制御工学I

電気工学基礎(制御編)
 

 

はじめに
1
ホームページ
川邊・村田研HPhttp://terra.ees.kyushu-u.ac.jp/にリンクがあります
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2
制御工学の成果の数々
工作機械
家庭電器製品
情報機器
建設
ロボット
高層ビル
プラント
鉄道
原子炉
ごみ焼却炉
搬送
宇宙航空
3
最近の自動車と制御系
計測と制御 2003年4月号
「自動車は制御で動く」より
自動車には走る,曲がる,止まるなど,基本的な性能を
満たした上で,地球環境に負担をかけないこと,乗り心
地が良いことなど様々な性能が要求される.これらの要
求を高次元で満たすために,今では多種多様の制御系
が車載されている.また新しい制御系の研究も活発に行
われている.本稿では自動車の代表的な制御系につい
て概略を紹介する.詳細は文中に示した参考文献を参
照されたい.自動車制御全般についての文献は:自動
車の制御技術,朝倉書店 (1997).川邊:自動車制御の
現状と展望,電気学会誌 122-6, 360/363 (2002) などが
ある.
操舵制御:走行中の車体横滑りの低減や,車体のヨー
レートや横加速度のモデル追従制御を後輪の舵角を操
作量として実現する.また,近年は,可変ギヤ比機構(V
GRS)やステアバイワイヤの開発に伴い,前輪をアクティ
ブに操舵する制御も提案されている.(文献)金井ほか:
四輪操舵車の適応形ヨーレート,横加速度およびD*制
御系の設計,計測自動制御学会論文集,Vol.24, No.4
(1988).山本ほか:後輪のアクティブ操舵による操舵応答
性・外乱安定性の向上,自動車技術会論文集,No.46
(1990).中野ほか:前輪アクティブ操舵を用いた車両姿
勢制御システムの研究,自動車技術会論文集,Vol.32,
No.1, 95/100 (2001)
電動式パワステアリング:運転者にとってよい操舵フィーリ
ングを得るための操舵トルク特性の実現を目的としている.
運転者の負担を軽減するとともに路面の特性を運転者が
感じられるような周波数整形をH∞制御の適用によって
実現した事例がある. (文献)杉谷ほか:ロードインフォ
メーションの取得を考慮した電動パワーステアリング制御,
自動車技術,Vol.50, No.11, 100/104 (1996).弓場井ほ
か:スケジュールドH∞制御を用いた電動パワーステアリ
ング駆動系の設計手法,電気学会論文集C,Vol.119,
No.1, 83/89 (1999)
By-Wire化:ハンドルと前輪舵角の間などの機械的なリン
クをなくすことで搭載性や制御の自由度を向上させるも
のである.ここでは,システム故障時などのフェールセー
フの機構が最大の技術課題となっている. (文献)橘:D
BWによるインテリジェント自動車,自動車技術会前刷集,
No.62-02 13/16, 20025288 (2002)
アクティブノイズキャンセラー:エンジン回転数から車室
内の騒音を推定し,推定した騒音と逆位相の音をスピー
カーで出して騒音を消す.推定の部分に適応制御を用
いる.(文献)中路:自動車騒音のアクティブう制御,シス
テム/制御/情報,38-8,448/450 (1994)
アクティブサスペンション:路面からの振動を抑制しつ
つ,路面とタイヤとの接地性を確保することを目的
としている.人間には,路面からの振動を感じやす
い周波数帯域(体感周波数帯)があり,この周波数
領域の振動抑制のためにH∞制御による周波数整形
が利用されている. (文献) D. Hrovat: Survey of
advanced suspension developements and related optimal
control applications, Automatica, 33-10, 1781/1817
(1997)
無段変速機(Continuously Variable Transmission,
CVT)の制御:省燃費のため変速機を無段化する流れ
がある.CVTは時変性や非線形性があり,2自由度制御
や厳密線形化などの応用が検討されている. (文献)
Kawabe et al.: A Gain Scheduled Non-linear Servo
Controller for a Toroidal Continuously Variable
Transmission, The sixth International Conference on
Motion and Control August 19-23, 2002 Saitama,
Proceedings 1, 367/372 (2002)
ハイブリッドパワトレイン:走行状況に応じ,エンジン駆動
とモーター駆動を使い分け,排出ガスや燃料消費を抑
制することを目的としている.このために,エンジンの燃
費率が良い高トルク域をできるだけ使用するように電子
スロットル開度の調整によってエンジン回転数を制御す
るとともに,アクセル開度に応じた駆動力を出力するよう
にエンジン駆動力に付加されるモーターの駆動力を制
御している. (文献) 阿部ほか:トヨタハイブリッドシステ
ムの開発,Toyota Technical Review Vol.47, No.2, 50/55,
(1997)
ビデオカメラ
パワートレイン
前方レー
ダ
自動車間制御系(Adaptive Cruise Control System,
ACC):レーダで直前を走る車との車間距離を測り,自動
的に車間距離を詰めたり維持したりする運転支援装置の
一つ. (文献)東又ほか:ブレーキ制御付きACCの車間距
離制御系の設計,自動車技術会学術講演会前刷集,19
99秋季大会 144/99, 5/8 (1999)
レーンキープ制御:ビデオカメラで路上の白線を検知し,
車線を逸脱しないようにハンドルにトルクを与える運転支
援装置の一つ. (文献)金平ほか:運転操作補助に関す
る車両制御技術,計測と制御,40-3, 214/219 (2001)
自動運転:ビデオカメラ,レーダほか車車間通信,路車間
通信などITS (Intelligent Transportation Systems)のインフ
ラを用いて文字通り自動車の運転を自動化する試みがあ
る.目的は自動車交通の情報化・自動化による事故の低
減,渋滞の緩和など.(文献)Shladover: Review of the
State of Development of Advanced Vehicle Control
Systems (AVCS), Vehicle System Dynamics, 24, 551/595
(1995)
多数のコントローラ(Electric
Control Unit, ECU)が搭載されて
いる.最近では1台当たりマイクロ
プロセッサが40から50個使われ
る例もある.電線の配線長はkm単
位に及ぶため車内LANの導入検
討されている.
自動変速機(トルクコンバータのスリップ制御)ト
ルクコンバータ内のロックアップクラッチをわずか
なスリップ速度をもたせて係合することによって,
動力伝達効率を高めると同時に駆動系に伝達される
エンジントルク変動を抑制することを目的としてい
る.制御対象は,伝達されるエンジントルクの大き
さや潤滑剤の経時変化の影響によって変動すること
からH∞制御やμ設計などのロバスト制御が活用さ
れている. (文献) M. Osawa, et. al.: Application of
H∞ Control Design to Slip Control System For Torque
Converter Clutch, Preprints of 1st IFAC-Workshop on
Advances in Automotive Control, 150/155, Switzerland
(1995),家子ほか:自動車の自動変速機における2
自由度スリップ回転速度系の設計,計測自動制御学
会論文集,Vol.34, No.11, 1645/1651, (1998)
DYC (Direct Yaw Control): 限界走行時の車体横滑り
発生時に旋回外輪にブレーキを作動して安定化を図
る.2次元車両運動を位相平面上で解析し,不安定
化防止の制御則を導出している.また,不安定化の
発生要因をプラント変動とみなしたロバスト安定化
のアプローチも提案されている. (文献) S.
Inagaki et. al. : Analysis on Vehicle Stability in
Critical Cornering Using Phase-Plane Method,
AVEC’94 287/292 (1994).小野ほか:ゲインスケ
ジュールドH∞制御による車両運動のロバスト安定
化,計測自動制御学会論文集,Vol.35, No.3,
393/400 (1999)
ABS (Anti-Lock Brake System):4輪の車輪速度の変
化から制動時のブレーキ圧力を緩めることによって車輪
ロックを防止する.また,制動力の最大化を目的としてス
ライディングモードを利用する手法や,タイヤ特性をオン
ライン同定する手法が提案されている. (文献) S.
Drakunov, et. al.: ABS Control Using Optimum Search
via Sliding Modes, IEEE Trans. on Control Systems
Technology, Vol.3, No.1, 79/85 (1995).E. Ono, et. al.:
Estimation of Automotive Tire Force Characteristics
Using Wheel Velocity, IFAC 15th World Congress
(2002) .Kawabe et. al. :A Sliding Mode Controller for
Wheel Slip Ratio Control System,Vehicle System
Dynamics,27, 393/408, (1997)
路面特性推定:ABSやDYCの制御系の一部として,ある
いは路面が滑りやすいことを知らせる警報装置として用
いられる.ブレーキ力および車輪回転速度の変化から
力学的な考察のもとに路面摩擦係数を推定するアルゴ
リズムが代表的である.その他適応オブザーバを用い,
路面を“氷結路”,“雨天路”,“通常路”のようにオンライ
ン分類する方法がある. (文献)アイシン精機(株):路面
摩擦係数推定装置,公開特許公報,平11-157433
(1999).川邊:周期ゲイン型s-修正法を用いた適応観測
器による路面判別,計測と制御,39-10, 631/634 (2000).
著者
小野栄一 (豊田中研)
川邊武俊 (当時 日産)
マイクロプロセッサ:40~80個
電線総延長:km 単位,kg単位
4
目標値
・外乱の抑制
制御対象の
特性
応答
制御対象にもともとなかった望ましい性質を与える.
制御系の
応答
時間
応答
・安定化
時間
・応答性の向上(即応性)
応答
制御の目的
5
時間
フィードバック制御系
•制御対象の出力が目標値からはずれたら(誤差が発生したら)
•誤差を打ち消す入力を加え,誤差を抑制する.
入力外乱
目標値 
誤差

コントローラ
  操作量
出力外乱
制御対象
 
制御量
制御する量
負帰還
(Negative feedback)

フィードバック(帰還)ループ

ノイズ
6
フィードバックの効用
•フィードフォワード制御:結果をチェックしない
入力外乱
目標値
コントローラ
出力外乱
  操作量
フィードフォワード制御
このカーブは曲率半径55mなので,時
速△kmではハンドルを○秒間□度切れ
ば曲がれると正確に計算し実行する.
計算した時から
•タイヤが減っていると...
•道が地震で少し傾くと...
•乗員の数が違い,車の質量が変わる
と...
•計算にない横風が吹いて車の向きが
変わると.
制御対象
 
制御量
フィードバック制御
ハンドルを曲がる方向へ切ってみて,車
の運動を見ながら,曲がり方が足りなけ
ればハンドルを切ります,曲がりすぎる
ようならきり戻す.
たいていの場合は対処可能
(ロバスト性があるという).
*フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせる場合もある.
7
フィードバック制御系の実際
(温度制御系)
外乱
目標値
(設定温度)
コントローラ
(デジタル計算機)
アクチュエータ
(ヒータ,クーラー)
制御対象
センサ
(温度計)
•基本的な構成は:制御対象,コントローラ,センサ,アクチュエータ.
8
センサ
“トランスジューサ(変換器)”をセンサとして用いる.
•熱電対:温度を電圧に変換
•ポテンショメータ:変位を電圧に変換
電圧計
•(ロータリーエンコーダ:回転角をパルスに変換)
9
制御工学の構成
p7
•制御対象(あるシステム)の動特性(性質)を調べる
•システムの特性を表現する
微分方程式で表す
ブロック図で表す
伝達関数で表す(線形時不変システム)
ラプラス変換
•システムの特性を知る
インパルス応答を知る
ステップ応答を知る
周波数特性で表す
...
時間領域
本講義の範囲は
この基礎的な部分
•コントローラ(制御装置)を設計する
フィードバックループの性質を知る
•コントローラを実装する
計算機に載せる制御ソフトウェアを作る
10
 

 

システム
11
ここでのシステムの定義
p8
定義:入力(信号)を加えると,出力(信号)が現れるもの
例:
・風が吹くと(入力),桶屋が儲かる(出力). システム:社会・市場.
・ハンドルを切る(入力),自動車が旋回(出力)する. システム:自動車.
・質点に力(入力)を加えると,質点に加速度が発生する.システム:質点(系).
Mx  f
注意:
制御工学では,入力と出力とは信号とみなす.
入力の結果として,システムに出力が現れることを,
システムが応答するという.あるいはその出力を応答と呼ぶ.
・入力:風速/風力,出力:桶やのもうけ,システム:社会・市場
・入力:ハンドルの角度,出力:旋回速度(角度),システム:自動車
12
ブロック図によるシステムの表現(1)
物理現象の数式表現: Mx  f
システムを四角形(ブロック)で表す.
一般に(伝達)要素と呼ぶ.
ブロック図による表現:
f
1
M
x
出力(信号)
要素を基点とする矢印で表す.
入力(信号)
要素を終点とする矢印で表す.
ブロック図は,数式表現(方程式)と等価である.
*習慣的に,入力に u (小文字),出力に y (小文字), 要素に G (大文字)
を使うことが多い.
y
u
G
13
ブロック図によるシステムの表現(2)
•要素の結合
r
y1
u1
G1
y2
G2
R
d2
 u 
P


Q
システム G2 の入力がシステム G1 の出力となる.
 
d1

y

L
例:モデルマッチング制御系
•信号の加え合せ
u3 (t )  u1 (t )  u2 (t )
u1

 u2
z (t )  u (t )  v(t )  w(t )
u3
u1

v 
白丸:加算器
信号矢印の近くに符号を明示する

w
z
ブロック図については,ラプラス
変換の後にもう一度.
14
いろいろなシステム(1)
p9
システムの入力と出力とは,特殊な例外を除き,もともとは時間関数であると考える.
(ラプラス変換で,時間関数を複素関数に変換する.)
•因果律を満たすシステム
u (t )  0, t  0
ならば y (t )  0, t  0
ここで,t は時刻.
Mx(t )  f (t ) は因果律を満たしている.(力が加わらなければ加速度は発生しない)
u (t )
0
t
y (t )
実在するシステムは因果律を満たす.
0
t
15
いろいろなシステム(2)
2012/04/20
•時変システムと時不変システム.
時変システム:時刻によって特性が変化するシステム.
時不変システム:時刻によって特性が変化しないシステム.
任意の時間関数 u (t ) に対するシステムの応答が y (t ) であるとすると,
任意の  に対して
u (t   ) に対するシステムの応答は y (t   ) となる.
u (t )
0

t
一般に,実在するシステムは時変システ
ムであるが(例:経時劣化が起こる),十
分短い期間では時不変システムと近似す
ることができる.
y (t )
時変システムの例:
0
t
この講義では時不変システムを取り扱う.16
いろいろなシステム(3)
•線形システム/非線形システム
線形な関数:
f
p119
X
Y
y  f ( x)
0
x
線形なシステム:
x1 , x2  X , y1  f ( x1 ), y2  f ( x2 ) が成り立つなら
a1 , a2  C, a1 y1  a2 y2  f (a1 x1  a2 x2 ) が成り立つ.
ここで,C は複素数の集合.
(重ね合わせの原理が成り立つ)
p10
任意の信号 u1 (t ), u2 (t ) に対する応答がそれぞれ y1 (t ), y2 (t ) であれば,
信号 a1 , a2  C ,
a1u1 (t )  a2u2 (t ) に対するシステムの応答は,
a1 y1 (t )  a2 y2 (t ) となる.(重ね合わせの原理が成り立つ)
線形でないシステムを非線形システムと呼ぶ.
17
いろいろなシステム(4)
システムの線形性に関する考察:
実在する全てのシステムは非線形である.
例:フックの法則
f  kx
弾性限界を越えると成り立たない(ばねが伸びたまま戻らない).
例:オームの法則
E  RI
電流値が限度を越えると,抵抗が破壊し,電流が流れなくなる.
多くの実在するシステムは,動作領域を限定すれば,線形システムで近似できる.
f ( x)
0
x
本講義では,制御対象として
(集中定数)線形時不変システム
(Linear Time-Invariant system: LTI system)
を取り扱う.
18
いろいろなシステム(5)
動的システム
例1 質点
f  mx
例2 キャパシタ
E
1
idt

C
以後,動的な線形時不変システムを扱う.
19
 

 

基礎的数学(複素数その他)
後ほどシステムの性質や信号を後に複素関数として表現する
20
a  a*a  aR2  aI2
複素数
a*  aR  jaI :aの共役複素数
a  C, a  aR  jaI
aR , a I  R
j,
:実数
j  1,
j 2  1 :虚数単位
複素平面
複素数の極座標表示
a  a  cos   j sin  
a
  tan 1 I :偏角,(位相)
aR
Euler (オイラー)の公式
Im (虚軸)
a
aI
a
0

e j  cos  j sin 
Eulerの公式より
aR Re
a  a e j
(実軸)
(複素左半平面)
(複素右半平面)
21
三角不等式
a b  a  b
a
b
a b
1  (1)  1  1
a  a*  2 Re(a)  a  a*  2 Re(a)2  Im(a)2
f (t )  f (t )  f (t )  f (t )
信号に対しても成立する
22
複素数の四則演算
a  aR  jaI , b  bR  jbI
a*  aR  jaI
:aの共役複素数
j
とすると
a  b   aR  bR   j  aI  bI 
ab   aR bR  aI bI   j  aR bI  aI bR 
a  a e ja , b  b e jb
より a  a e とすると
a*  a e j
a*a  a e j  a e j   a
a
a
j  a b 
a a ja b 
 e
b b
2
Im
aI
とすると
ab  a b e
Eulerの公式と共役複素数
0

aR
Re

a*
23
 

 

システムの線形常微分方程式による表現
これから扱うシステムは:
•集中定数系で
•線形時不変な
•1入力1出力(入力が一つ,出力が一つ)
のシステム.
24
動的システムの例1:電気回路(RLC回路)
L
R
ei (t )
C eC (t )
i (t )
ei (t ) :電源電圧, i (t ) :電流, t :時刻.
抵抗,コイル,キャパシタの電圧降下はそ
れぞれ
eR (t )  Ri (t )
eL (t )  L
eC (t ) 
d
i (t )
dt
1
i (t )dt

C
ei (t )  eR (t )  eL (t )  eC (t )  0 であるから
p14
d
1
ei (t )  Ri (t )  L i (t )   i (t )dt  0
dt
C
d
1
L i (t )  Ri (t )   i (t )dt  ei (t )
dt
C
q(t )   i (t )dt :電荷とおくと
RLC回路の特性を現す微分方程式
d2
d
1
L 2 q(t )  R q(t )  q(t )  ei (t )
dt
dt
C
を得る.両辺をLで割ると
d2
Rd
1
1
q
(
t
)

q
(
t
)

q
(
t
)

ei (t )
2
dt
L dt
LC
L
25
動的システムの例2:力学系(ばね・マ
ス・ダンパ系)
d2
d
m 2 x(t )  c x(t )  kx(t )  f (t )
dt
dt
平衡位置
x(t )
k
c
ばね・マス・ダンパ系の運動方程式は
両辺をm で割ると
m
f (t )
d2
c d
k
1
x
(
t
)

x
(
t
)

x
(
t
)

f (t )
2
dt
m dt
m
m
ばね,ダンパが発生する力はそれぞれ
f k (t )  kx(t )
f c (t )  c
d
x(t )
dt
ニュートンの運動方程式より
d2
f (t )  f c (t )  f k (t )  m 2 x(t )
dt
26
電気回路と力学系のアナロジー
次の微分方程式(左辺にyの2次までの微分項があり,uの微分項はない)を考える.
d2
d
y
(
t
)

a
y (t )  a2 y (t )  bu (t )
1
2
dt
dt
パラメータ・信号の対応表
電気回路
力学系
a1
a2
R
L
c
m
1
LC
k
m
b
1
L
1
m
y (t )
u (t )
q (t )
ei (t )
x(t )
f (t )
•異なる物理現象でも,数学的には同じ性質を持つ(同じ微分方程式で書き表さ
れる)現象がある.
•この形式の微分方程式で表されるシステムを2次振動系と総称する.
•力学系の運動を電気回路でシミュレートできる(電気回路は力学系のアナログコ
ンピュータ).
27
むだ時間要素
p17
y (t )  u (t   )
:
むだ時間
28
n次の(集中定数系)線形常微分方程式の一般形
y ( n ) (t )  an1 y ( n1) (t ) 
p18
 a1 y (1) (t )  a0 y (t )
 bmu ( m) (t )  bm1u ( m1) (t ) 
 b1u (1) (t )  b0u (t )
ただし
dk
y (t )  k y (t ), k  1, 2,
dt
ai  R, i  0,1, , n  1
(k )
bl  R, l  0,1,
,n
,m
注:自然界にあるシステムであれば m  n となる(後ほど考察する).
29
n次の(集中定数系)線形常微分方程式で表されるシステムの線形性
u (t )
y (t )
G
システムGが次の微分方程式で表現されたとする.
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t ) 
 a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y(t )  bm x( m) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
b0 x(t )
注:自然界にあるシステムであれば m  n となる(後ほど考察する).
の u1 (t ) に対する解が y1 (t ) であり, u2 (t )  u1 (t ) に対する解が y2 (t ) とする.
u(t )  k1u1 (t )  k2u2 (t ), k1 , k2  R
とすると
y(t )  k1 y1 (t )  k2 y2 (t )
となる.(証明は簡単なので省略)
30
n階の(集中定数系)線形常微分方程式の解き方(解析解)
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
p120
 a1 y(1) (t )  a0 y(t )  b0u(t )
ステップ1
y( n) (t )  an1 y ( n1) (t ) 
 a1 y (1) (t )  a0 y(t )  0
を満たすn個の独立な解(斉次解)を求める.
p119
ステップ2
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
 a1 y(1) (t )  a0 y(t )  b0u(t )
を満たす特殊解を1つ求める.
ステップ3
初期値をみたすように斉次解と特殊解とを線形結合する.
31
線形常微分方程式の解き方(解析解)の例1
(1次系(1次遅れ要素)の場合)
y (t )  a0 y (t )  b0u (t ),
(1)
C
y (0)  y0
0, t  0
u (t )  
1, t  0
p123
ステップ1
y (1) (t )  a0 y(t )  0 の解を求める
y(t )  et
とおくと(  は未知の定数)
et  a0et  0
et  0
なので
   a0  et  0
  a0
ステップ2
y(1) (t )  a0 y(t )  b0u(t ) の特殊解の一つは定数
y (t )  C とおくと
y (1) (t )  0,
a0C  b0 , t  0
b0
a0
ステップ3
k を未知の定数とおき
b0
 a0t
y (t )  ke 
a0
y(0)  y0 より
b
y (0)  k  0  y0
a0
k  y0 
解は
b0
a0
0, t  0


y (t )  
b0   a0t b0
y

 0 a  e  a , t  0
0 
0

32
線形常微分方程式の解き方(解析解)の例2
(2次振動系(2次遅れ要素)の場合)
y (2) (t )  2 y (1) (t )  5 y (t )  5u (t ),
p125
解は未知の定数 k1 , k2 を用いて
0,
t0

y (t )   t
j 2t
 j 2t
e
k
e

k
e

  1, t  0
1
2

とかける.Eulerの公式を用いて
y (0)  0, y (1) (0)  0
e  t  k1e j 2t  k2e  j 2t   1
0, t  0
u (t )  
1, t  0
ステップ1
 e  t  c1 cos 2t  c2 sin 2t   1
初期値より
y (0)  c1  1  0
y  et とおくと
y (2) (t )  2 y (1) (t )  5 y(t )  0 より
 2  2  5  0
  1  2 j
ステップ2
特殊解は
0, t  0
y (t )  
1, t  0
y (1) (0)  c1  2c2  0
c1  1, c2  
1
2
解は
0,
t0


y (t )    t 
1


e
cos
2
t

sin
2
t

  1, t  0

2



33
補足
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
 a1 y (1) (t )  a0 y(t )  0 (1)
に y(t )  et を代入して得られる方程式
 n  an1 n1 
 a1  a0  0
を斉次方程式(あるいは特性方程式)と呼ぶ.
   p k M ( )  0, k  2,3,
のように斉次方程式の根にk重根が含まれるとき
e pt , te pt ,
, t m1e pt , m  0,1,2 , k
は,互いに独立で,(1)式を満たす.
例題(演習)
y (2) (t )  2 y (1) (t )  y (t )  u (t ),
y (0)  0, y (1) (0)  0
0, t  0
u (t )  
1, t  0
34
補足2:線形常微分方程式の解き方(数値解)
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
 a1 y(1) (t )  a0 y(t )  b0u(t ) の場合
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
 a1 y (1) (t )  a0 y(t )  b0u(t )
と変形し,初期条件より
y( n) (0)  an1 y( n1) (0) 
 a1 y(1) (0)  a0 y(0)  b0u(0)
逐次積分を繰り返し
y ( n ) (t )   an1 y ( n1) (t ) 
 a1 y (1) (t )  a0 y (t )  b0u (t )
t
y ( n1) (t )   y ( n ) ( )d
0
t
y (t )   y (2) ( )d
(1)
0
t
y (t )   y ( )d
0
(1)
実際には微分方程式を離散時間化し,デジタル
計算機で計算する.
35
動的システム(ダイナミクスを持つシステム)
p11
出力が現在の入力ばかりでなく,過去の履歴に依存するシステム.
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
u (t )
t
は動的システムである(ダイナミクスを持つ).
ブロック図で表現すると出力は積分器(過去の履歴を
ためている)の出力を成分として含む.
u (t )
0
y (t )
b0
t
 a1 y (1) (t )  a0 y(t )  b0u(t )


y ( n ) (t )


t
t


0
an1
t

0
y ( n1) (t )
0
y ( n2) (t )
an2
(途中省略)
遅れ系:入力は何回か積分されて出力になる.
つまり,初期値が 0 なら u(t)が0から立ち上がった
瞬間にはy(t)=0
y (t )
a0
36
0
 

 

ラプラス変換
•フーリエ級数展開からフーリエ変換へ
•フーリエ変換からラプラス変換へ-
畳込み積分を掛算で表す便利な方法.
ブロック線図が生きる
37
フーリエ級数展開
f (t )
T

2
0
T t
2
f(t) は区間 T / 2  t  T / 2 で定
義された連続な関数とすると,次
のようにフーリエ級数展開できる.
a0 
2
:基本周波数
f (t )     an cos n0t  bn sin n0t , 0 
2 n1
T
:f(t) が含む直流成分
:f(t) が含む成分 cos n0t , n  1,2,
の振幅
bn :f(t) が含む成分 sin n0t , n  1,2,
と考えることができる.
の振幅
フーリエの発見
38
直行基底
 / 0
0
cos n0t cos k0tdt   nk

  / 
0
 / 0
0
sin n0t sin k0tdt   nk

  / 
0
 / 0
0
sin n0t cos k0tdt  0

  / 
0
の性質があるので,
sin 0t , sin 20t , ,cos 0t , cos 20t,
は内積を
0 
f (t ), g (t )   f (t ) g (t ) dt
 
と定義すると,直行基底.要するにf(t)を互い
に独立した成分,
sin 0t , sin 20t , ,cos 0t , cos 20t,
と直流に分解できる.
0  / 
ak  
f (t )cos k0tdt , k  1, 2,


/


0  / 
bk  
f (t )sin k0tdt , k  1, 2,


/


0  / 
a0  
f (t )dt
  / 
0
0
0
0
0
直行基底なので,このように
a0 , ak , bk , k  1, 2, ,
を計算できる.
0
ただし  nk
1, n  k

0, n  k
はクロネッカのデルタ
39
複素数による表示
Eulerの公式 e j  cos  j sin  を使って
f (t ) 

jn t

e
 n
0
n 


   cos n t  j sin n t ,
n 
n
0
0
 an
 2    n   n
, n  0,1, 2,

 bn  j  j
n
n
 2
0  / 
 jn t
f
(
t
)
e
dt
あるいは,  e e dt 2 nk より  n 
2  / 
(周波数 n0 の成分の振
幅)
*基底関数が分かっているので,f(t) は  n , n  0, 1, 2, で表してもよい.

jnt  jkt
0
0
0
40
区間 T / 2  t  T / 2 の関数は以下のように表せた.


 / 0
1 
 jn0
jn0t
f (t ) 

f
(

)
e
d

e
 0  / 0
2 n
フーリエ変換
区間 T / 2  t  T / 2 を   t   へ拡張する.
T   とすると 0  2 /T より
0  d

(微少量)
n0
  , n0   (連続した積分変数)
1
f (t ) 
2
 




f ( )e
 j

jt
d e d 
n

F ( j )   f (t )e  jt dt
: f (t) のフーリエ変換の定義

1 
jt
f (t ) 
F
(
j

)
e
d  : F ( j ) のフーリエ逆変換


2
41
F ( j )  


f (t )e
 jt
dt

*ただし  f (t ) dt  
f(t)は絶対可積分とする.
 :角周波数
F(j)は周波数  の成分の振幅.  の関数.
jt
F ( j)  F  f (t ) と書く. F ( j ) は e
に対応する複素振幅である.
f (t )  F 1  F ( j) と書く.
42
時間領域と周波数領域
f (t ) は時刻 t の関数なので,時間領域の信号(関数)という.
F ( j ) は,周波数  の関数なので,周波数領域の信号(関数)という.
逆変換が存在するので,f(t) と F(j) とは1対1に対応する.
⇒信号を時間領域,周波数領域のどちらで解析してもよい.
(便利な方で解析すればよい)
f (t )
f (t )
F ( j )
(複素数)
F ( j )
t
イメージ図

43
畳込み積分とフーリエ変換


F  g (t )  u(t )  G( j)U ( j)


0
0
g (t )  0 t  0, u (t )  0 t  0




0
0
u ( ) g (t   ) e jt d dt
u ( ) g (t   ) e  j (t  ) e  j d dt
t     とおくと
t 0
, dt  d
   
と書ける.




g (t ) dt  ,  u (t ) dt   とする.






0
g ( )u ( ) e  j e  j d d

  u ( ) e
両者の畳込み積分は
 j

t

0
0



g ( )e  j d d

y (t )   g ( )u (t   )d   g ( )u (t   )d
  u ( ) e  j G ( j )d
上式のフーリエ変換は
 G ( j )  u ( ) e  j d  G ( j )U ( j )


Y ( j )  





 0


0
0

g ( )u (t   )d e jt dt
g ( )u (t   )d e
( y (t )  0 t  0 を使った.)
 jt
dt
Y ( j )  G ( j )U ( j )
フーリエ変換すると,畳込み積分は
掛算になる!
44
フーリエ変換からラプラス変換
p132
指数的に発散する関数はフーリエ変換できない.
例: f (t )  eat sin t , a  0
(絶対可積分でない)
そこで f ( t ) に収束子
Im
0
 ct
e , ca
a
Re
(c は定数)
 ct
をかけてフーリエ変換する( f (t )e は絶対可積分とする).
F  f (t )e
 ct

   f (t )e  ct e  jt dt
0
c  j を積分変数 s とみなしラプラス変換を定義する

L  f (t )   f (t )e ct e  jt dt
0

  f (t )e
0
 ( c  j ) t

dt   f (t )e st dt
0
f (t )  0, t  0を仮定し,積分区間は 0  t   とする.
45
ラプラス逆変換
p133
L  f (t ) は f (t )ect のフーリエ変換であり,L  f (t ) のフーリエ逆変換は f (t )ect
フーリエ逆変換の定義から
1
f (t )e  ct 
2



L  f (t )  e jt d 
両辺に ect をかけて
1
f (t ) 
2



L  f (t )  e( c  j )t d 
積分変数を s  c  j に変更すると d  (1/ j )ds
f (t ) 
1
2 j 
c  j
c  j
L  f (t ) e st ds
より
(ラプラス逆変換)
46
2)ラプラス変換は線形変換である.
ラプラス変換の諸性質
x(s)  L x(t ), w(s)  L  w(t )
とすると
1)定義
k1 x(s)  k2 w(s)  L k1x(t )  k2 w(t )
ラプラス変換

f ( s )  L  f (t )    f (t )e  st dt
3)時間関数の畳込み積分は掛算に
なる.(証明はフーリエ変換と同様:
演習)
0
ラプラス逆変換
1 c  j
st
f (t ) 
L
f
(
t
)
e
ds



c

j

2 j
ただし,
f (t )  0; t  0,
g (s)u(s)  L  g (t )  u(t )
4)時間領域でのシフトとラプラス変換
L f (t  )  f (s)e s

説明:
c  0;  e ct f (t ) dt  ,

0
s : 複素数.( f(s) は複素関数である.)

f (t   )e  st dt 


p137
f ( )e  s (  ) d

0

p133
 e s  f ( )e s d  f ( s )e  s
0
(
ただし  t   )
47
5)推移定理
L e
 t
よって
f (t )   f ( s   )
 df (t ) 
L
 sf ( s )  f (0)

 dt 
説明:


0
e
 t

f (t )e dt   f (t )e  ( s  )t dt  f ( s   )
 st
0
6)時間領域での微分
d

L  f (t )   sf ( s)  f (0)
 dt

説明:部分積分より
p135
f (t ) t 0

f ( s )   f (t )e  st dt
一般化すると
 dn

L  n f (t )  
 dt

s n f ( s )  s n 1 f (0)  s n 2 f (1) (0)

 s 0 f ( n 1) (0)
0

 st
 df (t ) e

e  st 
   f (t )

dt

0
s 0
dt s



e  st 
1  df (t ) 
   f (t )

L

s  0 s  dt 

f (0) 1  df (t ) 

 L
s
s  dt 
部分積分の公式
(uv) '  u ' v  uv '
uv   u ' v   uv '
 u ' v  uv   uv '
48
7)時間領域での積分
t
f ( s)
L   f ( )d  
 0

s
d

L  f (t )   sf ( s)  f (0)
 dt

u'
v
説明:

f ( s )   f (t )e  st dt
0
 e

 s
 st

t
0

0
説明:
p136



f ( )d  s 
 0
0
 f ( )d  e
t
0
 st
dt
より

t
0
d
 st
f
(
t
)
e
dt  sf ( s )  f (0)

0
dt
f ( )d e  st dt
 d
lim 
f (t )e  st dt  lim sf ( s )  f (0)
s  0 dt
s 
よって

よって
L 
 0
t
1
f ( )d   f ( s )
 s
8)初期値の定理
lim f (t )  lim sf ( s)
t 0
s 

0  lim sf ( s)  f (0)
s 
f (0)  lim sf ( s)
注)ラプラス変換可
能であることを仮
定している.
s 
(uv) '  u ' v  uv '
uv   u ' v   uv '
 u ' v  uv   uv '
49
9)最終値の定理
p137
また
lim sf ( s)  lim f (t )
s 0
1
t 
(sf (s)の 極は複素右半平面にない場合)
lim 
s 0

0
d
f (t )e  st dt
dt

d

f (t )dt   f (t ) 0
0 dt
 lim f (t )  f (0)

説明:時間領域での微分の関係
d

L  f (t )   sf ( s)  f (0)
 dt

t 
よって
lim sf ( s )  lim f (t )
より
s 0
t 

d
 st
f
(
t
)
e
dt  sf ( s )  f (0)
0 dt
両辺の極限をとると
 d
lim 
f (t )e  st dt
s  0 0 dt


 lim sf ( s )  f (0)  lim sf ( s)  f (0)
s 0
s 0
50
関数のラプラス変換
p134
3)単位ランプ関数
0, t  0
uramp (t )  
 t, t  0
1)単位インパルス関数

 ( s)    (t )e  st dt  1
0
s0
(
e

uramp ( s )   te  st dt
 1 より)
0
 st
e
1  st 
  te  0  
dt
0
s
s
2)単位ステップ関数
 st
0, t  0
ustep (t )  
1, t  0
ustep ( s )  

0
 e 
1
  2   2
 s 0 s
1  st  1
e dt   e  0 
s
s
 st
1
0

4)正弦波
t0
 0,
usin (t )  
sin t , t  0
t
51
Eulerの公式 e j  cos  j sin  より
e  j  cos  j sin 
よって
e jt  e  jt
sin t 
2j

usin ( s )   sin te  st dt
0


0
e jt  e  jt  st
e dt
2j
1  ( j  s ) t
  e
 e  ( j  s ) t  dt
2j 0
( j  s ) t

( j  s ) t




1 e
1 e

2 j  j  s  0 2 j  j  s  0

1  1
1 

2 j  j  s j  s 


s2   2
ラプラス変換表
f (t )
f ( s)
 (t )
1
0, t  0
ustep (t )  
1, t  0
1
s
0, t  0
uramp (t )  
 t, t  0
1
s2
t0
 0,

usin (t )  
2
2
sin t , t  0 s  
t0
s
 0,
ucos (t )  
2
2
cos t , t  0 s  
 0, t  0
uexp (t )   at
e , t  0
1
sa
52
ラプラス変換表(続き) f (t )  0, t  0
f (t ), t  0
t n 1
; n  1, 2,
(n  1)!
f ( s)
,
1
sn
t n 1  at
e ; n  1, 2,
(n  1)!
1
e
e
 at
 at
,
sin t
cos t
これ以外はここから出てくる
s  a
n
f(s) の分母多項式=0
の根が実数の場合

 s  a 2   2
sa
2
s  a  2
f(s) の分母多項式=0
の根が共役複素数の
場合
53
演習
L tet  
1
( s  1)2
を導け.
注意:約束事
L[ f (t )]  f ( s)
例えば f (t )  te
と表記する.
t
ならば f ( s) 
1
( s  1) 2
f (s)  se s ではない.
補足
L
f (t )
f ( s)
L1
54
1対1の写像になっている.
 

 

ラプラス変換を用いた線形時不変システムの応答の表現と
伝達関数
55
伝達関数と定係数線形常微分
p21
あるシステムの入出力関係が次の定係数線形常微分方程式で表されたとする
y( n) (t )  an1 y( n1) (t ) 
(i )
初期値 y (0), i  0,1,
 a1 y(1) (t )  a0 y(t )  b0u(t )
n  1 を 0 とおき,ラプラス変換すると
s n y ( s)  an1s n1 y ( s ) 
s
n
 an1s n1 
 a1sy ( s )  a0 y ( s )  b0u ( s )
 a1s  a0  y (s )  b0u (s )
*ラプラス演算子sは微分演算子と置き換えられる
このシステムの伝達関数 G(s) は
b0
y( s)
 G( s)  n
u ( s)
s  an1s n1 
a1s  a0
56
一般的な線形時不変システム
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t ) 
 a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y (t )  bm x ( m ) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
 b1 x (1) (t )  b0 x(t )
の伝達関数は
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
y(s)
 G(s) 
u ( s)
s n  an 1 s n 1  a1 s  a0
(i )
初期値: x (0), i  0,1,
n 1
<演習>
このブロック線図を描け
57
ラプラス変換による応答の計算手順
p138
ステップ1
入出力関係の方程式をラプラス変換する
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t )   a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y (t )  bm x ( m ) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
 b1 x (1) (t )  b0 x(t )
から次の伝達関数ができる
bm s m  bm 1 s m 1   bs1  b0
y(s) 
u (s)
s n  an 1 s n 1  a1 s  a0
ステップ2
伝達関数の分母多項式を因数分解し,部分分数(分子は定数)に展開する
y(s) 
bm s m  bm 1 s m 1 
 sb1  b0
(s   1 ) (s   2 )
(s   p )
l1
p
l2
 ih
u (s)
h
h 1 ( s   i )
li
lp
p
u ( s ),
l
i 1
i
n
後で補足説明する
 
i 1
ステップ3
入力 u(s) に1 (インパルス応答),1/s (ステップ応答)を代入しラプラス逆
変換する(ラプラス変換表を利用する).
58
ラプラス変換による応答の計算例
例:RL回路のステップ応答
微分方程式は
d
L i (t )  Ri (t )  ustep
dt
i (t )  0, t  0
微分方程式の両辺をラプ
ラス変換する.
1
Lsi ( s )  Ri ( s ) 
s
電流 i について解くと
1
( Ls  R )i ( s ) 
s
1
i(s) 
s ( Ls  R )

1 1
1 

R  s s  RL 
p141
ラプラス逆変換より
(ラプラス変換表より)
1
 L ustep (t )  ,
s
R
1
e  L t 

L


s  RL

1 1  RL t 1
 RL t
i (t )   e  1  e
R R
R

*最終値の定理を適用すると
1


i ()  lim s 

s 0
 s ( Ls  R) 
1
1
 lim

s 0 Ls  R
R
(微分方程式の解に一致)
59
補足1
p139
一般に F ( s) 
n( s )
, d (  )  0 は次のように部分分数に展開できる.
n
d ( s)( s   )
bi
n1 ( s) n
F ( s) 

, n  1, 2,
d ( s) i 1 ( s   )i
このような展開が可能であるとすると
F ( s) 
n1 ( s)
b
b2
 1 

2
d ( s) s   ( s   )
G(s)  (s   )n F (s) とおくと

bn 1
bn

( s   )n 1 ( s   )n
sでn-1回微分しても(s+b)を括りだせる.
n1 ( s)
 b1 ( s   )n 1  b2 ( s   ) n  2 
d ( s)
bi は次のように決めることができる
G( s)  ( s   )n
1 d n i
bi  lim
G( s) , i  1,2,
s   ( n  i )! ds n i
n
 ( s   )bn 1  bn
60
補足2
b( s )
u ( s)
a( s)
b( s)  bm s m  bm 1s m 1 
 sb1  b0
a( s)  ( s   1 ) ( s   2 )
(s   p ) ,
y( s) 
l1
l2
lp
p
l
i 1
i
n
補足1の方法を繰り返し用いると,次の部分分数展開(モード展開)が可
能である.
y(s) 
bm s m  bm 1 s m 1 
 sb1  b0
(s   1 ) (s   2 )
(s   p )
l1
p
l2
lp
p
u ( s ),
l
i 1
i
n
 ih
u (s)
h
h 1 ( s   i )
li
 
i 1
例
2s 2  4s  1
s ( s  1) 2
解:
を部分分数に展開せよ.
2s 2  4s  1 1
1
1



s s  1 ( s  1) 2
s( s  1) 2
61
伝達関数(続き)
p22
•ラプラス逆変換が存在するので,定係数線形常微分方程式と伝達
関数は等価(同じ現象の違う表し方)である.
•定係数(実係数)線形常微分方程式を伝達関数に変換すると,実係
数の分母多項式,分子多項式を持つ分数(有理関数)になる
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
y(s)
 G(s) 
u ( s)
s n  an 1 s n 1  a1 s  a0
とすると伝達関数 G(s) を次のように書くこともできる
b( s )
G( s) 
,
a( s)
b( s )  bm s m  bm 1 s m 1 
a( s )  s n  an 1 s n 1 
 b1 s  b0
a1 s  a0
s の多項式.
•s を特にラプラス演算子と呼ぶ.(微分演算子d/dt に対応するので)
62
伝達関数の極と零点
伝達関数: G( s) 
p24
n( s )
, n( s), d ( s) : sの多項式
d ( s)
n( s)  bm s m  bm 1s m 1 
d ( s)  s n  an 1s n 1 
とおく.
b1s  b0
a1s  a0
伝達関数の極(ポール)
d (s p )  0 の根 sp を伝達関数の極と呼ぶ.(特性方程式の解)
伝達関数の零点(ゼロ点,ゼロ)
G( sz )  0 の根 sz を伝達関数の零点と呼ぶ. p25
例: G( s) 
s2
( s  1)( s  3)
極: s  1, s  3
零点:s  2, s  
最小位相系:
複素右半平面に零点がないシステム
非最少位相系
複素右半平面に零点があるシステム
63
伝達関数の極と零点(つづき)
n( s)  bm s m  bm 1s m 1 
d ( s)  s n  an 1s n 1 
b1s  b0
a1s  a0
の係数は実数であるから,n(s),d(s)は次の形の因子に因数分解できる
( s   )m
m  0,1, 2,
; ( s 2   s   )l
l  0,1, 2,
, ,  は実数
よって,極,零点は,共役複素数(ペア)か,実数である.
Im
0
Re
:極
:零点
複素平面
64
零点:
ある信号を遮断する
G (s) 
s 1
1
, u ( s) 
( s  2)( s  3)
s 1
65
極零相殺
p26
伝達関数の分子多項式と分母多項式が共通因子を持ち,約分されること.
例:
G( s) 
s 1
1

( s  1)( s  2) s  2
微分方程式
x (2) (t )  x (1) (t )  2 x(t )  ustep (t )
y (t )  x (1) (t )  x(t )
1
1
x (1) (t )  et  e 2t
3
3
1
1
1
 1 1

y (t )  et  e 2t     et  e 2t 
3
3
6
 2 3

1 1
  e 2t
2 3
x (1) (0)  x(0)  0
発散項 et が消える
解くと
1 1 1
1 1


2s 3 s  1 6 s  2
1 1
1
x(t )   et  e 2t
2 3
6
x( s )  
発散項
1
s 1
66
プロパー(適切)な伝達関数
p27
伝達関数
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
G (s)  n
s  an 1 s n 1   a1 s  a0
において
•n≧m ならばG(s)はプロパー(適切)な伝達関数と呼ぶ.
•n>m ならばG(s)は強プロパーな伝達関数と呼ぶ.
•n=m ならばG(s)はバイプロパーな伝達関数と呼ぶ.
•m >n ならばG(s)は非プロパーな伝達関数と呼ぶ.
n-m を相対次数と呼ぶ.
67
プロパー(適切)の由来
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
y ( s )  G ( s )u ( s ), G ( s )  n
s  an 1 s n 1   a1 s  a0
において,m = n (バイプロパ)とすると
y ( s )   定数  u ( s )   強プロパな伝達関数  u ( s )
において,m > n (非プロパ)とすると
y ( s )   s の多項式  u ( s )   強プロパな伝達関数  u ( s )
となる.時間領域に戻って考えると
バイプロパ:
y (t )   定数  u (t )  u (t )に対して遅れた応答
非プロパ:
このような応答をする
システムは自然界に
見られない.
y(t )  u(t )の微分項  u(t )に対して遅れた応答
68
強プロパーなシステムのブロック図
u (t )

bn 1
0
t
0
u (t ) 

x( n ) (t )
bn  2

(途中省略)
t
t


an1
t

0

b0

0
x ( n1) (t )


y (t )
t
y (t )
0
x( n2) (t )
an2
(途中省略)
x(t )
a0
入力は必ず積分器を通過して(積分されて)出力が現れる.
(遅れ系になっている)
69
演習
バイプロパなシステムのブロック図を描け.
演習
てこの右端の変位を入力,左端の変位を出力とすると,こ
のシステムは強プロパか?
u (t )
y (t )
演習
質点系 mx  f
はプロパか?
f
1
m
x
70
ヒント
•てこが剛体でなければどうなるか?
•質点は実際に存在するか?
71
伝達関数の例
1)質点系
mx(t )  f (t )
ただし,x(t) は質点の変位とする.ラプラス変換すると
ms 2 x( s)  f ( s)
x( s)  G( s) f ( s),
G(s) 
1
ms 2
2)RLC共振回路
d2
Rd
1
1
q
(
t
)

q
(
t
)

q
(
t
)

ei (t )
2
dt
L dt
LC
L
ラプラス変換すると
R
1
1
s 2 q ( s )  sq ( s ) 
q ( s )  ei ( s )
L
LC
L
1/ L
q ( s )  G ( s )ei ( s ), G ( s )  2
s  ( R / L) s  (1/ LC )
72
3)むだ時間要素 p27
u (t )
G
パデ近似
y (t )
e  s  1   s 
u (t )

1
 s 2 
2
を有限次元の有利関数で近似する.
y(t )  u (t   )
0
p28
y (t )
e
 s
1  2 s
 
1 2 s
 s   6 s  12

2
 s   6 s  12
2
e  s
t
L f (t  )  f (s)e s より
L  y(t )  L u(t  )  e u(s)
 s
G(s) 
詳細は後述(p63)
y(s)
 e  s
u ( s)
73
伝達関数と定係数線形常微分(まとめ)
ラプラス変換
線形時不変常微分
方程式
ラプラス逆変換
s を変数とする代数方程式
(伝達関数)
代数方程式の解
ラプラス逆変換
線形時不変常微分方程式の解
74
 

 

ディラックのデルタ関数(単位インパルス関数)とインパルス応
答,ステップ応答
線形システムのインパルス応答が分かれば,任意の入力に
対するそのシステムの応答を計算できる.
75
ディラックのデルタ関数(別名:単位インパルス関数)
p127
•ディラックのデルタ関数  (t ) は超関数(あると便利な数学的発明)である.
0, t  0, t  

  (t )   1
  , 0  t  
イメージ:
1


t
 (t )  lim   (t )
 0
定義:

1)
  ( )d  1
0
2)


0
0
 f ( ) (  t )d  f (t ),  f ( ) ( )d  f (0)
イメージ:インパルス,有限な時間積分値をもつ衝撃.
76
単位インパルス関数の説明

  (t )dt  1
1)
0


1
  (t )dt   lim   (t )dt lim   1
 0 
0
0  0
 f (t ) (t )dt  f (0)
0
1

 を小さくすれ
ば f(t) は一定
値とみなせると
する.
f (0)



0

2)
f (t ) が t =0 の近傍で次のように
Taylor展開できるとする
1
f (t )  f (0)  f ' (0)t  f '' (0)t 2 
2

1
f (t )  (t ) dt   f (t ) dt

0

1 
1
   f (0)  f ' (0)t  f '' (0)t 2 
 0
2

 dt

2 
3 

t  1
t 
1

  f (0) t 0  f ' (0)    f '' (0)   
 
 2 0 2
 3 0

2
 f (0)  f (0)  f (0) 
2
6
'
''
よって

lim  f (t )  (t )dt  f (0)
 0
0
77




デルタ関数のラプラス変換

L  (t )    (t )e  st dt  e0  1
0
ステップ関数とデルタ関数

 1
1
L    (t )d   1 
s
0
 s
78
伝達関数とインパルス応答
•インパルス応答 g(t) と入力 u(t) の畳込み積分からシステムの応答 y(t)
を導いたが,微分方程式を基にインパルス応答のラプラス変換が伝達関
数であることを導くこともできる.
入出力関係が次式で与えられるとする
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t ) 
 a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y (t )  bm x ( m ) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
 b1 x (1) (t )  b0 x(t )
ラプラス変換すると
bm s m  bm1s m1   b1s  b0
y( s)  n
u ( s )  G ( s)u ( s)
n 1
s  an1s   a1s  a0
単位インパルス関数のラプラス変換は1であるから,インパルス応答は
bm s m  bm1s m1   b1s  b0
g (s)  n
1  G ( s )1
n 1
s  an1s   a1s  a0
79
インパルス応答
 (t )
G
g (t )
p28
全ての初期値が0の状態から,単位インパルス関数が入力されたとき
のシステムの応答をインパルス応答と呼ぶ.
(2)式にt = 0を代入すると
インパルス応答の例:LR回路
1
d
i
(0)

L i (t )  Ri (t )   (t ),
L
dt
(1)式にt = 0代入して
i (0)  0, t  0
i (0)  c
d
解は L i (t )  Ri (t )  0, t  0より
dt
よって
 Rt
1
---- (1)
i(t )  ce L
c
一方
L
d
R
1
i (t )   i (t )   (t )
以上よりインパルス応 i (t )
dt
L
L
答は
t
t
R
1
i (t )    i ( )d    ( ) d
1  Rt L
0
L0
L0
i (t )  e
,t 0
L
t
R
1
   i ( )d  , t  0 (2)
L0
L
t
80
ラプラス変換による応答の計算例
d3
d2
d
y
(
t
)

2
y
(
t
)

y (t )   (t ), y(t )  0, t  0
3
2
dt
dt
dt
両辺に(s+1)2 を掛けると
ラプラス変換すると
1
( s  1) 2
a
 ( s  1)b  c ( A( s)とおく)
1
y( s) 
s
s
2
s( s  1)
また両辺を微分し
これを次のように展開する
d
1
A( s )  a( s  1)C ( s )  b   2
1
a
b
c
ds
s



s( s  1)2 s s  1 ( s  1)2
C(s)  2 / s  (s  1) / s3 
係数a, b, cを求める.aを求める
には, 右辺に s を掛けs → 0 の
極限をとる.
s
1

lim
1
s 0 s ( s  1) 2
s 0 ( s  1) 2
a  lim
係数bを求めるには
 1
b  lim   2   1
s 1  s 
係数cを求めるには
1
c  lim  1
s 1 s
ラプラス逆変換して(表より)
y(t )  1  et  tet
81
部分分数展開とインパルス応答(時間領域)
インパルス応答が次のように表されたとする
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
g (s)  n
s  an 1 s n 1   a1 s  a0
部分分数に展開すると
p
 ih
h
h 1 ( s   i )
li
g ( s )  
i 1
ラプラス逆変換により
t h 1  i t
g (t )    ih
e , h  1, 2,
(h  1)!
i 1 h 1
p
li
,
82
インパルス応答による入出力関係の表現

t
0
x( ) w(t   )d
を x(t) と w(t) との畳込み積分(コンボリューション)という.
線形システムの応答は,入力とそのシステムのインパルス応答との畳込み積分
で表される.
t
t
p31
y (t )   u ( ) g (t   )d   g ( )u (t   )d
0
0
畳込み積分の性質: p129
1) x(t)とw(t)とは互換である.
t   
とおくと
 0t
 t 0

t
0
2)x(t )  0; t  0, w(t )  0; t  0 ならば

t
0

x( ) w(t   )d   x( ) w(t   )d
0

  x( ) w(t   )d
, d  d 

0
x( ) w(t   )d   x(t   ) w(  )(d  )
t
t
  x(t   ) w(  )d 
0
t
  x(t   ) w( )d
0
t
*) 0 x( ) w(t   )d  x(t )  y (t )
のように表すことがある.
83
p31
全ての初期値を0とおくと,線形時不変システムの入
出力の関係は畳込み積分で
u (t )
G
y (t )
y(t )  g (t )  u (t )
と表すことができる.ここで g(t) はインパルス応答であ
る.上式の両辺をラプラス変換すると
y ( s)  g ( s)u ( s )
入力 u(t) の波形に関わらず
y( s)
 g ( s)
u (s)
は複素関数 g(s) となる.y(s)/u(s) はシステムの伝達関数.
*伝達関数はインパルス応答のラプラス変換であるが,習慣上大文字を用いる.
y( s)
u (s)
y( s)
 G( s), あるいは y( s)  G( s)u ( s)
G
(
s
)
u ( s)
84
インパルス応答から一般の入力に対する応答を求める
u (t )
G
y (t )
ただし,
u (t )  0, t  0
システムGのインパルス応答をg(t)とする
 (t )
G
g (t )
0
0
G
y (t )
u (t )
t
0
*因果律より
 (t )
g (t )  0, t  0
時不変性より
 (t   )
p31
g (t   )
g (t )
t
0
t
0
線形性より
u ( ) (t   )
G
0
(ここでは u ( ) を定数と見なしている)
t
t
u ( ) g (t   )
u ( ) (t   )
u ( ) g (t   )
t
g (t   )
 (t   )
0
t
0
t
85
p32
重ね合わせの原理(線形性)より,時
u ( ) g (t1   )
刻 t1における応答y(t1)は,時刻 t=0よ
u( ) (t1   )
u (t )
y (t )
り時刻 t1 までの各時刻の入力
u( ) (t1   ), 0    t1
t
t1
0 t1
0
に対する応答
u( ) g (t1   ), 0    t1
ところで,因果律より g (t )  0, t  0
の重ね合わせと考えられる.
であるから g (t   )  0,   t
応答を重ね合わせると
よって
t1
y (t1 )   u ( ) g (t1   )d
t
y (t )   u ( ) g (t   )d
0
一般に
0

  u ( ) g (t   )d
t
y (t )   u ( ) g (t   )d
0
0
となる.
任意の入力u(t)に対する応答y(t)が
インパルス応答g(t)であらわされた.
*u(t)に対する解がy(t)なら
t
に対する解は  y ( )d .
0

t
0
u ( )d
と書ける.また,u (t )  0, t  0 から

y (t )   u ( ) g (t   )d
0

  u ( ) g (t   )d

ともかける.
86
演習
t h 1  i t
g (t )    ih
e , h  1, 2,
(h  1)!
i 1 h 1
p
li
,
と展開したとき,i が複素数の場合に ih が複素数となり, gt は実数に
なることを確認せよ.
(簡単な例を示せ.)
1
G(s)  2
s  s 1
のインパルス応答?
87
 

 

ブロック図と微分方程式・伝達関数
88
P36-p38
89
伝達関数の利点(畳込み積分が掛算になる)
例: y(t )  y(t )  z (t )
z (t )  2 z (t )  u (t )
u (t )
z (t )
G1
y (t )
G2
u を入力,y を出力としたときのシステムの特性(インパルス応答)は?
•微分方程式ベースの解き方
入力 u に対するz のインパルス応答を求め,その解を入力として y を解く.
•伝達関数ベースの解き方
1
s 1
1
z ( s )  G1 ( s )u ( s ), G1 ( s ) 
s2
y ( s )  G2 ( s )G1 ( s )u ( s ),
y ( s )  G2 ( s ) z ( s ), G2 ( s ) 
u ( s )  1より
y( s) 
1
1
1
1

( s  1)( s  2)
s 1 s  2
ラプラス変換表より
y(t )  et  e2t
u (s)
z (s)
G1 ( s)
y( s)
G2 (s)
u (s)
y( s)
G2 (s)G1 (s)
90
伝達関数を利用したブロック図の等価変換
1)直列結合: y(s)  G2 (s)G1 (s)u( s)
u (s)
G1 ( s )
G2 ( s )
y(s)
p39

u (s)
y(s)
G2 ( s)G1 ( s)
2)並列結合: y(s)  G1 (s)  G2 (s)u(s)
G1 ( s )
u (s)
G2 ( s )

y(s)


u (s)
G1 ( s)  G2 ( s)
y(s)
3)フィードバック結合:
u (s)


y(s)
G1 ( s )

G2 ( s )
u (s)
G1 ( s )
1  G1 ( s )G2 ( s )
y(s)
91
p40
4)加算点(加え合せ点)の移動: y(s)  G(s)u1 (s)  u2 (s)
u1 ( s )
y(s)

G( s)

u1 ( s )

u2 ( s )

G( s)
y(s)

u2 ( s )
G( s)
5)伝達要素の移動: y(s)  G1 (s)u1 (s)  G2 (s)u2 (s)
u1 ( s )
G1 ( s )
u2 ( s )
G2 ( s )


y(s)
u1 ( s )

u2 ( s ) G ( s )
2
G1 ( s )
y(s)


G1 ( s )
92
フィードバック結合の説明
u (s)
 e( s )

p40
y(s)
G1 ( s )

u (s)
G1 ( s )
1  G1 ( s )G2 ( s )
y(s)
G2 ( s )
上のブロック図の変数の関係は
y ( s )  G1 ( s )e( s )
e( s )  u ( s )  G2 ( s ) y ( s )
中間変数 e(s) を消去すると
y ( s )  G1 ( s ) u ( s )  G2 ( s ) y ( s )
代数計算をすればよい.
y ( s )  G1 ( s )G2 ( s ) y ( s )  G1 ( s )u ( s )
1  G1 ( s)G2 ( s) y ( s)  G1 ( s)u ( s)
G1 ( s )
y(s)

u ( s ) 1  G1 ( s )G2 ( s )
例!
93
伝達関数とブロック図
•n階の微分方程式を伝達関数で現すと,その分母多項式はn次となる.
•n階の微分方程式はn個の積分器を持つブロック図で表される
(出力の微分階数)≧ (入力の微分階数)ならばn階の微分方程式は微分器
を使わずにブロック図表現できる .
2
d
d
例:
y (t )  a1 y (t )  a0 y (t )  bu (t )
dt 2
dt
ラプラス変換により
別の表現(他の表現も可能)
d2
d
y (t )   a1 y (t )  a0 y (t )  bu (t )
u (s)
y( s)
2
dt
dt
b
ラプラス変換し
s 2  a1s  a0
積分器
s 2 y ( s )   a1sy ( s )  a0 y ( s )  bu ( s )
u (s)
b

s 2 y(s)
 
1
s
sy ( s )
1
s
y( s)
a1
a0
94
続き
d2
d
x
(
t
)

a
x(t )  a0 x (t )  u (t )
1
2
b s  b0
dt
dt
 y( s)  2 1
u ( s)
s  a1s  a0
y (t )  b1 x(t )  b0 x(t )
の場合
伝達関数は
s 2 x( s )  a1sx ( s )  a0 x ( s )  u ( s ) で表される x( s ) を導入すると
y ( s )  b1sx ( s )  b0 x ( s )
信号を1倍するブロック(伝達要
素)なので省略してもよい.
b1
u (s)
1

s 2 x( s )
 
1
s
sx( s )
1
s
y( s)


x( s)
b0
a1
a0
95
ブロック図と物理現象(1)
ブロック図
ばね・マス・ダンパ系
u (s)
平衡位置
x(t )
k
c
m
f (t )
1
m

s 2 x( s )
 
1
s
c
m
sx( s )
1
s
x( s)
k
m
運動方程式は
ブロック図の解釈
d
c d
k
1
x
(
t
)

x
(
t
)

x
(
t
)

f (t ) •変位,速度がそれぞればね,ダンパを介し
2
dt
m dt
m
m
て加速度にネガティブフィードバック(負帰
還)される系である.
2
96
ブロック図と物理現象(2)
p41
直流電動機(DCモータ)
•電気系と機械系との関係をブロック図で
表す.
R
L
J, D d (t )
vs (t )  vr (t )
i (t )
電機子
 (t )
 (t )
電気系
d
i (t )  Ri (t )  vs (t )  vr (t )
dt
d
vr (t )  K  (t )
dt
L
ラプラス変換して
 Ls  R  i ( s )  vs ( s )  vr ( s )
i(s)
1

vs ( s )  vr ( s ) Ls  R
vr ( s )  Ks ( s )
R:巻線抵抗,
L:巻線インダクタンス
vs:電源電圧
vr:逆起電力
i:電気子電流
J:慣性モーメント
D:粘性抵抗
:回転角
:モータトルク
d:外乱トルク
K:トルク定数(=逆起電力定数)
vr 
vs


1
L
1
s
i
R
97
機械系
d2
d
J 2  (t )  D  (t )   (t )  d (t )
dt
dt
 (t )  Ki(t )
ラプラス変換して
d
 

Js  ( s )  Ds ( s )   ( s )  d ( s )
2
 Js
2
 sD  ( s )   ( s )  d ( s )
 ( s)

 ( s)  d ( s)
 ( s)  Ki ( s)
1
J
1
s
s
1
s

D
1
Js 2  sD
p43
全体をまとめると,電気系と機械系の関係を図示できる(分かることは何か?).
K
vs

vr


1
L
1
s
R
d
i
 
K

結合部分
1
J
1
s
D
s
1
s

98
 

 

システムの安定性と極
99
システムの安定性のイメージ
安定なシステムのイメージ
ほっておくと(自由応答)
動きが止まる.
k
摩擦あり
x(t )
f (t )
c
m
粘性流体
平衡点
不安定なシステムのイメージ
平衡点
少しでも動かした後,
ほっておくとどこまで
も動いて行ってしまう.
x(t )
k
m
(限界)安定
f (t )
ほっておくと,同じ運
動を繰り返す.(安
定と定義することも
ある.)
100
安定性の一つの定義:有界入力-有界出力安定性(BIBO安定性) p44
定義(有界入力-有界出力(Bounded Input-Bounded Output: BIBO)安定
性):入力信号が有界なとき,出力も有界なら,システムは有界入力-有界
出力安定である.
*信号 x(t) が有界
c
0
c
c,
t
x(t )  c, t  0
cは定数とする.
y (t ) c 2
u (t ) c1
0
c1
0
 c2
t
t
G
システムGは有界入力-有界出力安定:
c1 , u(t )  c1 , t  0 ならば c2 , y(t )  c2 , t  0
101
有界入力-有界出力安定性(BIBO安定性)とインパルス応答
p45
システムGのインパルス応答g(t) が絶対可積分


0
g (t ) dt  c2  , c2は定数
であることは,システムG がBIBO安定であることの必要十分条件である.
1)システムGのインパルス応答g(t) が絶対可積分であることは,システムG が
BIBO安定であることの十分条件である.
c1 ,
u(t )  c1 , t  0 とすると
y (t ) 
t
t
0
0
 u (t   ) g ( )d  
t
u (t   ) g ( ) d  c1  g ( ) d
0

 c1  g ( ) d  c1c2
0
よって,g(t)が絶対可積分ならy(t)は有界である.
102
p46
2)システムGのインパルス応答g(t) が絶対可積分であることは,システムG が
BIBO安定であることの必要条件である.
t
y (t )   u (t   ) g ( )d を最大にする有界な入力は
0
g ( )
0
c1 , g ( )  0
umax (t   )  
 c1 , g ( )  0
umax (t   )
0
t
t
t
0
0
0

t 
y (t )   umax (t   ) g ( )d   c1 g ( ) d  c1  g ( ) d
よって,y(t) が区間 [0, ∞) で (t  0で) 有界であるためには


0
g ( ) d  c2
すなわち,g(t) は絶対可積分であることが必要である.
1),2)よりシステムGのインパルス応答g(t) が絶対可積分であることは,
システムG がBIBO安定であることの必要十分条件である.
103
有界入力-有界出力安定性(BIBO安定性)と伝達関数
システムG の入出力特性が伝達関数G(s)で表されるとする.
G(s)の全ての極の実部が負である(極は全て複素左半平面
に存在する)ことはシステムG がBIBO安定であることの必要
十分条件である.
システムを不安定にする(虚
軸を含む右半平面に存在す
る)極(零点)を不安定極(不
安定零点)と呼ぶ.
そうでない極を安定極と呼ぶ.
Im
0
Re
:安定極
:不安定極
:零点
複素平面
:不安定零点
104
説明:
y ( s )  G ( s )u ( s )
G(s) 
bm s m  bm 1 s m 1 
 sb1  b0
(s   1 ) (s   2 )
(s   p )
l1
p
l2
lp
p
,
l
i 1
i
n
 ih
h
h 1 ( s   i )
li
 
i 1
と表すことができ,Gのインパルス応答は
t h 1  i t
g (t )    ih
e , h  1, 2,
(h  1)!
i 1 h 1
p
li
,
モード:
インパルス応答はモード
の線形結合
であり, t h 1e i t の線形結合で表される.ここで s   i はG(s) の極である.


0
そこで
p
li
g (t ) dt  
i 1 h 1


0
 ih
(h  1)! 

0
t h 1e  i t dt , h  1, 2,
,
t h 1e  i t dt が絶対可積分かどうかを調べる.
p125
105
t h e  i t
h  0,1, 2,
の性質
1) Re  i   0とすると,


0
t h 1e  i t dt  . である.
証明:
0  b  Re  i  となる正の定数 b を選ぶことができる.
一方
b2 2
bh h
e  1  bt  t   t 
2!
h!
であるから 0  t とすると
bt
t h  kebt
左の両辺を積分すると
を満たす定数 k を選ぶことができる.よって
t h e  it  kebt e  it
k e
( b  i ) t
k e
( b  Re i  j Im i ) t
 k e(bRe i ) t e  j Im i t  k e  (Re i b ) t  k e  at
 ke at , ここで a  Re  i   b  0


0
t
h 1   i t
e

dt  k  e  at dt
0

k

a
106
2) Re  i   0とすると
h  0 の場合
t h e i t  e j Im i t  1, t  0


0
e
 j Im i t

dt   dt  
0
h  0 の場合 t h e  i t  t h e  j Im i t  t h
h  i t
lim t e
t 

    t h e  i t dt 
0
3) Re  i   0とすると
t h e  i t  t h e  Re i t e  j Im i t  t h e  Re i t
h  i t
lim t e
t 

    t h e  i t dt 
0
107
以上をまとめると


0
は
p
li
g (t ) dt  
i 1 h 1




0
0
p47
 ih
(h  1)! 

0
t h 1e  i t dt , h  1, 2,
,
g (t ) dt  , Re  i が全て正のとき.
g (t ) dt  , Re  i が一つでも正でないとき.
G(s)の全ての極の実部が負である(極は全て虚軸を
含まない複素左半平面に存在する)ことはシステムG
がBIBO安定であることの必要十分条件である
108
線形系の安定性
線形時不変系では,以下の条件は互いに等価である.
1. 極が全て虚軸を除く左半平面にある.
p47
2. インパルス応答が絶対可積分である⇔0に収束する.
3. ステップ応答(インパルス応答の積分値)がある一定値に収束する.
4. 自由応答(初期値が非0,入力は0, t≧0)が0に収束する.
自由応答:
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t ) 
 a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y (t )  bm x ( m ) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
において
 b1 x (1) (t )  b0 x(t )
u (t )  0
x( n) (t )  an1 x( n1) (t )   a1x(1) (t )  a0 x(t )  0
よって自由応答の解は結局,斉次解と同じ形になる.
i : 極
h 1
p li
t
x(t )   cih
e it , h  1,2, ,
(h  1)!
i 1 h 1
109
 

 

周波数伝達関数,システムの周波数特性
110
周波数特性
p49
t 
A( )sin t   ( ) 
sin t
G(s)
∞の時間正弦波を入力し続けたときに現れるシステムの応答特性を,システム
の周波数特性という(安定なシステムの場合).
(安定な)線形時不変システムに正弦波を入力し続けると,時刻∞の極限で
•出力はある一定振幅(A())で,位相が入力より一定値(())変化した正弦波
となる.
•振幅と位相の変化は,入力の周波数に依存する.
システムの伝達関数をG(s)とおくと,周波数特性は:
A( )  G ( j )
(ゲイン)
Im G ( j ) 
 ( )  G ( j )  tan
Re G ( j ) 
1
(位相)
で表される.s = j とおいたG(j)を周波数伝達関数と呼ぶ.
111
例
例:システムの入出力関係が
d
y (t )  y (t )  u (t ), y (0)  0
dt
t0
 0,
u (t )  
sin  t , t  0
斉次解は
d
y (t )  y (t )  0 より
dt
y(t )  et
特殊解は
y(t )  A sin t   
を代入して
y(t ) 
1
1 2
sin(t   ),   tan 1   
解は
1
y(t )  cet 
lim y(t ) 
t 
1 
1
1 
2
2
sin(t   )
sin(t   )
(入力とは同じ周波数で振幅と位相が異なる正弦波,
振幅と位相は周波数に依存する.)
一方このシステムの伝達関数は
1
G (s) 
s 1
1
j  1
G ( j ) 

j  1 1   2
G( j ) 
1
1 2
, G( j )  tan 1   
(微分方程式を解いた結果に一致)
112
数値例 p51
d
1

y (t )  y (t )  u (t ), y (0)  0 ,  y ( s) 
u ( s) 
dt
s 1


 0, t  0
有限時間経過後に出力
u (t )  
sin t , t  0
は殆んど正弦波に一致
している(周波数応答は
1
工学的に意味を持つ).
0.5
sin t
y (t )
1
sin  t  4 
2
0
-0.5
-1
0
2
4
6
時刻 [秒]
8
10
113
説明
p50
システムが次の微分方程式で表されるとする.
x( n ) (t )  an1 x( n1) (t ) 
 a1 x (1) (t )  a0 x(t )  u (t )
y (t )  bm x ( m ) (t )  bm1 x ( m1) (t ) 
 b1 x (1) (t )  b0 x(t )
システムが安定なら斉次解は
t n 1 at
e ; Re[a]  0, n  1, 2,
(n  1)!
, の形になり,時刻∞で0に収束する.
斉次解が0に収束するとすれば,いまは特殊解を求めればよい.
usin (t )  sin t  Im e jt 
と考える.複素入力
uc (t )  e jt
に対する特殊解を xc(t) とおくと, uc (t)に対する特殊解 xc(t)は
xc (t )  Ae jt
である.
114
まず,xc(t) を求める
xc (t )  Ae jt
n
とおき,微分方程式に代入すると xc( n ) (t )   j  Ae jt より
A ( j ) n  an1 ( j ) n1 
 a1 ( j )  a0  e jt  e jt
yc (t )  bm ( j ) m  bm1 ( j ) m1 
 b1 j  b0  Ae j
よって
bm ( j ) m  bm1 ( j ) m1   b1 ( j )  a0
yc (t ) 
uc (t )
n
n 1
( j )  an1 ( j )   a1 ( j )  a0
yc (t )  G ( j )uc (t )
yc (t )  G ( j )e jt  G ( j ) e j e jt  G ( j ) e j (t  ) ,   G ( j )
以上より
ysin (t )  Im  yc (t )  G( j) sin t    ,   G( j)
A( )  G ( j )
 ( )  G ( j ) が示された.
補足:不安定系に対しても,左
のように周波数応答を定義す
ればよい.
115
システムの直列結合とゲイン・位相
G(s)
u (s)
y( s)
G1 ( s )
G2 (s)
伝達関数G(s)が,伝達関数G1(s)とG2(s)との積で
G(s) = G2(s)G1(s)
p53
と表されるとき
G( j )  G2 ( j )G1 ( j )
G(s)のゲインと位相は
G ( j )  G2 ( j ) G1 ( j )
G ( j )   G2 ( j )   G1 ( j )
と表される.なぜなら
G ( j )  G2 ( j )1 G ( j )
 G2 ( j ) eG2 ( j ) G1 ( j ) eG1 ( j )  G2 ( j ) G1 ( j ) eG2 ( j ) G1 ( j )
116
 

 

周波数伝達関数の表示
ベクトル軌跡
ボード(Bode)線図
117
ボード線図
位相 [°]
ゲイン[dB]
•角周波数を横軸としてゲイン,位相をプロットし上下に並べた図をボード
線図という.
•ゲインの縦軸はデシベル(dB): 20log10 G( j)
•位相は通常°(度)
•横軸は通常対数目盛りとする.単位はHz または rad/sec を用いる.
0
10
20
30
40
50
60
70
80 3
10
10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90 3
10
10
2
10
1
10
2
10
0
10
1
10
1
10
0
10
1
10
3

3

2
10
2
10
周波数 [Hz]
定常ゲイン(直流ゲイン): = 0 のときのゲイン
118
相対次数と高周波数帯域特性
伝達関数を次のように表す.
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
G (s)  n
s  an 1 s n 1   a1 s  a0
分子,分母をsmで割って
bm  bm1s 1   b1s  m1  b0 s  m
G ( s)  nm
s  an1s n1m   a1s  m1  a0 s  m
bm  bm1 ( j ) 1   b1 ( j )  m1  b0 ( j )  m
G ( j ) 
( j ) nm  an1 ( j ) n1m   a1 ( j )  m1  a0 ( j )  m
よって 
のとき
bm
G ( j ) 
( j )n  m
1
20log G( j )  20n* log , n*  n  m : 相対次数
G(s)の相対次数がn*のとき,高周波帯域でゲインはn*傾斜になる.
119
14:50-16:20
(強プロパーな)システムは
・入力の周波数が高いと相対次数個直列した積分
器のように応答する.
120
参考
システムの直列結合とボード線図
ゲイン[dB]
0
G(s)
u (s)
-40
-60
G
-80
G2
-100
-120
-140
y( s)
G1 ( s )
G1
-20
-3
10
G2 (s)
-2
10
-1
0
10
1
10
10
2
10
3
10
0
システムの直列結合では
位相 [°]
-20
G1
-40
-60
-80
G2
G
-100
-120
-140
-160
G ( j )  G2 ( j ) G1 ( j )
-180
-3
10
-2
10
G ( j )   G2 ( j )   G1 ( j )
-1
10
0
10
1
10
2
10
周波数 [Hz]
となるから,ゲインはボード線図上で
20log G( j)  20log G2 ( j)  20log G1 ( j)
ゲイン,位相ともにG1,G2のゲイン,位相を足し合わせればよい.
121
3
10
参考
周波数伝達関数
G( j)  G( j) eG ( j )
とするとその逆関数は
ゲイン[dB]
逆伝達関数とボード線図
1
位相 [°]
ボード線図上で,G-1(j) とG (j) の
プロットは横軸に対して対称になる.
-3
10
G 1 ( j )  G( j ) eG ( j )
20log G 1 ( j )  20log G( j )
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-2
10
-1
10
0
1
2
3
10
10
10
10
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-3
10
-2
10
-1
10
0
1
2
3
10
10
10
10
周波数 [Hz]
3s  1
s2
s2
: G 1 ( s ) 
3s  1
: G ( s) 
122
演習
G( s)  k (定数)
のナイキスト線図,ボード線図を描け.
演習
ナイキスト線図,ボード線図は角周波数  > 0 の領域だけ考えれば
よい理由を考察せよ.
123
ベクトル軌跡
•角周波数をパラメータとして G(j) を複素平面上にプロットした図を
ベクトル軌跡という.
Im
0
G( j1 )
Re
G ( j3 )
G ( j2 )
周波数が増加する方
向を矢印で示す.
124
定常ゲイン
p52
G ( s ) は(BIBO)安定なシステムの伝達関数とする.
G( j ) に   0 を代入した G(0)
定常ゲインの意味:
G(s) のステップ応答は
1
G (s)
s
ステップ応答が収束する値は
を定常ゲインという
周波数0の正弦波に対する応答?
1
lim sG ( s)  G (0)
s 0
s
伝達関数を
とすると
bm s m  bm 1 s m 1   b1 s  b0
G (s)  n
s  an 1 s n 1   a1 s  a0
G(0) 
b0
a0
125
 

 

代表的なシステムの応答特性
126
ステップ応答
1
0, t  0
ustep (t )  
1, t  0 を単位ステップ関数と呼ぶ. 0
t
初期値が0の状態での単位ステップ関数に対するシステムの応答を
ステップ応答と呼ぶ.
ステップ応答の例:LR回路(1次遅れ系)
d
L i (t )  Ri (t )  ustep (t ),
dt
i (0)  0, t  0
d
解は L i (t )  Ri (t )  0 より
dt
 Rt
i(t )  ce L
特殊解はustep(t)=1, t≧0 より
1
i (t ) 
R
i (0)  ce  R 0 / L 
1
1
 0 より c  
R
R
よって
i (t ) 
1
1  e  Rt / L 

R
127
1次遅れ系のステップ応答
p57
b
, a0
sa
b
1 b 1
1 
y( s) 
  

sa s as sa
b
y (t )  1  e  at 
定常値へ単調に収束
a
G(s) 
1
0.8
0.6
0.4
0.2
00
収束の速さは極の位置
に依存
0.5
s  0.5
2
:
s2
8
:
s 8
:
2
4
6
時刻 [秒]
8
10
128
位相 [°]
ゲイン[dB]
1次遅れ要素のボード線図
0
10
20
30
40
50
60
70
80 3
10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
3
10
折れ線近似
G ( j ) 
1
jT  1

1傾斜
2
10
1
10
0
10
1
10
2
10
3
10
T
1 のとき
1
G( j ) 
jT
(積分要素/T)

1 のとき
G( j )  1
•点線のようにゲインを直線
近似することを折線近似と
いう.
2
10
1
10
0
10
1
10
2
10
3
10
T
周波数 [Hz]
1
のボード線図
Ts  1
129
1次遅れ要素のベクトル軌跡
 
0
   tan 1 (T )
0
1
Im
1  ( T ) 2
x  Re G( j) , y  Im G( j) ,
  1/ T
-1
とおくと
より G ( j ) 
-1
0
Re
1
のベクトル軌跡 (0    )
Ts  1
1
2
1
jT  1
1

1
2
x


y



 
2

 2
2
130
積分要素のボード線図
p58
位相 [°]
ゲイン[dB]
(a = 0, b = 1)
40
20
0
20
40
60
80 3
10
周波数が10倍になるとゲインが20dB下がる.
(20dB / decade)
(1傾斜と呼ぶ)
2
10
1
10
0
10
1
10
2
10
3
10

50
70
90
110
130
1
G ( j ) 
j
より
3
10
2
10
1
10
0
1
10
10
周波数 [Hz]
2
10
3
10

20 log G ( j )  20 log 
G ( j )  90°
1
のボード線図
s
131
例:積分要素のベクトル軌跡
0.4
0.2
Im
0
G ( j ) 
 
  9.2 rad/s
0.2
0.4
1
j
より,虚軸上の直線
となる.
 = 2.03 rad/s
0.6
0.8
1
  1.1 rad/s
1 0.80.6 0.4 0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Re
1
のベクトル軌跡 (0    )
s
132
2次遅れ系
G (s) 
a0
s 2  a1s  a0
, a0  0, a1  0
a0  n2
a1  2n
とおくと
n2
G (s)  2
s  2n s  n2
n :自然周波数
 :減衰率
133
2次遅れ系のステップ応答
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
p57
  0.1
  2/2
 1
 6
0
10 20 30 40 50 60 70
時刻 (sec)
134
2次振動系のステップ応答の解析解
 0
y (t )  1  cos n t
振動項
0   1
y (t )  1  e
 1
n t


2
cos
1



t

sin

n
2
1 

包絡線




1   n t 


2
:臨界制動(解が振動的にならない最小の減衰率)
y (t )  1  1  n t  e n t
 1
:オーバーダンピング
e n t


    2 1 e
y (t )  1 
2  2 1 
 2 1n t


    1 e
2
  2 1n t


135
2次遅れ要素のボード線図
n2
G( s)  2
s  2n s  n2
n ,  は定数(実数)
p60
位相 [°]
ゲイン[dB]
-40dB/decade
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
0

周波数をnで規格化する:  
n
G ( j ) 
-50
1
1  2   j 2
2次遅れ要素の特性
-100

-150
-200
0.01
0.1
1
10
周波数 
100
:   0.02
:   0.4
: 1
:  2
G( j) のボード線図
のとき

n2 
1
G ( j ) 
,  G(s)  2 
2

s 

(40dB / decade)
1
(2傾斜と呼ぶ)

1 のとき
G ( j)  1
136
2次遅れ要素の特性
 
G ( j ) 
1
1  2    2 
2
G ( j)  tan 1
2
 
2
1  2
共振周波数が存在するのは
ゲインの最大値を与える周波数は


d
2
2 2
1


  2   0


d
から 0    2  0.707 のとき
2
  1  2 2
2
0 
 0.707
2
のとき.
  1 のとき
G( j)  tan 1    90
:共振周波数
ゲインの最大値は
1
2 1  2
2
のときゲインは単調減少し
2
ゲインの最大値は
0
のとき1

1 のとき
lim G( j)  tan 1  0   180

2
( が小さいほど大きい)
137
2次遅れ要素のベクトル軌跡
0.5
p61
n2
G( s)  2
s  2n s  n2
n ,  は定数(実数)
実軸に漸近する.
Im
0


と規格化すると
n
1
(1   2 )  j 2
1
-0.5
G ( j ) 
-1
G ( j ) 
-1.5
 2 
G ( j )  tan 1 
2 
1  
1
0.5
0
Re
0.5
1
n2
のベクトル軌跡   0.5 
s 2  2n s  n2
(0    )
(1   2 ) 2  4 2
138
p61
0
-1
Im
-2
  0.1
-3
  2/2
 1
 6
-4
-5
-6
-3
-2
-1
0
Re
1
2
3
139
p62
極と応答
n2
G( s)  2
s  2n s  n2
n ,  は定数(実数)
Im
 0
n
  2/2
  1.25
 1
  1.25
0
  2/2
 0
Re
n
Re
140
むだ時間要素のベクトル軌跡
y(t )  u (t   )
G(s)  e s ,   0
Im
1
-1
1
Re
-1
141
むだ時間要素のボード線図
14:50-16:20
p63
ゲイン[dB]
G(s)  e s ,   0
0
-2
10
0
10
1
10
位相 [°]
200
150
100
50
0
-50
-100
-150
-200
-1
10
-2
10
-1
10
0
10
周波数 [rad/s]
e sのボード線図
1
10
142
e
 s
 12  s  1
1
2 s 1
2次の伝達関数による近似
e
 s
( s ) 2  6 s  12
( s ) 2  6 s  12
ゲイン[dB]
1次の伝達関数による近似
位相[°]
むだ時間要素のパデ近似
p63
10
5
0
-5
-10
0
-200
-400
-600
10-2
10-1
100
101
周波数 [/ ]
e  s
 12  s  1
1
2 s 1
( s ) 2  6 s  12
( s ) 2  6 s  12
143
むだ時間要素とそのパデ近似のステップ応答
1.5
1
y
0.5
0
-0.5
e  s
 12  s  1
1
2 s 1
( s ) 2  6 s  12
( s ) 2  6 s  12
-1
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
時刻 (t/)
144
過渡特性と定常特性
p64
過渡状態:
入力や初期値の影響で出力が変動している状態
定常状態:
出力が一定値に収束した状態
過渡状態の特性を過渡特性という.
定常状態の特性を定常特性という
過渡状態:
インパルス応答,ステップ応答の初期,時定数,極の位置,零点の位置
定常特性
定常ゲイン
145
安定
(収束)
(ステップ応答と極の位置
不安定
(発散)
2
1.5
1
s 1
1
1
s2  1
0.5
Im
1
s 2  0.4 s  1
0
-0.5
-1
1
s 2  2s  1
1
s  1
-1.5
-2
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
1
s 2  0.4 s  1
ステップ応答
Re
複素平面
ステップ応答は:
•極が虚軸に近いほど振動的
•極が原点から遠いほど立上りが速い
146
零点とステップ応答
例:
s 2 y  2sy  y  (b1s  1)u, 零点:
s  1/ b1
•零点が原点に近いほど応答が速い(入力の微分項の影響が大きい).
•零点が複素右平面実軸上にあると逆応答が生じる.
1.5
:
1
:
0.5
:
0
:
-0.5
0
2
4
6
時刻 [秒]
8
1
 s  1
2
s 1
 s  12
2s  1
 s  1
2
s  1
 s  1
2
10
147
 

 

フィードバック制御
ーある2つの制御系の比較ー
148
フィードバック制御の例題
p65
制御対象
d ( s)
u ( s) : 入力(
操作量)
u (s)
y ( s) : 出力(
制御量)
e
0.02 s


d ( s) : 外乱
y( s)
1
0.1s  1
u
入力に対する応答と外乱に対する応答
20
15
10
5
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
-10 0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
d
0
-5
20
y
15
10
5
0
0
時刻 [秒]
149
比例制御
u(s)  ke(s), e(s)  r (s)  y(s) : 制御誤差
比例要素
r (s)

d ( s)
u (s)
e( s )
k

e 0.02 s


1
0.1s  1
y( s)
p68
フィードバック制御の結果(計算機シミュレーション)
d
0
-5
-10 0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
1.4
1.6
1.8
2
40
y, r
30
20
10
:r
: y ( k  2.5)
: y ( k  5)
: y ( k  8.5)
定常誤差
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
時刻 [秒]
•ゲインkが小さいと定常誤差が大きく,ゲインが大きいとyが振動する.
150
動的コントローラによる制御
K ( s )  33
d ( s)
u (s)

e 0.02 s
K (s)


1
0.1s  1
y( s)
0
d

0.2s  1 0.15s  1
s
0.4s  1
e( s )
-5
-10 0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
20
15
y, r
r (s)
いくつかの動的要素の組合せに
なっている
:r
:y
10
5
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
時刻 [秒]
•外乱が入ってもy はr に収束してく.
151
まとめ
•動的コントローラと比例制御コントローラを比較すると
•目標値応答
•耐外乱性
ともに,動的コントローラが勝っている.
⇒適切に動的コントローラを設計すれば,制御系の性能が著しく向上する.
演習
制御対象が次の1次遅れ要素である場合の,比例制御の効
果を考察せよ.
d ( s)
u (s)  
1
0.1s  1
y( s)
152
 

 

制御系の性能評価と設計目標
153
参考
補足:フィルタとシステム・周波数応答とステップ応答
r
G(s)





y

40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
-120
100
ステップ応答:
Gは単位ステップ関数に含まれる周波数
成分を減衰/増幅させ,位相を遅れさせる
/進める.
3
2.5
2
0
y(t)
位相[°]
ゲイン[dB]
制御系 G は目標値 r を濾過するフィルタと考えることができる.
-100
1
-200
0.5
-300
-400
0.001
1.5
0
-0.5
0.01
0.1
周波数 [Hz]
1
10
0
2
4
6
時刻 [秒]
8
10
154
 

 

フィードバック制御系の安定性
出力が目標値に追従(収束)するためには,
制御系は,安定であることが必要である.
155
フィードバック制御系の安定性
d ( s)
r (s)

e( s )
K (s)

u (s)


y( s)
P( s )


n( s )
安定性:
目標値 r ,外乱 d ,ノイズ n が有界であれば,
出力(制御量) y ,操作量 u は有界となること.
P( s) K ( s)
P( s)
P( s) K ( s)
r (s) 
d (s) 
n( s )
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
K (s)
K ( s) P( s)
K (s)
u (s) 
r (s) 
d (s) 
n( s )
1  K ( s) P( s)
1  K ( s) P( s)
1  K ( s) P( s)
y( s) 
P( s ) K ( s )  K ( s ) P( s )であるから
P( s) K ( s )
P(s)
K (s)
,
,
1  P( s ) K ( s ) 1  P( s ) K ( s ) 1  P( s ) K ( s )
が安定⇔ フィードバック
制御系が安定.
156
y( s)
P( s ) K ( s )

の安定性の判別
r ( s ) 1  P( s ) K ( s )
P( s ) 
(目標値に対する出力の安定性)
bP ( s)
b ( s)
, K ( s)  K
と,P(s), K(s) を分子,分母で表すと
aP ( s)
aK ( s )
aP ( s)aK ( s)
P( s ) K ( s )

1  P( s) K ( s) aP ( s)aK ( s)  bP ( s)bK ( s)
すなわち, 特性方程式
aP (s)aK (s)  bP (s)bK (s)  0
の根が全て複素左半平面にあればy(s)/r(s) はBIBO安定である.(根を数値計
算すればよい.)
特性方程式の解が計算しづらい場合,次のナイキストの安定判別法が便利で
ある.
例:bp(s) がむだ時間要素 es を含む場合,特性方程式の根は無限個存在する.
157
Nyquist の安定性判別(一巡伝達関数の導入)
p71
一巡伝達関数:
L(s)  P(s) K (s) を定義する
K (s)
y( s)
L( s )

r ( s ) 1  L( s )
P( s )
一巡伝達関数は閉ループを切開い
たシステムの伝達関数
とかける.ここで,1+L(s)に着目する.
1  L( s ) 
aP ( s)aK ( s)  bP ( s)bK ( s)
aP ( s ) a K ( s )
•1+L(s)の零点はL(s)/{1+L(s)} の極である.
•L(s)の極は1+L(s)の極と一致する(KとPに極零相殺がない場合).
⇒ 1+L(s)の零点が複素右半平面に存在するかどうかを判定すればよい.
158
Nyquist の安定性判別( 偏角の原理の応用)
Jordan 閉曲線:区分的に連続な閉曲線で,自分自身と交差しない曲線.
偏角の原理(田村他,システム制御のための数学,コロナ社)
複素関数 G(s) は,極以外の点で正則とする. G(s) は,複素平面上
のJordan 曲線  の内側に P 個の極とZ 個の零点を持つとする.s を
 上に時計回りに1周させると,
G(s) は,s = 0 の周りを時計回りに ZP 回
回転する.

Z=2
P=1
s0
G ( s ) s 
159
Nyquist の安定性判別( Nyquist 経路)
Nyquist 経路:
1+L(s) の複素左半平面の零点を全て含み,かつ1+L(s) がJordan 曲線上で
発散しないように特別に次のように選んだJordan 曲線.
Im
r 
r
0
Im

Re
一巡伝達関数:
L( s )  P ( s ) K ( s ) は
一巡伝達関数:
L( s )  P ( s ) K ( s ) は
虚軸上に極を持たない場合:
⇔(aP(s)aK(s)=0 は虚軸上に根を
持たない場合)
s = 0 を中心とし,虚軸を弦とした半
径無限大の半円とする.
虚軸上に極を持つ場合:
⇔(aP(s)aK(s)=0 は虚軸上に根を
持つ場合)
左の半円を虚軸上の極の近傍で
160
右側に無限小窪ませる.
Nyquist の安定性判別
s がNuquist 経路上を一周したとき, 1+L(s) が描く曲線(ナイキスト軌跡)を
考える.
•複素左半平面の1+L(s) の極の数(= L(s) の極の数)をP 個とする.
•複素左半平面の1+L(s) の零点の数(= L(s)/{1+L(s)}の極の数)をZ 個と
する.
•偏角の原理よりs がNuquist 経路上を一周したとき, 1+L(s) が描く曲線は,
原点s=0 の周りを Z-P 回周る.R=Z-P とおく.
•L(s)/{1+L(s)}の極が複素左半平面に存在しない(Z = 0)
⇔ RP
⇔ 1+L(s) が描く曲線は,原点s = 0 の周りを反時計回りにP 回周る.
161
Nyquist の安定性判別(一巡伝達関数への応用)
L(s)/{1+L(s)}の極が複素左半平面に存在しない(Z = 0,安定)
⇔
1+L(s) が描くNyquist 軌跡は,原点s = 0 の周りを -P 回周る.
⇔ 一巡伝達関数 L(s) が描くNyquist 軌跡は,s = -1 の周りを -P 回周る.
Im
L( s )
s  1 0
1  L( s )
Re
以降一巡伝達関数 L(s) のナイキスト軌跡(線図)を考える.
162
Nyquist 軌跡の作図
lim L( s)  0 となる場合を考える.
s 
例:
Im
・P(s),K(s) のどちらかが強プロパの有理多項式の場合.
r
・ P(s)が有理多項式かけるむだ時間要素の場合
1  s
P( s) 
e , K ( s)  k (
定数)
s 1
s   j ,   0
r 
Re
0
など(工学的に意味があるほとんどの場合にあてはまる).
lim L( s)  0
s 
ナイキスト軌跡は,s が虚軸上を動くときにのみ変化する.
⇒ s   j ,   0 に限定してナイキスト軌跡を描けばよい.
⇒L(s)のナイキスト軌跡はベクトル軌跡にほぼ一致する.
•ナイキスト軌跡は実軸に関して対称.
163
実際のNyquist の安定性判別
L(s) のNyquist 軌跡(線図)からP(s)K(s)/1+P(s)K(s)の安定性を判別する.
Step1: L(s) のNyquist 線図を描く  s  j (  0).
Step2: L(s) のNyquist 線図が s = -1 の周りを回る回数を数える(R回とする).
Step3:L(s)の複素右半平面の極の個数をしらべる.
(Z個とする,M重根はM個と数える).
Step4:R=Z ならP(s)K(s)/{1+P(s)K(s)} は安定, R≠Zなら不安定 .
Im
s = -1
1
1  L( j )
0
Re
L( j )
164
Z=0のときのNyquistの判別法
  0
 
s = -1
0
Re
L( j )
  0
Z=0のとき(L(s)=0は左半平面上の極を
持たない)
⇒
L(s)のNyquist線図はs = -1の周りを回ら
ないなら L/(1+L) は安定.
安定
  0
 が+0からへ動く間
L(j)がs = -1を左手に見るとき
 
に限りPK/(1+PK)は安定.
s = -1
0
Re
L( j )
  0
不安定
165
付録:L(s) が有理関数の場合(1)
参考
準備
(ベクトル)s をqi を囲む閉曲線周りに時
計回りに一周させる.この間に
j
•(ベクトル)s  qi  re i の偏角i は 2
変化する
Im
qk
s  qk
qk
s
•qkが閉曲線の外にあるなら,結果的に
s  qi
s  qk  re jk の偏角k の変化は0である.
qi
•ベクトル
0
Re
1
1
 e ji
s  qi r
の偏角  i は 2 変化する.
166
付録:L(s) が有理関数の場合(2)
参考
n( s ) d ( s)  n( s ) b i ( s  pi ) と書ける. p は PK の極である.
i
1  L( s )  1 


1  PK
d ( s)
d ( s)
 ( s  zn )
n
•sを右半平面を包む半径∞の半円と
虚軸に沿って時計回りに1周させる.
pi の中で左半平面のものがP個
pm
zn の中で左半平面のものがZ 個

zl
ph
pm
zl
とすると
1  L( s ) の偏角の変化は
2 ( P  Z )
•PK/(1+PK)は安定とするとP=0であ
るから 1  L( s ) の偏角の変化は
2 Z
L(s)はs = -1の周りを反時計周りにZ
回周る.
167
付録:L(s) が有理関数の場合(3)
参考
ところで,P(s),K(s)はプロパーであるから,1+L(s)もプロパー.
j
s

lim
re
半円上
では 1  L( s ) はプロパーなので,一定値または0をと
r 
り,偏角は変化しない.
pm
PK/(1+PK)は安定とすると虚軸上
s   j ,   0
で1+L(s)はs = -1の周りを反時計周
りにZ回(d(s)=0の左半平面上の根
の個数)周る.

zl
ph
  0
  
zl
s = -1
0
pm
1  L( j )
  0
Re
L( j )
168
K (s)  k (
定数)
1
P( s ) 
s 1
s  1
k 1
0

k  0.5
p74
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-80
-100
k 2
位相 [°]
0
ゲイン [dB]
例:Z=1のとき(不安定な制御対象)
-120
k  1: 不安定
k  1: 安定
k = 2 のとき:
ゲイン余裕-6 dB
(ゲインが減ると不安定化する).
位相交点:なし
-140
-160
-180
0.01
0.1
1
10
周波数 [rad/sec]
169
K (s)  k (
定数)
1
P( s ) 
e0.02 s
0.1s  1
p75
30
20
ゲイン [dB]
例
1
k =15(不安定)
-10
-20
-40
200
s =-1
0
-0.5
k =1
k =8.5
-1
k =5
-1.5
0
-30
-2
-1.5
-1
-0.5
Re
L(s)のNyquist 線図
100
0
-100
k =2.5
0
位相 [°]
Im
0.5
10
0.5
-180
0.1
(安定限界:k = 9.05)
1
10
周波数 [Hz]
L(s)のBode 線図
100
170
安定余裕(Nyquist線図)
位相交点
Im
s  1


0
Re
ゲイン交点
L( j )
ゲイン余裕: 20log10
1

L(s)のゲインが1/ 倍されるとPK/(1+PK)が安定限界に達する.
位相余裕: 
L(s)の位相がさらに°遅れるとPK/(1+PK)が安定限界に達する.
171
∠ L(jw) [°]
|L(j)| [dB]
安定余裕(Bode線図での表現)
0
ゲイン余裕
0
周波数
周波数
-180
位相余裕
172
安定余裕のガイドライン
サーボ系(メカトロニクス系)
ゲイン余裕 12dB 位相余裕 45°
プラント系(化学プラントなど)
ゲイン余裕 6dB 位相余裕 30°
2012/07/06
173
フィードバック制御系の内部安定性
p78
d ( s)
r (s)

e( s )
K (s)

u (s)


y( s)
P( s )
内部安定性:
目標値 r ,外乱 d が有界であれば,
出力(制御量) y ,操作量 u は有界となること.
P( s) K ( s)
P( s)
r (s) 
d ( s)
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
K (s)
K ( s) P( s)
u (s) 
r (s) 
d ( s)
1  K ( s) P( s)
1  K ( s) P( s)
y(s) 
P( s ) K ( s )  K ( s ) P( s )であるから
P( s) K ( s )
P(s)
K (s)
,
,
1  P( s ) K ( s ) 1  P( s ) K ( s ) 1  P( s ) K ( s )
が安定⇔ フィードバック
制御系が安定.
174
P( s )
K (s)
,
の安定性
1  P( s ) K ( s ) 1  P( s ) K ( s )
P(s)とK(s)とに不安定な極零相殺がある場合,P(s)K(s)/(1+P(s)K(s))が安定
でも P(s)/(1+P(s)K(s)) あるいは K(s)/(1+P(s)K(s)) は不安定になるので注意.
•極零相殺:二つの伝達関数の掛算により,極と零点とが打消しあうこと.
例: ( s  2)( s  3)
2
2( s  3)


( s  4)( s  5) ( s  2) ( s  4)( s  5)
重要:
制御対象と不安定な極零相殺を起こすコントローラを設計してはいけない.
175
例:制御対象の不安定極をコントローラの零点で相殺する場合
u(t)
y(t)
d(t)
1
r (s) 
s


d ( s)

2( s 2  1) u ( s )
s  0.8
s ( s  1)
s2  1
p81
y( s)
1
0
2
1.5
1
0.5
0
2
1.5
1
0.5
0
外乱の影響:
出力が振動
するので問
題!
0
10
20
30
時刻 [秒]
40
50
176
制御対象の不安定零点をコントローラの極で相殺する場合
P( s ) 
nus ( s)n0 ( s)
nK ( s)
, K ( s) 
d P ( s)
nus ( s)d K ( s)
と分母多項式,分子多項式で表す.
ここで nus ( s)  0 の根は複素右半平面にあるとする.
P( s ) K ( s ) 
nus ( s)n0 ( s) nK ( s)
n ( s)nK ( s)
 0
d P ( s) nus ( s)d K ( s) d P ( s)d K ( s)
n0 ( s )nK ( s)
n0 ( s )nK ( s)
d P ( s)d K ( s)
P( s) K ( s)


n ( s )nK ( s) d P ( s )d K ( s )  n0 ( s )nK ( s )
1  P( s) K ( s)
1 0
d P ( s)d K ( s)
となる.
が安定であったとしても
nK ( s )
nK ( s )
d P ( s)d K ( s)
n ( s)d K ( s)
n ( s)d K ( s)
nK ( s )d P ( s )
K (s)
 us
 us

n ( s )nK ( s) d P ( s )d K ( s )  n0 ( s) nK ( s) nus ( s ) d P ( s )d K ( s )  n0 ( s )nK ( s )
1  P( s) K ( s)
1 0
d P ( s)d K ( s)
は分母の nus ( s) のために不安定となる(u(s)/r(s)が不安定).
177
例:制御対象の不安定零点をコントローラの極で相殺する場合
r (s) 
1
s


p80
y( s)
5( s  1) u ( s )
s  1
s  1
s 2  2.5s  1
1
y(t)
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
u(t)が発散
するので問
題!
u(t)
-100
-200
-300
-400
-500
0
1
2
3
時刻 [秒]
4
5
178
制御対象の不安定極をコントローラの零点で相殺する場合
P( s ) 
d ( s)nK ( s)
nP ( s)
, K ( s)  us
dus ( s)d0 ( s)
d K (s)
と分母多項式,分子多項式で表す.
ここで dus ( s)  0 の根は複素右半平面にあるとする.
P( s ) K ( s ) 
nP ( s) dus ( s)nK ( s) nP ( s)nK ( s)

dus ( s)d0 ( s) d K ( s)
d 0 ( s )d K ( s )
nP ( s )nK ( s )
d ( s)d K ( s)
nP ( s )nK ( s )
P( s) K ( s)
 0

n ( s )nK ( s) d 0 ( s )d K ( s )  nP ( s)nK ( s )
1  P( s) K ( s)
1 P
d0 ( s)d K ( s)
となる.
が安定であったとしても
nP ( s )
nP ( s )
d 0 ( s)d K ( s)
d ( s)d K ( s)
d ( s )d K ( s)
nP ( s ) d 0 ( s )
P( s)
 us
 us

n ( s )nK ( s) d 0 ( s) d K ( s)  nP ( s) nK ( s ) dus ( s ) d 0 ( s )d K ( s )  nP ( s) nK ( s )
1  P( s) K ( s)
1 P
d 0 ( s )d K ( s )
は分母の dus ( s) のために不安定となる(y(s)/d(s)が不安定).
179
 

 

制御系の応答評価
180
応答性能評価項目
p83
ステップ応答による評価(目標値応答)
目標値
応答(出力)
MP
1.0
0.9
1.05 あるいは1.02
0.95 あるいは0.98
定常偏差
0.1
0.0
tR
tS
時間
M P : 最大行き過ぎ量 (減衰性の指標)
tR :
立ち上がり時間 (速応性(立上りの速さ)の指標)
tS :
整定時間 (速応性,減衰性の指標)
定常誤差:t → ∞での制御誤差
181
応答性能評価項目
p84
周波数特性による評価(目標値応答伝達関数 y(s)/r(s))
ゲイン [dB]
MP
3
BW
P
周波数
MP :
最大行き過ぎ量
(共振現象を表す.減衰性の指標,大きいと振動的)
P :
BW :
ピーク周波数 (速応性(立上りの速さ)の指標)
バンド幅(制御帯域) (速応性の指標)
|y(j0)/r(j0)|: 定常誤差
182
 

 

一巡伝達関数の周波数整形による
フィードバック制御系の設計
183
周波数整形にもとづく制御系設計
p85
d ( s)
r (s)

e( s )
K (s)

u (s)


y( s)
P( s )


n( s )
以下の伝達関数を考える.
P( s) K ( s)
P( s)
P( s) K ( s)
r (s) 
d (s) 
n( s )
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
K (s)
K (s) P(s)
K (s)
u (s) 
r (s) 
d (s) 
n( s )
1  K ( s) P( s)
1  K ( s) P( s)
1  K ( s) P( s)
1
P( s)
1
e( s ) 
r (s) 
d (s) 
n( s )
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
1  P( s) K ( s)
y(s) 
184
•仕様1:制御誤差 |e(j)| は小さい方がよい(制御の性能は良くしたい.)
⇔ y(s)/r(s)=PK/(1+PK) ≒1⇔ y(t)≒r(t).
•仕様2:制御入力 |u(j)| は小さいほうがよい(制御にかかるコストは小さい方が良い.)
1
P( j )
1
r ( j ) 
d ( j ) 
n( j )
1  P( j ) K ( j )
1  P( j ) K ( j )
1  P( j ) K ( j )
K ( j )
K ( j ) P( j )
K ( j )
u ( j ) 
r ( j ) 
d ( j ) 
n( j )
1  K ( j ) P( j )
1  K ( j ) P( j )
1  K ( j ) P( j )
e( j ) 
P(j) の特性は与えられているから,上式より
A) 仕様1を満たすには|K(j)| あるいは|P(j)K(j)|は大きい方がよい.
B) 仕様2を満たすには|K(j)|あるいは|P(j)K(j)|は小さい方がよい.
周波数整形:
同じ周波数でA),B)を同時に満たすことはできないので,
• |e(j)| を小さくしなければならない周波数帯域(制御帯域)で|K(j)|あるいは
|P(j)K(j)|を大きくし
• |u(j)| を小さくしなければならない周波数帯域で|K(j)|あるいは|P(j)K(j)|
が小さくなるように
185
コントローラK(s)を設計する.
一般的な |r(j)| ,|n(j)| ,|d(j)|の周波数帯域と
一巡伝達関数の周波数整形
| n( j ) |
パワースペクトル
| r ( j ) |, | d ( j ) |

制御帯域
交差周波数
(クロスオーバー周波数)
ゲイン
PK
P
a)
位相
0
0
-180

P
PK
d)
b)
c)

周波数整形の基本方針:
K(s)を次のように設計する.
a) 制御帯域内の一巡伝達関数
のゲインを上げる
b) 交差周波数を上げる(制御帯
域を広げる).
c) 位相余裕を大きくする
d) ゲイン余裕を大きくする
186
 

 

いろいろな補償要素
(良く使うコントローラの動的要素)
187
コントローラの設計
K(s)=
(比例要素)(積分要素)(1次遅れ要素)(位相進み要素)(位相遅れ要素)・・・
所望の一巡伝達関数を得るために必要な要素をつないでゆく.
比例要素(定数)
一巡伝達関数 L(s)=P(s)K(s) のゲインを調整する.
積分要素
定常誤差の除去(内部モデル原理)
1次遅れ要素
L(s) の高周波帯域のゲインを下げる
2次遅れ要素
L(s) の高周波帯域のゲインを下げる
188
位相進み要素
(プロパ型)
1
T
1
s
T
•ある周波数帯域で位相を進ませるために用いる要素.
•副作用として高周波帯域でゲインが上昇する.
•ハイパスフィルタの一種.
s
ゲイン[dB]
MAX 
0
1
16
24
32
T
MAX  sin 1
8
40
1
1 

80
70
位相[°]
T  0,   0
60
50
40
max
30
20
10
0
1
T
 max
1
T

189
位相進み要素
(非プロパ型)
s  n
•ある周波数帯域で位相を進ませるために用いる要素.
•副作用として高周波帯域でゲインが上昇する.
•非プロパなので,他の要素に組み合わせて用いる.
(n  0)
n
s
20
15
10
5
0
100
80
位相[°]
組合せの例:
積分要素との組合せ
s  n
k
s
k
25
ゲイン[dB]
n
60
40
20
0
比例要素
積分要素
0.01
0.1
1
周波数
(PI補償器と呼ぶ)

n
10
190
位相遅れ要素
1  Ts
1   Ts
•高周波帯域のゲインを下げる
•副作用としてある周波数帯域の位相が遅れる.
•ローパスフィルタの一種.
1 
MAX  sin
1 
1
MAX 
T
1
ゲイン[dB]
0
8
16
24
32
40
  0, T  0

0
10
位相[°]
20
30
max
40
50
60
70
80
1
T
 max
1
T

191
内部モデル原理(十分条件)
参考:
P(0)  0
 P ( s )はs  0に零点を持たない.
K0 ( s)
, nm
とおく.ただし K0 (0)  0
とする.
n
s
また,このとき,コントローラと制御対象とに不安定な極零相殺があると,
フィードバック制御系は安定にならないので P(0)  0 とする.
K (s) 
er ( s) 
1
P( s )
r ( s), ed ( s)  
d ( s)
1  P( s ) K ( s )
1  P( s ) K ( s )
とおく.いま
1
1
snm
er ( s ) 


,
K 0 ( s) s m 1  P( s) K 0 ( s) s m  n s n  m  P( s) K 0 (s)
1  P( s) n
s
P( s)
1
P( s)
s n  m P(s)
ed ( s )  

  nm
mn
K0 (s) s m
1  P( s) K 0 ( s) s
s  P( s ) K 0 ( s)
1  P( s) n
s
最終値の定理 lim e(t )  lim se( s) より
1
t 
s 0
s n  m 1
lim er (t )  lim ser ( s)  lim n  m
0
t 
s 0
s 0 s
 P( s) K 0 ( s)
s n  m 1 P( s )
lim ed (t )  lim sed ( s)  lim  n  m
0
t 
s 0
s 0
s  P( s) K 0 ( s)
192
内部モデル原理
d ( s)
r (s)
e( s )
K (s)


u (s)


y( s)
P( s )


n( s )
上図のフィードバック制御系において
r (s) 
1
または
sm
d ( s) 
1
sm
であるとき,
lim e(t )  0
t 
となる(定常誤差が0に収束する) .
⇔
上図のフィードバック制御系は安定であり,K(s) は s = 0 に少なくともm
個の極を持つ.
193
内部モデル原理(必要条件)
1
1
1
1

lim
0
t 
s 0
s 0 1  P ( s ) K ( s ) s m
s 0 1  P ( s ) K ( s ) s m 1
P( s)
1
P( s)
1
lim ed (t )  lim sed ( s)   lim s


lim
0
m
m 1
t 
s 0
s 0
s

0
1  P( s) K ( s) s
1  P( s) K ( s) s
lim er (t )  lim ser ( s )  lim s
となるには
1
,
1  P( s ) K ( s )
P( s )
1  P( s ) K ( s )
が共に s  0 にm個以上の零点を持たなければならない.
nP ( s)
nK ( s)
P( s ) 
, K ( s) 
d P ( s)
d K ( s)
とおく.ただし nP (0)  0
d P ( s)d K ( s)
1

,
1  P( s) K ( s) d P ( s)d K ( s)  nP ( s)nK ( s)
よって
d K ( s) は s  0
共通な多項式
nP ( s)d K ( s)
P( s )

1  P(s ) K (s ) d P ( s)d K ( s)  nP ( s)nK ( s)
にm個以上の零点を持たなければならない.
d K (s)  s n d0 (s), n  m これはK(s)の分母多項式である.
194
n型サーボ系:コントローラがs =0 に n 位の極を持つ制御系
1型サーボ系
直流成分しか持たない信号
(j = 0)
K0 ( s)
s
一定の外乱,一定目の標値に対し定常誤差が0に収束する.
K ( s) 
周波数整形の観点からすると:
* L( j)  P( j) K ( j) は  0 で∞になる.
2型サーボ系
K0 ( s)
s2
外乱,あるいは目標値がランプ関数 ulamp (t )  ct , cは任意の定数
K ( s) 
であっても対し定常誤差が0に収束する.
195
内部モデル原理の直感的解釈(1型サーボ系の場合)
参考
d ( s)
r (s)


e( s ) 1
u (s)
K 0 (s)

s

y( s)
P( s )


n( s )
r  0, n  0とする.
d が一定のときe  0となるにはy  0, u  d(
一定値)
 K ( s)の入力は0なのでK ( s)には積分器が必要.
d  0, n  0とする.
rが一定のときe  0となるにはy  r(
一定値) uは一定値
 K ( s)の入力は0なのでK ( s)には積分器が必要.
196
ハイパスフィルタとローパスフィルタ
参考
•ハイパスフィルタ:
高周波数帯域を通過し,低周波数帯域を阻止するフィルタ.
•ローパスフィルタ:
低周波数帯域を通過し,高周波数帯域を阻止するフィルタ.
(例えば,1次遅れ要素,2次遅れ要素,位相遅れ要素.)
•ハイパスフィルタはローパスフィルタから作ることができる.カットオフ周波数

ローパス
フィルタ
ハイパスフィルタ
例:
n
s
1

s  n s  n
:ローパスフィルタ
-10
-20
-30
-40
-50
100
位相[°]

ゲイン[dB]
0
50
0
-50
-100
0.01
:ハイパスフィルタ
0.1

周波数
n
1
10
100
197
バンドパスフィルタ
参考
ハイパス
フィルタ
バンドパスフィルタ
n
s
例:
s  n s  10n
:ローパスフィルタ
位相[°]
ローパス
フィルタ
ゲイン[dB]
•バンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ):
ある波数帯域を通過し,別の数帯域を減衰させるフィルタ.
カットオフ周波数の異なるローパスフィルタとハイパスフィルタから構成できる.
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
100
50
0
-50
:ハイパスフィルタ
*注)ピークゲインを上げるには
定数倍すればよい.
-100
0.01
0.1
1
10
周波数

n
100
1000
198
ノッチフィルタ
参考
•ある波数帯域を減衰させ,他の波数帯域を通過させるフィルタ.
虚軸(近傍)に零点を持つフィルタ.
あるいはバンドパスフィルタから構成する.
2
2
例1: s  2n s  n
s 2  2n s  n2
:   0.005
:   0.05
例2:
:   0.4
ゲイン[dB]
0
-10
-20
-30
-10
-20
-30
-40
-40
-50
100
-50
100
位相[°]
ゲイン[dB]
位相[°]
n
s
s  n s  10n
バンドパスフィルタ
0
50
0
50
0
-50
-50
-100
0.1
:1  10
1
周波数

n
10
-100
0.01
0.1
1
10
周波数

n
100
1000
199
 

 

周波数整形によるコントローラの設計の一例
200
例題(前出の例題に同じ)
p94
制御対象
d ( s)
u ( s) : 入力(
操作量)
u (s)
y ( s) : 出力(
制御量)
e
0.02 s


d ( s) : 外乱
y( s)
1
0.1s  1
u
入力に対する応答と外乱に対する応答
20
15
10
5
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
-10 0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
d
0
-5
20
y
15
10
5
0
0
時刻 [秒]
201
比例制御系の設計
d ( s)
r (s)

u (s)
e( s )
K

e
0.02 s


1
0.1s  1
y( s)
ゲイン dB
10
PK
0
-10
-20
P
-30
位相 °
-40
200
*Kをより大きくするとゲ
イン余裕が12dBより小さ
くなってしまう.
100
0
-100
-200
0.1
•K=2.1と設計
•ゲイン余裕:12dB
•位相余裕:97°
1
10
100
1000
周波数 [rad/sec]
一巡伝達関数の周波数特性
202
e:制御誤差 y:出力 u:操作量
d:外乱
比例制御系の評価(ステップ応答)
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1.5
制御により:
•応答が速くなった.
•外乱に対する制御誤差が
小さくなった.
•目標値に対する定常偏差
が出た
*目標値に対する定常偏
差を小さくするには制御ゲ
インKを大きくする必要があ
るが,ゲイン余裕が小さくな
る.
1
0.5
0
1
0.5
0
-0.5
:制御なし
0
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
:比例制御
203
定常ゲインを調整
(前置補償)
改良(定常ゲインを合わせる)
r (s)
d:外乱
e:制御誤差 y:出力 u:操作量
u (s)
e( s )
KF

d ( s)
K

e
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1.5
0.02 s


y( s)
1
0.1s  1
 P(0) K (0) 
KF  

 1  P(0) K (0) 
 1.48
1
•目標値に対する定常偏差
がなくなった.
•外乱に対して,定常偏差
がある.
1
0.5
0
1.5
1
0.5
0
-0.5
:制御なし
:比例制御
(前置補償つき)
0
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
204
積分制御系の設計
コントローラを積分器とし,定常偏差を除去する.
d ( s)
r (s)
ゲイン dB

位相 °
u (s)
e( s )

K
e
0.02 s


1
0.1s  1
k
K ( s )  , k  12
s
•k=12と設計
•ゲイン余裕:12dB
•位相余裕:37°
y( s)
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
200
•積分要素により,低周波
数の一巡伝達関数ゲイン
が上昇した.
•積分要素の位相遅れの
ため位相余裕は少なく
なった.
•制御帯域も狭まった.
100
0
-100
-200
0.1
1
10
100
周波数 [rad/sec]
一巡伝達関数の周波数特性
1000
*kをより大きくするとゲイン
余裕が12dBより小さくなって
しまう.
:積分制御
:比例制御
205
e:制御誤差 y:出力 u:操作量
d:外乱
積分制御系の評価(ステップ応答)
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
積分制御により:
•目標値・外乱に対する定
常偏差がなくなった.
•比例制御に対し応答が遅
く,振動的になった.
:積分制御
0
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
:比例制御
206
積分制御系の改良
位相進み要素(非プロパ型)を導入して位相遅れを補償する.
d ( s)
r (s)
ゲイン dB

位相 °
u (s)
e( s )

K
e
0.02 s


PIコントローラ:
1
0.1s  1
y( s)
K ( s )  32
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
200
•ゲイン余裕:13dB
•位相余裕:48°
積分制御に対し:
•大幅に位相特性が改善
できた.
•低周波数帯域のゲイン
を上げることができた.
なった.
•制御帯域を広げることが
できた.
100
0
-100
-2000.1
0.05s  1
s
位相進み要素
1
10
100
周波数 [rad/sec]
一巡伝達関数の周波数特性
1000
:積分制御
:比例制御
:PI制御
207
e:制御誤差 y:出力
u:操作量
d:外乱
PI制御系の評価(ステップ応答)
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
積分制御に対し:
•目標値への収束が速く
なり,オーバーシュートを
減らすことが出来た.
•外乱の影響を速く除去
できるようになった.
:積分制御
:比例制御
:PI制御
0
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
208
位相進み要素によるチューニング
位相進み要素(プロパ型)により,低周波数域特性は出来るだけ変えずに,
オーバーシュートを減らすことを考える.
2つの位相進み要素:
K LL ( s)  2.7 K L1 ( s) K L 2 ( s)
K L1 
s  100
,
s  210
KL2 
s  13.5
s  19
ゲイン dB
10
5
: K LL
0
: K L1
: KL2
-5
位相 °
-10
25
20
15
10
5
0 0.1
1
10
周波数 [rad/sec]
100
1000
209
位相進み要素によるチューニング
0.05s  1
s
Ktn ( s )  K PI ( s ) K LL ( s )
ゲイン dB
60
K PI ( s )  32
40
20
 86
0
(0.05s  1) ( s  100) ( s  13.5)
s
( s  210) ( s  19)
-20
-40
200
: K PI
位相 °
: K tn
100
ゲイン余裕:11dB
位相余裕:62°
0
-100
-200
0.1
1
10
100
周波数 [rad/sec]
一巡伝達関数の周波数特性
1000
KLLにより,位相特性が
補償され,制御帯域が
若干広がった.
210
e:制御誤差 y:出力
u:操作量
d:外乱
チューニングされた制御系の評価
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
5
4
3
2
1
0
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
0
KLLを追加することにより,
•目標値応答のオーバー
シュートが減少した.
•目標値応答の立ち上が
りが向上した.
: K PI
: K tn
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
211
 

 

PIDコントローラ
212
PIDコントローラ
p99
:全ての周波数帯域を周波数整形する要素を含んだ最もシ
ンプルなコントローラ.産業界で多用されている.
d ( s)
r (s)

e( s )
K (s)

k
k s
K (s)  kP  I  D
s  s 1
u (s)


y( s)
P( s )


n( s )
比例要素
積分要素
(擬似)微分要素
k P :比例ゲイン (一巡伝達関数の全周波数帯域でのゲインを調整)
k I :積分ゲイン (一巡伝達関数の低波数帯域でのゲインを上げる)
k D :微分ゲイン (一巡伝達関数の高波数帯域でのゲイン・位相遅れを補償する)

:小さな定数
*現実には制御ゲインは試行錯誤的に決めることが多い.
213
PIDコントローラの設計例
位相 °
(0.05s  1) ( s  100) ( s  13.5)
K tn ( s )  86
s
( s  210) ( s  19)
86 ( s  20) ( s  100) ( s  13.5)

20
s
( s  210) ( s  19)
86 20 ( s  100) ( s  13.5)

20 s
19
( s  210)
86 ( s  100) ( s  13.5)

19
s
( s  210)
ゲイン dB
前出の K tn をPIDコントローラで近似してみる.
0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
1.5
1
0.5
4.5s 2  514 s  6111

s ( s  210)
0
0.1
1
10
100
1000
周波数 [rad/sec]
kI
kD s
K PID ( s )  k P  
s  s 1
(k P  k D  1 ) s 2  ( 1k P  k I ) s   1k I

s ( s   1 )
kP  2.31, kI  29.1, K D  0.01,   0.00476
s  20
s  19
20
:
19
:
214
ゲイン dB
60
40
20
0
-20
-40
位相 °
-60
100
50
0
-50
-100
0.1
1
10
周波数 [rad/sec]
•Ktnは,PIDコントローラで精度良く近似できた.
100
1000
: K PID
: kP
: K tn
:
kI
s
k s
: D
 s 1
215
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
5
4
3
2
1
0
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
e:制御誤差 y:出力
u:操作量
d:外乱
PIDコントローラの評価(Ktn との比較)
•Ktn と実用上同じ
特性が得られた.
(次数はより低い).
•ゲイン余裕:
11.1dB
•位相余裕:62 °
: K PID
: K tn
0
0.5
1
1.5
時刻 [s]
2
2.5
3
216
古典制御理論の範疇では
•コントローラの設計は試行錯誤的であり,
•設計者の経験に設計結果が左右されることが多い.
•熟練した設計者は,ここに上げた要素の他に,飽和要素,不感帯など
非線形要素を駆使して高性能の制御系を設計している.
217