Title Author(s) Citation Issue Date URL 社会資本論( Abstract_要旨 ) 宮本, 憲一 Kyoto University (京都大学) 1972-01-24 http://hdl.handle.net/2433/213795 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 博 第 土 学 済 経 一帖 嚢㍑博 紀 経 学 位 の 種 類 神 名 本 宮 氏 31 号 学 位 記 番 号 論 学位授与の 日付 昭 和 4 7年 1 月 2 4日 学位授与 の要件 学 位 規 則 第 5条 第 2項 該 当 学 位論文題目 社 会資 本 論 論 文 調 査 委員 数 J授 島 (主 査) 論 恭 彦 文 内 教 授 出 口勇 蔵 容 の 第一部で著者は, マル クス とエンゲルスの古典 の中か ら, 要 教 授 松 井 清 旨 「社会資本」 の一般的規定, 社会資本 の中の 一般的労働手段 と共同消費手段 との区別 と関係, 社会資本の公有形態 と私有形態 との問の移行形態 につい ての理論 を整理す る。 そして一般的労働手段 も共同消費手段 もともに資本制社会 の再生産基盤であ りなが ら, 資本蓄積 の過程では, 一般的労働手段 の整備が先行 し, 労働力再生産 の不可欠 の条件たる共同消費手 段 の整備がたちお くれ ることを明かにす る。 第二部では, は じめに両大戦間の時期 に英米 の財政が社会資本 の投資を拡大 した事実 を考察 し, 独占段 階 における 「社会資本化」 の三つの傾 向を指摘す る。 第一 に一般的労働手段 の資本化が, 「地域独 占」 を生み出し, 「地域独占」 の上 にこれ まで生産 の一般 的条件 としての性格を もっていた土地, 用水, 道路, 港湾等が国家資本又 は減価償却資産 の性格を与えら れ, そ こか ら生ず る間接費の巨大化 のために, その費用が国家公共団体 に転嫁 され る。 他方国家, 公共団 体 と結合 した独占体は 「地域独 占」 として 「地域独 占利潤」 を獲得す る。 第二 に大都市への労働者 の集中によって, 共 同消費手段 の社会化が進むが, それはまた共同消費手段 の 資本化 で もあ り, 労働者の負担 と貧困化 を増大 させ る。 第三 に社会資本化 を進 める国家, 公共団体 の行財政が企業化 し, 収益事業化す る。 第三部 では, 社会的費用 と貧困化 との関連が考察 され る。 共同消費手段 の節約 と不足か ら発生す る社会 的費用 の増大が現代 の公害や新 しい貧困化問題 を分析す る鍵 になっていることが明かにされ る。 第四部 で, まず現代 日本の, 公害現象の大量発生が分析 された後, 社会資本不足 の歴史的背景 として, 戦前 におけ る社会的費用 の農村還元方式 と, 都市財政 の窮乏化 の二つを考察す る。 第五部は, 長期経済計画 (国民所得倍増計画) の樹立 とともに開始 された社会資本充実政策の批判 にあ て られ る。 社会資本投資の比重は著 し く上昇 したが, しか もなお社会資本 の不足 の声が くりかえされ る根 拠 が, 次 の各点について指摘 され る。 - 46 - (1) 充実 され る社会資本以上 に, 民間の強蓄積が進行 した こと。 (2) 民間投資 の無計画性のために, それ と関連す る社会資本投資 の非効率が増大 した こと。 (3) 民間投資の地域的配分 の無計画性のために, 社会資本 も地域的な過剰 と不足をひ きお こした こと。 (4) 社会資本投資の無政府性が, 土地投機 と地価 の上昇をよびお こし, 社会資本の不足 を発生 させた こ と。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 一般 に 「社会資本 の不足」 といわれている状態か ら発生す る公害問題や新 しい貧困化 の問題が もつ緊迫 性 に比 して, 「社会資本」 の理論 は, これ まで長い間立 ちお くれの状態 のままであ った。 経済学が これ ま で 「私的資本」 「民間資本」 の分析 に集 中した結果, 生産 と消費の一般的条件 とい うような, 資本概念 の 限界領域 にある問題 についての分析は著 し く立 ちお くれていた といえよう。 そのため社会資本概念が, 罪 常 に不明確, かつ多義的で, それが官庁統計 に も反映す るために, 統計的分析を通 じて社会資本 の実態へ の切 りこみを, 非常 に困難 にしていた。 本著は, 理論 と実証 との両面か ら, この社会資本論 の立 ちお くれを克服 し, 最近 の社会資本研究 の領域 を切 りひ らいた先駆的業績 である。 本署の中には, 社会資本 の分類, 「地域独占」 の問題, 社会資本 と貧困化 の関係, 公害 の分析, 社会資 本 の投資の主体 となる国家, 地方公共団体 の 「企業化」 の問題等 々について, 創造的な理論がふ くまれ, 鋭い問題提起が行われている。 もちろん先駆的な業績だけに, い くつかの理論的操作, 統計的処理 に未整理 の個所がみ とめ られ, その ために社会資本の基礎的理論 と, 社会資本の実態 とをつな ぐ過程 に, い くつかのギ ャップが見 られ るが, そのために本署はまたその後 の社会資本 の研究 を促 したのであ って, そ うい う意味で も本署は高 く評価 さ るべ きである 。 よって, 本論文は経済学博士 の学位論文 として価値 あるものと認 める。 - 47-
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