三宅島2000年噴火における防災情報伝達-

三宅島2000年噴火における
防災情報伝達の問題点
―とくにネット上での情報交換過程の分析―
総合科学専攻
小山研究室 3年
遠藤美穂
研究目的
三宅島2000年噴火は、専門家と住民の間の災害情報伝
達が失敗した事例として広く知られている。一方で、イン
ターネットの普及により、島の住民と専門家が直接データ
を交換したり、議論しあう場が自然発生した。
中でも群馬大学早川研究室の三宅島ページと、アジア航
測(株)に勤務する火山学者千葉達朗による「ある火山学
者のひとりごと」掲示板が有名である。
後者については、メディア学者平塚千尋による分析もなさ
れている。しかしながら、ネット上に交わされた情報交換過
程全体を見据えた研究はなされていない。
本研究は、三宅島2000年噴火における災害情報伝達の
全体像を様々な視点から分析し、火山危機に際した情報
交換過程の問題点や改善方策について考えることを目
的とする。
研究方法



三宅島ページと「ある火山学者のひとりごと」掲
示板ならびに小山が他の専門家や行政担当者
と当時取り交わした全電子メールの内容を時
系列に沿って分析する。
三宅島2000年噴火における災害情報伝達の
全体像を様々な視点から分析する。
火山危機に際した情報交換過程の問題点や改
善方策を考察する。
三宅島ページの例
行政への意見・
批判
マスコミへの批判・
一般の人への呼
びかけ
「早川由紀夫の三宅島ページ」より
「ある火山学者のひとりごと」の例
一般の人(三宅島
の住民)からの情報
と専門家の見解
「ある火山学者のひとりごと」掲示板より
火山情報
当時気象庁は、深刻さの順に緊急火山情報、臨時火山
情報、火山観測情報、定期火山情報の4つの火山情報
を発表していた。
緊急火山情報 生命,身体に関わる火山活動が発生した場合
またはそのおそれがある場合に発表
臨時火山情報 火山活動に異常が発生し,注意が必要なときに
随時発表
火山観測情報 緊急火山情報,臨時火山情報を補うなど,火山
活動の状況をきめ細かく発表
定期火山情報 常時観測火山について,火山活動の状況を定
期的に発表
 その後、定期火山情報は2002年3月に廃止。
 また2007年12月1日からの「噴火予報及び噴
火警報」の実施に伴い、従来の「火山情報(緊
急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)」
は廃止された。
「噴火予報及び噴火警報」には、噴火警報、火
口周辺警報、噴火予報の3つがあり、噴火警戒
レベルが1~5まで存在する。
三宅島2000年噴火
7/8
7/9
 2000年6月26日18時30分 火山異常が観測。
6月26日19時30分から29日にかけて、8回の
臨時火山情報が発表。
6月26日19時33分 緊急火山情報が発表。
 7月8日18時41分 山頂での小規模な火山灰
放出。巨大な陥没孔(直径1km、深さ200m)が
形成。
この陥没は断続的に進行し、8月上旬までに直
径1.3~1.4km、深さ450mに達した。
嶋野岳人「三宅島2000年活動」HPより
 7月8日(3回)と14日に臨時火山情報を発表。
 8月10日6時30分 噴煙高度が8000m、爆発的な噴
火。火砕流が発生。
10時50分
臨時火山情報を発表。
8/31
8/19
8/18
8/10
15時15分 火山観測情報を発表(予知連伊豆部会)。
 8月18日17時2分 噴煙高度が1万4000m、最大規模
かつ最も激しい噴火。
17時20分 臨時火山情報を発表。
 8月29日4時35分 噴煙高度が8000m、大規模かつ
激しい噴火。火砕流が発生。
5時20分 臨時火山情報を発表。
 8月31日には予知連伊豆部会を招集。
 9月1日 東京都が9月4日までに島民全員を島外避難
「三宅島スナッパーダイビングセンター」HPより
させる旨を呼びかける。
今後の課題
 三宅島2000年噴火についての知識を深める。
 三宅島ページと「ある火山学者のひとりごと」掲示板な
らびに小山が他の専門家や行政担当者と当時取り交
わした全電子メールの内容に目を通し、把握する。
 それらを時系列ごとにまとめ分析する。
 その他関連する資料にも目を通す。
火山危機に際した情報交換過程の問題点や改善方
策の考察を行う。