Oren-Nayar反射モデルに基づく 反射特性の推定 九州芸術工科大学大学院修士2年 芸術工学研究科芸術工学専攻 木村 達治 研究の背景 研究の背景 仮想物体の見えをCGでリアルに表現するた めに、一般に数学的な反射モデルが利用さ れる. しかしながら、現実物体の反射パラメータの 値を決めることは難しく、現状ではこれらの 値を人が試行錯誤しながら選ぶことが多い. そのため、CGコンテンツの作成に膨大なコ ストがかかっている. 研究の背景 コンピュータビジョンの分野において、実物 体の形状や色、質感などを数値化し、仮想世 界で表現するための研究が盛んにおこなわれ ている. 画像中の物体に関する情報や撮影環境につい ての情報を得ることに役立つ. 仮想環境や任意視点・任意光源状況下での見 え方のバリエーションにも幅広く対応するこ とができる. 研究の目的 研究の目的 手軽に実物体の数値化モデルを 得ることを可能にする ↓ インバースレンダリングが有効 インバースレンダリング 撮影された画像群から照明や視線の影響の ない物体固有の反射特性を推定する過程 研究の目的 一般に拡散反射物体のインバースレンダリ ングには、モデル式がシンプルなことから Lambertモデルが利用されている. しかし、Lambertモデルは表面が粗い物体に おいては実画像と異なった見え方をする. 実画像 Lambertモデルを仮定した合成画像 研究の目的 表面が粗い物体に対して、反射特性の正確 な推定はまだなされていない. 研究の目的 1992年、粗い表面に対して有効な Oren-Nayar反射モデルが開発される. 本研究では、このOren-Nayar反射モデルに基 づく物体のインバースレンダリング推定手法 を提案する. 粗い表面をもつ物体を任意視点・光源状況下 で、より忠実にCGで再現できることを示す. 可視光領域における反射の原理 反射の原理 物体表面における反射 • 鏡面反射 (specular reflection) • 拡散反射 (diffuse reflection) 反射の原理 反射の原理 反射の原理 拡散反射モデル 拡散反射モデル Lambertモデル L I 0 K d cos i 視点の位置には影響を受けず,どこから見ても同じ色となる. 拡散反射モデル (a) Lambert拡散反射 (b)一般拡散反射 拡散反射モデル Oren-Nayar反射モデル 拡散反射モデル Oren-Nayar反射モデルの式 L(i,r ,r i; ) Kdc I0c cosi ( A B*Max0,cos(r i ) sin tan ) 2 A 1 0.5 * 2 0.33 2 B 0.45 2 0.09 σ=0 のとき A=1,B=0となり, Lambertモデルと一致する. cos(r i ) Normalize(e (n e)n) Normalize(l (n l )n) cos max(n l, n e) cos min( n l, n e) Oren-Nayar 反射モデルに基づく 反射特性パラメータの推定手法 インバースレンダリングにおいて反射 パラメータを推定する際、物体の幾何 形状が必要となる. 本研究では、視体積交差法とMarching Cubes法を用いて、物体の幾何形状を取 得する. 形状復元 視体積交差法 ボクセルへの投票 Oren-Nayar反射モデルの式 L(i ,r ,r i; ) KdcI0c cosi ( A B* Max0,cos(r i ) sin tan ) I ijc K dc ij ( ) L 0,cos( ) sin tan ) Iijc c ( ) cos ( A B * Max r i i I , ij 0 推定するパラメータは g b c r , K K K( K d d , d, d ) オクルージョン考慮のため、画像(画素) バッファを用意し、座標番号を記録. ij ( ) σ=0.0 STD ij ( ) σ=0.1 + I ijc Input image ・ ・ ・ + ij ( ) σ=0.9 ij ( ) σ=1.0 STD STD I ijr ij ( ) I ijg ij ( ) I ijb ij ( ) 最小の標準偏差と なるσをσ*とする c* このσ*の下で K d を求める c c* σ*の下で画素値の平均二乗誤差を最小とする K d を K d とする. K dr* * r { ( ij ij ) Iij } ij {ij ( * )}2 * g { ( ) I ij } ij ij g* Kd ij {ij ( * )}2 c* * b { ( ) I ij } ij ij b* Kd ij {ij ( * )}2 今度はこの3つの K d のもとでσをまた0から0.1刻みで変え ながら,そのたびに入力画像と合成画像の誤差を求め,こ の値を最小にするするようなσを探索し,このσをあらた めて, σ*とする. r g b このようにして得られたσ*に対して K d ,K d ,K d , を初期推定のときの方法と全く同様にして更新し, それぞれ K dr*,K dg*,K db* とする. 以上の計算手続きを各パラメータ の値が収束するまで繰り返す. 収束したら, の探索幅を小さくして,また同じ作業を 繰り返す. 任意の探索幅まで進んだら終了する.ここで、最終的に c 得られた ,K d が推定値となる. 不均一な反射特性を持つ物体のOren-Nayarモデルに 基づく反射特性パラメータの推定手法への拡張 MC法によって生成されたパッチの頂点ごとに粗 さ係数 および,拡散反射係数 K dc を推定する. K dc K dc K dc 実験結果 シミュレーション実験Ⅰ シミュレーション実験における3次元シーンモデル 焦点距離f = 2000,視点位置(0,0,1000), 光源位置(0,0,10000) 円柱モデルの半径r=50,高さh=100 画像サイズ 400×400 頂点数 パッチ数 54317 113220 MC法により復元されたsurface modelとwire-frame model σの真値 0.45516 0.350 0.300 標準偏差 0.250 0.200 0.150 0.100 0.050 0.000 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 粗さ係数σ 0.7 0.8 c σ*を求めるための I ij ij ( ) の標準偏差 0.9 1.0 400 IKij ( ) c* 誤差の2乗平均 350 300 250 200 150 100 50 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 粗さ係数σ 新たなσ*を求めるための 0.7 0.8 0.9 1.0 cr , g ,b i, j {Iijc K dc*ij ( )}2 画素数 3 4 誤差の2乗平均 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 0.1 0.01 0.001 粗さ係数σの探索幅 1E-04 探索幅による真値(入力画像画素値)と推定値の平均2乗誤差の推 移. 0.06 K 各真値係数との差 0.05 0.04 σ Kr Kg Kb 0.03 0.02 0.01 0 0.1 0.01 0.001 0.0001 σの探索幅 探索幅による真値係数と推定値係数との差の推移. 探索幅 σ Kr Kg Kb 0.1 0.4 0.81017 0.42812 0.27368 0.01 0.42 0.81829 0.43242 0.27643 0.001 0.425 0.82034 0.43350 0.27712 0.0001 0.4255 0.82054 0.43360 0.27719 0.45516 0.835294 0.442745 0.284039 真値 input Lambert OrenNayar input Lambert Sum of RGB error ERROR 120 O-N ERROR 0 シミュレーション実験Ⅱ 4分割領域円柱モデルに関する数値データ. 54317個の座標データ 113220個の三角パッチ 上下閾値 48 上下越え数 17157 cosi <= 0となる点 18671 cosi > 0となる点 18489 投影画像枚数の閾値 18枚 推定可能点数 18467 推定不可能点数 22 σ :0.2674 Kr:0.7162 Kg:0.7477 Kb:0.2234 σ:0.6374 Kr:0.3162 Kg:0.4477 Kb:0.7234 σ :0.4674 Kr:0.3162 Kg:0.8477 Kb:0.2234 σ:0.0674 Kr:0.9162 Kg:0.4477 Kb:0.3734 400×400 pixel 72枚 1.0 Roughness σ 0 粗さ係数σマップ 実画像実験 撮影システム (画像サイズ640×480,72枚) 実際の撮影風景 29615個の座標データ 76340個の三角パッチ 推定可能点 27211 推定不能点 2404( cos<= 0となる点を含む) i 推定された各σの個数 σ<0 0.0=<σ< 0.1 0.1=<σ< 0.2 0.2=<σ< 0.3 0.3=<σ< 0.4 0.4=<σ< 0.5 0.5=<σ< 0.6 0.6=<σ< 0.7 0.7=<σ< 0.8 0.8=<σ< 0.9 0.9=<σ< 1.0 1.0 <σ 0 6316 24 1485 16757 2191 280 36 19 24 79 0 0.0% 23.2% 0.1% 5.5% 61.6% 8.1% 1.0% 0.1% 0.1% 0.1% 0.3% 0.00% 合計 27211 100.0% (=推定可能点個数) input Lambert OrenNayar input Lambert 120 Sum of RGB error ERROR O-N ERROR 0 MOVIE 任意始点 σマップ 任意光源 MovieはMovie フォルダにまとめ ています。 まとめ まとめ 本研究において,Oren-Nayar反射モデルに基 づく物体の反射パラメータの推定手法について 述べた. Oren-Nayarモデルにおける物体の反射特性を物 体領域に対して密に推定する事で,領域ごとに 異なる反射特性を持つ物体に対しても,詳細な 反射特性を推定することができた. 従来CG・CV等で用いられる代表的なLambert拡散 反射モデルよりも,物体を忠実に再現できるこ とを示した. 今後の課題 今後の課題 1. 反射パラメータ推定時における光源位置の特定の自動化. 2. 推定後におけるリアルタイムレンダリング処理. 3. 鏡面反射の領域を含んだ物体の反射特性の推定. 4. 物体間の相互反射を考慮した場合の反射特性の推定. 5. 入力画像枚数による反射特性の推定精度の分析. 6. 物体幾何形状の精度による反射特性の推定精度の分析. 7. 各処理における閾値決定等の自動化. 8. パラメータ推定の時間短縮. 実画像を用いた実験における反射特性推定までの処理時間 画像枚数 72枚 29615個の座標データ 76340個の三角パッチ Pentium4 2.8GHz 1G Memory 三次元形状復元 23.05s MC法によるポリゴン化 3.39s ラベリング 頂点平滑化 法線算出 反射特性推定 合計 18.54s 132.25s (2.2m) 21.54s 748.96s (12.5m) 947.73s (15.8m) 未 Oren-Nayar反射モデル 形状復元 2次元画像から3次元への拡張 失われてしまった奥行き情報を見つけ出す。 復元手法の種類: ・ステレオマッチング法 ・照度差ステレオ法(フォトメトリックステレオ法) ・等高線観測法(モアレトポグラフィ法,干渉縞法) ・Shape From Silhouette(物体のシルエットを利用) ・Voxel Coloring(ボクセルの色の一貫性を利用) ・etc 形状復元 2次元画像から3次元への拡張 失われてしまった奥行き情報を見つけ出す。 復元手法の種類: ・ステレオマッチング法 ・照度差ステレオ法(フォトメトリックステレオ法) ・等高線観測法(モアレトポグラフィ法,干渉縞法) ・Shape From Silhouette(物体のシルエットを利用) ・Voxel Coloring(ボクセルの色の一貫性を利用) ・etc 形状復元 ピクセル ボクセル What is a Visual Hull? 形状復元 形状復元 すなわち c c* 2 { I K ( )} cr , g ,b i , j ij d ij 画素数 3 を最小化するσをσ*とする. (全画像中における物体領域の画素値(RGB)の 総和あたりの差の2乗の最小値) Z Y X 今回の実験で用いたキャリブレーション用パタンボード • • • • 円柱中央部推定エラー 局所的最適解からの脱出 cosθiによるK>1 物体表面にノイズ 2次元画像からの3次元形状復元
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