インターネットでの権利侵害と プロバイダの責任 情報社会と情報倫理 No.10 インターネット上の権利侵害(1) 掲示板など 誹謗中傷などの人権侵害 “インターネットを悪用した人権侵害をなくすた めに(政府広報オンライン)” ファイル交換システム P2P 音楽・映画などの著作権侵害 個人情報漏えい インターネット上の権利侵害(2) ネット上の人権侵害、2008年は過去最多の515 件 http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2 009/03/27/22939.html ネット上の人権侵害、前年比52.6%増加(2009) http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/ 20100326_357103.html インターネット上の権利侵害(3) こういった権利侵害に対して,サービスを提供し ているプロバイダに責任はあるのか? ビデオ “ある日突然ねらわれる・ネット中傷” 特報首都圏 NHK総合 10/8/04 問 題 インターネットでの権利侵害に対して,プロ バイダは責任があるのかどうか? プロバイダの法的立場 電気通信事業法の電気通信事業者 第三条 電気通信事業者の取扱中に係る通信 は,検閲してはならない 第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信 の秘密は,侵してはならない 第七条 電気通信事業者は,電気通信役務の提 供について,不当な差別的取扱いをしてはなら ない 状 況(1) 関係者 3者(社) A プロバイダ(ISP) B Aの契約者で,Aが管理するwebサーバを 使って,webサイトを公開 C Bの知り合い(でなくてもかまわない) 状 況(2) 発信者Bが自分のwebサイトで,Cを批判した 被害者Cはそれが事実無根であるとして,Bの責 任を追及した と同時に,サーバの管理者Aの責任も追及した 問 題 管理者Aに責任があるのかどうか? 管理者Aはどうすれば裁判沙汰にならないで済 ませられるのか? こんな状況では? Aを電話会社(NTTなど) Bを麻薬の密売人 CをBの客 CがBに電話をかけて注文 Aは共犯か? 電気通信事業法 第三条 検閲の禁止 電気通信事業者の取扱中に係る通信は,検閲し てはならない。 Aは,BとCの通話の内容を知ることができない 当然,Aは共犯ではない 元の問題 管理者A プロバイダ 発信者B webサイト開設者で,Cを批判 被害者C Bの批判はでたらめであると主張 BとCのどちらの言い分が正しいかは? Bは当然webページの内容に責任あり Aは? A に 責 任 あ り と す る と …(1) 被害者Cから訴えられる可能性がある それを避けるためには、(Bだけでなく)すべての 契約者のすべてのコンテンツをチェック まず,そのようなチェックが物理的に可能? そのようなことは検閲? A に 責 任 あ り と す る と …(2) 管理者Aが,問題がありと判断した発信者Bのコ ンテンツを,Bの了解を得ずに削除 表現の自由の侵害? 契約違反? Bが,不当に削除したとAを訴える 裁判で,コンテンツに問題がないと判断されたら … さらに CがBを訴えるのに,必要な情報(住所・氏名な ど) Aが持っている それをCがAに要求した Aはどうする? 過去の例 ニ フ テ ィ 訴 訟 (1) パソコン通信時代の@nifty 掲示板での議論でトラブル (実際には,根が深い) ニ フ テ ィ 訴 訟 (2) 発信者Bが,被害者Cの名誉を傷つける書き込 みを掲示板に行った Cは,Bを訴えた 掲示板管理者Aは書き込みを削除しなかったの で,CはAも訴えた ニ フ テ ィ 訴 訟 (3) 東京高裁(9/5/01) 管理者の責任はない ただし,何もしていなかったわけではない 2チャンネル関係 多くの裁判 匿名書き込みのため,掲示板の管理者の責任 が追求された プロバイダ責任制限法 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限 及び発信者情報の開示に関する法律 参考書 飯田耕一郎(編著),プロバイダ責任制限 法解説,三省堂,2002,ISBN4-38532188-4 “特定電気通信役務提供者”とは 商用プロバイダだけでない 非営利の掲示板の管理者なども対象 “特定電気通信”とは 不特定の者に送られる webとか掲示板など 1対1のメールは含まれない 簡 単 に ま と め る と …(1) 問題があるコンテンツの存在を知らなければ損 害賠償責任はない(第三条一項) 簡 単 に ま と め る と …(2) 手順に従って“削除”すれば,発信者に対して賠 償責任はない(第三条二項) 簡 単 に ま と め る と …(3) 実際には“グレーの部分”が多い つまりプロバイダが判断する部分が多い 判断を間違えると… 時間がかかる “発信者情報の開示”とは(1) 被害者Cが発信者Bの責任を追及したいとする Bについての情報(住所・氏名など)が必要 それを知っているのは管理者A Aに要求 “発信者情報の開示”とは(2) 管理者Aはむやみに発信者Bの情報を公開でき ない プライバシーの問題 電気通信事業法第四条 秘密の保護 被害者Cは泣き寝入り? 発信者情報の開示 手順を踏めば可能 実は… 第四条四項 開示の請求に応じないことにより当 該開示の請求をした者に生じた損害については, 故意又は重大な過失がある場合でなければ,賠 償の責めに任じない。 Bの意見を聴取することが要件 結局,管理者Aは自ら積極的に開示しないことが 多くなりそう 実際は… 被害者Cは,発信者Bの情報を管理者Aに請求 Aは拒絶 裁判 Cは,Aの情報を元にBを訴える 裁判 Cは2回裁判を起こすことになりそう というわけで 被害者の救済の道は遠い? 「プロバイダ責任制限法」に残る、これだけの課 題(11/17/03) http://www.itmedia.co.jp/news/0311/17/nj00_pr ovider.html そこで 法務省の人権擁護機関からプロバイダーに対し て情報の削除依頼 ただし,無条件に削除するわけではない ネット上の人権侵害、法務省からの削除依頼に も適宜対応~業界団体 http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2 004/10/07/4909.html 韓国では 韓国、インターネット掲示板利用に本人確認義務 化へ http://internet.watch.impress.co.jp/static/colum n/security/2007/03/06/ 発信者情報開示の実例 レコード会社7社、「LimeWire」「Cabos」ユーザー 10人の情報開示を請求 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/ 20101027_402946.html 青少年ネット規制法 青少年が安全に安心してインターネ ットを利用できる環境の整備等に関 する法律 青少年ネット規制法(1) 18歳未満の者が,インターネットによって犯罪に 巻き込まれることを防ぐ 有害なコンテンツにアクセスできないようにする “子どものインターネット フィルタリングで安全を 守る~青少年インターネット環境整備法がスター ト~(政府広報オンライン)” 青少年ネット規制法(2) 有害なサイトへのアクセスができないようにする 仕組み フィルタリング 携帯電話会社にフィルタリングの機能を義務 青少年が使う携帯電話の契約条件とする ISPやパソコンメーカーにも義務 青少年ネット規制法(3) 有害なサイトとは “表現の自由”の 侵害の恐れは 判断基準 誰が判断するのか 家庭内の問題 国が関与 民間の機関 フィルタリングは完全なものか 有害でないサイトを有害とみなす 有害なサイトを見逃す ブロッキング インターネット上の有害情報にアクセスできない ようにする 国外のサイトにある場合,有害情報の削除に 時間がかかる・不可能な場合がある 検討中
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