紐帯がもたらす対人関係と恋愛消費 駒澤大学 菅野ゼミ 無形財 和田班 和田崇秀 金子裕李花 榎本未央 馬場未帆 大山莉奈 古市明日香 1 報告の流れ 1. 2. 3. 4. 5. 6. 問題意識と研究課題 仮説導出のための調査 出会いの場に関する仮説 仮説の検証 実務への応用 本研究のまとめと課題 2 1.問題意識と研究課題 3 みなさん、 恋愛していますか? 4 食事 洋服 電話 恋愛をすると、いろいろと 消費が増える プレゼント メール デート 5 「非合法的な恋愛の合法的な子供である奢 侈は、資本主義を生み落とした」 ( W.Sombart ,1922) ※ W.Sombartはドイツの経済・社会学者 恋愛は贅沢を生み、 贅沢は経済活動を活発にする 『新装開店「キャバクラ」の経済学』 6 最近の恋愛事情① 日経MJ「若者意識調査」(2008年10月29日) 90.0% 80.0% 70.0% 83.9% 64.6% 60.0% 50.0% 69.1% 53.2% 44% 40.0% 30.0% 27.1% 20.0% 10.0% 0.0% 30~40代既婚者の20代独身時 デートには車が必要 クリスマスに女性に宝飾品を贈ったことがある 20代独身男性 クリスマスにデートをしたことがある 7 資料① 交際相手がいない人の割合 • 男女ともに交際相手がいない人の割合は増加傾向 出所:オーネット「20 代・30 代未婚男女の意識調査」 (2009年) http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0233764_01.pdf 8 資料② 交際相手の有無 • 現在交際相手がいない人で、交際相手がほしいと思ってい る人は、男女共に40~48% 出所:オーネット「20 代・30 代未婚男女の意識調査」 (2009年) http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0233764_01.pdf 9 最近の恋愛事情② • 婚活ビジネスの繁盛(2009/10/03、日本経済新聞朝刊、 29 ページ) – 「未婚男性はたくさんいても、恋愛につながるような出会いは積極的 に求めないとない」営業職の森川精恵さん(27) – 交際相手がいない人たちは、 交際相手を見つけるために 「早く結婚したい」と週に1~2回、合コンやパーティーに参加する。P R会社勤務の西野遥香さん(仮名、22) 努力している&消費している – ある神社が主催する「縁結び会」に3回参加した。機械メーカー勤務 の町田彰敏さん(仮名、29) 10 資料③ 合コン・出会い系パーティーへの参加有無 N=86 43% 参加したことがある 57% 参加したことがない [調査概要] • 駒澤大学の大学生86人(男性53人、女性33人)に調査 • 調査期間:2009年10月 • 調査方法:質問紙調査 11 恋愛事情のまとめ ① 恋愛は消費の原動力になると考えられる ② 交際相手がいない人は年々、増えている ③ 交際相手がいない人で、交際相手が欲しいと思ってい る人の割合は高い ④ 従来の恋愛消費意向は減少傾向にある ⑤ 婚活や恋活といった恋愛の相手を探すための消費意 向は旺盛である ⑥ 婚活や恋活に参加している人は少なくない 12 問題意識 • 出会いの場を探そうと思えば簡単に見つけるこ とができる • 合コンやお見合いパーティーに参加している人 は少なくない • 男女の出会いに問題があるのではないか? • 出会いの場の数ではなく、出会いの場の質に問題 があるのではないか? 13 研究課題 • 恋愛の関係初期段階である「出会い」の場に着 目し、そこでの恋愛発展の可能性に影響する要 因についての考察を行う • 研究課題① – 「出会い」の場において、恋愛感情の高まりに影響を 与える要因とは何かを明らかにする • 研究課題② – 「出会い」の場において、恋愛感情を高めるための マーケティング提案を行う 14 2.仮説導出のための調査 15 調査① • 調査目的 – 男女の出会いの場における問題点を明らかにする • 調査対象者 – 駒澤大学学生7名 • 調査方法 – 深層面談法(デプス・インタビュー) • 質問内容 – 恋愛における出会いの場の問題について • 合コン、ゼミ、サークル、アルバイト等での異性との出会い、 付き合い方、恋愛感情に至る可能性などについて質問 • 調査期間 – 2009年10月13日~16日 16 調査結果 • 21歳女性(恋人なし) – 合コンは行くけれど、そこで付き合う相手を見つけるのはちょっと。合 コンに来ている男性とは付き合いたくない。 – バイトは働きに行っているので、基本的には恋愛は関係ないけど、雰 囲気によるかな。 • 20歳男性(恋人なし) – ゼミやサークルには女性もいるけど、いまさら恋愛対象として見られ ない • 19歳男性(恋人なし) – 友達関係が長いから、今さらこの関係を壊したくないし、友達としか見 られない 17 調査結果 • 20歳女性(恋人あり) – サークルは友達以上恋人未満って感じです。 • 21歳男性(恋人なし) – サークルはいろいろ面倒くさくなっちゃいそうで、合コンはその場限り なイメージ。 • 21歳男性(恋人なし) – 合コンにくる女性はガツガツしていそうで嫌だ。 • 20歳女性(恋人あり) – サークルは家族的存在。 18 デプスインタビューのまとめ • 合コン – 合コンに来ている人とは付き合いたくない – その場限りの関係 弱い関係性 • バイト – 雰囲気によっては・・・ • サークル – – – – – いまさら恋愛対象として見れない いまさらこの関係を壊したくない 友達以上恋人未満 周りを意識して付き合えない 家族的存在 強い関係性 19 つながりの強さと恋愛感情との関連 弱い対人関係と強い対人関係は恋愛感情に至る可 能性が低いのではないか 恋愛感情に至る可能性のある対人関係とはなんなの だろうか 弱くもなく、強くもない中程度の対人関係にあるので はないだろうか 20 3.出会いの場に関する仮説 21 出会いの場における仮説① • 出会いの場における紐帯の強さは恋愛感情 に影響を与える – 出会いの場:ゼミやサークル、合コン、パーティー 等の出会いとなるコミュニティ、場所のこと – 紐帯(Granovetter, 1973 ) 22 紐帯とは • 社会の構成員を結びつけている、血縁・地縁・利害などのさ まざまな条件(大辞林) • 紐帯の強さとは共に過ごす時間量、情緒的な強度、親密さ、 助け合いの程度という四次元を組み合わせたものである (Granovetter,Mark S,1973) 頻繁に会ったり、好意があったり、秘密を打ち明けられたり できるということは紐帯が強いといえる 23 対人距離と快適さとの相互作用的関係 (Sundstrom and Altman,1976) 快適さ 対人距離 24 仮説① 出会いの場における紐帯の強さは、恋愛感情 に影響する H1-1.強い紐帯は恋愛感情を弱める H1-2.中程度の紐帯は恋愛感情を高める H1-3.弱い紐帯は恋愛感情を弱める 紐帯が恋愛感情に与える影響は逆U 字型である ※ここでの恋愛感情とは「相手を恋愛対象として意識 する程度」を表わす 25 対人距離と快適さとの相互作用的関係 仮説① (Sundstrom and Altman,1976) 紐帯の強さと恋愛感情の相互作用的関係 恋愛感情に 快適さ 至る可能性 弱い 中程度 強い 紐帯 対人距離 26 しかし、紐帯の強弱に関係なく、 感情の変化値に影響を与えるものが あるのではないか 27 出会いの場における仮説② • 出会いの場の紐帯の強弱に関わらず、出会 いの場において、類似性、相補性、障害があ ると、恋愛感情は高まる – フィルタリング理論(Kerckhoff&Davis,1962) – SVR理論(Murstein,1977) – ロミオとジュリエット効果(Driscoll,et al.1972) 28 フィルタリング理論 (Kerckhoff&Davis,1962) • 親密さの鍵を握るのは類似性と相補性であ ると考えられている。 趣味:旅行 ついていきたい! お任せタイプ 類似性 企画したい! 連れてってあげたい! プランの立案・実施 相補性 29 SVR理論(Murstein,B.I,1977) 恋愛の進行 出会い 進展 深化 刺激(S) 価値(V) 役割(R) 観察可能な刺激 (容貌や振る舞い) 価値観の類似性 (考え方や態度) お互いの相補性 (お互いの取る役割) 30 ロミオとジュリエット効果 (Driscoll et al.1972) • 有名な悲劇にちなんで妨害が大きいほど恋 愛感情が高まる。 31 出会いの場における仮説② • H2:出会いの場において、類似性、相補性、 障害は、恋愛感情を高める。 H2-1 類似性は、恋愛感情を高める H2-2 相補性は、恋愛感情を高める H2‐3 障害は、恋愛感情を高める 32 仮説② 類似性 感 情 の 変 化 値 障害 相補性 弱い 中程度 強い 紐帯 33 4.仮説の検証 34 調査概要 • 調査目的 – 出会いの場における仮説の検証 • 調査対象者 – 駒澤大学学生61名(男性30人、女性31人) • 調査方法 – 質問紙調査 • 調査期間 – 2001年11月11日~13日 35 調査項目 ほとんど会わない 1.その人と会う頻度はどれくらいですか 紐 帯 の 強 弱 1 2 3 4 ほとんど知らない 2.その人についてよく知っていますか 1 2 3 4 仲良くない 3.その人との仲のよさをお答えください 1 2 3 4 絶対に打ち明けない 4.その人に悩みや不安を打ち明けられますか 1 2 3 4 全く思わない 5.その人が困っていたら助けたいと思いますか 1 2 3 4 可恋 能愛 性感 情 に 至 る 全く魅力的でない 6.その人は異性として魅力的ですか 1 2 3 4 全く思わない 7.その人はあなたにとって恋愛対象ですか 1 2 3 4 よく会う 5 よく知っている 5 とても仲が良い 5 打ち明ける 5 とても思う 5 とても魅力的である 5 そう思う 5 類似性を測る質問 • あなたの所属している団体でクリスマスパーティー を開くことになりました。そしてくじ引きで幹事役を決 めた結果、あなたとその人が幹事をすることになり ました。パーティーの計画を立てるためにその人と 二人で企画の打ち合わせをすることにしました。そ の人と打ち合わせをしているうちに相手と同じ趣味 を持っていることを知り、その話題で盛り上がりまし た。その時あなたは、異性としての興味はどのくらい 高まりますか。 ①すごく下がる ②下がる ③変わらない ④高まる ⑤すごく高まる 37 相補性を測る質問 • その後、その人とクリスマスパーティーの企 画の話を進めているうちに、彼(彼女)が自分 が知らないことを知っていたり、自分が苦手 なことが得意であったりするという一面を見つ けました。その時あなたは、異性としての興 味はどのくらい高まりますか。 ①すごく下がる ②下がる ③変わらない ④高まる ⑤すごく高まる 38 ロミオとジュリエット効果を測る質問 • パーティーが目前に迫ってきましたが、思ったより人 数が集まらず、困ってしまいました。二人でどうにかし て、友達を誘ったり、寒いなか外で勧誘をしたりするこ とになりました。時には夜9時まで学校に残り準備をし ました。そして二人の努力が実り、予定以上の人数を 集めることができ、パーティー当日を迎えることができ ました。パーティーは計画通り進み、大成功に終わり ました。パーティーの後片付けをしているとき、相手に 笑顔で「ありがとう」と言われました。その時あなたは、 異性としての興味はどのくらい高まりますか。 ①すごく下がる ②下がる ③変わらない ④高まる ⑤すごく高まる 39 分析方法について • 回答者と特定他者との紐帯の強弱について、 3つのグループ(強・中程度・弱)に区分 – 1~2.7を弱、2.71~3.3を中程度、3.31~5を強 • それらのグループごとに、恋愛感情に至る可 能性についての平均値を算出 • それらの平均値に統計的有意差があるがど うかについて、分散分析によって検定 40 仮説① 仮説①の調査結果 中程度の紐帯は恋愛感情に至る可能性が高い 恋愛感情に至 4 る可能性 3.5 異 性 と し て 魅 力 的 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 弱い 弱い 中程度 中程度 強い 強い 紐帯 紐帯 41 0.11~0.05 5%水準で有意 0.051~0.1 10%水準で有意 分散分析 平方和 異性として魅力的か 自由度 平均平方 F 値 グループ間 9.296109 2 4.648054 グループ内 103.7859 58 1.789411 113.082 60 合計 平方和 恋愛対象か 自由度 平均平方 グループ間 4.911326 2 2.455663 グループ内 115.3182 58 1.988245 合計 120.2295 60 2.597533 F値 1.235091 有意確率 0.0831 有意確率 0.298342 42 仮説②の検証結果 • 出会いの場の紐帯の強弱に関わらず、出会 いの場において、類似性、相補性、障害があ ると、恋愛感情は高まる 4.2 異 性 と し て 魅 力 的 4.0 3.8 類似性 3.6 相補性 3.4 ロミオとジュリエット 3.2 3.0 弱い 中程度 強い 43 仮説の検証結果 H1-1.出会いの場において、強い紐帯及び弱い紐帯 は、恋愛感情を弱めるが、中程度の紐帯は、恋愛感 情を高める 仮説1-1は棄却された H2-1. 類似性は、恋愛感情を高める 仮説2-1は棄却された H2-2. 相補性は、恋愛感情を高める 仮説2-2は棄却された H2‐3. 障害は、恋愛感情を高める 仮説2-3は支持された 44 検証結果のまとめ ① 出会いの場における紐帯の強さは、恋愛感 情に至る可能性に影響するが、逆U字型に はならなかった。 紐帯の強さは恋愛感情を高める ②出会いの場の紐帯の強弱に関わらず、出会 いの場において障害があると、恋愛感情は やや高まる 障害は恋愛感情を高める 45 5.実務への応用 46 実務への応用 • 強い紐帯を作り上げるサービスやコミュニティ を提供すること – 弱い紐帯から強い紐帯へ – 中程度の紐帯から強い紐帯へ • ロミオとジュリエット効果 – 強い紐帯の中でも障害を発生させる – 二人で協力して何かを乗り越えるなど 47 実務での応用:事例 1. コミュニティの提供 1. 私たちがコミュニティで行う行事を企画・主催 2. 3ヶ月間、2週間に1度行事を行う 3. 3ヶ月後からはこちらが指定した2人で行事を企 画してもらう。 48 6.本研究のまとめと課題 49 本研究の反省点 • 質問紙による調査を行った際に、異性の友人との関 係性を調査するためにランダムサンプリングを行った が、対象を“友人の中で思い浮かんだ人の中でアイウ エオ順で一番早い人”としたが、思い浮かんだ人が “強い紐帯の人”となってしまった可能性が高い。そう 捉えると“強い紐帯が影響を及ぼす”といった結論が 導かれたのは当然かもしれない。次は私たちが対象 となる人物を指定してその人について回答してもらうと いう方法を取りたいと思う。 • 時間的制約の都合上、新たな仮説の構築・検証がで きなかった。 50 本研究の限界 • 調査対象者を大学生に限らざるを得なかったこと、ま たサンプル数にも限界があった。そのため、他の年代 の消費者に当てはまるかどうかわからない。 • 恋愛という概念は人それぞれであるため、調査対象者 を増やした場合に違った問題点が挙がってくるのかも しれない。 • 恋愛事情、価値観というものはその時代とともに変化 していくものである。そのため、現在の恋愛事情を把 握するためには随時、現状分析が必要になってくる。 • 本研究では、紐帯という要素と対人関係と快適さとの関係 や、恋愛に関する心理学、または社会学からの研究を主 に行ってきたが、その都度、時代に適したアプローチが必 要になってくる。 51 参考文献 • • • • • • • • • 『広辞苑 第6版』 [2009]岩波書店 • (松井豊編集 [1998] 『現代のエスプリ』 至文堂 より) 『大辞林 第3版』 [2006]三省堂 片瀬一男 [2003]『ライフ・イベントの社会 • Dutton,D.G & Aron,A.P[1974],Some evidence for heightened sexual attraction 学』世界思想社 under conditions of high anxiety. Journal of 山田昌弘・白河桃子[2009]『「婚活」時代』 personality and Social Psychology(松井豊 ディスカヴァー携書 編集 [1998] 『現代のエスプリ』至文堂 松井豊[1993]『恋ごころの科学』サイエン より) ス社 • Driscoll,R.,Davis,K.E.,& Lipetz,M.E.,[1972] 大坊郁夫・奥田秀宇編集[1996]『親密な Parental interference and romantic 対人関係の科学』誠信書房 love:TheRomeo and Juliet effect. Journal of Werner.Sombart [1922]『恋愛と贅沢と資 Personality and Social Psychology 本主義』講談社学術文庫 • (松井豊編集 [1998] 『現代のエスプリ』 Kerckhoff,A.C & Davis,K.E.,[1962]Value 至文堂 より) consensus and need complementarity in • Granovetter,Mark .S[1973] ,The Strength mate selection . American Sociological of Weak Ties American Journal of Review (松井豊編集 [1998] 『現代の Sociology,78:1360-1380 エスプリ』至文堂 より) (野沢慎司訳 [2006] 『リーディングス Murstein,B.I.,[1977]The stimulus-valueネットワーク論』勁草書房 より) role (SVR) theory of dyadic relationships .In S.Duck(Ed.),Theory and practice in interpersonal attraction. Academic press 52 参考文献 • 日経MJ「若者意識調査」2008年10月29日 (『日経流通新聞』 2008.10.29より) • 『日経流通新聞』2009年1月7日 • 『日本経済新聞朝刊』 2009年10月3日,2009年6月23日 • 「日経トレンディネット」 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20080205/1006765/?P =1 • 「オーネット」 20 代・30 代未婚男女の意識調査 2009 http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0233764_01.pdf • 「日経ネット」 http://woman.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=20090831ax012n1 53 ご清聴ありがとうございました 54
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