと考えてよかろうδ
(大気と平衡にーある純水中の溶存ガスが持つべきN2/A
水中溶存ガス中の02の含量は山形ガス田周辺の伏流
を示す線)との間に入り,坑ロガスではそのN2/Aが大
水の値を除けば0・0∼0・2%である。これを対応する坑’
気のN2/Aよりもやン小さv)値をもつ。ま之これらの値
口遊離ガスの02含量と較べてみると,交換平衡にある
を示す天然ガスの大部分は第四紀および第三紀の一部の
時に溶解度より推定される量よりはるかに多いことがわ
もので,新しい地質時代Qものということができる。溶
かる。すなわち,これはガスが水から分離する際,02
存ガスではそのN2/Aはほとんどのものが大気と平衡に
はその分離がきわめて悪く,大部分が溶存ガスとして残
ある純水中の溶存ガスが示すべきN2/Aとほダ同じが,
づているということを見掛け上示すものであるが,その
原因についてはまだ何もわかつていない。この問題に関
する詳しい検討を行なうためには,溶存酸素をより直接
的な方法で求める適当な分析法を用い,02の溶存状態
28一(194)
註3) た冥し,K40から放射壊変によつて生ずるAに一
蘭しては,古い地質時代の地層では問題となりう1
るといわれている2)。しかしどの点についての詳
しい資料が得られないから,こ、では除外して考
察を進めた。
質量分析計による本邦天然ガスの分析 (柴田 賢)
それよりや>大きい値を示す。したがつてこれらの溶存
ピークが他成分のピークと重なるために微量のものを定
ガスに対応する坑口遊離ガスのN2/Aは,完全な交換平
量することは困難であつた。微量のCO,H2の分析に
衡にあれば大気のN2/Aよりも大きい値のものがかなり
はガスクロマトグラフ法を用めた方がよいように思われ
あつてよいはずであるが,実際にはほとんどが大気の
る。坑口遊離ガスと溶存ガス中の02の平衡の著しいず
N2/Aよりも小さい値を示す。このことは,これら地質
時代の新しい天然ガスは附随水と密接な関係を持ち,さ
れは,適当な02の分析法を用いて検討する必要がある。
らにN2,Aに関しては,水から分離した際には溶存ガ
ス的な性質を持つていることを示すものである。また坑
天然ガス中のN2/Aは地質時代の新しいものでは大気
のN2/Aとあまり違わないが,古い地質時代の天然ガス
には大気と比較してN2がAに対して著し1く濃縮したも
ロガスと溶存ガスとを全部集めて地下にもどした時にガ
のがかなりある。この原因を追求するためには,さらに
スが示すN2/Aは溶存ガスのN2/Aよりもやン大きく
多くの古いガスの分析を行なつてみることが必要である
なり,Aが大気からきたものとすればN2が若干つけ加
が,それとともにN2,Aの同位元素組成を求めてみる一
わつたということができる。地層中の有機物が還元的な
ことも重要であろう。 (昭和35年5月稿)
環境におV・て分解する場合,CH4,CO2とともにN2も
生成することが認められており6),上述のN2/Aから推
定されるN2の附加は,有機物の分解にて生じたN2に.
交献
よるものと考えてよかろう。
1) B&mard, G。 P。 :sodem mαss Spectro−
一方,第4図に見られるように,大気と比較して
metry, The Institute o{ Physics
(London),p.192《’230,1953
N2がAに対して著しく濃縮した天然ガスがある。これ
らは古第三紀の炭田ガスや古生代・中生代の天然ガスで,
2) Emery,K,0.,&Hoggan,D。:Gases in
maτine sediments,BulL AmeL Assoc。
古い地質時代のものということができる。N2の相対的
Pet笈oL GeoL,VoL 42,p。2174∼
な増加の原因として有機物分解によるN2の附加という
2188, 1958
3) 広田鋼蔵・早川晃雄・小林康司・荒木峻:質量分
こどが考えられるが,しかし長い地質時代の問には天然
ガス成分は種々の物理的・化学的作用をうけてそのN2/A
析,実験化学講座1,p.409∼516,
も変化するであろうから,これだけの資料で単純なるN2
1957
4)兼子勝:本邦天然ガス鉱床の地質学的研究,地
附加としてこの問題をかたずけることはできない.A,
N2の同位元素組成を求めることもこの問題解決の一つ
質調査所報告,No。169,1956
5)棋田勉:質量分析計による炭化水素分析の精度
と確度,質量分析,No。9,p.18∼
の糸口になるであろう。
25,1957
6)本島公司:天然ガス鉱床の成因的研究,地質調査
5 結 言
所報告,No.183,1959
今回の質量分析では天然ガス中の微量成分に特に注目
して分析を行ない,ガス中に0.On∼0。n%程度含まれて
いる02,A等を比較的精度よく定量することができた。
しかしCO,H2等については,質量分析の際それらの
29一(195)
7) 大島昌三:低級炭化水素の質量分析,質量分析,
No。 13, P. 88∼97, 1959
8) 宗宮知行・荒木峻:天然瓦斯微量分析の二三の方
法について,石油技術協会誌,VoL13,
p. 323∼325, 1948