第1章 電気工学の基礎

第2章 電子工学の基礎
2.1 半導体素子
2.2 電子回路
2.3 4端子網
2.1 半導体素子
2.1.1 半導体
2.1.2 pn接合とトランジスタ
2.1.3 各種半導体素子
2.1.1 半導体
(1)半導体とは
導体と絶縁体の
中間の電気抵抗を持つ物質
10-
8
-6
10
10-4
現時点では,
Si(シリコン)が最も使われているが,
① GaAs(ガリウム・砒素),
② GaP(ガリウム・リン),
③ InSb(インジウム・アンチモン)
等も今後使われるようになりそう。
10-
2
10
10
4
8
10
1012
101
6
銀・銅
鉄
ニクロム
導体
ゲルマニウム
セレン
シリコン
半導体
ベークライト
塩化ビニール
ダイヤモンド
マイカ
石英
絶縁体
(2)n型半導体
n型半導体(n-type semiconductor)
半導体に微量に添加した不純物(ドナー)が
電子を供給してキャリアとなる半導体。
半導体のSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)は族番号14であるが,
これに族番号15のP(リン),As(ヒ素),Sb(アンチモン)などを
添加することでn型が得られる。
族番号14の原子は,4個の共有結合を持つが,
族番号15の原子では,5個の最外殻電子の1個が余るため,
原子から離れてキャリアとなる。
合金であるGaAsでは,Se(セレン)やSi(シリコン)を
添加することでn型となる。
p型半導体(p-type semiconductor)
(3)p型半導体
半導体に微量に添加した不純物(ドナー)が
正孔を供給してキャリアとなる半導体。
半導体のSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)は族番号14であるが,
これに族番号13のB(ホウ素),Al(アルミニウム)などを
添加することでp型が得られる。
族番号14の原子は,4個の共有結合を持つが,
族番号13の原子では,3個の最外殻電子の1個が不足するため,
周りの原子から電子を取り込み,取り込めない場合は正孔を形成する。
合金であるGaAsでは,Zn(亜鉛)やC(炭素)を
添加することでp型となる。
2.1.2 pn接合とトランジスタ
(1)p型とn型の違い
① n型は,電子が動き回ることによる電気伝導
② p型は,ホールに電子が取り込まれたり,
離れたりすることによる電気伝導
p型とn型を接合すると,
電流を一方向のみに流す性質を持つようになる。
ダイオードという
(2)p型とn型の接合
外部から電圧を加えない状態では
接合近傍と電子と正孔は結合して
キャリアが存在しない領域(空乏層という)
を形成する。
p型半導体
P型領域には負の,
N型領域には正の
固定空間電荷ができ,
内部電位が生じる
n型半導体
--- + + +
- -- + +
-- - + + + +
- -- + + +
拡散電位
空乏層
ECp
フェルミ準位
++
アクセプタ準位
EVp
--
--
空間電荷
++
電導体
ECn
EF
外部から電圧を加えて,
内部電位差を低くすると,
電流が流れる。
外部から電圧を加えて,
内部電位差を高くすると,
電流は流れない。
ドナー準位
EVn
価電子体
整流作用となる
電圧をかけていないとき
- -
(3)エネルギー順位
++
--- -
--
-
+++
---
++ +
++
p型にー,
n型に+をかけると
電子や正孔が移動できなくなる
n型
p型
p型に+,
n型にーをかけると
電子や正孔が移動する
(ー)
電子
---
---
+++
(+)
--- -
-
-
+++
-
n型 (ー)
p型
正孔
+++
+
+
---
+ +++
(+)
p型
---
+++
+
n型
(4)もう一つのモデル
キャリアーだけで考える
N型
逆電圧をかけると,
両キャリアは
境界部から遠ざかる方向に
力を受けるので
中央にほぼ絶縁体の層ができる
-
(+)
-
-
- -
N型
順電圧をかけると,
両キャリアは
互いに他方の半導体側に
流れ込んでいくので
接合を通って大きな電流が流れる
P型
(ー)
-- +
+
- +
-+
+
+
+
+
+
(ー)
P型
-
+
+
-
+ +
-
(+)
(5)PN接合の整流特性
順方向のときの電流
  eV  
I  I 0 exp
  1
  kT  
ただし逆電圧を大きくすると,
ある電圧(ツェナー電圧: Zener voltage)以上で
急に電流が流れ出す(ツェナー効果)。
電流(I)
ツェナー電圧
電圧(V)
(6)トランジスタ
NPN型
PNP型
エミッタ
P
N
P
(E)
コレクタ
(C)
エミッタ
コレクタ
(C)
(E)
ベース(B)
通常は,エミッタの不純物を最大にし,
コレクタの不純物を最小にする。
P
N
(E)
コレクタ
(C)
ベース(B)
ベース(B)
エミッタ
N
コレクタ
エミッタ
(C)
(E)
ベース(B)
2.1.3 各種半導体素子
① 太陽電池とフォトダイオード
② 可変容量ダイオード(バリキャップ,バラクタ)
③発光ダイオード(LED),レーザダイオード(LD)
④ 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
(1)太陽電池とフォトダイオード
① 光を直接電力に変換する素子
② シリコン,ガリウム・ヒ素,硫化カリウム等によりP型,N型半導体を作る。
③ シリコンとしては,単結晶シリコン,多結晶シリコン,アモルファスシリコン
等が使われるが,光吸収係数が大きく光伝導度が高いアモルファスシリ
コンが最も材料として適している。
④ 接触面で光子が吸収され,1 対の電子と正孔ができる。
⑤ 電子がN型へ,正孔がP型に移動することで,電流が生じる。
[注]アモルファス状態とは,
規則正しい格子を作らず集合している固体の状態
フォトダイオード
与えられるバイアス電圧によって3モードに分類できる。
電流
VB
0
光起電力
電圧
暗電流
アバランシェ
フォトダイオード
(APD)
フォトダイオード
(PD)
太陽電池
(PD)
特に,逆電圧をかけて,なだれ増倍現象を利用するフォトダイオードを
APD(Avalanche Photodiode)という。
フォトダイオードの動作
太陽電池と同じく,光起電力効果によって電圧が発生する。
これを利用して光検波器として使われる。
N層
空乏層
P層
接続
光
n
p
qVb
-
Vb
フェルミ準位
-
R
価電子帯
光
空乏層
+
+
(a) pn接合の例
(b) pn接合のエネルギー帯
(2)可変容量ダイオード
① pn接合に加える逆方向電圧を大きくすると,
静電容量が減少することを利用した素子。
② ダイオードの空乏領域はコンデンサと同様の働きを持ち,
逆電圧が増加すると 空乏領域の幅も広がるので,
コンデンサの極板間隔が広がったのと同じことになり,
結果的に静電容量が減少することとなる。
② バリキャップ,バラクタとも呼ばれる。
③ TV,ラジオ等の電子チューナとして利用されている。
(3)発光ダイオード,レーザダイオード
① pn接合で順方向電流を流すと電子と正孔の再結合の際,
光を発するダイオード。
② GaP,GaAsなどが材料。
③ LEDの場合数mA~数10mA,LDの場合100mA程度を流す。
④ LEDは長寿命,高効率で動作が高速であるため,計測器の文字表示等
に使用される。
⑤ LDは特定の波長の光を放出できるので,光通信等の光源として使用さ
れる。
(4)定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
① pn接合で逆方向電圧をかけ降伏現象を利用して基準電圧を作る。
② 不純物濃度によりツェナー電圧が調整される。
③ 6~8Vぐらいのものがよく使われる。