転倒予防

「転倒予防」
那須赤十字病院
理学療法士 岡﨑 大征
小久保 恵
介護予防の目指すもの
要介護の主な原因の割合(平成22年度)
転倒・骨折により
が要介護状態に!
その他の病
気, 27.5
脳卒中, 21.5
認知症, 15.3
関節疾患, 高齢による
衰弱, 13.1
10.9
転倒・骨折 10.2%
厚生労働省 国民生活基礎調査より
ころぶ事故による初診時の状態
軽症:入院の必要ないもの
中等症:生命に危険はないが
入院が必要なもの
重症:生命に危険があるもの
重篤:生命の危機が
切迫しているもの
約4割で入院が必要
転倒はなぜ問題なのか??
転倒によって引き起こされる事
転倒
自信喪失
外傷・骨折
(例)
痛み、
機能低下
筋力・体力
低下など
転倒恐怖
活動低下
介護負担
寝たきり
経済負担
1年間に転倒を経験した人の割合(年齢別)
転100
倒
し 80
た
人
の 60
割
合
年をとるにつれて、転倒しやすくなっていきます
53.3
(%)
40
20
18
24.3
30.1
52.2
34
年齢層(歳)
0
65歳
70歳
75歳
80歳
85歳 90歳~
高齢者の転倒による4大骨折
肩の骨折
(上腕骨近位端骨折)
腰の骨折
(腰椎圧迫骨折))
手首の骨折
(橈骨遠位端骨折)
股関節の骨折
(大腿骨頸部骨折)
メディリハより
転倒の原因
バランス
能力低下
関節可
動域
筋力低下
外的環境
転倒
服薬問題
視覚の
低下
感覚障害
転倒の危険因子
危険因子
筋力低下
転倒歴
オッズ比
4.4
3
歩行能力低下
バランス機能低下
補助具の使用
2.9
2.9
視力障害
関節障害
起居動作能力低下
認知症害
2.5
2.4
2.3
1.8
年齢(80歳以上)
1.7
2.6
アメリカ老年医学会より
危険因子の数と転倒率の関係
転
倒
し
た
人
の
割
合
(%)
0
1
2
3
4
危険因子の数(個)
転倒リスク評価表(厚労省より)
合計10点以上
要注意
身体機能チェック
①握力
②開眼片足立ち
③Timed up Go test
④5m歩行時間(通常)
⑤〃
(最大)
厚労省が示す介護予防マニュアルより
(例)開眼片足立ち時間
【実施方法及びルール】
①両手を腰に当てます。
②軸足に足がつかないように。
③軸足がずれてもダメです。
【平均値】
足の筋力強化
立ち上がり練習をしてみましょう!
《その他の練習法》
・座って膝の屈伸運動
※体調に合わせ、無理のない範囲で行いましょう。
《運動のやり方》
手を腰に当て、
4秒かけて立ち上がり、
4秒かけて座ります。
《運動の目安》
1日10回×2セット
《練習のポイント》
おなかに力を入れて行い、
太ももを使っているのを
意識しましょう!
静的バランス強化
片足立ちをしましょう!
《運動のやり方》
片足を床から少し浮かせる程度に
上げ、1分間静止します。
椅子に掴まりながら行いましょう。
《運動の目安》
左右1回につき1分×3セット
《練習のポイント》
太もも表側の大腿四頭筋、内側の
内転筋、お尻の筋肉、ふくらはぎを
意識して行うと効果的です。
《その他の練習法》
物に掴まりながら、両脚の背伸び運動でも効果的です!
※転倒には十分に注意して行いましょう。
動的バランス強化
ステップの練習をしてみましょう!
《運動のやり方》
脚をそろえて立ち、片方の足を前後左
右に踏み出します。踏み出した脚にしっ
かり体重をかけ、また元の位置に足を
戻します。
椅子などに掴まりながら行いましょう。
《練習の目安》10回×2セット
《練習のポイント》
踏み出した脚にしっかり体重を乗せるよ
うにしましょう!
《その他の練習方法》
足踏み練習や歩くことが動的バランスの強
化になります。
※転倒には十分に注意して行いましょう。
運動習慣はありますか?
【運動習慣者の定義】
1回30分以上の運動を、週2日以上実施し、
1年以上持続していること
健康日本21啓発普及資料より
皆様はご存じですか?
• WHOは、高血圧、喫煙、高血糖に次いで、
身体活動不足を全世界の死亡に対する危険
因子の第4位として位置付けた。
• 2010年にはその対策として
「健康のための身体活動に関する国際勧告」
を発表。
厚生労働省 健康づくりのための身体活動基準2013より
日本でも同様
①喫煙
②高血圧
③運動不足
④高血糖
目標設定
①日常生活における歩数の増加
⇒1200~1500歩の増加
②運動習慣者の割合の増加
⇒約10%増加
③住民が参加しやすいまちづくり・環境整備に
取り組む自治体数の増加
⇒47都道府県
健康づくり対策の流れ
1978
S53~ 第1次国民健康づくり対策
健康診査の充実
市町村保健センター等の整備
保健師、栄養士等マンパワーの確保
1988
S63~ 第2次国民健康づくり対策
~アクティブ80ヘルスプラン~
2000
運動習慣の普及に重点をおいた対策
(運動指針の策定、健康増進施設の推進等)
H12~ 第3次国民健康づくり対策
H15 健康増進法の
施行
H18 医療制度改革
関連法の成立
H20 特定健康診査・
特定保健指導開始
~21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)~
一次予防重視
健康づくり支援のための環境整備
目標等の設定と評価
多様な実施主体による連携のとれた効果的な運動の推進
2013
H25~ 第4次国民健康づくり対策
~健康日本21(第2次)~
1日の歩数・運動習慣者の割合
理想と現実(健康日本21より)
項目
集計値
目標値
①日常生活における歩数
男性平均
女性平均
7841歩
6833歩
9000歩
8500歩
②運動習慣者の割合
男性平均
女性平均
26.3%
22.9%
36%
33%
健康日本21第1次後の評価
✔ 日常生活における歩数の増加
✔ 運動習慣者の増加
・・・ D
・・・ C
評価区分
A 目標値に達した
B 目標値に達していないが改善傾向にある
C 変わらない
D 悪化している
E 評価困難
参考資料:健康日本21評価作業チーム「健康日本21」最終評価
運動習慣者の割合の推移
男性
(%)
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
ベースライン値
1997年
中間評価
2004年
女性
(%)
直近実績値
2009年
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
ベースライン値
1997年
中間評価
直近実績値
2004年
2009年
【健康日本21最終評価】
○男女とも、60歳以上の運動習慣者は増加している。
○60歳未満の就労世代の7~8割が、運動習慣を有していない。
参考資料:健康日本21評価作業チーム「健康日本21」最終評価(一部改変)
最後に
• 転倒が引き起こす弊害は、軽視できず転ばない体
作りは大切です。その上で、身体機能に着目しまし
たが、転倒の要因は様々ですので今回の内容だけ
では完全に転倒を防げるわけではありません。
• 身体機能を維持・改善することで転倒予防はもちろ
ん、生活習慣病の予防にも繋がります。
• 就労者の運動習慣者は少ないとされていますので、
ぜひ皆様の企業でも転倒予防及び健康増進に取り
組んでいただけたらと思います。