リカード貿易理論の新構成 2007.1.19 横浜市立大学国際総合学部 研究会 塩沢由典 大阪市立大学創造都市研究科 貿易理論の目的? 貿易の方向・特化のパタン 比較生産費、資本集約度、etc. 貿易の利益・不利益 貿易の利益、貿易摩擦の原因? 実質賃金の大きな格差 各国の相対賃金率を決める要因は? 現実課題理論 どのような理論を構築するか>>政策にも影響 これまでの貿易理論(おさらい、概観) 教科書的説明 リカードの貿易理論 要素比率理論 (HeckscherOhlin) 特殊要素理論 (SamuelsonJones) 産業内貿易 Krugman 収穫逓増 フラグメンテーション 生産要素と財の数 典型例 要素 1 財 2 要素比率理論 2 2 特殊要素理論 3 2 リカード理論 2国2財からM国N財へ 2国2財 Ricardo 2国N財 N=3~連続濃度 Dornbusch, Fisher and Samuelson (1977) M国2財 Harberler(1930) M国N財 労働投入のみ ■中間財の貿易なし McKenzie(1954b) 均衡の存在、一義性 Jones(1961) 完全特化パタンの発見公式 RicardoとHeckscher-Ohlin:対比 Heckscher-Ohlin 2国の技術は同じ、投入における代替 資源(労働と資本/土地)の存在比率が問題 資本:生産要素扱い>>非貿易財 Ricardo: 2国の技術が違う。固定係数。 投入は労働のみ、技術の選択なし>>拡張の問題 自然な拡張が可能・必要 Sraffa1960>塩沢1985 商品による商品の生産 貿易対象としての「中間財」「原材料」 中間財という主題(1) 無視されてきた主題 教科書における「中間財」 Krugman-Obstfeldには一切登場しない。 Ethier 「中間財」 索引一回 Caves-Frankel-Jones 第9章「中間財および生産要 素の貿易」 生産要素としての「資本」 抽象的な「資本」でなく、取引される原材料・中間財 Cf. 資本測定論争 国際的相互連関 中間財という主題(2) 中間財貿易の比重の増大 世界貿易に占める中進国の比重の増大 産業内貿易 Krugman:収穫逓増、Inframarginal approach. 新しいRicardo理論により説明することもできる。 中間財貿易による大きな利益 Ricardian Gain vs. Sraffian Bonus 塩沢「新構成」 図1 Samuelson(2001)の図1(p.1211) 第2財 原材料貿易のある場合 の生産可能集合 B国第2財生産 製品のみ貿易する場合の 生産可能集合 A国の第2 財生産 B国第1財生産 第1財 A国の第1財生産 Samuelson 2001 8 6 a(1960) 2.5 α(1817) 2 P E 0.5 2 2.5 6 8 中間財という主題(3) 理論における現実的対応 多段階生産 国際分業体系の深化 アウトソーシング フラグメンテーション 原因>>分析の困難 生産費が輸入財の価格に依存する。 一国内の賃金率の高さで議論できない。 帰結:理論の不在>どう応えるか? 分析の問題(1) 中間財と多数財 中間財多数財 HOS理論 Ethier1984(HamdbookVol.I) General results: 多くの主張は2×2を出られない。 「戦略の転換も興味ある可能性」 結論 トーンが違う。平均的、部分的には。 Ricardo理論 M国N財>Graham、McKenzie、Jones 原材料・中間財の分析不在 分析の問題(2) 図解による展開 池間誠1993/三邊信夫2001など 石川・古沢『国際貿易理論の展開』第5部 価格の分析 横軸p2/p1と 縦軸p3/p1 表示 生産面 McKenzie以来の表示(とくに三邊) 正確なものか(計算機による図示、後出) 分析の問題(3) 中間財貿易 Jones1961: 対称の場合のみ 東田2004「中間財と国際生産特化パタ-ン」 Ricardo理論で中間財を扱った珍しい例。 分析手法としては、池間1993を踏襲 発見 複数の完全特化パタンの存在可能性 塩沢1985「国際貿易と技術選択」 目標としては多数国・多数財 1985時点では、2国多数財の場合のみ 2006年はじめにようやく糸口 新構成(1) 新構成の要点 賃金率比を基礎に取る。 最小価格定理から、最小生産価格を算出、そ の点の競争モードが定まる。 競争モードにより、Δが細胞分割される。 競争的技術のみを用いて、生産可能集合の 極大面が決定される。 賃金率と価格との間に一対一の関係がある。 賃金率=>価格 しかし、価格の範囲に制約 分担的特化パタンの存在定理 新構成(2) 状況設定 M国N財 (強い存在定理ではN≧M) ひとつの国の中でも技術選択がある。 中間財が国際市場で取引される。 他の要件 すべての技術は単純(結合生産をもたない) すべての技術において労働投入係数は正。 各国は少なくともひとつ生産的な技術系をもつ。 新構成(3) 分担的パタンの存在定理 弱い存在定理(定理3.1) p.20 任意のMとN 強い存在定理(定理3.6) p.30 M≦Nの場合に、”一般に” 計算実験例 §3.5の「結果」 p.34 すこし自由度が大きくなると、ほとんど確率1で強 い存在定理が成立する。 証明:トポロジー(位相数学) 新構成(4) 双対関係定理 賃金率Δ、価格Δ、極大面(frontier) それぞれがモード分割される。 各分割の面の間に1対1の対応がある。 賃金率Δ価格Δ 極大面 点と点、点と集合、競争モード 補完的次元関係 dim(E)+dim(F)=dim(E)+dim(G)=N-1 E:極大面 F:賃金率Δ G:価格Δ の各対応する任 意の面 双対的な関係の例示(3国3財の場合) 賃金率・価格面 錐を定義 生産可能集合 実体 凸多面体を定義 分担的領域 存在域 非負象限をカバー 頂点 <=> 2次元領域 辺 <=> 辺 開領域 <=> 頂点 計算事例 (Mathematicaによる計算) 賃金率Δの分析 3国・3財、技術選択 File:「Δのモード分割、技術選択」 生産可能集合の性質(フロンティアの形) 双対的対応関係 File:「☆価格図と生産可能集合」 生産可能集合存在比率 労働力の存在比率の変化 つき 1. 労働投入のみ File:生産可能集合 名前 2. 中間財投入 複数の完全特化パタンをもつ例 MathFile:多数の特化パタン 探索結果の整理 新しい議論(1) 需要構成と賃金率 生産可能集合の極大境界のほんどの点は、 ファセット(すなわち、最大次元の境界面)の 内部にある。より低い次元の面の全体の測度 は0。 需要構成がファセットにあるとき、少なくとも競 争的価格は一義に決まっている。 ほとんどの場合、各国の賃金率の比率を確定 できる。 新しい議論(2) 価格調節と数量調節 需要構成が極大境界のあるファセットで表さ れるとき、そのファセット内のすべての点は、 同じ競争価格をもつ。 同一のファセツト内では、価格を変化させるこ とによって、特定の最終需要を実現することは できない。 価格調節だけでは純生産数量を最終需要に 一致させることはできない。 新しい議論(3) 貿易の利益と不利益 新構成=>均衡状態の分析に限定されない。 貿易の利益 「雇用されている労働者」という視点 貿易の不利益 世界需要が不変の場合 失業する労働者、衰退産業の資本家・経営者 おもな結論(1) 新構成からの知見 M国・N財で、財の投入と中間財貿易、技 術選択の設定において再構成できる。 貿易パタン 世界需要の構成比が決まれば、一般に 一義に定まる。 各国の賃金比率 需要の構成比が決まれば、一般的に一 義的に定まる。 結論(2) 新しい視点・論点 数量調節の必要 価格により、特定の需要構成は実現できない。 貿易による失業・廃業 Sraffa Bonusの大きさ Technology matters. 大きなメッセージ HOS理論からは遠ざけられている視点
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