第3章. 証券会社と証券業務 (1).証券会社の業務

第3章. 証券会社と証券業務
(1).証券会社の業務
○伝統的業務
• 発行市場関連
– 新規に証券が発行される市場
– ①引受業務(アンダーライティング)
– ②募集業務(セリング)
• 流通市場関連
– 既発行証券が投資家間で売買される市場
– ③委託売買業務(ブローカー業務)
– ④自己売買業務(ディーリング)
③委託売買業務→委託売買手数料
• 株式の委託売買手数料の自由化
• 固定手数料(取引所が定める)→94.4.以降大口から
手数料自由化始まる→99.10.完全自由化
• c.f.アメリカでは75.5.完全自由化(メーデー)
• 日本:手数料自由化による競争激化とネット取引
の普及が同時進行
• →ネット取引による格安手数料の提供、数多くの
ネット証券会社(オンライン・ブローカー)の登場
– 金融は現物のデリバリーが不要なため、ネット取引と
の相性がよい
– 証券は手数料が高いため、特にネット取引の効果大
– ネット証券会社の手数料:売買代金の0.05%~0.1%
– 自由化以前:売買代金100万円で1.15%
• →証券会社の二極化
– ITサービス特化の低価格戦略型
– IT+対面サービスによるアドバイス重視・付加価値提
供型(資産管理型営業)
福光・高橋編『ベーシック証券市場論』04年版p.136
日経06.11.18.
④自己売買業務
→自己売買益(トレーディング益)
• 株式
– 証券取引所での取引、上場株式の取引所外取引
– 取引所での売買の30~40%が証券会社の自己売買
• cf. 本講義第1章(2)株式の流通市場.株式売買状況
• 債券
– 対顧客取引、業者間(インターディーラー)取引
○債券の流通市場の概念図
業者間市場
証券会社
(ディーラー)A
証券会社
(ディーラー)B
対顧客
取引
投資家:
a
b
c
d
e
f
cf. 外国為替市場での取引構造と同じ、デリバティブの
店頭取引や証券化商品の取引も同じ取引構造
○証券仲介業
• 証券会社以外の企業や個人が、証券会社の委託を
受けて、有価証券取引の仲介(売買の媒介や募集・
売出しの取扱い)を行う
– 仲介業者は仲介のみを行い、顧客口座は証券会社が保
有・管理
– 2004年に解禁
• 大手証券会社:顧客・チャネルを拡大するチャンス
– 地方銀行等と提携
• 銀行:証券仲介業進出により取扱い商品を増やす
– 銀行は系列の証券会社と提携
◎伝統的業務以外の業務
• P TS(私設取引システム)業務
• cf. 本講義第1章(2)株式の流通市場
• 店頭デリバティブ業務
• 投資信託業務・資産運用業務
– 通常、証券会社の子会社・関連会社の形態で業務展開
• M&A業務:企業の買収や合併を専門的アドバイ
ザーとして支援する業務
• 企業再生ビジネス:
– 経営不振・破綻企業への資本投資・経営改革・事業再
構築を通じて企業を再生し、株式公開・企業売却により
資金を回収する事業
• 証券化業務
・日本のPTS
日本証券
経済研究所
『現代日本の
証券市場』
2008年版
大和証
券
2008.8.8
マーケット
メーク方式
18:00~
23:59
個人投
資家
上場銘
柄
○証券会社のM&A業務
• 企業の買収・合併を専門的アドバイザーと
して支援する業務
– 対象企業の徹底した事前精査due diligence:
事業面・財務面・人事面・税務面・法務面
– 様々な分野の問題点の摘出と解決策の提示
– 適切な買収価格・合併比率の算定
– 対象企業との交渉
– 法的手続きの遂行
・M&Aのアドバイザー業務:
対象分野を特定して企業を買収するケース
西村信勝『外資系投資銀行の現場』日経BP社 p.260
○日本企業関連M&Aアドバイザリーランキング
・公表案件、取引額ベース
トムソンファイナンシャル調べ
・証券会社の企業再生ビジネス
日経新聞05.10.07.
○証券化の仕組みと証券会社の証券化業務
債権譲渡
債(
不
務足
者主
体
)
負
債
資
本
(
住
住宅
宅
ローン
ロ
借入証書
ー
ン
担
SPC(特別
銀行・ノン
保
バンク(オリ 目的会社) 証
券
ジネーター)
)
・Special Purpose Company
・Mortgage Backed Security
・
住
宅
ロ
ー
ン
住
宅
ロ
ー
ン
M
B
S
証
券
市
場
投(
余
資剰
家主
体
)
○証券化の仕組みと証券会社
• ①
– ローンの提供origination自体は、モーゲージバンク等
が行う。証券会社も系列のモーゲージバンクを所有し
ていることが多い。
– 証券会社はローンの貸出条件・パフォーマンス等の調
査・リスク分析
• ②
– SPCの役割:オリジネーターから切り離された資産の
みによって裏付けられた証券の発行
• ③
– 証券化商品の元利金支払を確実にするための措置
• リスク分散
• 優先劣後構造:証券化商品を支払順序によって優先部分と
劣後部分に分ける→投資家が保有しやすい格付の高い債券
を作り上げる
• ④
– 投資家への証券化商品の販売には格付が不可欠
– 格付会社は証券化の業務プロセスに深く関与
• 高格付取得のため、ストラクチャリングは格付会社と協議しながら
行う
• ⑤
– 証券会社は証券化商品のアンダーライティング(引受け)
とマーケットメイク(売値・買値を提示して顧客に売買機会
を提供)を行う
•
:ストラクチャリングを中心に証券化の
仕組み全体のアレンジ
– 証券会社、銀行
『ベーシック証券市場論:改訂版』p.40
・証券会社の収益構造
07年度
委託手数料
24%
06年度
05年度
04年度
26%
31%
31%
6%
6%
7%
引受手数料
3%
募集手数料
10%
10%
8%
8%
その他手数料
38%
31%
26%
26%
トレーディング損益
16%
22%
25%
25%
金融収支
7%
5%
4%
3%
金融収益
31%
22%
14%
15%
金融費用
24%
17%
10%
11%
・証券会社の収支状況(2001年3月期)