インターネット上での人権侵害とプロバイダの責任

インターネット上での権利侵害と
プロバイダの責任
情報社会と情報倫理
6/28/07
インターネット上の権利侵害


掲示板
 誹謗中傷などの人権侵害
ファイル交換システム
 P2P
 音楽・映画などの著作権侵害
 個人情報漏えい
ビデオ

“ある日突然ねらわれる・ネット中傷”

特報首都圏 NHK総合 10/8/04
プロバイダの法的立場




電気通信事業法の電気通信事業者
第三条 電気通信事業者の取扱中に係る通信
は,検閲してはならない
第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信
の秘密は,侵してはならない
第七条 電気通信事業者は,電気通信役務の提
供について,不当な差別的取扱いをしてはなら
ない
状 況(1)

関係者 3者(社)
 A プロバイダ(ISP)
 B Aの契約者で,Aが管理するwebサーバを
使って,webサイトを公開
 C Bの知り合い(でなくてもかまわない)
状 況(2)



発信者Bが自分のwebサイトで,Cを批判した
被害者Cはそれが事実無根であるとして,Bの責
任を追及した
と同時に,サーバの管理者Aの責任も追及した
問 題


管理者Aに責任があるのかどうか?
管理者Aはどうすれば裁判沙汰にならないで済
ませられるのか?
こんな状況では?





Aを電話会社(NTTなど)
Bを麻薬の密売人
CをBの客
CがBに電話をかけて注文
Aは共犯か?
電気通信事業法 第三条

検閲の禁止
電気通信事業者の取扱中に係る通信は,検閲し
てはならない。

Aは,BとCの通話の内容を知ることができない

当然,Aは共犯ではない
元の問題

管理者A プロバイダ

発信者B webサイト開設者で,Cを批判

被害者C Bの批判はでたらめであると主張
 BとCのどちらの言い分が正しいかは?

Bは当然webページの内容に責任あり

Aは?
A に 責 任 あ り と す る と …(1)


被害者Cから訴えられる可能性がある
それを避けるためには、(Bだけでなく)すべての
契約者のすべてのコンテンツをチェック

まず,そのようなチェックが物理的に可能?

そのようなことは検閲?
A に 責 任 あ り と す る と …(2)



管理者Aが,問題がありと判断した発信者Bのコ
ンテンツを,Bの了解を得ずに削除
 表現の自由の侵害?
 契約違反?
Bが,不当に削除したとAを訴える
裁判で,コンテンツに問題がないと判断されたら
…
さらに

CがBを訴えるのに,必要な情報(住所・氏名な
ど)

Aが持っている

それをCがAに要求した

Aはどうする?
過去の例
ニ フ テ ィ 訴 訟 (1)

パソコン通信時代の@nifty

掲示板での議論でトラブル

(実際には,根が深い)
ニ フ テ ィ 訴 訟 (2)



発信者Bが,被害者Cの名誉を傷つける書き込
みを掲示板に行った
Cは,Bを訴えた
掲示板管理者Aは書き込みを削除しなかったの
で,CはAも訴えた
ニ フ テ ィ 訴 訟 (3)


東京高裁(9/5/01)
管理者の責任はない
 ただし,何もしていなかったわけではない
2 チ ャ ン ネ ル 関 係 (1)


多くの裁判
匿名書き込みのため,掲示板の管理者の責任
が追求された
プロバイダ責任制限法
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限
及び発信者情報の開示に関する法律
参考文献
飯田耕一郎(編著),プロバイダ責任制限
法解説,三省堂,2002,ISBN4-38532188-4
“特定電気通信役務提供者”とは

商用プロバイダだけでない

非営利の掲示板の管理者なども対象
“特定電気通信”とは

不特定の者に送られる

webとか掲示板など

1対1のメールは含まれない
簡 単 に ま と め る と …(1)

問題があるコンテンツの存在を知らなければ損
害賠償責任はない(第三条一項)
簡 単 に ま と め る と …(2)

手順に従って“削除”すれば,発信者に対して賠
償責任はない(第三条二項)
簡 単 に ま と め る と …(3)


実際には“グレーの部分”が多い
つまりプロバイダが判断する部分が多い
 判断を間違えると…
 時間がかかる
“発信者情報の開示”とは(1)

被害者Cが発信者Bの責任を追及したいとする

Bについての情報(住所・氏名など)が必要

それを知っているのは管理者A

Aに要求
“発信者情報の開示”とは(2)


管理者Aはむやみに発信者Bの情報を公開でき
ない
 プライバシーの問題
 電気通信事業法第四条 秘密の保護
被害者Cは泣き寝入り?
実は…



第四条四項 開示の請求に応じないことにより当
該開示の請求をした者に生じた損害については,
故意又は重大な過失がある場合でなければ,賠
償の責めに任じない。
Bの意見を聴取することが要件
結局,管理者Aは自ら積極的に開示しないことが
多くなりそう
実際は…



被害者Cは,発信者Bの情報を管理者Aに請求
 Aは拒絶
 裁判
Cは,Aの情報を元にBを訴える
 裁判
Cは2回裁判を起こすことになりそう
というわけで


被害者の救済の道は遠い?
「プロバイダ責任制限法」に残る、これだけの課
題(11/17/03)
http://www.itmedia.co.jp/news/0311/17/nj00_pr
ovider.html
そこで


法務省の人権擁護機関からプロバイダーに対し
て情報の削除依頼
 ただし,無条件に削除するわけではない
ネット上の人権侵害、法務省からの削除依頼に
も適宜対応~業界団体
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2
004/10/07/4909.html
韓国では

韓国、インターネット掲示板利用に本人確認義務
化へ
http://internet.watch.impress.co.jp/static/colum
n/security/2007/03/06/