発生場所別にみた近年の 豪雨災害による犠牲者の特徴

発生場所別にみた近年の
豪雨災害による犠牲者の特徴
災害情報 No.11 2013
著者: 牛山 素行
横幕 早季
紹介者 永田 聖大
はじめに
・自然災害による犠牲者を軽減するにあたっ
て欠かせないものは、発生状況、発生場所、個
人属性などの基礎調査の客観的な分析であ
る。
・豪雨災害による被害は、あらゆる場所で一
様に生じているわけではなく、それぞれの場所
の地形などによって変わってくる。
研究目的
豪雨災害の犠牲者の傾向について、個別的・定
性的に語られることを系統的・定量的に検証す
る。
豪雨災害による犠牲者を軽減する上で特に注
意を向けるべき人的属性、場所、時間などを明
確することである。
調査方法
2004年以降の豪雨災害による犠牲者のデータ
ベースを用いて研究を進める。この資料は、新聞記
事、各種文献、インターネット上の公的機関の文書
などの検索を中心に、主要事例については現地調
査結果を加味して筆者が構築しているものである。
本研究で扱う資料は、2004~2011年の29事例
と514人の災害対象となった人に基づいて進めて
いく。
原因外力による犠牲者の分類
強風
分類名
7.6%
高波 沿岸部での犠牲者全般
強風
風邪による犠牲者全般
高波
3.3%
定義
洪水
25.5%
その他
6.0%
洪水
河川
在宅中、又は移動や非難の目的で行動中に、自らの意志とは関わりなく、浸水、
土砂
強風
洪水
土砂
河道外の洪水流に巻き込まれ死亡した者
河川
37.2%
在宅、または移動や非難の目的で行動中に、自らの意志とは関わりなく、土石流・
20.4%
高波
その他
土砂 崖崩れなど、あるいはそれらによって破壊された構造物によって生き埋めとなり死
亡した者
溢水していない河川や川水路の河道内に転落して死亡した者。洪水による路肩崩
河川
壊に気づかずに転落した場合は「洪水」に含む
他の分類に含むことが困難な犠牲者。外力に起因しない犠牲者(いわゆる関連
その他
死)
年代別の傾向
全体
65歳以上 65歳未満
56.40%
43.00%
洪水
49.60%
50.40%
河川
51.40%
48.60%
土砂
58.60%
41.40%
その他
67.80%
28.70%
原因外力と年代構成
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体
洪水
65歳以上
65歳未満
河川
高齢者への犠牲者偏在を改
善するためには、一般的に
災害時要援護者とみなされ
にくい、日常生活を営む上で
は特に大きな支障のない高
齢者に注意を向けることが、
より効果的である。
土砂
その他
遭難場所の概要
「土砂」のだけ、「屋外」
より「屋内」の方が多い
(81.2%)
原因外力と遭難場所
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体
洪水
屋外
屋内
「土砂」犠牲者の多くは、
避難行動をとらずに自宅
内または自宅敷地内にい
たところを土砂災害に襲
われたということになる。
河川
土砂
その他
犠牲者遭難位置の検討
新聞記事や行政史資料、現地や市町村役場での聞
き取り調査など行い、犠牲者が遭難した場所の住所
をなるべく詳細に特定した。
結果
中部以西に多く、関東、東北、北海道で少なくなっている。大局的には、
豪雨災害による犠牲者は、暖候期降水量の多い西日本で主に発生して
いる
※ この調査は2004~2011年8年間の集計値であり、犠牲者が少ない地域
は、たまたまこの8年間に当該地域としては激しい豪雨に見舞われていない地
域である可能性が高い。
犠牲者遭難位置の人口
犠牲者遭難位置が都市的地域(市街地)か、農村的地域
(非市街地)かについて検討した。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体
洪水
非市街地
河川
土砂
その他
市街地
「非市街地」は、一般的にいわゆる「地域
のつながり」が強く、自助・共助の取り組
みが行いやすい場所である。
しかし
豪雨災害においては、「非市街地」に犠牲
者が集中しており、いわゆる自助・共助の
取り組みが、犠牲者の軽減に直結しにく
い可能性を示唆している。
犠牲者遭難位置の地形分類
0%
20%
40%
60%
80%
100%
山地・丘陵地では斜面崩壊、地すべり、土
石流などの土砂災害が、低地では河川洪
水、内水氾濫などがおこりやすい。
全体
洪水
山地・丘陵地
河川
台地
低地
土砂
その他
しかし台地は災害の危険が比較的小さ
い。
豪雨災害の犠牲者は、地
形的に洪水、土砂災害が
生じやすいと定性的に言
われている場所で多く生じ
ていることが確認された。
まとめ
近年の豪雨災害において、
・「屋内」よりは「屋外」での遭難者のほうが多いが「土
砂」のみは、「屋内」が圧倒的に多い。
・犠牲者の5割以上は高齢者である。
・豪雨災害のよる被害は、あらゆる場所で一様に生じ
ているのではなく、発生しやすい場所で集中的に発
生している。
※ 今回の集計はあくまで最近8年間に発生した豪雨災害事例
のみを対象としたものであり、この間に発生していない形態の災
害が存在する可能性がある。今後、さらにデータの蓄積を進め
ていきたいと考えている。