中東諸国における 権威主義体制の持続要因

中東諸国における
非民主体制の持続要因
レンティア国家論と
体制変動の経路依存性
日本国際政治学会
2005年度研究大会
山形大学 浜中新吾
はじめに
• 中東は民主化の「例外地帯」
• リプセット・モデルに当てはまらない
• レンティア国家論による説明
– レント概念の拡張(「政治レント」)
• 体制の移行経路には、移行前の体制が
持つ制度的特徴が意味を持つ
本研究の課題
• レンティア国家論と体制の制度的特徴に
よる説明(経路依存性)の実証分析
• 大量調査型研究法(Large N studies)
• フォーマルモデル・ビルディングによって
因果関係を明確化
Boix-Stokesモデル
経済水準と民主化効用
経済発展水準とレンティア効果
0
通常
レント
- 0 .0 0 0 5
- 0 .0 0 1
効 - 0 .0 0 1 5
用
- 0 .0 0 2
- 0 .0 0 2 5
実質国民所得
0
20
00
0
00
15
10
00
0
00
60
00
50
00
40
00
30
00
20
15
00
- 0 .0 0 3
計量分析の方法
• Dynamic Probitモデル
• Adam Przeworskiが考案
• 民主化移行、定着、退行の分析を得意と
する
• 本研究に使用したデータセットはオリジナ
ルのもの
データの観察
図3:経済水準と民主制およびレンティア国家の割合
民主制
レンティア体制
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
$0-$2,000
$2,001$4,000
$4,001$6,000
$6,001$8,000
$8,001$10,000
$10,001-
データの観察
図4:経済水準と移行確率
0.0900
PAD
PDA
0.0800
0.0700
0.0600
移
行 0.0500
確 0.0400
率
0.0300
0.0200
0.0100
0.0000
$0-$2,000
$2,001$4,000
$4,001$6,000
$6,001$8,000
経済水準
$8,001$10,000
$10,001-
Dynamic Probit分析①
経済成長は民主化を促進し、退行を阻止
石油レントは民主化を抑制する
Dynamic Probit分析②
鉱物・送金
ともに影響なし
Dynamic Probit分析③
レント変数で有意な
ものは石油レントの
み
Geddesの権威主義体制モデル
• 3つの理念型モデル
– 「軍部支配体制」
– 「一党支配体制」
– 「個人支配体制」
• 混合型モデル
– 「軍部‐党」「党‐個人」「個人‐軍部」
– 「軍部‐党‐個人」
軍部支配と一党支配のゲーム
支配戦略
支配戦略
個人支配ゲーム
p≦4/7の
時、ナッシュ
均衡
個人支配ゲーム
p>4/7の
時、ナッシュ
均衡
危機の一党支配ゲーム
p≦5/6の時
ナッシュ均衡
危機の一党支配ゲーム
p>5/6の時
ナッシュ均衡
中東諸国の政治体制の類型
生存分析の結果
結論
• 経済発展は民主化を促すものの、石油レ
ントが非民主体制の持続要因になる
• レンティア国家論は石油レントに関して正
しいと言える
• 「君主制」および「個人・軍部・党」体制はよ
り長期間持続する傾向がある
考察
• 「レントに依存する国家が開発戦略を変更
できない」Karl(1997)の主張
• 本稿の結果は「石油のレント性」を強調
• 他の資源や送金は民主化抑制要因とはな
らなかった
考察
• 「中東諸国の民主化」は「ゴドーを待ちなが
ら」なのか?
• 「権威主義体制の成功要因を研究すべき
だ」とするAlbrechat & Schlumberger(2004)
の主張
• 暴力装置の能力と意思が「成功要因」だと
するBellin(2004)の意見