インターネットを取り巻く法律

インターネットを取り巻く法律
情報社会と情報倫理
第13回
今までに取り上げた主な法律





日本国憲法
個人情報の保護に関する法律
(個人情報保護法)
著作権法
特定電子メールの送信の適正化等に関する法
律
電子署名及び認証業務に関する法律
現 状

平成25年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等
について
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h25/pdf011.pdf
(次の2枚の表は,この資料からの引用)
インターネットでの権利侵害と
プロバイダの責任
Webサイトなどの内容(コンテンツ)
に,サービスを提供しているプロバイ
ダに責任はあるのか
インターネットでの権利侵害(1)


掲示板など
 誹謗中傷などの人権侵害
 “インターネットを悪用した人権侵害をなくすた
めに(政府広報オンライン)”
ファイル交換システム
 P2P
 音楽・映画などの著作権侵害
 個人情報漏えい
インターネットでの権利侵害(2)



ネット上の人権侵害、2008年は過去最多の515
件(INTERNET Watch)
ネット上の人権侵害、前年比52.6%増加(2009)
(INTERNET Watch)
平成24年中の「人権侵犯事件」の状況について
(概要)(法務省)
インターネットでの権利侵害(3)


こういった権利侵害に対して,サービスを提供し
ているプロバイダに責任はあるのか?
例 ある人について,ウソのことをブログの記事
に書いた
 書いた者には責任あり
 ブログのサービスを提供している会社に責任
はあるのか
ISP(インターネット
サービス プロバイダ)
プロバイダの法的立場




電気通信事業法の電気通信事業者
第三条 電気通信事業者の取扱中に係る通信
は,検閲してはならない
第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信
の秘密は,侵してはならない
第七条 電気通信事業者は,電気通信役務の提
供について,不当な差別的取扱いをしてはなら
ない
状 況(1)

関係者 3者(社)
 A プロバイダ(ISP)
 B Aが提供するブログサービスを使っている
 C Bの知り合い(でなくてもかまわない)
状 況(2)



発信者Bがブログの記事で,Cを批判した
被害者Cはそれが事実無根であるとして,Bの責
任を追及した
と同時に,サービスの提供者(社)Aの責任も追
及した
問 題


Aに責任があるのかどうか?
Aはどうすれば裁判沙汰にならないで済ませられ
るのか?
こんな状況では?





Aを電話会社(NTTなど)
Bを麻薬の密売人
CをBの客
CがBに電話をかけて注文
Aは共犯か?
電気通信事業法 第三条

検閲の禁止
電気通信事業者の取扱中に係る通信は,検閲し
てはならない。

Aは,BとCの通話の内容を知ることができない

当然,Aは共犯ではない
元の問題

管理者A ブログサービスを提供するプロバイダ

発信者B ブログ記事で,Cを批判

被害者C Bの批判はでたらめであると主張
 BとCのどちらの言い分が正しいかは?

Bは当然記事の内容に責任あり

Aは?
A に 責 任 あ り と す る と …(1)


被害者Cから訴えられる可能性がある
それを避けるためには、(Bだけでなく)すべての
契約者のすべてのコンテンツ(記事)をチェック

まず,そのようなチェックが可能?

そのようなことは検閲?
A に 責 任 あ り と す る と …(2)



管理者Aが,問題がありと判断した発信者Bのコ
ンテンツを,Bの了解を得ずに削除
 表現の自由の侵害?
 契約違反?
Bが,不当に削除したとAを訴える
裁判で,コンテンツに問題がないと判断されたら
…
さらに

CがBを訴えるのに,必要な情報(住所・氏名な
ど)

Aが持っている

それをCがAに要求した

Aはどうする?
A(プロバイダ)が悩む点


顧客の言動に連帯責任があるのか?
 “場”を提供している
顧客の情報を開示してかまわないのか?
 “裁判に必要だ!”と要求されたら
無視すれば,いいじゃないの!?
でも,被害者の立場だったら…
プロバイダ責任制限法
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限
及び発信者情報の開示に関する法律
“特定電気通信役務提供者”とは

商用プロバイダだけでない

非営利の掲示板の管理者なども対象
“特定電気通信”とは

不特定の者に送られる

web,ブログ,掲示板など

1対1のメールは含まれない
簡 単 に ま と め る と …(1)

問題があるコンテンツの存在を知らなければ損
害賠償責任はない(第三条一項)
簡 単 に ま と め る と …(2)

手順に従って“削除”すれば,発信者に対して賠
償責任はない(第三条二項)
簡 単 に ま と め る と …(3)


実際には“グレーの部分”が多い
つまりプロバイダが判断する部分が多い
 判断を間違えると…
 時間がかかる
“発信者情報の開示”とは(1)

被害者Cが発信者Bの責任を追及したいとする

Bについての情報(住所・氏名など)が必要

それを知っているのは管理者A

Aに要求
“発信者情報の開示”とは(2)


管理者Aはむやみに発信者Bの情報を公開でき
ない
 プライバシーの問題
 電気通信事業法第四条 秘密の保護
被害者Cは泣き寝入り?
発信者情報の開示の手順

正当な理由があれば開示できる
実は…



第四条四項 開示の請求に応じないことにより当
該開示の請求をした者に生じた損害については,
故意又は重大な過失がある場合でなければ,賠
償の責めに任じない。
Bの意見を聴取することが要件
結局,管理者Aは自ら積極的に開示しないことが
多くなりそう
実際は…



被害者Cは,発信者Bの情報を管理者Aに請求
 Aは拒絶
 裁判
Cは,Aの情報を元にBを訴える
 裁判
Cは2回裁判を起こすことになりそう
というわけで



被害者の救済の道は遠い?
「プロバイダ責任制限法」に残る、これだけの課
題(11/17/03)
http://www.itmedia.co.jp/news/0311/17/nj00_pr
ovider.html
さらに,“プロバイダ責任制限法検証WG”
http://www.soumu.go.jp/menu_sosiki/kenkyu/pr
ovider01siryo.html
そこで


被害者が法務省の人権擁護機関に相談
そこが調査して,プロバイダーに対して情報の削
除依頼
 ただし,無条件に削除するわけではない
 ネット上の人権侵害、法務省からの削除依頼
にも適宜対応~業界団体
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news
/2004/10/07/4909.html
解決策になるか? 新たな動き

忘れられる権利
 自分の情報の削除を,サーバなどの管理者に
要求できる権利
 自分の情報が,検索結果に表示されないよう
に検索サイトに要求できる権利
 EUで議論がすすんでいる
不正アクセス
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
http://www.npa.go.jp/cyber/legislation/
(図の引用元)
例えば



モトカノ・モトカレのID・パスワードを使って,メー
ルを読む
友人のパスワードを類推して,ログインしてレポ
ートのファイルを削除する
“悪ふざけ”ではなく,犯罪となる
他人のIDとパスワードを使って,使う権利の
不正アクセス
ないコンピュータを使えるようにする(ログイン
する)
脆弱性をついて,使う権利のないコンピュータ
を使えるようにする(ログインする)
ただし,いずれもネットワークを
経由している場合に法に触れる
他には



他人に不正行為を行わせるように,ID・パスワー
ドを(掲示板などで)さらす
偽物のサイト作って,ID・パスワードを入力させ,
集める
ということも違反
罰則は

3年以下の懲役又は100万円以下の罰金

悪ふざけでは済まなくなる
青少年ネット規制法
青少年が安全に安心してインターネ
ットを利用できる環境の整備等に関
する法律
青少年ネット規制法(1)



18歳未満の者が,インターネットによって犯罪に
巻き込まれることを防ぐ
有害なコンテンツにアクセスできないようにする
“子どものインターネット フィルタリングで安全を
守る~青少年インターネット環境整備法がスター
ト~(政府広報オンライン)”
青少年ネット規制法(2)



有害なサイトへのアクセスができないようにする
仕組み
 フィルタリング
携帯電話会社にフィルタリングの機能を義務
 青少年が使う携帯電話の契約条件とする
ISPやパソコンメーカーにも義務
青少年ネット規制法(3)



有害なサイトとは
“表現の自由”の
侵害の恐れは
 判断基準
誰が判断するのか
家庭内の問題
 国が関与
 民間の機関
フィルタリングは完全なものか
 有害でないサイトを有害とみなす
 有害なサイトを見逃す