地域性を考慮した児童に対する

地域性を考慮した児童に対する
防災教育の効果に関する考察
稲垣意地子
大石哲
砂田憲吾
湯本光子
自然災害科学 J.JSNDS 28-4 357-369 (2010)
総合科学専攻 4年
3081-6024
前田江里
1.はじめに
防災に関する
実践活動と防災教育
防災意識があっても・・・
・必要な防災活動が行われていない
・活動内容が限定
という事例も
防災意識の向上
原点:災害の伝承
地域コミュニティで防災教育の
役割を担ってきた
災害時の防災行動に対する意識の考察
↓
伝承が与える影響を把握できる
本研究では・・・小学校の防災教育に活かされた災害の伝承
が児童に与える影響に着目
2.調査概要
調査方法
児童179名に災害の再現ビデオ
を視聴させ、その前と約一週間
後に無記名アンケートを実施
期間:2008年10月15日~12月
M小学校
15日
災害経験のある地域
(武川町)
防災教育を受けた児童
4年生(28人)5年生(21
人)6年生(33人)
題材とした災害
1959年に山梨県北杜市武川町(旧北巨
摩郡武川村)で発生した土砂災害
当日の様子を19枚のイラストで表現し、ナ
レーションを付けた7分30秒程度のビデオ
Y小学校
一般的なカリキュラムに従っ
た防災教育を受けた児童
4年生(31人)5年生(24人)
6年生(42人)
考察できるもの
①二校の児童の防災意識と行動への意識の差
②災害経験を持つ地域に住む児童に対する
学校での防災教育の効果
③再現ビデオに含めた災害文化の他地域の児童への効果
3.結果
災害時の避難に対する自己評価と災害時の気持ちの変化
事前調査による生徒の実態
・Y小学校の児童は再現ビデオの題材となった武川町についての知識はない
・家族から災害の話を聞いた割合もM小学校に比べて少ない
・両校の大きな差は居住地域で発生した過去の災害を利用した防災教育の有無
a:「逃げ切れると考えている
上に、逃げようという
意思がある児童」
質問1:「災害が起こった
M小学校の方が多い
時、逃げ切れると思うか」
↓
防災教育の効果
質問2:「災害に遭遇した
時のあなたの気持ちは、
どんなだと思いますか」
b,c,d,e:防災行動や
避難活動に遅れる
・AS1:ビデオ視聴前
可能性
・AS2:ビデオ視聴直後
図1.質問1・2の結果
3.結果
避難合図のタイミングに対する自己の避難行動予測と被災可能性認知の変化
質問3:
質問4:
「昨日から激しい雨が降っ
「昨日から雨が降っていて
aを選択した児童
ている。ついに玄関にまで
止みそうにない。家の近く
水が入ってきたが、水の勢
危険な場所に行って災害発生を予
の川が溢れているかもしれ
いは収まらない。市町村か
想をしても、避難合図を待つ可能性
ないと様子が気になる。危
ら避難の合図が出ていな
険かもしれないが見に行く
があり、最も危険
いが、どうするか?」
か?」
・AS1:ビデオ視聴前
・AS1:ビデオ視聴前
・AS2:ビデオ視聴直後
・AS2:ビデオ視聴直後
「行かない」と答えた児童は高学年ほど多かった。
2回とも合図を待たない児童が7
逆に、「行かない→行く」を選択した生徒には逆
割近かった。
の効果をビデオが与えてしまった
一方で2回とも「待つ」と答えた児
童は6年生が多かった。
災害状況の認識を意識してしまったため
図2.質問3・4の結果
3.結果
AS3における児童のビデオ内容の記憶と災害発生予測
AS3・・・一週間後の意識調査
質問1:「どの地域のビデオ
だったか」
題材地域のM小学校の
児童の方が覚えている
図3.AS3の質問1の結果
3.結果
AS3における児童のビデオ内容の記憶と災害発生予測
わずかであるがM小学
AS3・・・一週間後の意識調査
校の方が正答率が高い。
題材地よりも災害の内容
を覚えていた。
質問2:「どんな災害のビデオ
だったか」
図4.AS3の質問2の結果
高学年の記憶
の混同が問題
3.結果
再現ビデオに近いエ
AS3における児童のビデオ内容の記憶と災害発生予測
ピソードで災害予測が
出来るか?
質問3:「昨日から大雨が降っている。窓から外の川を見るといつもよりも水の量が少
なく、濁っている。よく見ると木の枝や石が流れてくる。これから何が起こるか?」
・学年の高い方ほど正答率が
高かった。
・M小学校の方が正答率が
高かった。
・M小学校とY小学校の地域差
4年生の差が20%弱
↓
M小学校の防災教育の効果
全問のグラフと同じ。結果が沿っていない。
図5.AS3の質問3の結果
4.防災意識の変化に対する考察
プラス:積極的な防災行動と危険を冒さないという組み合わせ
マイナス:防災行動に消極的
ビデオ視聴前後の変化の有無 ⇒ 保持or変化
M小学校
Q3の1-1
Q1.2においてプラスの保持が多い
Q4ではマイナスの保持の割合が多い
自分の安全よりも指示優先
⇒防災意識は高いが、防災行動に対する意識が高いわけではない
知識があっても、どう行動していいのか分からない
Y小学校
Q2を除くとプラスの変化が多い
⇒M小学校はAS1において既に防災意識が高い
経験無しでも防災行動が行えるように、防災
ビデオ視聴の効果
行動の意図と意味を理解させる教育が必要
5.まとめ
M小学校の児童は一週間後の調査における再現ビデオ
の内容の記憶保持率の割合が非常に高かった。
今後の課題
 Y小学校に比べて防災意識は高かったが、防災行動に対
防災教育によって防災意識は高まるが、被災の可
する意識は高くはなかったため、防災意識と防災行動に
能性を考えて避難するかという点で課題が残る
対する意識は異なると考えられる。
↓
 同一学年を比較:M小学校の方が正答率が高い
①防災行動の必要性
→これまでの防災教育が影響している。
②自己の行動によって引き起こされる危険
 Y小学校の児童はプラスの変化の割合が多かった
→すでに学習済みの児童よりも防災意識の向上に役立つ。
を認知させる防災教育が必要
 地域名や災害内容に関してはY小学校の児童は覚えてい
ない・混同することが多かった
→その地域に関わりのある児童にとって記憶しやすい
