ミューオンの寿命測定と弱い相互作用のフェルミ定数の

12月7日 物理学コロキウム第二
プラスチックシンチレーターによる
ミューオンの測定
内容
1.目的
2.測定原理
3.TACによる時間差の測定
4.今後の予定
5.まとめ
柴田研究室
三瓶恭佑
1
1. 目的
• プラスチックシンチレーターを設計し、測定器
に対する理解を深める。
• 宇宙線ミューオンの測定を通して、測定回路
の基礎を学ぶ。
• ミューオンの寿命測定をし、弱い相互作用に
ついて学ぶ。
2
2. 測定原理
宇宙線 : 一次宇宙線はp , e , α粒子である。
大気圏で二次宇宙線ができる。
p  A π+A
p  A  K +A

π, K 中間子の崩壊によりμが発生する。
μを測定に用いる。
この
3
2.測定原理
ミューオンの崩壊
   e νe ν
μ
   e νe νμ
mμ =105.7 ΜeV/c 2
接触型相互作用
ν
μ
ν
μ


W
νe
e
GF
e
νe
4
2.測定原理
ミューオンの寿命
t

τ
N (t )  N0 (1  e )
N0
τ
t

τ
dN (t ) N 0

e dt
τ
元のミューオンの数
寿命
: 約 2 μs
N (t ) 時刻 t までに崩壊したミューオンの数
dN (t )
dt
今回の実験では
τ
0
と
dN (t )
dt
N0
を測定する。
が求まる。
t
5
2.測定原理
測定装置
PMT
#1
#2
#3
μ
PMT
PMT
• プラスチックシンチレーター
と光電子増倍管を組み合わ
せる。
• プラスチックシンチレーター
#1,#3 :18×8 cm 2 厚さ 6 mm
2
cm
#2 : 16×8
厚さ 10 cm
6
2.測定原理
プラスチックシンチレータ―と
光電子増倍管
• プラスチックシンチレーター
電離放射線が通過すると、シンチレーター内部の原子
が励起される。その後、原子が基底状態に戻る際にエ
ネルギーが可視光として放出される。
•光電子増倍管(PMT)
プラスチックシンチレータ―からの光を光電子に変換
する。それを何段ものダイノードで増幅し大きな電気的
パルスに変える。
(今回の実験では10段のダイノード)
7
2.測定原理
測定回路
#1
PMT
discri
#2
PMT
discri
#3
μ
PMT
start
coincidence
G
veto
discri
delay
TAC
ADC
PC
stop
gate gene
coincidence
G
• ミューオンが#2で止まり、#1#2  #3
の信号をスタート

e
• ミューオンが崩壊し、 を放出した信号
がストップ
ミューオンの崩壊
   e νe ν
μ
   e νe ν
μ
その時間差がミューオンの寿命
8
3. TACによる時間差の測定
• TAC(Time to Amplitude Converter : 時間差-波高変換器)
時間間隔をパルスの振幅に変換する。その出力をADCに入れる。
• TACのフルスケール 10μs
TAC
• パルサーのパルスを用いて、
時間差を0.5, 1 , 4 , 6μsで測定
9
3.TACによる時間差の測定
pulser
discri
start
TAC
ADC
PC
stop
gate&delay
generator
•パルサーのパルスをスタートとした。
•Delayで 0.5, 1 , 4 , 6μs 遅らせた信号をストップとした。
10
3.TACによる時間差の測定
TACによる時間差の測定
1
.2  10 7
12000000
1  10
10000000
8  10 6
8000000
6  10 6
6000000
4  10 6
4000000
2  10 6
2000000
00
カウント数
7
0.5μs
1μs
4μs
6μs
0
100
200
300
400
500
600
700
800
チャンネル数
時間差(μs)
時間差とチャンネル数の関係
7
6
5
4
3
2
1
0
y = 0.0104x - 0.0226
0
100
200
300
400
500
600
700
チャンネル数
11
4. 今後の予定
• ミューオンの寿命を測定する。
今後の課題
• 時間差とチャンネル数の較正の精度を高め
る。
• ミューオンの入射角(天頂角分布)の影響を
考える。
12
5. まとめ
• ミューオンの測定を通して、基本的な測定技術や原
理を学ぶことが目的である。
• 宇宙線ミューオンを用いる。
• ミューオンの寿命測定に先立って、時間差とチャン
ネル数の較正をした。
• 時間差とチャンネル数には線形性がある。
• 今後さらに較正の精度を高める。
dN (t )
• TACとADCを組み合わせることにより dt を測定で
きる。
13
14
Bethe-Blochの式と飛程(stopping range)の計算
化合物標的でのBethe-Blochの式は、各元素標的で
のBethe-Blochの式の和として決定される。
陽子
入射前の運動
エネルギー:E
 dE 
 dE 

   

i
 dx  和
 dx  i
 m V 2  ……⑧
z 2 e 4 ni
化合物標的での

ln 

2 2
i 4 V m
 I i  Bethe-Blochの式
0
0
E0
 dE 
R ( E 0 )   

dx


0
1
R
……⑨
重荷電粒子の飛程
標的
陽子、 のプラスチック(CH)
中での飛程 R

R
90
(cm)
80
80
70
60
60
50
dE
入射後の運動
エネルギー:E
停止
(ただし、i は各元素の物理量であることを示す)
Bethe-Blochの式から、次のように飛程 R
が計算できる。ただし E 0 , E はそれぞれ
重荷電粒子の標的物質に侵入する前、
および後の運動エネルギーである。
標的
入射

40
40
30
陽子
20
20
粒子の入射時の
運動エネルギー
10
00
0
0
50
50
100
100
150
150
(MeV)
200
200
250
15
7
• 時間分解能の測定
ADC
start
1
PMT
discri
2
PMT
discri
fan-in
G
fan-out
delay
fan-in
G
fan-out
stop
TAC
coinci
G
dence
•1のプラスチックシンチレータ―の信号をスタートとした。
•Delayで 5μs 遅らせた信号をストップとした。
16
カウント数
delay 5ns
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
0
50
100
150
200
チャンネル数
•半値全幅が
17
ミューオンの天頂角分布
•
ミューオンは大気中を走る際にエ
ネルギーを失いながら降って来る。
そのために通過する大気に差が生
まれると地表に降ってくるミューオン
の量が変化する。
•
天頂角が変化することにより通過
してくる大気の長さに差が生まれる
ためにミューオンの降ってくる量は
天頂角に依存していると言うことが
できる。
θ
18
Bethe-Blochの式
m
Bethe-Bloch
mV 
dE
z e n


ln 

2 2
dx 4 0 V m  I 
2 4
2
(MeV/cm)
電子の質量:
重荷電粒子の電荷:
重荷電粒子の速度: V
標的物質の単位体積中の電子の数: n
標的物質の平均イオン化ポテンシャル: I
ze
G 2m2
τ 
192π3
1
19
宇宙線とは
入射粒子数を表す量の一つとして強度が上げられる。ある方向からくる粒子の強
度はその方向を含む単位立
P
一次宇宙線
体角から入射して、単位面積を単位時間に通過する粒子数である。したがって単
位はよくcm¡2sec¡1sterad¡1
を用いる。天頂角µ に対する強度をjµ とすると
J=
Z
jµd = 2¼
Z ¼=2
0
jµ sin µdµ
は、単位面積を単位時間内に上側のあらゆる方向からくる粒子数”全方向強度”
である。
宇宙線の諸成分の天頂角µ に対する強度は鉛直強度jµ=0 に対して次のように
近似される。
jµ ¼ jµ=0 cosn µ
n の値は粒子の種類や高度によって異なる。地上付近ではミューオンの成分に
対してはn ¼ 2 、電子に対し
てはn ¼ 3 である。
2
20
#1
PMT
discri
#2
PMT
discri
PMT
discri
#3
μ
coincidence
G
veto
start
TAC
ADC
PC
stop
21