A:赤色巨星構造の解明をめぐって 2008年10月 06日 単位名 大学院:恒星物理学特論II 教官名 中田 好一 授業の内容は下のHPに掲載される。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 成績は出席とレポートの双方により決めます。 授業タイトル A: 赤色巨星構造をめぐって 2008年10月 6日 B: ハヤシライン 2008年10月20日 C: 可視観測 2008年10月27日 D: 赤外観測 2008年11月10日 E: ダスト 2008年11月 17日 F: 星風 2008年12月 1日 G: 惑星状星雲 2008年12月15日 H: 変光 2008年12月22日 I: 銀河系 2008年 1月19日 J: 系外 2008年 1月26日 A.1.HR図上の赤色巨星 中小質量星(M<8Mo)の進化経路 4 PN Post-AGB AGB (H,He二重殻燃焼) Log L/Lo RC He核燃焼 2 Heフラッシュ RGB (H殻燃焼) SG He核重力収縮 MS 0 H核燃焼 4 log T 3.5 進化経路と等時線は元来異なる意味を有する。 0年 6Mo 与えられた質量の 星の進化経路 log (L/Lo) 3 100Ro 4Mo 2 1 共通年齢の星集団の HR図。 = Isochron (等時線) 赤色巨星(Red Giant) =RGB + AGB 赤 色 巨 星 108年 2Mo 109年 10Ro 1Mo 1010年 0 -1 4.5 1Ro 4.0 3.5 log T 赤色巨星の等時線を進化経路で代用してよいわけ しかし実際には進化が速いので 赤色巨星の進化が遅かったら 1.6 1.4 1.2 1.06Mo 1.03Mo 1.0Mo L L 7Gyr Te 5 6 等時線と進化経路は全く異なる Te 10Gyr 等時線と進化経路はよく重なる。 両者は線として重なるだけでなく、線上の分布密度も互いに代用できる。 つまり、等時線上の恒星密度から対応する質量の星の進化速度を導くこ とができる。またその逆も可能である。その理由については各自考えて みよ。 では実際はどうかというと、主系列を離れてから赤色巨星を終えるまで案 外長いことがわかる。RGB期とAGB期の長さの比が1.6Mo付近で逆転 するのも面白い。 赤色巨星各ステージへの到達時間と恒星質量の関係(Z=0.019) 3 (5) 2.5 (2) M/Mo 2 (1) ターンオフ (2) RGB Base (3) RGB先端 (4) AGB Base (5) AGB先端 (1) 1.5 1 0.5 8.7 9 9.3 log t(yr) 9.6 9.9 参考のため、時間をリニアスケールにした絵をつける。 M=2-1.2Moでは主系列を離れてから、赤色巨星に入るまでの期間 が長い。また、M=1.6-3(?)、t=1-2Gyrではレッドクランプの時代 が長いことがわかる。 赤色巨星の各ステージ 3 (5) 2.5 (1) M/Mo 2 (1) ターンオフ (2) RGB Base (3) RGB先端 (4) AGB Base (5) AGB先端 (2) 1.5 (1) 1 0.5 0 2 4 6 t(Gyr) 8 10 A.2.赤色巨星の出現をめぐって: (1)Schonberg・Chandrasekhar Limit 背景 1938 Weizscker, 1939 Bethe HHe核反応が星のエネルギー源 1939 Gamow 一様な組成でHが燃え尽きるまで星が進化する。 M.Schonberg, S.Chandrasekhar 1942, Astrophysical Journal 96, 161-172 “ On the evolution of the main-sequence stars” (1) 核反応が中心部で起こると対流核+外層 (Henrich/Chandrasekhar 1941) (2) He中心核が形成され、水素殻燃焼開始。 (3) He等温核+H外層の2重組成の構造は? 4 r 3 d ln M r GM r d ln P U , V , Mr d ln r rP d ln r d ln P 1 1 d ln N 境界条件は、中心で (U ,V ) (3,0) (U ,V ) (0, ) 表面で 等温核の解と外層の解とは、境界で次 の条件で結ばれなければならない。 Ui i Ue e , Vi i 外層 V 境界 等温核 Ve e ここで、μ=電子も含めた平均分子量 0 U 3 主系列終了後の等温核(i)+外層(e)の構造を計算した。μi/μe=2 A 状態方程式は kT P H その結果、 A点で等温核に外層をフィットするこ とができなくなる。 M core M 等温核の大きさがA点に達すると 等温核の存在が不可能となり、核 の収縮による重力エネルギー解放 が始まる。 Rcore R 境界の温度が上がり水素殻燃焼が 始まると、再び等温核が出現するは ずだが、既にA点を超えているので 平衡な解は存在しない。 この論文では、速度分布がマクスウェル型の理想気体の場合に等温核の大きさに上 限(Schonberg-Chandrasekar Limit)があることが、等温核と輻射外層との間 でフィットができなくなることから発見された。 (2)等温自己重力系のエントロピーの極大問題 ShonbergとChandrasekharは、星の等温核の質量には上限があることを、外層 と核とのフィッティングが不可能になることから発見した。 20年後の1962年にV.A..Antonov は、質量mの質点の集団、総質量M、が 半径Rの球壁内に閉じ込められている状況を考察した。 彼が提出した問題: 「系の総エネルギーE,総質量M、半径Rを与えたとき、 系はエントロピー極大の状態にたどりつけるか?」 V.A..Antonov (Vestnik Leningradskogo Universiteta,7,135) “Solution of the problem of stability of stellar system Emden‘s law and the spherical distribution of velocities“ 質点の位置速度分布関数を f(r、v)とし、系のエントロピーSを S=-∬f(r,v)・ln f(r,v) drdv で定義する。 (1) 密度ν(r)=∫f(r,v) dv と 運動エネルギー K=m∬ f(r,v)(v2/2)drdv が一定な系の中でエントロピーSが停留値になる最大にする f(r,v) は、 ラグランジュの未定係数、 λ(r)とμを使い、 δ(S+∫λ(r)ν(r)dr+μK)=0 から求められる。 ∬[-ln f(r,v) -1+λ (r)+μ(mv2/2)] δf(r,v) drdv =0 -ln f(r,v) -1+λ (r)+μ(mv2/2)=0 f (r , v) e mv 2 ( r ) 1 2 r 2 D 2 3 e v 2 2D μまたはDが位置 r に依らな いことに注意 (2) このときの系の物理諸量は以下のようである。 3 3 S r ln 2D ln r dr エントロピー 2 2 3D K m r dr 運 動エネルギー 2 r U m r dr 位置エネルギー 2 E K U 全エネルギー M m r dr (3) 全質量 上の系が力学平衡にある条件はボルツマン方程式で与えられる。 f f v 0 r r v ここに(1)の f (r , v) r 2 D 2 3 e v 2 2D を代入すると、 r r v r r r v r 0 0 r r D r D r r ce r D なので、結局 f (r , v) c 2 D 2 3 e r v 2 2D より、 となる。 しかし、自己重力系では、Φ と ν はポアッソン方程式で結ばれている: 1 d 2 dr r 4 G m r 2 r dr dr 1 d 2 d ln r r 4 G m r / D 2 r dr dr こうして求めた解ν(r)を使うと、球壁に囲まれた球対称な等温自 己重力系は、(1)ν(r=0)≡νo、(2)D、(3)R(球壁半径) の3つ のパラメターでを指定されることが分かる。 (4) 無次元化 ところで、上で求めた球対称な等温自己重力系のポアソン方程式は次のような 変換で無次元化されることが知られている。 2 D r r0 0 r0 4 G m 0 中心数密度 0 1 d 2 d ln d BC : 0 , 0 at 0 2 d d d 半径 R=ξe・r0 とおくと、系のエネルギーE、質量Mなどは 3 e 3 3 e M 4 m 0 r0 2 d , E MD e e 0 2 d 2 0 したがって、系を指定する新しいパラメターの組として、 (1)r0、(2)ν0、(3)ξe または (1)M、(2)E、(3) ξe が可能であることが判る。 (5) 等温平衡球のまわりのエントロピーSの変化 2 f r , v 2D r e 32 v 2D 3 3 S f ln fdrdv r ln 2D ln r dr を用いてSの変分は 2 2 S S1 S 2 3 D 3 3 ln 2D ln r dr 2 2 D 2 S1 3 1 3 D ln 2D ln r dr 2 2 2 D 3 1 3 2 2 S 2 D D dr 2 2D D (1次の変分) (2次の変分) ここで、系に M=一定、E=一定、R=一定 という拘束条件をかけると、 ν、D は自由に変わることができなくなる。 この場合、ラグランジュの未定係数 α、β を用いると、Sが上の拘束条件の下で停留値になるのは (δS+ α δM+ β E)1=0 とあらわされる。 S M E 1 3 3 m r D dr 2 D 2 3 1 3 ln 2D ln r m m D m r dr 2 2 2 0 であるから、 3 r ln 2D 1 ln r m 0 2 D 1 D m m 1 r 2D 2 e 3 r D Ce r D であればよい。つまり等温平衡解ν(r)に対し、Sは停留値をとる。 Sが極大かどうかは、δS2<0かどうかで決まる。 全質量M=一定、全エネルギーE=一定 という条件下で2次変分 δS2 はどうなる だろう? δS1で見たように、δD、δν、 δΦは互いに独立でなく、 δD、δν、はポテンシャルΦの変 分δΦで表現される。そこで、 r 2 d T という関数T(r)を考える。 δνに対するポアソン方程式 4 mG d r 1 dT 1 d 2 d から、 である。 r 4 mG 2 2 r dr r dr dr δν(r=0)が有限であるため、T(r0)∝r3なので、 T(0)=0 R R dT 2 dr T ( R) T (0) 0 M=一定の条件から、 M r dr 0 0 dr 従って T(R)=0 つまり、T(r)は、 境界条件 T(0)=T(R)=0 を有する。、 一方、δE=0から、 3 r r 3 E m D r D r r r dr 2 2 2 2 3 m D r r r dr 0 2 2m r r dr したがって、 D 3 M dr 0, dr dr 0 結局、δS2はTを用いて下のように表わされる。 2 R d 4 T dr 2 0 R 1 dT 4 mG T 2 dr S 2 2 2 dr R 0 2 D r 2 r r dr 3D r 2 r dr 0 δSを無次元量ξ, r=ξ・r0、 ν(r)=η(ξ)・ν0 で表わすと分りやすい。すると、 e d 4 T d 2 2 0 d 1 dT T e 2 2 d e r0 0S 2 2 2 0 d 3 2 d 2 0 e d 4 T d 0 e d d 1 dT T 2 d 2 T 2 e 0 3 2 d d d 2 0 数値計算を行うと、ξeが34以下では常にδS2 <0 となり系はエントロピー極大 であるが、 ξe>34、つまりη(ξe)<1/709、の時にはδS2 >0となり得ること が分かった。 結論:与えられた総質量M,総エネルギーEの下では、無次元半径ξ<34の時 には等温球のエントロピーSが極大で系は安定である。が、 ξ>34になると、 等温状態のエントロピーは極大でなくなり、系は不安定になる。 Antonovの得た「壁に囲まれた自己重力系は半径が大きいと等温状態がエ ントロピー極大に対応しない」という結果は1968年にLynden-Bell により 熱重力カタストロフィーというセンセーショナルな題名で紹介された。 D. Lynden-Bell, R.Wood 1968, Mon.Not.R.astr.Soc.138.495-525 “ The Gravo-Thermal Catastrophe in Isothermal Spheres and the Onset of Red-Giant Structure for Stellar Systems “ Antonovがエントロピーの変分δSを直接扱ったのに対して、リンデンベルは 「静的平衡状態の線形系列」 という概念で壁に囲まれた等温自己重力系の 平衡系列を調べた。 (1) 一般に静的平衡状態は系の状態を表す一般化座標 q1、q2、... と 系を規定する外部パラメター μ とのセットで表現される。 安定な平衡状態は与えられた外部パラメターμ=一定の条件下で ポテンシャルU=U(μ ;q1、q2、.. )が局所的に極小となることに等しい。 (2) (μ、q1、q2、.. )空間に等ポテンシャル面 U(μ ;q1、q2、.. )=Uo を考える。 等ポテンシャル面U=Uo が平面μ= μ0 と触れる(交差でなく)所が ポテンシャルが停留値を取る点(μ0 、q10 、q20、.. )である。 図による説明 μ= μo 面でUの等高線 +はUが極値Uoをとる平衡点 q2 μ= μo 面とU=Uo面の接点+は左図 でUの極値+と一致する。 μ U大 + + μ= μo q2 q1 q1 U= Uo 上の図から分かるように、Uが増加する方向に対してU=一定曲面が出っぱる時 に、μ=一定平面上でUが極小値をとり安定な平衡点となる。 さらに、この接点でU=一定面が出っ張るという性質が変わらない間、パラメター μが変化していくと、安定な平衡状態の系列が続く。 平衡系列のこのような性質、つまりμ=一定平面とU=一定曲面との接点でのU 面の窪み方、が終了するのは、この系列が他の平衡系列と出会うときか、又はこ の系列の進む方向が逆向きになるときである。 (3) ここでは、 U=ーS、 μ= M,E,R、 q=f(r、v) と考える。 簡単のため、パラメターμとしてー(E・R/GM2)、一般化座標 f(r、v) の代表として中心と壁際の密度比 v1=log(ρE./ρC)を取って 図示すると、 点線はエントロピー S=一定の線 を表す。 下ほど高エントロピー で、 簡単に言うと高温で重 力が無視できる状態。 点線の向きが水平になり μ= -(E・R/GM2)一定 の線に接する点が平衡点 である。 実線は平衡点を結んだ平 衡系列を表す。左下から A点までは安定な平衡系 列である。 (4) A点で平衡系列の向きが反転する。(3)で述べたように、安定な平衡系列 はA点で終了する。 アントノフの議論と対応させると、A点まではδS1=0, δS2<0 であり、その先 では平衡点の周りにδS2>0 となる点が存在するということである。 (5) ここまでは壁の性質を断熱壁としていた。しかし、壁が等温壁の場合はエント ロピーSではなく、ヘルムホルツ自由エネルギー F=E-TSが極小という条 件が安定平衡解を与える。対応するグラフでは、 パラメターとして μ=GMβ/Rが取られ ている。前のアントノフ の表記ではβ=1/D 実線が最初のピークに 達するのはv1=-3.5 である。この点で系の比 熱は正から負に転じる。 なぜなら、 dE dE Cv k 1 dT R d dE k 2 dE k 2 dv1 R d d R R dv1 R 前ページのピークでCvは無限大、その先ではCvは負の無限大となる。 Cvが負の系が等温壁に接していた場合には、熱的な揺らぎが増幅されて不安 定になるのは当然である。この状況は水素燃焼殻(温度がほぼ一定)に囲まれ たヘリウム核の不安定性を示していて、Shonberg-Chandrasekhar Limit を表していると考えられる。 このように、恒星の中心核と外層とのフィッティングがうまくいかないことから等 温核の大きさに上限が設定された(Shonberg-Chandrasekhar Limit)の であるが、実は背後に自己重力系のエントロピー極大という問題が潜んでいた のである。 (3)Red Giant Structure 先に述べたようにShonberg-Chandrasekhar 1942 の論文で等温核が成長すると 不安定となることが示された。その後の進化が赤色巨星の出現に至るであろう ことは多くの研究者が予想していた。また、赤色巨星の構造が核と外層とで化学 組成が異なることと密接に関連していることも共通認識としてあったらしい。 例えば、 (c) J.B.Oke, M.Schwartzschild 1952, Ap.J. 116, 317-330 “Inhomogeneous Stellar Models I.Models with a Convective Core and a Discontinuity in the Chemical Composition” では、低水素量の中心核+高水素量の外層という非一様構造を、HR図上で主 系列星から少し離れた付近の星が論じられていたのを一気にそこから離れた 赤色巨星領域に持っていこうとした試みである。 (1) 低酸素中心核=対流核(c)+輻射層(i)と高水素外層(e)で三重構造。 (c) (e) (i) 境界1 境界2 輻射層ではクラマーの吸収式を採 用。 境界2で平均分子量がジャンプす る。 (2) 対流核の構造はn=1.5のエムデン解で与 えられる。 対流核半径=エムデン方程式の無次元化 半径で ξ とする。 中心核輻射層(i)はξ に接続するという条件 で一意に決まる。 (3) 境界2でのジャンプはU-V平面上で右図 のように表わされる。式では、 4 r 3 GM r U V Mr rP U 2i V2i 2 .5 U 2 e V2 e n2 e 1 1.316 n2i 1 ジャンプの条件が上のように3つなの で、ξ から伸びる輻射層(i)の境界2i は勝手な値は取れないことに注意。 ジャンプ条件で接続される外層解は パラメターCで区別されている。 ξ logC (4) こうして、 ξ を変化させると1連の無次元解の系列が得られる。この系列 に星の質量Mを与えて実際の物理量にした結果が下の図である。 右グリッド下の%は中心核の大きさ、グリッド左の数字4,2,1は星質量。 一様なモデルの水素量と質量で作ったのが左グリッドである。 (5) このようにして、非一様モデルが赤色巨星の占める領域をカバーする ことが分かった。 しかし、個々の質量に対応する進化系列、前ページの図でM=一定の ライン、は観測と全く合わないのが問題であった。 続いて発表されたシリーズ第2論文は、進化の問題を扱っている。 A.R.Sandage, M.Schwartzschild 1952, Ap.J. 116, 463ー476 “Inhomogeneous Stellar Models II.Models with Exhausted Cores in Gravitational Contraction“ (1)進化の粗筋 中心核H燃焼 中心でH欠乏 H殻燃焼 核の成長 S-C Limit ? 中心核は収縮し、重力ポテンシャルエネルギーを解放するだろう。 中心核の縁がH殻燃焼により温度=ほぼ一定なので、この過程はLyndenBell,Wood 1968 が考察した等温壁に囲まれた自己重力系のgravothermal catastrophe に相当する。 (2)星の構造 輻射外層: X=0.596、Y=0.384、Z=0.02 Kramers Opacity または電子散乱 H燃焼殻: T=3×107K、質量=0 収縮核 : X=0, Y=0.98, Z=0.02 重力エネルギー解放率/質量=一定 0 T 3.5 GM 2 P p 4 R 4 T t e H G M k R M r qM と変数を無次元化すると、無次元解のパラメターは以下のCとC*である。 外層 核 7.5 3 0 k 1 LR 0.5 C 4 ac e HG 4 M 5.5 3 C Lg pS pC C j1 q1 L t S4.5 tC4 * ここで、添字の e=外層、 1=外層と核の境界、C=中心、 S=Kramersと電子散乱の移行点を指す。 ジャンプの条件は U1i V1i 2 U1e V1e n1i 1 1 L n1e 1 ji Lg UV面での外層解と核解。 HR図上での進化 太い実線は各質量毎の進化経路。 左端の斜め実線は主系列 logC C* M/Mo HR図と比較すると、準巨星の進化が再現されていることがわかる。このモデル では中心部の電子縮退は殆どおこっていない。 著者が疑問としたのは、観測ではモデルVでこの方向の進化が止まるのに、 モデルではVI,VIIと進化が突き進んでいくことであった。これを止めるために He燃焼が非常に低い温度1×108Kでおきたとして、 右図のような進化経路を 計算している。しかしこの 仮定は正しくない。 準巨星モデルが低温になり過ぎる問題を解決し、赤色巨星のモデルが作り 挙げられたのはそれから3年後の1955年であった。 F.Hoyle, M.Schwartzschild 1955, Ap.J.Suppl. 2, 1ー40 “On the Evolution of Type II Stars ” この論文では球状星団のHR図と比較するために X=0.9,Y=0.1の 重元素をほとんど含まないM=1.1Moの星の進化を追った。 OpacityとしてはHとHeのフリーフリー吸収と電子散乱のみを考える。 (1) LからMまでの進化 (準巨星) この部分は前に述べた A.R.Sandage, M.Schwart zschild 1952と同じステージで ある。そこでは、中心部でH燃焼 が止まると、中心核は収縮して重 力エネルギーを解放し、中心核内 に温度勾配を生じさせるとした。 しかし、ここでは前論文の収縮は 速すぎ、また縮退電子の熱伝導 を考えていないことを批判し、等 温の部分的縮退核を考えた。 その結果、核の状態j方程式は縮退パラメターψを用いて 8 4 32 32 P 3 2 kT kT F3 2 3 2 kT H F1 2 3h h u と表わされる。 F u du 0 e 1 その結果、無次元化方程式も古典理想気体の場合の 1 d 2 d ln 2 d d でなく、 1 d 2 d F1 2 2 d d d BC : 0, 0 at 0 d d BC : C , 0 at 0 d となる。 外層は以前と同じく輻射平衡を仮定して扱う。外層と中心核との間では平均分子 量がμE=0.533からμi=1.333へとジャンプするのでフィッティング条件 U1i V1i 1i 1.333 2.5 U1e V1e 1e 0.533 で両者をつなぐ。星の表面での境界条件は T=0, P=0 である。 こうしてψCを進化パラメターとして準巨星の構造を追うと、 右下の図の6つの点が準巨星 を表す。 数字は核の大きさ qi=Mi/M である。 斜線は球状星団M3,M92の 観測値。 明らかにqi=0.22の点は観 測と合わない。 qiがさらに大きくなると、モデル の点は図のはるか右側にはみ 出てしまう。 どこがおかしいのだろう? ? モデルの内部構造を調べた結果、星の表面の条件 T=0, P=0 に問題があるこ とが分かった。物理的には星の光球は光学的深さτ=2/3で定義されるから、 T Teff PHOT H GM kTeff R 2 as r R ちなみに、(kT・R2)/(μHGM)=表面スケールハイトである。 モデルを調べると、q1≡MIi/M>0.20では表面よりずっと手前で ρ=ρPHOTに達することが分かる。つまり、温度Tが有効温度Teff まで下がらな い内に密度の方はρPHOTになってしまうのである。 この場合T=Teffでの密度は正しいρPHOTより1-2桁低くなる。 この様な理由でq=0.22のモデルは破棄された。 本来、 表面でρPHOTという条件を初めから考えるべきであった。 この問題は後に“HAYASHI LIMIT” という形で登場する。 (2) M点からN点への進化 (赤色巨星) 準巨星では中心核が大きくなると、輻射外層の表面条件が満たされなくなった。 赤色巨星では表面対流層が発達して、この難点をくぐり抜けるのである。 質量Mの星=質量M1、温度T1の部分縮退中心核+質量(M-M1)の外層 M1の増加が赤色巨星の進化を決定する。簡単のためT1 =水素燃焼温度 =2×107Kと固定する。すると、中心核の構造は中心での縮退パラメターψC だけで決まってしまう。 一方、外層は対流層となるので、 P=KT2.5 が成立する。Kは前に述べた光球 での境界条件 T=Teff,PPHOT=(GM/κR2) からK=PPHOT/Teff2.5で決ま 質量Mの星についてはHR図の点、つまりTeffとLが与えられると、Rが決まり、対流 層のKが決まる。結局、 中心からは ψC をパラメターに外側にM=M1まで、 表面からは (L,Teff)をパラメターにして内側にやはり、M=M1まで 解が伸びていく。 T M=M1 (外層解) 中心 r P M=M1 表面 中心解は1パラメターなのでM=M1はT-P-r空間で曲線をなし、一方 表面解は2パラメターなので、M=M1は曲面をなす。両者の交点が求め る星の構造である。 こうして求めた、等温縮退核+対流外層(内側は輻射層だが) 構造を種族I(+印)とII(○印)でプロットしたのが下の図である。 数字は、qi≡Mi/M こうして、赤色巨星 のモデルが得られ た。 この論文で強調され たのは表面条件が 星の半径を定めると いう点であった。 この問題をさらに深く 探ったのは林忠四郎 である。 A.3.赤色巨星の進化 UVカーブを用いて星の構造を求める手法は現在では行われていない。星の中 心から表面までの構造をニュートン法で逐次近似して求めるHenyeの手法が専 ら使われている。 このようにして求められた星の進化経路はWEBから取ってこられる。 最新の例は、 http://stev.oapd.inaf.it/cgi-bin/cmd である。 このサイトでは、0.0001<Z<0.03, 0<t<17Gyrの任意の値に対して内 挿で得られた等時線を送り返してくれる。特に、便利なのは、出力に使われる等 級として、現在使われている約30の測光システム中から好きなものを選べること である。 ただし、残念なことに「あかり」システムには古いフィルター関数が使われている ので使えない。 Z=0.001 例: 左 メタル量Z=0.001 右 =0.019 のlog t(yr)=9,10等時線 5 4 2 Z=0.019 1 5 0 4 -1 3 -2 2 -3 4.1 4 3.9 3.8 3.7 logTe log(L/Lo) log(L/Lo) 3 9 10 1 3.6 3.5 0 3.4 3.3 4 3.9 9 10 -1 -2 -3 4.1 3.8 3.7 logTe 3.6 3.5 3.4 3.3 下の図はZ=0.019(太陽)、t=1Gyrの等時線である。 記号の意味は、 Z=0.019 9 4.5 4 J H log(L/Lo) 3.5 Asymptotic Giant Branch 3 I G 2.5 E=ヘリウム フラッシュ F=レッド クランプ E 2 sub-Giant 1.5 IからJは炭素星 First Red Giant Branch F G: C/O=0.48-->0.36 H: C/O=0.64 I : C/O>1 (=1.2) 1 0.5 0 3.9 3.8 3.7 3.6 logTe 3.5 3.4
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