大学院物理システム工学専攻2004年度 固体材料物性第8回 -光と磁気の現象論(3)- 佐藤勝昭 ナノ未来科学研究拠点 復習コーナー 第7回に学んだこと 光の伝搬とマクスウェルの方程式 – 固有解:波動解、固有値:複素屈折率 ファラデー配置の場合の固有値と固有状態 – 2つの固有値と対応する固有状態(円偏光) フォークト配置の場合の固有値と固有状態 – 磁気誘起の複屈折 ファラデー効果の現象論 – ファラデー効果と誘電率テンソル マクスウェル方程式をEとHで表す 簡単のため, J=0と置く。[伝導電流を分極 電流(変位電流)の中に繰り込む] BとH、DとEの関係式 B μ0 H D~ εε E 0 を代入して、 H rot E 0 t E ~ rot H ε 0 t (3.18) 誘電率テンソル 平面波の解を仮定する 波数ベクトルKとして E E 0 exp(it ) exp(iK r ) H H 0 exp(it ) exp(iK r ) (3.19) ここにE0,H0は時間や距離に依存しない定数ベクトルで ある。この式を式(3.18)に代入すると、 K E ωμ0 H K H ω~ ε ε0 E となる。 固有方程式 両式からHを消去し、 固有方程式として ~ (E N ) N N E E 0 2 が得られる。問題3.1参照 ファラデー配置の場合(=0) 磁化がz軸方向にあるとして、z軸に平行に進む波(N //z)に対して式(3.21)は E E0 exp{i (t Nz / c)} と表される。固有方程式(3.22)は N 2 xx xy 0 xy N 2 xx 0 0 E x 0 E y 0 zz E z と書ける。この方程式がE0の解をもつためには、上式 においてEの係数の行列式が0でなければならない。こう して次の永年方程式を得る。(問題3.2参照) 永年方程式 N 2 xx xy 0 xy N 2 xx 0 0 0 zz (3.25) これより、N2の固有値として2個の値 N 2 i (3.26) 0 xx xy を得る。 これらの固有値に対応する固有関数は、 E0 N E (i ij ) exp{i(t z) 2 c (3.27) E+、E-は、それぞれ、右円偏光、左円偏光に対応する。 フォークト配置の場合 N2の固有値として N1 xx 2 2 xy xx および N 2 2 zz という2つの解を得る。 N1およびN2に対応する固 有関数は N E1 A exp i t 1 x xy i xx j c N E 2 B exp i t 2 x k c (3.33) となり、複屈折を生じる。(コットンムートン効果) 3.3のまとめ 光の伝搬をマクスウェルの方程式で記述す ると,磁化された等方性物質の屈折率Nは N 2 xx i xy で与えられる2つの固有値をとり, それぞれが右円偏光および左円偏光に対応 する.(ここに,εxxは誘電テンソルの対角成 分,εxyは非対角成分である.)もし,εxyが0で あれば,円偏光は固有関数ではなく,磁気光 学効果は生じない. 磁気光学の式 Nˆ Nˆ Nˆ x x i x y x x i x y i xy xx Nˆ i x y F xx (xy1) M i (xx0) 12 (xx2) M 2 磁気光学効果には対角・非対角両成分が寄与 磁気光学Kerr効果 1. 2. 反射の磁気光学効果を磁気光学カー効果 (MOKE)という 通常の反射の法則を導く:電界に対する反 射率=複素振幅反射率(Fresnel係数) 右回り円偏光に対するFresnel係数と左回 り円偏光に対するFresnel係数の差を考え る。位相の差からKerr回転が振幅の差から Kerr 楕円率が導かれる。 斜め入射の場合の反射 反射は界面における電 磁波の伝搬の境界条 件により決められる。 Kのx成分の連続性 K0sin0=K1sin1 =K2sin 2 これよりSnellの法則が 導かれる。 0 1 sin 2 K 0 1 N1 sin 0 K 2 2 N2 法線 1 K0 n02 E1p E0p 0 K1 X 1 Y 2 2 n i 2 Z E2p K2 1 n02 電界と磁界の界面における連続 性 E0 x E0P cos 0 , E0 y E0S 一方、磁界のx成分、y成分についての連続の式 H E1x E1P cos 0 , E1 y E1S E2 x E2P cos 2 , E2 y E2S 電界のx成分、y成分の連続性より E P P E 0 1 cos 0 E0S E1S E2S P P H 0 1 cos 0 H 0S H1S H 2S E2P cos 2 H 2P cos 2 HS=(K/0)EP、HP=-(K/0)ESによって 電界についての式に書き直す K E K E K0 E0S E1S cos 0 K1E2S cos 2 0 連立方程式を解く P 0 E1P P 2 2 cos 2 複素振幅反射率(Fresnel係数) P偏光の反射 E1P K 2 cos 0 K 0 cos 2 rp P K 2 cos 0 K 0 cos 2 E0 S偏光の反射 K 22 cos 0 K 02 K 22 K 02 sin2 0 K 22 cos 0 K 02 K 22 K 02 sin2 0 tan 0 2 tan 0 2 E1S K 0 cos 0 K 2 cos 2 rs S K 0 cos 0 K 2 cos 2 E0 K 0 cos 0 K 22 K 02 sin2 0 K 0 cos 0 K 22 K 02 sin2 0 sin 0 2 sin 0 2 ここに、rp=|rp|eiδp、rs=|rs|eiδsである。 エリプソメトリ(偏光解析) rs cos( 0 2 ) rs exp(i ) tan exp(i ) rp cos( 0 2 ) rp azimuth (方位角) phase (位相差) 反射は方位角と位相差=p-sによって記述できる。反射 光は一般には楕円偏光になっているが、そのp成分とs成分 の逆正接角と位相差を測定すればrが求められる。(測 定には1/4波長板と回転検光子を用いる。)この方法を偏光 解析またはエリプソメトリという。 P偏光反射率とS偏光反射率 第1の媒体が真空、第2の媒体の複素屈折 率がNの場合 Rp Rs N 2 cos 0 N 2 sin2 0 N cos 0 N sin 0 2 2 2 cos 0 N 2 sin2 0 cos 0 N sin 0 2 2 2 2 入射角に依存する反射率 P偏光とS偏光で は反射率の入 射角依存性が 異なる。 反射と偏光:Brewster角 tan 0 2 Rp tan 0 2 sin 0 2 Rs sin 0 2 2 2 もし、ψ0+ψ2=π/2であれ ば、tanが発散するため、 Rpは0となる。 このとき、反射光はS偏光 のみとなる。 このときの入射角を Brewster angleという。 垂直入射のFresnel係数 垂直入射の場合、0=0、従って1=0。この とき電界に対するFresnel係数rとして、 K 2 K0 N 1 r rp K2 K0 N 1 (媒質1が真空のとき) を得る。これより、 N 1 n i 1 r R exp(i ) N 1 n i 1 垂直入射の光強度反射率と位相 R=r*r=|r|2は光強度の反射率、は反射の 際の位相のずれ R (1 n)2 2 (1 n) 2 tan1 2 n 2 12 2 2 n 1 R 1 R 2 R cos 2 R sin 1 R 2 R cos 反射率と位相 Kramers-Kronig(クラマースクローニヒ)の関係 ln R() ( ) P 2 d 2 0 Kramers-Kronig の関係 応答を表す物理量の実数部と虚数部の間に 成立 (Pは積分の主値を表す。) ij ( ) 1 2 P 0 x ij ( ) d 2 2 2 ij ( ) ij ( ) P 0 2 d 2 f ( ) f ( ) f ( ) P 2 d lim d lim d 2 2 2 2 2 0 0 0 0 0 KK変換の微分性 第2式を部分積分すると 1 d ij ( x) ij ( ) ln ij () P ln dx 0 dx 0 1 右辺の第1項は0であるから、結局第2項のみとなる。 はx~付近で大きい値をとるので、“は‘の微分形 に近いスペクトル形状を示すことになる。 'がピークを持つでは"は急激に変化し、'が急激 に変化する付近で"は極大(または極小)を示す. K-K関係の数学的説明 線形応答関数f (ω)が、図に示すωの複素平面の上半面内で 正則、かつ上半平面で |ω|→∞において|f(ω)|→0、さらに実 数ωに対しf'(-ω)=f'(ω)、f"(-ω)=-f"(ω)であるような性質を 持っておればよい。このような条件が成り立つとき、コーシー の積分公式によって πif(ω)=∮dω'f(ω')/(ω'-ω) が成立する。 つづき f(ω)=f'(ω)+if"(ω)を代入し、両辺の実数部、 虚数部がそれぞれ等しいとおくことによって 導くことができる。 ωの複素平面の上半面内で正則、かつ、上 半平面で|ω|→∞において|f(ω)|→0という条 件は、t=0において外場が加えられたときの 応答はt>0におきるという因果律に対応して いる。 Kerr効果 K 2 2 r r 1 r 1 R K r r 2 r 4 R 磁気カー回転角Kと磁気カー楕円率Kをひ とまとめにした複素カー回転K r rˆ 1 rˆ K K i K i i i ln 2 2r 2rˆ 2 rˆ 複素カー回転 K xy 1 xx xx この式から,カー効果が誘電率の非対角成 分xyに依存するばかりでなく,分母に来る対 角成分x xにも依存することがわかる.この 式の対角成分x xを光学定数n, によって 表すと, Kerr効果と誘電率 K n0 K n0 n n02 n 2 3 2 x y n02 3n 2 2 xy n 2 2 2 2 2 2 n n0 n 4n0 n02 3n 2 2 x y n n02 n 2 3 2 xy 2 2 2 2 2 2 2 2 2 n0 n 4n0 2 第8回の問題 反射の際に偏光選択性が生じることの理由 を考えよ。
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