第7章 交換技術

第10章 通信品質と信頼性
10.1
10.2
10.3
通信品質
安定品質
信頼性と保全性
10.2 安定品質
10.2.1
10.2.2
10.2.3
10.2.4
10.2.5
10.2.6
安定品質とは
安定品質の支配要因
安定品質の尺度
安定品質に関連する規格
交換機の故障対策
伝送路の故障対策
10.2.1 安定品質とは
途中で中断することなくネットワークサービスを受けることが
できること.
IP電話など音声による通信サービスでは特に重要である.
通常,サービス断の時間の割合(不稼働率)で規定する.
現行の事業者用電気設備規則では,
音声伝送サービスに対する安定品質に対する規定は
定められていないが,
ITU-Tにおいて,IPネットワークの故障頻度を安定品質として定義し,
Y.1540草案として安定品質の目標値を検討している.
10.2.2 安定品質の支配的要因
① 外部要因
天災,災害,事故など。
外部要因は制御不可なので,伝送ルート複数化,交換機の分散設置など
が対策となる。
人為災害の場合は,セキュリティ対策面からの配慮が必要な場合もある。
② 内部要因
装置自体の信頼性,修理開始までの時間(保全体制),
実際の修理時間(保全能力)など。
設備の信頼性の確保,装置構成の見直し,体制面からの検討が
必要となる。
10.2.3 安定品質の尺度
(1)用いる尺度
利用者が利用しようとしたとき,故障のために利用できない確率,
すなわち,
① 呼の生起確率
② 故障頻度
③ それぞれの時間変化
から安定品質を求めるのが理想。
呼の生起確率や故障頻度の時間変化の把握が困難。
交換設備や中継伝送系では,不稼働率を品質評価尺度とする。
ただし,加入者系では故障時間の実態把握が難しいので,故障率を用いる。
(2)不稼働率と故障率
平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between
Failure)
正常状態から故障状態に至るまでの平均時間
平均修理時間(MTTR:Mean Time To Repair)
故障直後から正常状態に戻るまでの時間
不稼働率=
MTTR
MTTR + MTBF
通常,MTBF≫MTTRなので,
不稼働率≒
MTTR
MTBF
故障率=
1
MTBF
10.2.4 安定品質に関連する規格
(1)ITU-Tの規格
以下の点から検討が進められ,目標値の設定が行われる予定である。
① 接続アクセスビリティ(accessibility)
ダイヤル後,呼が相手に正常に接続される確率。
② 接続リテイナビリティ(retainability)
相手との通信中において,通話終了前に通信が切断される確率。
(2)電気通信事業法の規定
電気通信設備の損壊または故障対策としての基本事項
① 地震その他の自然災害,あるいは火災等に対する電気通信設備の防災処置
② 大規模な故障が発生したときに故障を検出する機能の具備
③ 代替設備として使用できる予備設備の設置
10.2.5 交換機の故障対策
① 二重帰属
ある階梯の交換局を,それより上位の階梯の2つの交換局に帰属させる。
[NTTの例]GC(群局)を2つのZC(中継局)に帰属させている。
地域的な広がりを持つ災害の場合,
2つの上位局は地理的に十分離れていることが必要となる。
② 局分散
ひとつの交換局に加わる呼を地理的に離れた交換局に分散させる。
特に,数多くのルートでは最上位の交換機を唯一の接続路とすることが
多いのでは,NTTではZC(中継局)等の中継交換機の分散を図っている。
10.2.6 伝送路の故障対策
① 多ルート化
予備の伝送路を設定し,ひとつのルートが故障しても
予備伝送路に自動切替を行う。
伝送路故障時でも平常サービスを維持することができる。
② 2ルート化
回線を2ルートに分散収容することで,通信の途中切断を防止する。