第1章 電気工学の基礎

第6章 ネットワーク技術
6.1 ネットワーク技術の基礎
6.2 LAN
6.3 電気通信網
6.4 アクセスネットワーク技術
6.5 インターネット技術
6.6 バックボーンネットワーク技術
6.3 電気通信網
6.3.1
6.3.2
6.3.3
6.3.4
電気通信網と電話網
電話網
電話網の信号
電話網の信号方式
6.3.1
電気通信網と電話網
(1)電気通信網と電話網
[電気通信網の定義]
2つ以上の通信源の間を結合して相互通信を可能とする伝送媒体
ノード
ノード
リンク
ノード
交換機
リンク
伝送路
伝送路
端末装置
(加入者系)
リンク
ノード
交換機
伝送路
端末装置
(中継系)
(加入者系)
通信網の分類
① 情報内容からみた分類
電話網,電信網,データ通信網,画像通信網
② サービス対象による分類
公衆通信網,地域通信網,専用通信網,移動体通信網,軍用通信網
③ 規模による分類
構内通信網,市内通信網,市外通信網,国際通信網
④ 交換方式による分類
回線交換網,蓄積交換網,メッセージ交換網,パケット交換網,
ATM交換網
⑤ 伝送方式による分類
アナログ通信網,ディジタル通信網,光通信網
交換網と伝送路網
① 交換網
・ 交換機とそれらを結ぶ回線で構成された網。
・ 電話機との選択信号のやり取りにより通信相手との通話パスを設定す
る。
・ 回線は伝送路網によって実現される。
② 伝送路網
・ 伝送路網で収容する回線の90%以上は電話網。
・ 電話網だけでなく,専用回線網,データ交換網など
各種の回線も収容している。
・ 伝送路網を構成する伝送システムを実際に収容する網を線路網という。
電話交換網の構成
このように区域および交換局を体系化することを市外帯域制という
基幹ルート
総括局
中心局
集中局
端局
市外通話系の複合回線網
: 斜ルート
6.3.2
電話網
(1)通信網構成の条件
① 接続の任意性
② 接続の迅速性
③ 情報伝達の透明性
④ 通信品質の一様性
:
:
:
:
⑤ 信頼性
⑥ 融通性
:
:
⑦ 番号体系の統一性 :
⑧ 料金体系の合理性 :
どの通信端末とも相互に接続できること。
端末から直接指示でき,接続が迅速に行われること。
伝送すべき通信内容になるべく制限を与えないこと。
どのような場所からの通報にも,
特別の区別がない限り同等な接続品質,伝送品質,
その他のサービス品質を維持すること。
通信網の信頼性を長期にわたって確保すること。
トラヒック変動や過負荷等に対して十分な耐力を持
ち,
網拡張,機能変更をしやすいこと。
統一的で使いやすく,長期にわたり変更を要しない。
合理性のある一定の秩序が必要。
回線網トポロジー
網形網(網状網)と星形網(星状網)
① 網形回線網
:端末
② 星形回線網
:中継交換機
③ 複合回線網
:加入者線交換機
:電話機
網形網と星形網の違い
項
目
中 継 交 換
全 方 路 数
(両方向回線)
方路当り呼量
中 継 線 数
局間中継線の
大 群 化 効 果
網 コ ス ト
網形網
な し
星形網
必 要
n
n  1
2
n
小
0
な
し
伝送コスト<交換コスト
のとき有利
大
1
あ
り
伝送コスト>交換コスト
のとき有利
ルーチング(経路選択)
ルーチング(routing)
複数の接続経路の中から1経路を選択すること
多段迂回ルーチング
(multistage alternate routing)
この方法で
逐次中継交換する方式
迂回中継方式
[用語]方路(Root)
ある局から次の局に向かう回線群
第3方路が
話中のとき
第2方路が
話中のとき
第1方路が
話中のとき
第1方路
遠近回転法
多段迂回ルーチングの一種
多段星型網の中で最も遠くの交換局への方路(斜回線)から
逐次近い局に方路を順番に選択していく方法
1
‘
1
2
③
④
3
2
‘
②
①
3
‘
6.3.3
電話接続動作の流れ
電話網の信号
(1)電話接続動作
交換機
交換機
着信端末
発信端末
(受話器上げ)
発呼信号
発信音
ダイヤル
起動信号
起動完了信号
選択信号
呼出音
(課金開始)
応答信号
呼出音
応答信号
(受話器上
(通話中)
(課金終了)
(受話器置く)
切断信号
応答信号
(課金終了)
切断信号
復旧完了信号
終話信号
(受話器置
(2)信号の種類と信号の役割
① 監視信号
呼の接続制御の過程を監視するための信号。
呼の進行方向に送信される順方向信号と,
その逆方向に送信される逆方向信号がある。
② 選択信号
接続すべき着信端末を識別するための信号。
③ 可聴音信号
人間と機械のインターフェースとして
発信者に呼接続の進行状況を知らせる音信号。
④ 呼出信号
着信端末を呼び出す信号であり,
16Hzの交流の1秒送出,2秒休止の音信号
信号の種類
信号の種類
監視信号
加入者線信号方式
発呼信号,切断信号,
応答信号,終話信号
局間信号方式
起動信号,起動完了信号
応答信号,終話信号
切断信号,復旧完了信号
MF信号
選択信号
可 聴音信号
呼出信号
課金信号
DP信号,PB信号
発信音,話中音,呼出音
呼出信号
貨幣収納番号
課金パルス信号
監視信号
呼の接続制御の過程を監視するための信
号。
次の2種類に分類することができる。
① 順方向信号(制御信号)
② 逆方向信号(表示信号)
信号の種類
[順方向信号]制御信号
① 発呼信号
端末が発呼したことを交換機に知らせる。
② 起動信号
後位の交換機に対して選択信号の受信準備を促す。
③ 切断信号
発信端末が受話器を置いたことを
後位の交換機に知らせる。
発信交換機は,この信号で課金を停止する。
この信号を受信した交換機は復旧を開始する。
信号の種類
[逆方向信号]表示信号
① 応答信号
着信端末が応答したことを示す。
発信交換機は,この信号で課金を開始する。
② 終話信号
着信端末が受話器を置いたことを前位の交換機に知らせる。
発信局交換機はこの信号受信で課金を停止し,
後位交換機を復旧させる。
③ 起動完了信号
前位の交換機に対して選択信号の受信準備が完了したことを
を知らせる。
④ 復旧完了信号
前位の交換機に対して各装置の復旧が完了したことを知らせる。
接続すべき着信端末を識別するための信号
選択信号
① DP(Dial Pulse)信号:アナログ加入者線用,アナログ局間用
ダイヤル信号を直流ループ電流の断続回数に対応させた信号。
加入者線信号方式,局間信号方式で使用される。
パルス送出速度は 10 pps(パルス/秒),20 pps の2種類がある。
② PB(Push Button)信号:加入者線用
音声周波数帯域の高群4周波,低群4周波を使用し,各群から1周波ずつ選
ぶ。
その組合せでダイヤル数字を表示する。加入者線信号方式で使用する。
③ MF(Multi Frequency)信号:局間用
音声周波数帯域の6周波を使用し,そのうち2周波の組合せで
ダイヤル数字を表示する。局間信号方式で使用する。
伝送速度が高速(7.5~10 数字/秒)であり,NTTの標準方式である。
人間と機械のインターフェースとして
発信者に呼接続の進行状況を知らせる信号
可聴音信号
① 発信音(DT : Dial Tone)
ダイヤル受信準備完了を知らせる音。400 Hzの連続音。
② 呼出音(RBT : Ring Back Tone)
着信端末を呼出中であることを発信者に知らせる音。
400 Hzを 16 Hzで変調した音を 1秒送出,2秒休止の断続音。
② 話中音(BT : Busy Tone)
相手または中継線が話中であることを示す音。
400 Hzを 0.5 秒送出,0.5 秒休止の断続音。
6.3.4
電話網の信号方式
(1)加入者線信号方式
① アナログ信号方式
端末機能の簡単化,人間対機械のインターフェースの簡単化のために
単純化されている。選択信号は DP 信号,PB 信号を送出する。
② ディジタル信号方式
端末回線がディジタル回線であると,音声情報も信号もすべてビット情報で
伝送される。このため,データやFAX等も同じ回線で伝送できる。
ディジタル回線では,通信情報を伝送する情報チャネルと
信号を伝送する信号チャネルが分離される。
(2)局間信号方式
信号の転送方式
① L×L(link by link)形式(日本)
隣接する交換機間で選択信号を送受信して,次々に受け渡す方法
発信端末
発信局
中継局
“ABC
XXXX”
“ABC XXXX”
Register sender
中継局
“ABC
XXXX”
Register
sender
着信局
着信端末
“XXXX”
Register sender
Register
② E-E(end to end)形式(米国)
発信局からすべての中継交換機および着信交換機に選択信号を送る方法
発信端末
発信局
中継局
中継局
着信局
“XXXX”
“C”
“AB”
Register sender
Register
Register
Register
着信端末
個別線信号方式
個々の通話回線ごとに信号の授受を行う方式。
それぞれの通話回線に信号機能が必要となる。
伝送方式に対応した監視信号が送られる。
直流信号方式,帯域外周波信号方式,PCM信号方式が使用される。
通信回線・信号回線
交
交
換
換
機
機
信号装置
信号装置
共通線信号方式
通信回線とは別に信号専用の回線を設け,
複数の通話回線のための信号を1本の信号専用の回線で送受信する方式。
通信回線
交
交
換
換
機
機
信号装置
信号回線
信号装置
共通線信号方式の特徴
① 両方向に豊富な信号を送ることができる。
② 呼状態とは独立して(例えば通話中でも)信号を転送できる。
③ 信号転送だけに特化しているので,信号転送を高速化できる。
④ 呼とは関係しない局間情報を転送できる。。
各種のサービス提供,回線の両方向運用,
接続時間の短縮,高度な網制御等が可能となる。
6.3 電気通信網
完