唾液腺粘表皮癌における融合遺伝子ならびに癌関連遺伝子 に関する研究 【はじめに】 唾液腺悪性腫瘍は、発生率が全悪性腫瘍の約0.3%で頭頸部悪性腫瘍の中 でも約6%にしか過ぎません。さらに唾液腺悪性腫瘍は頻度の少なさに加えて、 組織型も非常に多様であり、その組織型毎の治療が確立されていないのが現 状です。 唾液腺悪性腫瘍の中で、粘表皮癌は発生頻度が約20%と唾液腺悪性腫瘍の 中では最も頻度が多いものです。粘表皮癌の組織像は典型的には、粘液細胞 (図1)・中間細胞(図2)・扁平上皮様細胞(図3)の3成分により構成されていま す。さらに、唾液腺粘表皮癌は組織学的に嚢胞成分・神経周囲浸潤・壊死・核 分裂像・退形成により、低悪性度・中悪性度・高悪性度とグレードが分けられて います。5年生存率は、低悪性度では90%以上なのに対し、高悪性度では40%以 下となっています。低悪性度粘表皮癌では特徴的な融合遺伝子(CRTC1~ CRTC3-MAML2)が高頻度で予後良好です。一方、高悪性度粘表皮癌の発癌 メカニズムやこの融合遺伝子以外の特徴的な遺伝子異常、診断・治療の指標 となるマーカーは未解明です。 図1. 粘液細胞 【対象】 当研究は、 1983年1月1日から2010年3月31日までの間に当院形態機能病理 学教室において唾液腺粘表皮癌と診断された方の組織標本33症例を対象に 研究を行います。対象者になることを希望されない場合は、下記連絡先まで連 図2. 中間細胞 絡をお願いいたします。 【研究内容】 すでに切除された唾液腺粘表皮癌のパラフィン包埋標本を使って、異常発現 や変化を示す蛋白や融合遺伝子や一般的な癌遺伝子の検索を行います。 この研究を行うことで患者さんに日常診療以外の余分な負担は生じていませ ん。 【患者様の個人情報の保護について】 本研究では個人情報漏洩を防ぐため、氏名、カルテ番号などの個人を特定 できる情報を削除し、匿名化した上で、データの数字化などの厳格な対策を 取っています。本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際 には、患者さんを特定できる情報は一切含まれません。 図3. 扁平上皮様細胞 【研究期間】 2011年 当院研究倫理審査委員会による承認日から2014年3月31日まで。 【医学上の貢献】 唾液腺粘表皮癌の発生・進展に関わる蛋白発現や遺伝子異常を解明することにより、病理学的診断の精度向上、予後を予測する因 子の確立、また各々の症例の性質に即した治療の確立につながる可能性がある、など医学上の貢献はあるものと考えます。 【研究機関】 九州大学大学院 形態機能病理 教授 小田 義直(研究責任者) 九州大学病院 病理部 助教 九州大学大学院 形態機能病理 大学院生 中野 貴史 連絡先:〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 Tel 092-642-6067 担当: 中野 貴史 山元 英崇
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