安全学基礎 ー 確率論的安全評価(2) ー システム創成学科 ETAとFTAの組合せ A A B C D OK OK OK ABCD M U N V 小ET/大FT 大ET/小FT X Y Z 1 基本事象発生確率の評価 (不)信頼度 ある時刻に機器が故障していない(いる)確率 アンアベイラビリティ 規定時間内に機器が故障状態にある確率 一定故障率λで故障する機器 故障密度(指数分布) f (t ) = λe −λt R (t ) = e −λt 信頼度 ∞ 1 MTBF = ∫0 λte −λt = 平均故障間隔 λ 設備機器の故障率 安定期 損耗故障期 故障率 初期故障期 使用時間 2 常用系の信頼性(1) 常用系 設備運転中は稼動している。 故障は直ちに検出され、修理される。 時間あたりの修復率 µ ∞ 1 MTTR = ∫0 µte −λt = 平均修復時間 µ 平均アンアベイラビリティ Pu = MTTR λ = MTBF + MTTR µ + λ 常用系の信頼性(2) P 健全状態にある確率 Q 故障状態にある確率 状態遷移図 λ P 定常状態 dP dQ = =0 dt dt λP = µ Q P + Q =1 P= µ µ +λ Q= λ µ +λ Q µ dP = µ Q − λP dt dQ = λP − µ Q dt 3 待機系の信頼性(1) 待機系 設備運転中は待機し、必要に応じて起動する。 故障は起動するか点検しないと発見されない。 点検は一定期間Tで行われる 故障が発見されると直ちに修理される。 修理に要する時間は点検間隔と比較して無視 できる。 常用待機系の信頼性(2) 平均アンアベイラビリティ アンアベイラビリティ Pu = λT 1 T 1 −λt −λT − e dt = − − e ≈ ( 1 ) 1 ( 1 ) ∫ T 0 λT 2 平均 T 時間 4 荷重強度システムの信頼性(1) 荷重強度システム 使用環境がシステムに及ぼす荷重が強度限 界を超えた時に故障するようなシステム 応力 要求 電圧 温度 ー 材料強度 − 処理容量 − 絶縁耐圧 − 最高許容温度 荷重も強度も不確か → 確率変数 荷重Lの密度関数 fL 強度Sの密度関数 fS 故障確率 Pf = P ( S ≤ L) 確率密度/確率 荷重強度システムの信頼性(2) 強度 FS 荷重 fL fS 荷重/強度限界 +∞ x = ∫−∞ ∫−∞ f S ( y )dy f L ( x)dx +∞ = ∫−∞ FS ( x) f L ( x)dx 5 不確かさの原因と種類 パラメータの持つ不確かさ 不確定性(variability) 統計的不確実性(uncertainty) 専門家による判断の不完全性 モデル化の過程で入り込む不確かさ モデルの不完全性 想定の非現実性、知識の不足 リスクの評価の際に用いた近似 不確かさの表現 点推定 平均値のように、そのパラメータの評価結果を代表す る単一数値 点推定の周りの不確かさの表現 確率密度関数 標準偏差 上下限値: 累積度数で5%と95%の値が一般的 エラーファクター(EF): 上限値/下限値 6 不確かさ解析(1) ORゲートの場合 相関係数 Y = X1 + X 2 ρ= µY = µ X 1 + µ X 2 σ Y2 = σ X2 1 + σ X2 2 E[( X 1 − µ X1 )( X 2 − µ X 2 )] + 2 ρσ X 1σ X 2 σ X1σ X 2 ANDゲートの場合 Y = X1 ⋅ X 2 µY = µ X1 µ X 2 + ρσ X1σ X 2 σ Y2 = ( µ X2 1σ X2 2 + µ X2 2σ X2 1 + σ X2 1σ X2 2 )(1 + ρ ) 2 不確かさ解析(2) 確率分布 入力データ X1 評価結果 計算モデル (モデル化誤差) X2 Y X3 一般的には統計的サンプリング法(モンテカルロ シミュレーション)などが用いられる。 7 従属故障 以下の関係があるときAとBは従属である P(A∩B) = P(B|A)P(A) > P(A)P(B) 従属性があると冗長性による安全対策が有効 に働かなくなる 従属故障の具体例 2基の非常用電源を同じ部屋に設置していた ので、火災(地震)で両方とも破損した。 2台の装置のスイッチが隣合せにあったので、 1台を起動し忘れたらもう片方も忘れた。 従属故障の分類 共通モード故障 複数の同一機器が同時に従属的に同じ故障モードで 故障する 伝播型故障 ある機器の故障が原因で別の機器の使用環境が大 きく変化して故障する 共通原因故障 単一の出来事に起因して複数機器の故障が同時に 起る 共有設備 複数設備で補助系統などを共有している場合に共有 部分が故障する 8 FTAでの従属故障の考慮 T XとZの故障のうち、共通原 因による部分Cを分離して FTを作成 P X T = XP X C = (X +C)(Y+Q) =(X +C)(Y+ZW) =(X +C){Y+(Z +C)W} = X Y+X Z W+X CW+CY+CW = X Y+X Z W+CY+CW Q Y Z Z W C パラメトリックな従属性モデル T βファクター法 同一機器の故障Pを関 する従属部分Pcと独立 部分Piに分解 従属部分の故障率割合 をβと仮定 P P P T PT = Pin + Pc = (1−β)nPn + βP I Pi Pi Pc Pi 9 定量的リスク評価の限界 基礎データ、計算モデルなどに多くの不確 かさや仮定を含み客観的でない ヒューマンファクタや社会組織要因などが 十分考慮されておらず不完全 何を損害と考えるか(エンドポイント)につ いては価値観に左右される リスクコミュニケーションに有効でない 定量的リスク評価の意義 安全目標が達成されていることの確認 ただし達成できたといって安心してはいけない 安全性向上のための対策立案 どこを改善すればさらに安全が向上するか 同一目的を達するための複数手段の比較 相互比較によりリスク最小の選択肢を選択できる 資源(資金・労力)の最適投資 投入資源に対するリスク削減効果の最大化 10
© Copyright 2024 ExpyDoc