日本のGDPにおける社会資本と人的資本の分析

日本のGDPにおける社会資本と
人的資本の分析
名古屋大学
根本ゼミ
はじめに
昨今、日本のGDP成長率の低下が問題に
なっている
そこで、各生産要素がGDPに与える影響
を分析することで、 GDP成長率を底上げ
するにはどうしたらよいか考察する
2010年
2008年
2006年
2004年
2002年
2000年
1998年
1996年
1994年
1992年
1990年
1988年
1986年
1984年
1982年
1980年
名目GDPの推移(100USドル)
160
140
120
アメリカ
100
80
中国
60
日本
40
インド
20
0
GDPを細かく見てみると次の要素からできている
GDP
全要素生産性
人的資本
民間資本
社会資本
全要素生産性(A)
全体の産出の変化率から、労働と資本の
投入量の変化率を引いた差
労働と資本の成長では説明できない要素
主に新しい産業の誕生などの技術進歩
実体経済に表れない労働者のやる気、
金融の動向などの要素も含まれる
GDPを細かく見てみると次の要素からできている
GDP
全要素生産性
人的資本
民間資本
社会資本
人的資本(L)
人口問題:少子高齢化
人的資本の低下
就業者人口(万人)
7000
6800
6600
6400
6200
6000
5800
5600
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
5400
GDPを細かく見てみると次の要素からできている
GDP
全要素生産性
人的資本
民間資本
社会資本
民間資本と社会資本(10億円)
1.40E+06
1.20E+06
1.00E+06
8.00E+05
民間資本
6.00E+05
4.00E+05
社会資本
2.00E+05
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
0.00E+00
社会資本の増加率
0.1
0.09
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006
実証分析
分析手法
・Y  F ( K U , L  H , G) で分析
Y=GDP、K=民間資本、U=稼働率
L=就業者数、H=労働時間、
G=社会資本
コブ=ダグラス型生産関数


Y  A( K  U ) ( L  H ) (G)
( A  全要素生産性)

分析手法


Y  A( K U ) ( L  H) (G)
α
GDPに影響を与える要因を細かく分析できる
両辺対数をとる
logY  A αlog(K  U) βlog(L H) γlog(G)
しかし、このモデルは人的資本の質を考慮し
ていない
進学率の推移
大学進学率
は上昇傾向
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
高校
1980
1983
1986
1989
1992
1995
1998
2001
2004
2007
大学
新たな変数「LW」
そこで、人的資本の質を考慮し、教育へ
の投資量を生産性の高さとする。そし
て、就業者数Lを学歴によってウェイトづ
けした新しい変数「LW」を作る
「LW」の作り方
・ 雇用者数を最終学歴別に細分化
中卒=JH、高卒=H、短大,高専卒=JC、
大卒,大学院卒=UN、とする。
・ さらに、それぞれの賃金(所定内賃金)でウェ
イトをつける
中卒=wjh、高卒=wh、短大,高専卒=wjc
大卒,大学院卒=wun
「LW」の作り方2
賃金構造基本統計のデータから次の式を作る
( wjh  JH)  ( wh  H)  ( wjc  JC)  ( wun UN )
LW 
wjh  wh  wjc  wun
*
これにより、学歴別に賃金でウェイトづけされ
た指標ができる
高学歴労働者の方が賃金が高いため、学歴
の高い労働者が増加した方が、LW*の値はよ
り高く評価されることになる
「LW」の作り方3
• ただし、LW*のデータ元である賃金構造基本
統計はサンプル調査のため、全事業所をカ
バーしていない
• そこで、LW*を就業者数まで拡大したLWを使
用する
LW  {LW / サンプル数 } 就業者数
*
LW *
 LW 
L
JH  H  JC  UN
社会資本(G)
logY   log(K U )   log(LW  H )   ' log(Gi )
生産に関わる社会資本Gi(i=1~7)
を最小二乗法で分析
Gi
γ’
t値
道路(G1)
0.19421
3.880
港湾(G2)
0.28311
3.686
空港(G3)
0.10619
4.195
下水(G4)
0.13775
3.806
廃棄物(G5)
0.08678
3.046
水道(G6)
0.19206
3.237
工業用水(G7)
0.19436
3.346
合計(G)
0.18119
3.709
結果
logY  A αlog(K  U) βlog(LW H)γlog(G )
α  0.37154 β  0.76402 γ  0.18119
t  (6.168) (5.813) (3.709)
DW
 0.7278
・ α、β、γはそれぞれ民間資本、人的資本、社
会資本の係数であり、すべてプラスに有意で
ある
・ しかしDW比が低く、系列相関が認められる
DW比の改善1
logGDP  A αlog(K  U) βlog(LW H)γlogG
誤差項に系列相関が生じている
その系列相関を解消するためコクラン・オーカット法を
用いる
AR(1) : ut  ut1   t
DW
 0.6361
2
log GDPt  ˆ log GDPt 1  (1   ) A   {log(K  U ) t  ˆ log(K  U ) t 1}
  {log(LW  H ) t  ˆ log(LW  H ) t 1}  {log Gt  ˆ log Gt1}   t
ˆ  1 
DW1  1.055
DW比の改善2
一回目の結果、DW比に改善があまり見られなかったので、
再度コクラン=オーカット法を行った。
AR(2) : u  (   )u  u  
    
t 1
t
t
t 1
t 2
t
t
DW1
ˆ
  1
 0.4725
2
logGDPt*  ˆ logGDPt*1  (1  ˆ)(1   ) A  {log(K  U )*t  ˆ log(K  U )*t 1}


  {log(LW  H )   log(LW  H ) }  {log G   logGt*1}  t
*
t 1
DW2  1.3754
*
t 1
*
t
結果(コクラン・オーカット法)
logY  A αlog(K  U) βlog(LW H)γlog(G )
α  0.20735 β  0.62863 γ  0.29750
t  (4.637) (2.943) (5.853)
DW  1.3754
要因分解
GDP成長率の要因分解
GDPの成長率を算出し、要因分解する
Yt 1 At 1
( K  U)t 1
( LW  H)t 1
Gt 1




Yt
At
( K  U)t
( LW  H)t
Gt
GDP成長率の要因分解
0.08
0.06
全要素生産性
0.04
社会資本
人的資本
0.02
民間資本
0
-0.02
-0.04
-0.06
GDPR
A(全要素生産性)
0.025
0.02
0.015
0.01
0.005
0
-0.005
-0.01
-0.015
-0.02
-0.025
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06
LWとLの指数比較(1980年を1とする)
1.25
1.2
1.15
LWr
1.1
1.05
1
Lr
人的資本の質がGDPに与える影響
• 1990~2000年
質を考慮しない場合
(就業者の学歴の構成比を1990年で固定)
質を考慮した場合(現実)
その差
人的資本の質がGDPに与える影響
• 2000~2009年
質を考慮しない場合
(就業者の学歴の構成比を2000年で固定)
質を考慮した場合(現実)
その差
社会資本の増加率
0.1
0.09
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006
社会資本と民間資本の限界生産性
Y
MK = a AK U (LW ´ H ) G = a
K
a -1
a

b

g
MG  A( K  U ) ( LW  H ) G
 1
Y

G
社会資本と民間資本の限界生産性
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
MG
MK
まとめ
・ 教育水準の上昇に伴い生産性も上昇する
→教育水準を上げることで
労働力の減少をカバーできる
・ 社会資本にも、まだ投資をする価値がある
→財政を縮小するだけではなく
戦略的な社会資本投資も必要
参考資料
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内閣府推計
国民経済計算 (内閣府)
労働力調査 (総務省統計局)
産業動態統計 (経済産業省)
賃金構造基本統計 (厚生労働省)