電磁気学C

電磁気学C
Electromagnetics C
6/8講義分
電磁波の反射と透過
山田 博仁
今後の講義スケジュール
・ 6/8(第8回目)
界面での電磁波の反射と透過
・ 6/15(第9回目)
電磁波の導波路と共振器 (第2回レポート締め切り)
・ 6/22
大学創立記念日のため休講
・ 6/29(第10回目) 光導波路と光共振器
・ 7/6(第11回目)
電磁ポテンシャルとゲージ変換 (第3回レポート出題)
・ 7/13(第12回目) 遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル
・ 7/20(第13回目) 電気双極子による電磁波の放射 (第3回レポート締め切り)
・ 7/27(第14回目) まとめ
・ 定期試験 8/1(水)、8/3(金)、8/10(金)のうちのいずれかの日
界面での電磁波の反射と透過
2種類の媒質が xy 平面 (z = 0) を境に接して
おり、 z > 0 を媒質Ⅰが、 z < 0 を媒質Ⅱが
満たしている。平面電磁波が媒質Ⅰから媒
質Ⅱに入射角 qi で斜め入射し、その一部が
反射角 qr で反射され、またその一部が透過
角 qt で媒質Ⅱ内に透過する場合を考える
ここで図のように、入射波の電場ベクトルは
x-z 平面内にのみ存在し、磁場ベクトルは y
方向成分のみを有するとすると、
z
Hi
qi
Z1
媒質Ⅰ
媒質Ⅱ
Z2
x
y
磁場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界透過係数
Et
2Z 2 cosqi

Ei Z1 cosqi  Z 2 cosqt
Hr
Ei
磁場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界反射係数
Z cosqt  Z1 cosqi
E
r  r  2
p.210 (12.62式)
Ei Z1 cosqi  Z 2 cosqt
t 
qr
Er
p.210 (12.62式)
ただし、Z1, Z2は、それぞれ媒質1, 2の固有インピーダンス
qt
Ht
Et
界面での電磁波の反射と透過
次に図のように、入射波の磁場ベクトルが
x-z 平面内に存在し、電場ベクトルは y 方向
成分のみを有するとすると、
z
Ei
qi
qr
Er
Hi
Hr
Z1
媒質Ⅰ
媒質Ⅱ
Z2
x
y
電場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界反射係数
Z cosqi  Z1 cosqt
E
r  r  2
Ei Z 2 cosqi  Z1 cosqt
例題12.3 (p.212)
電場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界透過係数
t 
Et
2Z 2 cosqi

Ei Z 2 cosqi  Z1 cosqt
例題12.3 (p.212)
ただし、Z1, Z2は、それぞれ媒質1, 2の固有インピーダンス
qt
Et
Ht
界面での電磁波の反射と透過
12.57式と12.63式より、
Z2 
sin q t
Z1
sin qi
この関係を以下の式に代入して変形していくと、
磁場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界反射係数は、
Er Z 2 cosq t  Z1 cosq i sin q t cosq t  sin q i cosq i


Ei Z1 cosq i  Z 2 cosq t sin q i cosq i  sin q t cosq t
r 


(sin q i cosq t  sin q t cosq i )(cosq i cosq t  sin q i sin q t )
(cosq i cosq t  sin q i sin q t )(sinq i cosq t  sin q t cosq i )
tan(q t  q i )
tan(q i  q t )
磁場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界透過係数は、
t 

Et
2Z 2 cosq i
2 sin q t cosq i


Ei Z1 cosq i  Z 2 cosq t sin q i cosq i  sin q t cosq t
2 sin q t cosq i
sin(q i  q t ) cos(q i  q t )
界面での電磁波の反射と透過
電場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界反射係数は、
r 

Er Z 2 cosq i  Z1 cosq t sin q t cosq i  sin q i cosq t


Ei Z 2 cosq i  Z1 cosq t sin q t cosq i  sin q i cosq t
sin(q t  q i )
sin(q t  q i )
電場(ベクトル)が界面に平行に入射した場合の電界透過係数は、
t 

Et
2Z 2 cosq i
2 sin q t cosq i


Ei Z 2 cosq i  Z1 cosq t sin qt cosq i  sin qi cosq t
2 sin q t cosq i
sin(q t  q i )
r or t
これらはFresnelの式と呼ばれている
以上で求めた r , t , r , t を、
入射角 qi に対して図示せよ
0
qi  qt 
(今回の出席レポート)
(6/15提出〆切)
例えば、 r を図示すると、
-r or -t

2
 qi
2
界面での電磁波の反射と透過
以上の結果から分かるように、磁場ベクトルが界面に対して平行に入射した場合
の電界反射係数は、入射角 qi と透過角(屈折角) qt の和がちょうど直角になる時
にゼロ、つまり無反射となる。この時の入射角度 qi のことを Brewster 角という。
Brewster 角qi は、
qi  qt 
Brewster角
Hi qi

2
Snell の法則より、
sin q i Z1 n2


sin q t Z 2 n1
従って、 Brewster 角qi は、
Z
n
q i  tan 1  tan 1 2
Z2
n1
1
z
Er
qr
Hr
Ei
Z1
媒質Ⅰ
媒質Ⅱ
Z2
x
直角
y
qt
Ht
Et
Brewster 角の物理的意味
このような Brewster 角が存在する物理的意味は ?
電磁波が反射するメカニズムは、入射波によって界面に誘起された誘電分極から
の電磁波の放射と考えることができる
Brewster 角で媒質Ⅱに入射する電磁波は、媒質Ⅱ内の界面付近に分極を生じ
るが、その分極は反射角の方向には電磁波を放射できないため
Brewster 角の身近な例
Brewster角 z
海面や雪面からの反射が眩しい時、
偏光サングラスをかけると眩しくな
くなる理由は?
偏光子
偏光子
qi
この方向には、
電磁波を放射
できない
Ei
媒質Ⅰ
媒質Ⅱ
E
qr
x
y
E
qt
完全導体による電磁波の反射
導電率 s = ∞ の完全導体による電磁波の反射
完全導体の中には変動電磁場は全く浸透できないため、表面における電磁波の
境界条件は、
電場の法線成
E t  0
電場 E
導体表面に
分 Et は必ずし
電荷が現れる
Bn  0
もゼロではない
場合がある
En ≠ 0
完全導体
s=∞
E=0
界面での電場の
接線成分 Et はゼロ
磁場の接線成
導体表面に
電流が流れる 分 Ht は必ずし
もゼロではない
場合がある
Ht ≠ 0
完全導体
変動磁場
B  0
静磁場
B0  0
完全導体
静磁場に対
しては必ずし
もゼロでない
E=0
磁場の法線成
分 Bn はゼロ
Bn = 0
完全導体
変動磁場 静磁場
B0  0
B  0
完全導体による電磁波の反射
z < 0 の領域を固有インピーダンス Z の媒質が占め、x, y (z = 0) 平面を境にして
z > 0 の領域の完全導体と接しているとする。さらに、電磁波は x 方向に偏光し
た正弦波とし、その角周波数を  とする。媒質中 (z < 0) から導体界面に対して
垂直に入射した場合を考え、電場と磁場を入射波と反射波の和として表せば、
E x  Eix  Erx  Ei 0 cos(kz  t )  Er 0 cos(kz  t )
1
H y  H iy  H ry  Ei 0 cos(kz  t )  Er 0 cos(kz  t )
Z
k    は電磁波の波数
x
媒質: Z
Eix
Hiy 入射波
反射波 0
完全導体中への透過波は存在しないため、導体表面で Hry Erx
Ex = 0 であり、
Ei 0  Er 0  0
従って、媒質中の電磁場は、
E x  Ei 0 cos(kz  t )  Ei 0 cos(kz  t )  2 Ei 0 sin kz sin t
Hy 
完全導体
1
Ei 0 cos(kz  t )  Ei 0 cos(kz  t )  2 Ei 0 coskz cost
Z
Z
z
完全導体による電磁波の反射
電場
反射端(導体表面)
l
入射波
反射波
z
定在波
z=0
定在波の腹の位置
定在波の節の位置
出展: http://www8.plala.or.jp/ap2/chishiki/teizaiha.html
電場の節
z
n
l
 n 
k
2
電場の腹
(n = 0, 1, 2 ‥)
磁場の節
1  l 

z   n   
2  2 

1  l 

z   n   
2  2 

(n = 0, 1, 2 ‥)
磁場の腹
(n = 0, 1, 2 ‥)
z
n
l
 n 
k
2
(n = 0, 1, 2 ‥)
電磁波の共振器
平行平板共振器 (Fabry-Perot共振器)
完全導体による平行平面で挟まれた
空間に存在する電磁波はどのように
表される?
簡単のため、電磁波は x 方向に偏光
した正弦波とし、z = 0, L に位置する
完全導体面に対して、垂直に入射し
ているものとする。
n=1
完
全
導
体
n=2
n=3
?
z=0
電界 Ex は、いつの瞬間においても完全導体表面でゼロとなるから、
Ex  Ei 0 cos(kz  t )  Ei 0 cos(kz  t )  2Ei 0 sin kz sin t
において、z = 0, L において Ex = 0 となるためには、
n
(n = 1, 2, 3 ‥)
z sin t
L
2 n
よって、 k 
であるから、 L  n l 

l
L
2
E x  En 0 sin
(n = 1, 2, 3 ‥)
完
全
導
体
z=L
電磁波の共振器
従って、このような完全導体による平行平板間に存在することができる電磁波の
波長は離散的になり、
ln 
2L
n
(n = 1, 2, 3 ‥)
で与えられる。このように、完全導体の平行平板によるFabry-Perot共振器によって
電磁波は量子化され、この量子化された電磁波をモードと呼ぶ。(n はモード番号)
光の場合は、完全導体の代わりに、2枚の平行平面鏡によりFabry-Perot共振器を
構成し、レーザーの光共振器などに広く用いられている。
光ビーム
平行平面鏡
レーザーの光共振器の概略
半導体レーザー
半導体レーザー (Laser Diode: LD) 光を増幅する媒体が半導体からなり、
pn接合への電流注入により、電子の反転分布状態を作り出し、光を増幅
特徴
・ コンパクト (チップ本体は0.3mm角程度)
・ 取り扱い容易 (乾電池2本程度で動作可能)
・ 直接変調で数Gbpsの高速変調が可能
・ 高信頼性 (通信用のInGaAsPレーザは100万時間以上の寿命に)
・ 安価 (FTTH用LDはチップコストで数百円、CD用LDは数十円に)
Fabry-Perot (FP)共振器型レーザー
2枚の平行に向き合った鏡によるFP型光共振器
によって正帰還が得られ発振するレーザー
発振波長
lq 
縦多モード発振
2neff L
q
q: モード番号 1,2 ‥‥
neff: 実効屈折率
発振スペクトル
l
へき開面(鏡面)
FPレーザーの構造
出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html
電磁波の導波路
平行平板による導波路 (Slab導波路)
完全導体による平行平面で挟まれた空間に斜めに入射した電磁波は、図のよう
に反射を繰り返しながら伝搬していく。従って、導波路として機能する。
完全導体
完全導体
ベクトル解析の復習
重要なベクトル恒等式
ラプラシアン
2
2
2
 2  2  2
x y
z
rot grad    ( )  0
div rot E    (  E )  0
div grad    ( )   2  
(  ) E  E
(スカラー場)
(ベクトル場)
rot rot E    (  E )  (  E )  E
ガウスの定理
2
2
2
1 2
□ 2  2  2  2 2
x y
z
c t
1 2
 2 2
c t
ストークスの定理
 F  ndS     FdV
S
V
n
ダランベルシアン
 F  dr   (  F )  ndS
C
S
F
dS
S
V
n
F
S
dS
C
dr
ベクトル解析の復習
演算子∇(ナブラ)と(ラプラシアン)の意味
  
   , , 
 x y z 
 2
2
2 
       2  2  2 
 x  y  z
勾配(gradient)
  ( x)  ( x)  ( x)   ( x)
 ( x)
 ( x)
 
grad ( x)   ( x)  
,
,
ex 
ey 
ez
y
z 
x
y
z
 x
発散(divergence)
divE ( x)    E ( x) 
Ex ( x) E y ( x) Ez ( x)


x
y
z
ナブラ∇とE(x)のスカラー積
スカラー積(内積)
A  B  Ax Bx  Ay By  Az Bz
ベクトル解析の復習
回転(rotation)
ex
ey
ez



rot E ( x )    E ( x ) 
x
y
z
Ex ( x) E y ( x) Ez ( x)
 E ( x ) E y ( x ) 
 E y ( x ) E x ( x ) 
 E ( x ) E z ( x ) 
e x   x
e z
  z



e y  

y

z

z

x

x

y






ナブラ∇とE(x)のベクトル積
ベクトル積(外積)
ex
ey
ez
A  B  Ax
Ay
Az  (Ay Bz  Az B y )e x  ( Az Bx  Ax Bz )e y  (Ax B y  Ay Bx )e z
Bx
By
Bz
波の反射
3. 受電端を短絡した場合
送電端 Is
Vs
Zin
Z0
xs
I0 受電端
Ix
Zx
V0=0
Vx
x=0
全反射
x
l
短絡
1
Z 0 I 0 (e x  e  x )  Z 0 I 0 sinh  x 受電端では、入射波と反射波の振幅が等しい
2
1
任意の点より受電端の Z  Vx  Z tanh x
x
 x
I x  I 0 (e  e )  I 0 cosh  x
x
0
Ix
方を見たインピーダンス
2
Vx 
定在波
3

3
t  
0
244
5
2
2
3
2


2
bx=0
電圧
電流
短絡
xs
x=0
波の反射
4. 受電端を開放した場合
送電端 Is
Vs
Zin
Z0
xs
Zx
3

3
t  
0
244
5
2
2
V0
Vx
開放
x=0
全反射
x
l
1
Vx  V0 (e x  e  x )  V0 cosh x
2
V
1 V0  x  x
Ix 
(e  e )  0 sinh  x
2 Z0
Z0
定在波
I0=0 受電端
Ix
受電端では、入射波と反射波の振幅が等しい
任意の点より受電端の Z  Vx  Z coth x
x
0
Ix
方を見たインピーダンス
3
2


2
bx=0
電圧
電流
開放
xs
x=0
波の反射と定在波
+x方向に進行する波
t = 0

4

2
3
4

l
反射波
反射端
定在波=進行波+反射波
x
定在波
l
反射端(全反射)
進行波
反射波
定在波
定在波の腹の位置
定在波の節の位置
反射端(r=0.5)
進行波
反射波
定在波
反射端(r=0.1)
進行波
反射波
定在波
出展: http://www8.plala.or.jp/ap2/chishiki/teizaiha.html