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唾液腺悪性腫瘍における蛋白発現、遺伝子増幅の解析
【はじめに】
唾液腺癌は、その発生率が悪性腫瘍の 0.3% を占めるに過ぎず、全身臓器の
癌の中でも珍しい疾患の一つと言えます。加えて、発生する腫瘍の組織型は
非常に多彩であり診断に苦慮する症例も多く、またその腫瘍組織型やそれぞ
れの腫瘍の性質に即した治療が十分に行われていないのが現状です。
唾液腺悪性腫瘍は、しばしば良性腫瘍である多型腺腫からも発生し多型腺
腫由来癌と呼ばれます(図1)。多型腺腫由来癌では、多くの場合同じ腫瘍の
内部で良性成分、導管内癌成分、被膜内癌成分、被膜外癌成分、というように
浸潤各段階の腫瘍が共存してみられるため、唾液腺悪性腫瘍における悪性化、
浸潤に関して研究するための良いモデルとされています。
悪性
良性
図1. 多型腺腫由来癌
【対象】
当研究は、 1983年から2008年までの間に当院形態機能病理学教室において唾液腺悪性腫瘍と診断された方の組織標本を
対象に研究を行います。対象者になることを希望されない場合は、下記連絡先まで連絡をお願いいたします。
【研究内容】
九州大学形態機能病理学教室において診断された唾液腺癌病変の標本を
使って、組織型、浸潤の程度で分類し(図2、図3)、悪性腫瘍、特に浸潤癌でよ
り高い発現や変化を示す蛋白や遺伝子の検索を行います。
この研究を行うことで患者様に日常診療以外の余分な負担は生じていません。
【患者様の個人情報の保護について】
本研究では個人情報漏洩を防ぐため、氏名、カルテ番号などの個人を特定で
きる情報を削除し、匿名化した上で、データの数字化などの厳格な対策を取っ
ています。本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際には、
患者さんを特定できる情報は一切含まれません。
【研究期間】
2010年 当院研究倫理審査委員会による承認日から
2012年 3月31日まで。
図2. 非浸潤癌 (導管内病変)
【医学上の貢献】
唾液腺腫瘍のさまざまな組織型や浸潤度における形質発現の相違を解析す
ることにより、唾液腺悪性腫瘍の病理学的診断の精度向上、予後を予測する
因子の解明、また各々の症例の性質に即した治療の確立につながる可能性が
ある、など医学上の貢献はあるものと考えます。
【研究機関】
九州大学大学院 形態機能病理
准教授
小田 義直
助教
山元 英崇
大学院生
橋本 和樹
連絡先:〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
Tel 092-642-6061 担当: 橋本 和樹
図3. 浸潤癌 (筋肉への浸潤)