大型地下実験の現状と将来 - 東京大学

大型地下実験の現状と将来
東京大学宇宙線研究所
神岡宇宙素粒子研究施設
塩澤 真人
Thanks to
陽子崩壊・ニュートリノ検出器関係者
XMASSグループ
KamLANDグループ
CANDLESグループ
陽子崩壊探索とニュートリノ実験(0νββ探索)
• これまで
• 次世代陽子崩壊・ニュートリノ検出器
• 2重ベータ崩壊探索実験
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
ニュートリノ混合と質量の発見
特に最近10年間での飛躍的な進展。
− 大気ニュートリノ νµντ
− Super-K
− 太陽ニュートリノ νeνµ,ντ
− Homestake, Kamiokande, SAGE, GALLEX, Super-K, SNO,
Borexino
− 原子炉ニュートリノ anti-νeanti-νµ,ντ
− CHOOZ, KamLAND
− 加速器ニュートリノ νµντ
− K2K, MINOS
− ニュートリノ質量
−
−
∆m212=(7.65+0.23-0.20)x10-5eV2
|∆m223|~|∆m231|=(2.40+0.12-0.11)x10-3eV2
−
−
−
sin2θ12=0.304+0.022-0.016
sin2θ23=0.50+0.07-0.06
sin2θ13<0.04
上限値のみ
−
δ, α1, α2
− 混合角
正負(3世代の階層構造)は未解明
− CPフェーズ (Dirac 1 and Majorana 2)
全て未解明
− Dirac or Majorana?
未解明
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
ニュートリノ混合
レプトン
(ν e ,ν µ ,ν τ )T = U (ν 1 ,ν 2 ,ν 3 )T
UはMaki-Nakagawa-Sakata混合角
0.834
0.788


| U MNS |=  0.439 − 0.557 0.479 − 0.701
 0.439 − 0.557 0.479 − 0.701

0 − 0.2 

0.707 
0.707 
エラーはsinθ13とδ起源のみ表示。エラーなし項の測定エラーは5-15%。
クォーク
( d ' , s ' , b' )T = V ( d , s , b)T
VはCabibbo-Kobayashi-Maskawa混合角
 0.97419 0.2257 0.00359 


| VCKM |=  0.2256 0.97334 0.0415 
 0.00874 0.0407 0.999133 


測定エラーは<1%。最大で5%。
|UMNS|は非対角成分も非常に大きい。|VCKM|~I なぜか?
ニュートリノはまだ未測定のパラメータも存在する。 θ13,δ,α1,α2
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
レプトンとクォークの質量
>10 6
(標準階層構造を仮定)
シーソー機構?
混合や質量を説明するモデル構築のために必要な測定はなにか?
• θ13, δ, α1, α2の測定。+他の混合角の精度向上?
• ニュートリノ質量(階層構造の解明も)
• マヨナラ性 ν = ν ? (質量の起源)
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
• クォーク+レプトン両方同時説明する必要あり
• 超高エネルギーの物理の存在(ニュートリノ質量の起源?)
大統一理論(GUT)へ
3つの相互作用の統一、クォーク・レプトンの統一
大きなゲージ対称性、SU(5), SO(10), E6… with SUSY?
多くの間接的な(実験的・理論的)示唆はあるが、確定的な証拠はない。
モデルの詳細を決めまでにいたらず。
陽子崩壊探索はGUTの直接的な検証
• GUTモデルの排除
• 発見  GUTの存在の証拠、モデルの詳細情報を引き出す
p
u
u
d
q~
+
e
X
d
d
g 4 m5
p
Γ( p → e+π 0 ) =
M4
X
π0
p
u
u
d
~
w
q~
~
HC
ν
s
d
h 4 m5
p
+
Γ( p →νK ) =
2
M M2
Hc X
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
Κ+
Babu@NNN08
• これまでの陽子崩壊のベストな制限値は、Super-Kから。
• 約6年のlivetimeで、陽子寿命の制限を10~30倍改善。
• 感度を上げる(大型化)により、より多くのモデルの検証が可能になる。
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
次世代陽子崩壊・ニュートリノ検出器
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
神岡町栃洞坑
ハイパーカミオカンデ
Height 40m
リングイメージング水チェレンコフ検出器
Hyper-K
1Mton total vol.
540kton fiducial vol.
内水槽 {D43m x L(5x50m)} x 2
PMT ~100,000 (20inch)
20%)
(センサーの被覆率
2009年6月1日
学術会議シンポジウム
Dia. 43m
Height 54m
Super-K
50kton total
22kton fiducial
陽子崩壊pe+π0 channelの探索
e+
γ
γ
SK-II (half PMT) forward-backward display for pe++π0
• 物理量の測定精度は、被
覆率40%と20%でほぼ同じ
• 陽子崩壊の検出感度と
Selection Criteria
 2 or 3 Cherenkov rings
 All rings are showering
 85 < Mπ0 < 185MeV/c2
(3-ring)
 No decay electron
 800 < Mproton < 1050 MeV/c2
Ptotal < 250 MeV/c
*for Next Generation, tighter cut
Ptotal<100MeV/c may be
applied
60%
60%
RMS resolution
SK-I: 28.7 MeV
SK-II: 38.4 MeV
39%
38%
バックグラウンドも同程度
Proton Mass
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
Number of rings
pe + π0 期待される感度
• Ptot < 250 MeV/c (SK cut)
BG=2.2 ev/Mtonyrs, eff.=44%
• Ptot < 100 MeV/c (tighter cut)
BG=0.15ev/Mtonyrs, eff.=17.4%
HK
10 years
BGはK2K ν beamで確認。
PRD77:032003,2008
SK-I + SK-II
0.14Mtyr

8.2x1033 yrs @ 90% CL
Normal cut:
Tight cut:
90%CL
3σ CL
90% CL
3σ CL
HK(0.5 Mt):10years
5.0Mtyr

~1035 yrs @ 90% CL
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
+
pνK sensitivity
γ
K + π+π0
γ
backward π+
HK
10 years
SK-I (full density) forward-backward display
SK-I + SK-II
0.14Mtyr

2.8 x 1033 yrs @ 90%CL
HK(0.5 Mt):10years
5Mtyr

~2 x1034 yrs @ 90% CL
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
その他の物理
• Far Detector in future T2K
• νT2K@SK = νT2K@HK, Hyper-K/Super-K~20
• CPフェーズの測定を目指す。
詳細は中家さんの発表
• 大気ニュートリノの精密観測
• δ, θ13, 質量階層構造 (sin2θ13 >~0.01)
• θ23<π/4 or θ23=π/4 or θ23>π/4
• 超新星爆発ニュートリノ
• 爆発のメカニズムの解明
• 質量階層性?
• 太陽ニュートリノ
• 昼夜のフラックス差(地球によるニュートリノ振動の測定)
• Hepニュートリノの測定
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
大規模地下空洞立地可能性調査
鉛断層
ボーリング孔での調査
(horizontal Direction:N79゚E,Length:250m)
・ボアホールTV観察による亀裂の頻度、方向調査
・孔内載荷試験による、岩盤の変形係数と弾性係数の
測定
Borehole Loading
Tests at 6 Points
トンネル(Direction:N17゚W,Surveyed length:271.9m)
亀裂調査、岩石採取(物性測定)
Hyper-K候補地
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
大空洞の安定性解析
Huge Tunnnel
W48m×H54m
2070m2
クラックテンソル解析
• 亀裂岩盤を異方弾性体として表現した有限要素解析
• 初期応力は土被り圧、等方と仮定
• 水槽の向きは南北方向
中心部でのせん断ひずみ分布
(黄色が0.3%)
Anisotropic Elastic Analysis
2.5m
2.5m
Z
Y
X
空洞壁の変位分布
(赤が~100mm)
2.5
1.0
0.75
0.5
0.3
0.15
0.1
0.075
0.05
0.025
0.0
(%)
せん断ひずみ>0.3%が2.5m
100.
Direction:N-S
90.
80.
70.
60.
50.
40.
30.
55mm
Z
20.
10.
YX
(mm)
0.
変位が中央で55mm
水槽の方向は南北方向がベター(亀裂が東西方向に多い)
大空洞の実現可能性を示した。
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
Hyper-K 建設コスト(?)
詳細な検出器デザイン、開発、見積もりが必要
以下は現時点で可能と思われる超概算
•
•
•
•
•
•
•
空洞掘削
水槽外壁(プラスチック)
PMT支持+上部構造
PMT+防爆ケース+ケーブル
エレクトロニクス
外水槽
その他
1.3Mm3
40,000m2
100,000
100,000
@¥20,000
@¥40,000
SK x 10
@¥350,000
@¥30,000
• 合計
260億円
16億円
40億円
350億円
30億円
10億円
20億円
726億円
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
R & Dアイテム(3年で絞込み、+2年で完了)
• PMT+読み出しエレクトロニクス
–
–
–
–
Hybrid Photo Detector (光電面+シリコン検出器)
大型High QE PMT
最適なPMTサイズの決定(QE, 防爆ケース)
読み出しエレクトロニクス
• 水中でのAD変換? ケーブルコスト(~10億円)削減?
– 防爆ケース(デザイン+試験?)
– 取り付け方法(コスト+建設時間)
• 水槽壁
– プラスチック壁と水槽内構造体との取り合い
• 純水の循環サイクル低下の影響
– 透過率低下の問題がないか?水槽内物質のクリーン化?循環システム
増強?
• 空洞掘削
– 初期圧力測定や追加ボーリングが必要か?専門家との議論。
コストダウンと建設時間短縮が重要なテーマ
国際協力の可能性の議論もされている
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
Hyper-K タイムテーブル
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
2
0
1
2
2
0
1
3
2
0
1
4
2
0
1
5
2
0
1
6
2
0
1
7
2
0
1
8
2
0
1
9
2
0
2
0
2
0
2
1
2
0
2
2
2
0
2
3
2
0
2
4
2
0
2
5
2
0
2
6
2
0
2
7
R&D optionの絞込み
R&D完了
Hyper-K建設
7~10年
Hyper-K運転
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
2
0
2
8
大型液体アルゴンTPC検出器
大型化(>~100kton)が可能
になれば、granularity、エネ
ルギー精度、imaging能力に
優れたニュートリノ・陽子崩壊
検出器になる。
10L0.4ton R&D in KEK
• pe+π0
• ε=45%, 1BG/Mtyr
• 4x1034 years with
ICARUS T600運転開始予定
10 years data
• pνK+
• ε=97%, 2BG/Mtyr
• 5x1034 years with 10
years data
• H20m x D80m, ~100kton
• 隠岐の島 (on-axis of T2K beam)
• 盛り土~100m
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
JHEP04(2007)041
0νββ探索
∑
i
Nucl
e–
Uei
νi
ν Mass
νi
X
W–
W–
e–
Mixing
matrix
Uei
Nuclear Process
Nucl’
Amp[0νββ] ∝ ∑ miUei2≡ mββ
ニュートリノ質量(階層性)に依存する
CPフェーズにも依存
研究テーマ;
ニュートリノはマヨナラ粒子か?
ν=ν?
ニュートリノ質量(階層構造)の解明
シーソー機構、宇宙の物質生成機構とも関係
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
S. Moriyama
1. X M ASS (X enon M ASSive detector)実験の概要
XMASS phase III
Phase
Iと並行にR&D
今後4年計画
直径2.5m,
20トン以上
約1トン
暗黒物質探索
pp ニュートリノ
二重ベータ崩壊
大型極低BG検出器によるdiscoveryを狙う実験計画
2009年6月1日 学術会議シンポジウム
Phase I I における二重ベータ(0νββ)崩壊探索
S. Moriyama
• ニュートリノがマヨラナ粒子であるか。物質反
in eV
物質非対称性にも深く関係している可能性。
1
∆m223
∆m212
濃い領域はbest fit値の場合
10-1
10-2
∆m212
∆m223
Normal Inverted
0νββの寿命
目標値~1027y
10-3
10-4 -4
10 10-3 10-2 10-1
1
Lightest neutrino mass in eV
学術会議シンポジウム
光センサの放射線をさらに抑える
A. Strumia and F. 2009年6月1日
Vissani
将来計画
カムランドの中心に136Xeを溶かした液体シンチレータを吊す。
カムランド200
カムランド1000
1年で世界最高感度を達成した後、
5年で縮退構造を検証 (~60meV)
K. Inoue
将来の拡張性
発光量の向上と集光率の向上。
極低放射能環境の活用を容易にするため導入口を
拡張および補強。
較正装置
カムランドは確立した技術を使って安価
に世界最高感度を実現できる。
Xe 1000 kg含有
光センサー
発光量40%改善
半径1.35mバルーン
集光率80%向上
半径6.5mバルーン
Xe 200 kg含有
半径9mステンレス球
136Xe含有
液体シンチレータ
液体シンチレータ
バッファーオイル
KKDCクレイム
縮退構造
逆階層構造
標準階層構造
カムランド200
直接検証
カムランド1000
消去法で確認
純水
○原子炉反ニュートリノによるニュートリノ振動の精密測定
○地球内部起源反電子ニュートリノ観測によるニュートリノ地球物理の展開
を並行して行う。カムランド1000では観測精度も向上する。
ニュートリノレス二重β崩壊の感度
m1 m2 m3
m2
m1
mββ
1eV
100meV
1年
10meV
1ton
必要重量
60meV
200 kg 5年
1000 kg 5年
136Xe
将来の拡張
CUORE 130Te
純化のR&Dが必要 (2011-)
SuperNEMO 150Nd/82Se
純化・150Nd濃縮のR&Dが必要 (2013-)
ββ
標準階層構造
(2012-)
カムランド
30億円以上
のコスト
m
m2
m1
逆階層構造
100meV
100kg
10kg
6億円
>10meV
m3
縮退構造
136Xe
m3
mββ
>60meV
KKDCクレイム
カムランド
K. Inoue
204kg
5年
プロトタイプ稼働率実績64%
100kg
5年
CANDLES
CAlcium fluoride for studies of Neutrino and Dark matrters
by Low Energy Spectrometer
• 大型化:CaF2結晶
– 減衰長≧10m
Liquid Scintillator
(Veto Counter)
• 低BG化:CANDLES
– 遮蔽:液体シンチ、水
– 低BG結晶開発
– パルス波形
• 高分解能化
– PMT + 2層システム
CaF2(Pure)
mββ~10-2 eV まで
Pure water
4月10日ヒアリング
Large PMT
H. Ogawa
研究計画
mν (eV)
10
1.0
0.1
0.01
ELEGANTS VI
CaF2 (6.4 kg)
大塔
縮退
領域
HDM実験
逆階層
領域
CANDLESシリーズ
III:基盤(A,B)
III地下:基盤(S)
CaF2 (305 kg)
濃縮確認
IV:大型科研費
CaF2 (3.4t)
濃縮法の最適化
48Caのββ崩壊
の全てを研究
次世代
CaF2 (10t)
48Ca : 1%
CaF2 (30t)
48Ca : 5%
o
o
Ca o
o ion o
o
順階層
領域
クラウン・エーテル
48Caの濃縮(実験室からプラントへ)
4月10日ヒアリング
H. Ogawa
大型地下実験まとめ
• 陽子崩壊とニュートリノの性質は、レプトンと
クオークを統一的に理解するかぎ
– 陽子崩壊 (大きな枠組みGUTの検証)
– 質量の絶対値(階層構造の解明)
– マヨナラ性
– θ13、CPフェーズ測定、+混合角の精度向上
• 将来の大型地下実験
– ハイパーカミオカンデ、液体アルゴンTPC
– XMASS-II、KamLAND+Xe、CANDLES-III
2009年6月1日 学術会議シンポジウム