入門B・ミクロ基礎 (第3回) 第1章その2 2014年10月06日 担当 古川徹也 2014/10/06 1 第1章 経済学の十大原理 • ミクロ経済学においてもっとも根本的と も言える考え方について学ぶ。 • 10個の「原理」があるが,それらを意 識して暗記するのではなく,自然と考え 方が身に付くことが望ましい。 • 「てにをは」にこだわる必要はないが, 意味(趣旨)を正確に理解することを目 指すこと。 2014/10/06 2 第1章のKeywords 希少性 経済学 機会費用 合理的な 人々 限界的な 変化 インセン ティブ 市場経済 所有権 市場の失敗 外部性 市場支配力 生産性 インフレ 景気循環 2014/10/06 効率(性) 公平(性) 3 人々はどのように意思決定するか • 第1原理 人々はトレードオフ(相反する 関係)に直面している • 第2原理 あるものの費用は,それを得る ために放棄したものの価値である • 第3原理 合理的な人々は限界原理に基づ いて考える • 第4原理 人々はさまざまなインセンティ ブ(誘因)に反応する 2014/10/06 4 人々はどのように影響しあうのか • 第5原理 交易(取引)はすべての人々を より豊かにする • 第6原理 通常,市場は経済活動を組織す る良策である • 第7原理 政府が市場のもたらす成果を改 善できることもある 2014/10/06 5 経済は全体として どのように動いているのか • 第8原理 一国の生活水準は,財・サービ スの生産能力に依存している • 第9原理 政府が紙幣を印刷しすぎると, 物価が上昇する • 第10原理 社会は,インフレと失業の短 期的トレードオフに直面している 2014/10/06 6 第5原理 交易(取引)はすべての人々を より豊かにする • 交易のない世界:ひとりであらゆる財を 生み出さなければならない生活=無人島 暮らしと一緒 • これが「豊かな生活」をもたらすと言え るのか? 2014/10/06 7 第5原理 “WIN-WIN”の関係(1) Aさんにとって,この 財の価値は100万円 Bさんにとって,この 財の価値は200万円 財 2014/10/06 8 第5原理 “WIN-WIN”の関係(2) 150万円払う Aさん:100万円 Bさん:200万円 財 財 どちらも差引50万円得してる 2014/10/06 9 第5原理 “WIN-WIN”の関係? 150万円払う Aさん:100万円 財 Bさん:110万円 財 Bさんが「200万円の価値がある」 と騙された場合 2014/10/06 10 第5原理 “WIN-WIN”の関係? 110万円払う Aさん:100万円 財 Bさん:200万円 財 Aさんは10万円,Bさんは90万円の 利益⇒この取引はダメ? 2014/10/06 11 第5原理 交易(取引)はすべての人々を より豊かにする • 交易(取引)は,(1) それが自発的なもの である,(2) 情報の非対称性がない,とい う条件を満たす限り,必ず双方に利益を もたらす(はず) • 「財」には時間など様々なものが含まれ る。アルバイトで働くことも一種の交易。 • 国と国の間にもこの原理はあてはまる 2014/10/06 12 第5原理 利益の分配が不公平だったら? • 「利益の分配が不公平」という理由で交 易が成立しなくなることがある。 • 「この交易は,相手が儲けたいからだろ う」と自分が得る利益を全く無視して議 論することがある。 • これらはミクロ経済学的には極めて不幸 (非効率的)である。 2014/10/06 13 第6原理 通常,市場は経済活動を 組織する良策である • 市場経済:分権的な意思決定に基づいて 取引が行われる点がポイント • 分権的:消費者も企業も,自分の売りた いもの,買いたいものを自由に意思決定 できる。 • 集権的(分権の反対):政府が生産量, 消費量などを管理する。 2014/10/06 14 第6原理 「見えざる手」 • 分権的意思決定が行われる市場経済で行 われる交易(取引)を通じて達成される 状態は,望ましい結果となる。 • アダム・スミスが『国富論』の中で述べ た主張。ミクロ経済学では「厚生経済学 の第1基本定理」と同じ。 2014/10/06 15 第6原理 価格メカニズム • なぜ分権的意思決定が望ましい結果をも たらすのか。 • 「価格」がシグナルとなり,無駄なもの を排除し,必要なものが作られる状態を 作り出すからである。 2014/10/06 16 第6原理 価格メカニズム:大雑把な説明 • 社会にとって必要なもの 皆が欲しがる⇒価格が上がる⇒儲けたい企業が作り たがる⇒資源がそちらに振り向けられる⇒皆が欲し がるものがたくさん作られるようになる。 • 社会にとって不必要なもの 皆が欲しがらない⇒価格が下がる⇒儲けたい企業が 作りたがらない⇒資源がそちらに振り向けられない ⇒皆が欲しがらないものは作られなくなる。 2014/10/06 17 第7原理 政府が市場のもたらす成果を 改善できることもある • 中央集権的計画経済は,分権的市場経済 に比べ,非効率的だと考えられている。 • ソ連崩壊(1991年):計画経済で運営さ れていた国家が崩壊。 • 中国:設立当初は共産主義国家として計 画経済の方針に基づいていたが,近年の 急成長は明らかに市場メカニズムが導入 されたから。 2014/10/06 18 第7原理 政府の介入の意義(1)所有権 • しかし,分権的市場経済も様々な問題に 対処できない。 • 第一に,経済活動にとって不可欠の所有 権を守ることができるのは,政府である。 • 所有権を守る:泥棒を罰する制度。 2014/10/06 19 第7原理 政府の介入の意義(2)市場の失敗 • 市場の失敗:市場では効率的な資源配分 を達成できないことがある。 • 外部性:環境汚染等。所有権の割り当て がうまくできないことから生じる。 • 市場支配力:独占あるいは寡占。 2014/10/06 20 第7原理 政府の介入の意義(3)公平性 • 市場経済システムでは,所得格差の問題 を解決できない。 • 所得再分配を進める制度(累進課税,生 活保護など)は,政府によって運営され なければならない。 2014/10/06 21 第7原理 政府の失敗 • 市場の失敗するが,政府も失敗する。 • 一部の政治的影響力を持つ人の利益に基 づいて政策が決まることがある。 • 「公共選択」と呼ばれる分野の課題(本 学部では大岩先生の授業が対応) 2014/10/06 22 第8原理:一国の生活水準は,財・ サービスの生産能力に依存 • 「生活水準」をあらわすのにもっとも便 利な指標は平均所得。 • 平均所得:1人あたりGDPを指すことが多 い。 2014/10/06 23 第9原理:政府が紙幣を印刷しすぎ ると、物価が上昇する • インフレ(インフレーション):経済の 全般的な価格上昇 • 大幅で持続的なインフレのほとんどは、 貨幣供給量の増大が原因。 2014/10/06 24 第9原理 貨幣供給量の変化の原因 • 「政府が貨幣を印刷する」とはどういう ことか?どのようなルートで貨幣は人々 の手元に届くのか • 信用創造メカニズム:「現金」は一定で あっても、預金と貸出を通じて「貨幣」 が増えていくメカニズム • 積極的に貸し出しが行われれば、貨幣が 増えることになる。 2014/10/06 25 第10原理:社会は、インフレと失業の短期 的トレードオフに直面している • 経済の貨幣量の増大は、支出を刺激し、 需要を増大させる。 • 高水準の需要によって、価格の引き上げ や雇用増加が起こる。 • 雇用の増加は、失業の減少をもたらす。 2014/10/06 26 第10原理 インフレと失業のトレードオフは存在するか • 「予想」などを考慮に入れると、それほ ど単純な関係が存在するとは言えない。 • インフレの原因によっては、トレードオ フが成立するとは言えない場合もある。 • 短期的にはそのような関係が成立すると 考える経済学者は多い。 2014/10/06 27
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