「はやぶさ」カプセル再突入における地上観測研究会 2009年7月18日(土) 「流星の自動TV観測網」 上田昌良 司馬康夫 藤原康徳 (日本流星研究会) 流星の自動写真観測は撮影効率が悪い 例、カメラ(キヤノンT70 20mm, F2.8 1台) 1985年1~12月 69夜、416時間、流星数26個 (1個写すのに16.0時間を要した) 1986年 1~12月 123夜、848時間、流星数21個 (1個写すのに40.4時間を要した) 写真観測では、流星の位置測定精度が良い。 しかし、撮影効率が極端に悪い。 1986年の例では、1個写すのに約40時間を要して いる。 完全自動化の流星観測ソフトが出現 TV流星観測用ソフト:UFOCaptureV2 製作者:SonotaCo 2003年12月より自動TV観測を開始(上田) Camera : WATEC WAT-100N (Minimum Illumination, 0.001 lx.)、高感度、白黒 Lens : 6mm F0.8 Field of view : 56x43 degrees 動体検出ソフトで、動く物は、その動き出した所まで さかのぼって、その動画をパソコンのHDDに保存し てくれる優れものである。 完全自動化した流星のTV観測での流星撮影数 TV流星観測用ソフト:UFOCaptureV2を使用。 観測地:大阪府、 6mmの広角レンズ(56×43o)による撮影数; 2008年の1年間に、3,892個 12mmの望遠レンズ(31×23o)による撮影数; 2008年の1年間に、6,587個 自動TV観測シムテムによる同時流星の第1号 閃光人工衛星をキャッチ スプライト(雷の上空に出る放電) 飛行機をキャッチ 鳥をキャッチ 撮影機材は屋外で常設 前田幸治氏(宮崎県) 撮影機材の例 上田昌良(大阪府) 広角レンズ(6mm) による流星の光度分布 望遠レンズ(12mm) による流星の光度分布 流星の自動TV観測地は約30カ所 流星位置など処理データの報告は約20カ所から そして、 流星の位置測定ソフト UFOAnalyzerV2完成 さらに、 流星の軌道計算ソフト UFOOrbitV2も完成 撮影から軌道計算までの自動化が完成した。 流星の自動TV観測の実績 2007年と2008年の2年間で 報告先であるSonotaCo Networkに 報告のあった撮影流星数・・24万個(244,247) うち同時流星で軌道計算ができた流星数・・39,208 これは、約30カ所で約100台のカメラによる。 (SonotaCo氏による) 火球の観測、軌道計算・隕石落下の推定、隕石捜索 まで行った2つの事例について述べる。 1.2008年3月 2日 4:05:02JST、ー6等の火球 2.2008年9月24日22:10:28JST、ー4等の火球 1.2008年3月 2日 4:05:02JST、ー6等の火球 の対地軌道、4カ所で撮影、 2008年3月2日4:05:02JST出現の火球・東京にて SonotaCo氏 東京・斉藤直也氏 埼玉・ts007氏 長野・masuzawa氏 2008年3月2日4:05:02JSTの火球の軌道 αg: 174.0° ±0.06° δg: +48.7° ±0.07° 発光点: 91.2km 最大光輝:39.5km 消滅点: 25.8km 絶対光度: -6.2mag 経路長: 79km Vobs: 19.27km/s ±6.6km/s(V∞とする) Vg: 15.9km/s 天球上の交差角: 48.0° 測光質量: 163g a: 1.72AU e: 0.511 q: 0.840AU Ω: 341.47 i: 18.12 ω: 236.68 P: 2.25yr (J2000.0) 観測速度と光度曲線 この火球による隕石の落下は、数グラム程度のもの と見込まれ、小さすぎてほとんど発見の可能性はな いが、上田、一人で落下推定地点へ隕石捜索に行っ た。 火球出現から10日目に現地へ到達した。 2008年3月2日4:05:02 JST出現の火球からの隕石落下予報地点の捜索記 捜索日:2008年3月12日 捜索場所:山梨県牧丘町豊原(東経138°40′39″北緯35°45′24″付近) 捜索者:上田 昌良 このあたりまで、タクシーで来た。 このあたりが、隕石落下予報地点の近くです。 りんご園やぶどう園がひろがるのどかな場所 まだ、残雪があった。 山道を散策。結局、隕石は見つからなかった。 2008年9月24日22:10:28JSTの火球 4カ所で撮影、4個に分裂、 火球映像・大阪・上田昌良 大阪・上田昌良 消滅点付近で4個に分裂、 火球・大阪・さぎたりうす氏 香川・三本松高校、静止画 4箇所での同時流星の天球上の経路と輻射点 2008年9月24日22:10:28JSTの火球 地球大気に突入時の初速はVo;25.0km/s、高さ 95.7kmで発光、消滅は高さ35.9kmになり、そのとき の速度Vo;3.8km/sまで減速した。 この火球は、大気中で全質量が溶けてしまったとの 計算結果だったが、数グラムが残りそれが隕石と なって落下した場合の落下予想地点を捜索に行った。 2008年9月24日22h10m28sJST 出現の大火球に 伴う隕石落下予報地点付近の捜索 捜索日:2008年9月30日 捜索者:上田 昌良 隕石落下の予報位置:東経135°49′43″ 北緯35°04′44″(この予報 はもし、落下したらという仮定のもとに計算されたも の) 今回の捜索場所:比叡山延暦寺付近(滋賀県) 火球が出現してから6日目に隕石の落下予報地点付 近を捜索 ケーブルカーで、交通の便は良い 延暦寺 寺から外れて山の道へ入 釈迦堂付近の比叡山ドライブウエイ。このあたりが落 下予報地点から約500メートルの所です。 山の傾斜はかなりきつく、人を寄せ付けない。 隕石は見つけられず 流星の光学観測は、夜間の完全自動化のシステム 網が完成している。(SonotaCo Network) そして、流星の撮影画像の位置測定から、同時流星 の軌道計算まで、ソフトによる自動処理化が完成し ている。 日本国内に流星の自動TV観測者が、約30名(常時 報告者は約20名)おり、観測網が形成されている。 撮影結果は巨大な動画でなく、ソフトでの処理結果 の数値ファイルをインターネットを利用して迅速に集 積し公開されている。 流星の自動TV観測網の完成は、夢物語であったが、 ソフトに強い人、 コンピュータに強い人、 観測をする人、 ネットワークを維持する人、 普及活動をする人、 まとめて発表する人、 それぞれの人が自分の得意とする分野を推し進め、 それらを総合的にネットワークとして形成できたこと が、夢物語を実現できたものと考えている。 従来型の天文同好会形式ではなしえなかったことは 確かである。 ) 1985年10月8日 19:53JSTの 人工衛星の落下 (コスモス1685のロケット の一部、 1985-85B) フィルム、カメラで流星を 撮影中に、写った。 場所;奈良県、 撮影;上田 「はやぶさ」は、ばらばら の姿でなく1つの固まりで しっかりと輝くことであろう。 おわり
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