減災型地域社会リーダーのコンピテンシーの提案と自主

減災型地域社会リーダーのコンピ
テンシーの提案と自主防災組織メ
ンバーの認識
出典:自然災害科学 J.JSNDS 33 特別号 115-125(2014)
吉田譲 高橋暁子 喜多敏博 山田文彦 松田博貴
柿本竜治 藤見俊夫 竹内裕希子 鳥井真之 星出和裕
中條壮大 稲本義人
紹介者:総合科学2年 佐藤夏姫
1.はじめに
減災型地域社会とは…
「災害に対する事前の備えと災害時の対応力を通じて被害の最小化
を目指す減災指向型の地域社会」
と定義する。
減災対策・対応に必要なもの
住民組織や行政はもとより、企業や病院、NPOなどの地域減災関係組織との連
携や協働
このような連携・協働を主導する人材の養成は地域共通の課
題である
本稿では…
減災型地域社会の実現を主導する人材(=減災型地域社会リー
ダー)のコンピテンシーの提案、検討を試みる。
・本研究の基本的枠組みと、減災型地域社会リーダー像とそのコン
ピテンシーについての説明
・掲げたコンピテンシーの重要性について、コンピテンシー項目の構
造化を図ると同時に、自主防災組織メンバーの認識を明らかにする
・本研究で得られた知見のまとめと、今後の課題について
減災型地域社会リーダーのコンピテンシーの提案
 本研究の位置づけ
制度や文化が異なる複数の組織が、同一の素養をもった人材を育成するた
めには、その人材像を関係者間で共有する必要がある
コンピテンシー概念に着目し、減災型
地域社会リーダーのコンピテンシーを
提案・検討を行う
 コンピテンシーの概念とその設計について
コンピテンシーの定義(Spencerら[1993]の定義)
「ある職務または状況に対し、基準に照らして効果的、あるいは卓越した業
績を生む原因として関わっている個人の根源的特性」
コンピテンシーの氷山モデル
コンピテンシーは
水面上の目に見えるスキルや知
識 と、
水面下に隠れている自己概念
や特性 などの部分で構成され
る。
災害対策・危機管理の分野において
• 応急対応に従事する地域の防災リーダーの育成に必要な教育要
素の項目
① 地域の脆弱性とリソースの理解
② 災害時に地域で発生する被害とその対応方法の理解・習得
③ 組織運営のあり方とリーダーの資質の理解
④ 災害時に行政から提供されるサービスの理解
⑤ 災害プロセスとリーダーの役割の理解
リーダーには、本人による主体的な行動・他者とコミュニケーショ
ンを図り、他者に働きかけること が求められている。
(災害対策・危機管理においては地域特性の理解も重視される)
 減災型地域社会リーダー像とそのコンピテンシー
減災型地域社会リーダー
⇒「自然災害やそれに起因する社会的災害の基本知識を有し、平
常時から地域活動に関心を持ち、災害時に主導的な対応がで
きる人(材)財」
減災型地域社会リーダーが備える
べき具体的なコンピテンシー
コンピテンシー項目
1~3 ・・・ 主体性
4~8 ・・・ 専門性
9~13 ・・・ 協働性
14~17 ・・・ 地域性
自主防災組織への質問紙調査
調査概要
コンピテンシー項目の重要性について、実際に地域で活動を展開している自主
防災組織メンバーの認識を明らかにするため、質問紙調査を実施。
 掲げたコンピテンシー項目に関して
質問:減災型地域社会の実現を推進する人材にとってどの程度重要か
回答:
重要性は 1)ない
2)低い
3)中程度
4)高い
5)とても高い
自主防災組織メンバーのスコアの総計を各項目の有効回答数で
除した平均スコア
とても高い・・・5点
高い
・・・4点
中程度
・・・3点
低い
・・・2点
ない
・・・1点
図6(自主防災組織メンバーの平均スコア)からわかること
• コミュニケーション(2)や能動的な学習(1)、災害ボランティアスキル(4)、日
常からの絆づくり(3)、の項目の平均スコアが相対的に高い
⇒自主防災組織メンバーがこうしたコンピテンシーを重要視している
• 他業種・他分野理解(9)や社会科学、保健科学(6,7)の減災基礎に関する
項目の平均スコアが低い
⇒専門性に基づく減災基礎を相対的に重要視していない
あるいは、 自主防災組織メンバーは、減災型地域社会リーダーとして
当事者意識をもっており、減災基礎に関する知識を必要としている
 自主防災組織メンバーのコンピテンシーの重要性に関する認識
17のコンピテンシー項目 →
①主体性
②地域理解
③減災基礎
④協働性
カテゴリー別にコンピテンシー項目に
関する平均スコアを求めると…
主体性・・・3.57
地域理解・・・3.17
協働性・・・2.97
減災基礎・・・2.83
主体性に関するコンピテンシー項目を
重視している
の4つに分けられる
4.おわりに
減災型地域社会リーダーについて…
・減災の基礎知識を有する
・主体的に学び行動する
・他者を理解し協力して行動する
・地域の災害特性を理解する
まとめ
学生や一般住民を対象にした減災リテラシー教育カリキュラムを実
装していくために…
今後の課題
 行政関係者や企業経営者/雇用者、NPO関係者、医療関係者な
ど様々な地域減災関係者の認識から、コンピテンシー項目の妥
当性やその構造の頑健性を検討していく
 地域関係者によって異なる知識や技術にニーズの詳細について
の把握