4・文化は変化する 2010.10.6. 成蹊・文化人類学Ⅱ 4・文化は変化する 2010/10/6 - [2] 映像資料3/4から:文化の変化と偏差 同じ日本なのに、どれほど「今」と差があるか 同じ1950年代の日本なのに、どれほど「東京」と「新 潟」とで差があるか 文化は数百kmの距離でみても大きな偏差がある どれが「普通の」日本文化なのか? という問いに答えは ない 文化は数十年のスパンでみても大きく変化している どれも日本文化の(≒日本人の暮らしの)ひとつの断面ではある ある時点・文脈を特定してやれば、majority(多数派) の文化がどんなものであったかは、ある程度言うことが できる 4・文化は変化する 2010/10/6 - [3] 農業従事者の割合(1930年-1955年) 4・文化は変化する 2010/10/6 - [4] 農業従事者の割合(1955-1980年) 4・文化は変化する 2010/10/6 - [5] 農業従事者の割合(1955-1980年・改) 4・文化は変化する 2010/10/6 - [6] 農業従事者の割合(1980-2005年) 4・文化は変化する 2010/10/6 - [7] 産業従事者の年齢構成(全産業-農業) 1930年 1955年 1980年 2005年 全産業 全産業 農業 農業 10~30代 65歳以上 10~30代 65歳以上 64.37 61.62 50.42 40.49 3.90 4.34 5.30 8.81 55.79 52.50 18.96 8.58 5.83 7.91 17.81 51.46 1955年までは、農業従事者の年齢構成は、全産業従事者 の年齢構成と大きな違いはない ところが1980年・2005年はきわめていびつな年齢構成 を示している おそらく1955年の「10~30代」がそのままスライドして、 1980年の「40~65歳」・2005年の「65歳以上」に移行してい るように推測される……新しい若い世代が「入ってこない」 4・文化は変化する 2010/10/6 - [8] 「農業」という産業の変化 1930年当時、産業従事者のほぼ半分(47.74%)を占め ていた農業は、いわば「日本人の普通の生活」の最たる ものであった 戦争をはさんで1955年になっても、実はこの点は大きく は変わらない ところが1980年になると「農業」をめぐる状況は激変し ていた ほぼ全国的に、1930年と比べて10ポイント程度低下しているが、 それでも全体の1/3を超えるひとびとが「農業」によって暮らし ていた 全国でようやく10%に届くかどうか、東北と九州の一部が20%を 超えるものの、大都市圏は5%かそれ以下に 2005年現在ではさらに状況は悪化、平均で5%を下回る 4・文化は変化する 2010/10/6 - [9] それが何を意味するのか? 戦前(おそらくそれ以前も)~戦後のある時期まで日本 人の暮らし・文化の「普通」であったものが、この50年 間(とりわけ60年代を中心とする四半世紀)に完全に崩 れ去った、ということになる では、今の「普通」は、なんだろう? 当時の「普通」は、「普通」と自覚されていたのだろうか? そもそも「みんな同じ農業・農民」という考え方でいいのだろう か? 資料映像4(新潟の農村映像)からわかることは、 1. もちろん東京(都市)との間に大きな地域的偏差があ ったこと 2. そして「新潟の農村の暮らし」といっても決して一様 ではないこと 4・文化は変化する 2010/10/6 - [10] 〈変化〉を前提に考えてみる(1) 囲炉裏を見て 衰退する農業を見て (昔) なんて汚くて効率の悪い調理のしかただろう (今) なんだか懐かしいなあ、和むなあ (昔) もうからないんだから、みんな都会に出るさ (今) なくなってしまうのは残念だ、残せないだろうか 民謡や盆踊りについて (大昔) いやあ、楽しいなあ (昔) やっぱりマンボでしょ、ロカビリーでしょ (今) 伝統だから(ほんとはつまんないけど)残さなきゃ 4・文化は変化する 2010/10/6 - [11] 〈変化〉を前提に考えてみる(2) テレビを見て 冷蔵庫について (昔) ああ、東京はこんななのか、憧れるなあ (今) とりあえずつけてるけど、別に真剣に見てないし。 (大昔) わざわざ氷を買って冷やすなんて、不経済だ (昔) これで肉や魚料理を作って食べられるぞ (今) 最新型の500㍑・急速冷凍・栄養増加機能付き・保温機能付 きの冷蔵庫がほしいわ ぎゅうぎゅう詰めのファッションショーを見て (昔) よく見えないわ、だけどちょっとでも見て覚えて、あとで自 分で作れるようにしなくっちゃ (今) なにこの熱気は。ありえない。でもすごい。 4・文化は変化する 2010/10/6 - [12] 〈変化〉を前提に考えてみる(3) 「豊かな生活」について (大昔) 昔からこの暮らしをしてきたんだから、今もこれからも、この暮 らしをするのがあたりまえだ (昔) どんどん働いてどんどんモノを買って、それで豊かになるのがめざ すべきことだ (今) 確かにモノはあふれているけれど、なにかを忘れてきてしまったの ではないか 「ひとびとのつながりが濃い」ことについて (大昔) 昔からこの暮らしをしてきたんだから、今もこれからも、この暮 らしをするのがあたりまえだ (昔) なんでもかんでも周りのひととつながっているのは、煩わしいなあ、 ドライな都会の人間関係にあこがれる (今) 昔のひとのつながりに温かさを感じる、わたしたちはなにかを忘れ てきてしまったのではないか 4・文化は変化する 2010/10/6 - [13] 文化の変化 ひとびとは(わたしたちも含め)そのときの状況に応じ て行動したり考えたりしている……あたりまえだが、見 落としがちなこと 文化を、物質文化と精神文化に分ける 物質文化……衣食住、生業、道具 etc. 精神文化……言語、宗教、儀礼、慣習・習慣、人間関係、価値観 etc. 物質文化と精神文化、どちらがより変わりやすいだろう か? 衣・食・住は、どの順番で変わりやすいだろうか? 精神文化で変わりやすいもの・変わりにくいものは、そ れぞれどんなものだろうか? 4・文化は変化する 2010/10/6 - [14] 1950-60年代の変化 日本史では1868年・1945年が日本の政治制度の大変革 期として挙げられるが、ふつうのひとびとの生活に注目 すると、1890-1900年代と、1950-60年代が大きな変 化の時代にあたるといえる 1890-1900年代は、国民国家を支える諸制度(学校教育、 新聞/郵便メディア、鉄道交通、地方制度、軍事制度な ど)がほぼ国の隅々まで行き渡った時期 1950-60年代は、生活の自給自足的な部分の比率と購買 消費的な部分の比率が逆転し、大量生産・大量消費型社 会へと転換した時期
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