第11章 経営計画のための調査

経営情報概論
第4回
「情報を利用した経営判断へ」
(統計への誘い)
~統計家は最もセクシーな職業~
10月30日
浜松誠二
図書紹介
• 入山 章栄著 2012年
「世界の経営学者はいま何を考えているのか
――知られざるビジネスの知のフロンティア」
英治出版 1995円
• 佐々木 圭吾 2013 年
「みんなの経営学―使える実戦教養講座」
日本経済新聞出版社 1680円
第4,5回の内容
• 情報入手から分析
各種調査
統計学
• (モデル構築)
• 最適解の探索
本日の内容
Ⅰ.最強の学問―統計ブーム―
Ⅱ.経営と情報
Ⅲ.調査について
1.事実を知っているか
2.情報を集める
3.調査の種類
4.対象を理解する
来週・・・「最適な企業行動を求めて」
統計学、最適解の探索
Ⅰ.最強の学問―統計ブーム―
• 「統計学が最強の学問である」
西内啓著 ダイヤモンド社 2013年
EBM(Evidence-Based Medicine)
根拠に基づく医療
(前史)
• イグナッツ・ゼンメルワイスの発見(1840)
産院での女性の死亡率
12%⇒2%
手を洗うことの励行で産褥熱感染の回避
EBM宣言
ゴードン・ガイヤット、デヴィト・サケット
(1992)
• 治療法の選択は、最高の根拠に基づくべきで、
最高の根拠とはできれば統計からくるべきだ。
「10万人の命」宣言
• ドン・バーウック (2004)
• 回避可能な死の防止のために
6つの変化の導入
肺感染、静脈感染の防止など
治療方法の確認 ⇒ 根拠のある治療
• 分析が可能に
カルテの電子化と共有
事実の発見
• 海外の様子が見えだす(日本)
共有化、国際化、日本へも情報
日本での医療を巡る話題
• B12投与、不整脈治療
• メタボの評価
• サプリメントの評価
• がん検診の評価
• 各種医療否定本
根拠
経験的根拠
事例に基づく
科学的根拠
理論的根拠
理論に基づく
臨床的実証的根拠 統計的検証に基づく
H.G.ウェールズ
• 「統計学的思考が読み書きと同じように良
き社会人としての必須の能力になる日がく
る。」 (1903年)
H.ヴァリン
Google チーフエコノミスト
• 「これから10年もっともセクシーな職業は
統計家である。 」(2009年)
データサイエンティストの時代
• 情報通信白書
将来的に25万人不足
Ⅱ.経営と情報
• 第二次世界大戦終結
(団塊の世代の誕生)
高度経済成長
• オイルショック
中程度の経済成長
• バブル経済の崩壊
経済の長期低迷
(グローバル化)
(情報化)
• 高度経済成長時代の末期
問題解決への楽観
(オペレーションズリサーチのブーム?)
(計画の時代・開発の時代の終焉)
• バブル崩壊後の低迷する経済の中で
情報技術の著しい進歩
多様な情報処理の可能性
情報技術の浸透
• 情報処理 パソコン 1980s初
• 通信
インターネット 1990s中
データを共有し流通の効率化
(サプライチェーンマネジメント)
データ
データ
データ
データ
データ
蓄積されたデータを分析し
利益機会を発見
勘による対応から根拠のある対応へ
(Evidence-Based)
• 年毎の新たなワインの質
(オーリー・アッシェンフェルター)
=12.145+0.00117×冬の降雨
+0.00614×育成期平均気温
-0.00386×収穫期降雨
• 貢献出走塁
(ビル・ジェイムズ)
=(ヒット数+四球)
×総塁数
÷(死球以外の打席数+四球数)
• 自動販売機で新たな需要発見
• GPS等で建設機械の稼働状況を把握
• ツイッター情報から風邪の流行を予測
• リポーターの情報を集約から
ゲリラ雷雨の予測
ビッグデータの争奪
・インターネットの利用がそのままデータに
位置情報、検索情報、交信情報、・・・
グーグル
アップル
フェースブック
アマゾン
・・・
• データの蓄積
• 相関から意味の発見
• ビッグデータ
Volume 大量
Variety 多様
Velocity 高速
Ⅲ.調査について
1 事実を知っているか
(1)都合のよい判断
(2)無反省な弁明
(3)ヒューリスティクな判断
(4)生きるための方便
(5)科学的判断力の欠如
(6)偏向する判断
(7)真実を見たくない
○ B.フランクリンの格言
•
理性のある動物、人間とは、まことに都合
のいいものである。したいと思うことなら、何
にだって理由を見つけることも、理窟をつける
こともできるのだから。
○無反省な弁明
富山の特徴に関する多様な言説
日常的認識での誤りが多い。
→ 日常生活から地域の実態を知ることは殆
ど困難!?
→ 事例的知識は可能性に過ぎない
→別途、統計的調査が必要
○ヒューリスティクな誤りの類型
• ベースレートの誤信
乳がん検診陽性でのがんの確率
• ギャンブラーの誤信 失敗続きの後は
• 利用可能性への過度の依存
私の知人はこうであった
• 因果関係の存在への期待 ハリネズミの失敗
• アンカリングの習性 先入観の囚われ
• 後知恵の追加 自らの正当化のみ
• 大量情報処理の恣意的整理
8以上の序列化は無理
○偏向する判断
• 判断は自己利益に合わせて偏向しがちであ
る。
メタボ健診
公共事業の必要性の判断
○疑似科学の典型例
•
•
•
•
•
•
血液型性格判断
ホメオパシーによる治療
マイナスイオンの健康効果
優しい言葉と水の結晶
インテリジェントデザイン
・・・・・
2 情報を集める
知識の源泉は
• 日常生活体験
• 伝統
• 権威
• 調査
調査の科学
科学的にやる
コツコツ調べ続け、必要な際には果敢な判断を
限界があることを認識しつつ最善の方法を
超常現象の乗り越え
説明できないものは説明できないものとして受け入れる
ミッシングリング存在の許容
勝手な説明をしない
2-1 自らの活動の中の情報
2-2 他者が収集した情報
• 国内政府統計 政府統計の総合窓口
• (外国政府統計)
• 国際機関統計 国連、世界銀行、・・・
• 各種ドキュメント
• 先行研究
2-3 自ら集める
事例的調査
統計的調査
3 調査の種類
3-1 いろいろな調査
• 「事例的調査」
• 「統計的調査」
(既存情報、新規情報含めて検討)
• データの一覧表は、変数毎に列、標本毎に行
を設定する習慣となっている。
• 事例調査
少数の行を取り出して調査。
新たな考え方を発見する
→仮説構築
普遍的な事象かどうかは別途検証が必要
• 統計的調査
幾つかの変数(列)を取り出して調査。
既にある考え方に基づき変数(説明要素)を
取り出し、普遍的か確認する
→仮説検証
元になる考え方がないと変数は選択できない
3-2
事例的調査
踏査
◎調査対象とする社会現場に入り込んで多様
な手法で情報を収集
特定の調査手法ではない。
特定の地理的範囲の社会集団の総合的調
査になり、節度ある行動が求められる
富山市打出
参与観察調査
◎社会集団の中に入り込んで直接、見聞きし情報を収
集
非参与(傍観)から潜入までの広がりがある。
その客観性、代表性に疑問が呈されますが、その社会
集団についての深い理解を得ることができます。
実際の調査では、調査者に極めて大きな負担を強い
る。
インタビュー調査
◎インタビューを重ねて、人々の意識や事実関係
の情報を収集
統計的集計、深い思いを聞き出すための調査、
テーマに関する回答者の熟した意見を求める調
査など多様なものがある。
多くの仕事で、他者からの聞取り調査(ヒアリン
グ)は重要。
改まった体系的なヒアリング調査であり、円滑な
聞取りには配慮すべき事項がいろいろとある。
ドキュメント調査
◎他者の手によって記録されたものの体系的
調査
情報資源の限界や他者が記録する際に偏り
が入り込む。
近年、多様な情報の蓄積が進んでおり、テキ
ストマイニングが盛んになっててる。
新聞、会議録等々、多様なドキュメントがあ
り、興味深い調査が可能。
3-3 統計的調査
公式統計調査の二次分析
◎既発表統計の分析
他の社会調査を補完する調査として重要。
それ自身が社会調査としての意味を持つこと
ができる。
近年、情報技術の浸透によって、多様な情報
の活用可能性、多様な分析の可能性が高まっ
てきた。
統計データをインターネット等から入手し、分
析、表現できる力を早期に身につけておくこと
が極めて大切です。
排出量を規定する要因とその変化
• 一人当たりGDPと一人当たり排出量の相関
実験
◎社会事象を対象とした実験
科学的な調査には実験は不可欠。
社会科学の調査では、通常、実験は困難です。
実験に替わる方法が工夫されます。
近年、心理を基礎とした実験などにより合理的
行動の再検討が盛んに行われている。
調査票調査
◎調査票による意識を主体とした調査
統計学を基礎に、人々の意識のありようを見
つけ出す。
近年、回収率が低下し、その信頼性に不安
が高まっている。
調査票の設問の表現等によって回答が大きく
変わることに細心の注意が必要。
3-4 既存調査の調査
• 「先行研究の調査」
◎他者による既存の研究からの情報収集と体
系的整理
調査研究の出発点で行う情報収集
これだけでは調査手法にはならない。
比較調査法
◎時間的・空間的に異なる場の多様な社会事象の
観察から、その事象間にある同一性あるいは異
質性を求め、そこから社会事象の法則性を発見
する手法
社会事象の把握(分析視点)自体が恣意的となり、
斉一性の問題もあり、科学となるか疑問。
研鑽を積んだ碩学による提示は、大いに意味が
ある。
三角測量
◎多様な調査手法を総合的に活用し、社会の
実態に迫ろうとする手法
推論の蓋然性を高めていくため、衆知を結集
していく。
社会の理解に貢献するように、調査研究結果
を公に提供していくことが重要。
4 対象を理解する
• 記述
• 説明
4-1 事例的調査の分析総合
• KJ法
• グラウンデッドセオリー
4-2 統計的調査の分析総合
(記述)
• 基本統計量
(推測)
• 母集団推計
• 多変量解析
⇒詳しくは来週
社会調査を行うために学ぶべきこと
下表を利用して、事例的調査と統計的調査の
違いについて説明しなさい。
説明には、次の用語(内容)を含んでください。
仮説形成、仮説検証、質的データ、量的データ、
KJ法(又はグラウンデッドセオリー)、多変量解析、
各調査方法の名称