Evidence-based Health Care とは何か Part 1

Evidence-based Health Care
とは何か
日本大学医学部公衆衛生学
原野 悟
現場は何によって意志決定
(Decision-making)をするのか
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経験?勘?
権威者(大家)や同僚の意見?
教科書的知識?
一般からの要求?
関係者の圧力?
予算?
風潮や流行?
保健・医療上の意志決定で
考慮すべき要因
• 価値 (values)
– 社会的文化的規範、信条、慣習、経験
• 資源 (resources)
– 物理的、人的、時間的、費用、技術、地域
• 根拠 (evidence)
– 科学的、実証的、測定データ、疫学、保証
保健・医療上の意志決定要因
価値
根拠
資源
J.A. Muir Gray
疑 問
• 3要因は本当にバランスよく取り入れられ
ているのか?
• 経験に基づく大家の意見は本当に正しい
のか?
• 根拠となるデータは充分あるのか?
• 資源は効率よく利用されているのか?
• あらゆる者が納得するものであるか?
• 実現可能性は本当にあるのか?
保健・医療上の意志決定の過程
• 従来 → 価値や資源を重視
= opinion-based decision making
意見に基づく意志決定
• 今後 → 根拠を重視
= evidence-based decision making
根拠に基づく意志決定
OBDM
意見に基づく意志決定
EBDM
根拠に基づく意志決定
資源の制限・圧縮
J.A. Muir Gray
臨床上の意志決定に影響する要因
根拠
患者・医師要因
患者データ
基礎的な臨床・
疫学研究
無作為化試験
系統的総説
知識
文化的信条
個人的価値観
経験
教育
臨床的
決定
ガイドライン
倫理
拘束
公的な政策・法律
地域の基準
時間
賠償
Mulrow et al.
解 決
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現状に合わせた3要素の配分
科学的根拠と経験の融合
限られた資源の効率的利用
新たな根拠の追求
– 既存の根拠の探索
– 必要な根拠の産出(調査、研究)
• Evidence-based Health Careの実践
Evidence-based Health Careとは
• 定義
– 現時点で入手可能な最良の科学的根拠に
ついてその信頼性や妥当性を批判的に検証
吟味し、個々の経験や技術と統合させて、現
状に即しているか判断してその根拠を有効
に活用して直面する保健・医療上の問題を
解決していく意志決定の過程や方法
Evidence-based Health Careの3要素
患者や受益者の要求や嗜好
Evidence-based Health Care
入手可能な
最良の根拠
専門家の経験や
技術、判断
EBHCに必要な技能や心構え
• 既にある知識や受け入れられている業務や慣例
に疑問を持つ態度
– 真実であると信じている事の間には研究による根拠を
反映しているものとそうでないものがあるかもしれない
ことを区別することが大切である。
– 全ての者の知識にはギャップがある。
– 保健実務者の行う事の多くには根拠がない。
• 根拠を検索する能力
– 系統的総説のような2次的根拠となる資料を利用する。
– 最近の展開についての情報を得るために電子データ
ベースのような根拠となる資料を使用する。
– 1次的根拠となる資料を見つけ使用する。
• その他の能力
– 根拠となる資料を突きとめ、聞きただし、分析する。
– 情報を蓄え、引き出す。
– 根拠を批判的に検証吟味する。
– 入手可能な最良の根拠に従って行動する。
• より患者中心の意識
– 手に入りやすく適切な方法で根拠を患者や受益者が
利用可能なようにする。
– 確実に患者や受益者が処置についての決定に完全
に参加できるようにする。
Doing the Right Things Right
正しい事を正しく行うこと
何がevidenceとなるか-1
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経験 vs 文献
権威者や同僚の意見 vs 文献
動物実験データ vs 疫学データ
科学論文 vs 報告書
観察的研究 vs 実験的研究
症例対照研究 vs 無作為化対照試験
単発の研究成果 vs 複数研究の統合
何がevidenceとなるか-2
• すべてがevidenceとなりうる!
– 診察所見や臨床検査さえも
– ただし、レベルの差がある
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動物より人間に基づく
意見や経験より研究による科学的証明
観察より実験
後向きより前向き研究
単独より複数
EvidenceのLevel
(米国健康政策・研究局AHCPR)
Ⅰa 無作為化比較対照試験のメタアナリシスから得られた
根拠
Ⅰb 少なくとも1つの、無作為化対照試験から得られた根拠
Ⅱa 少なくとも1つの、無作為化はしていないがよい比較対
照研究から得られた根拠
Ⅱb 少なくとも1つの、よくデザインされたその他の準実験
的研究からの根拠
Ⅲ 比較研究、相関研究、症例対照研究といったよくデザイ
ンされた非実験的記述研究からの根拠
Ⅳ 専門委員会、代表的権威者の意見や臨床経験からの
根拠
EBMの実践プロセス
D.L. Sackett
1. 問題の定式化:抱えている問題を解答可
能な質問の形式にする
2. 根拠の探索:文献、その他の情報の検索
3. 批判的検証吟味:その根拠の妥当性や
有用性を検討
4. 問題への適応:検討結果を自分の技能と
統合させ応用を検討
5. 事後評価:実行したことを評価
EBHCの将来
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疫学研究成果の発掘と活用
疫学研究のデータベース化
新たな疫学研究の提案と実施
健康政策への応用
医療技術や健康プログラムの再評価
科学的根拠に基づいたガイドライン