二部料金はエントリー価格と利用料金の

産業組織論
(5) 二部料金とバンドリング
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2015年11月12日
平均費用曲線
金額(円)
平均費用は
12000円
12000
11000
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
0
平均費用
7000
平均費用
5333
1
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2
3
– 縦軸に金額,横軸に
数量の平面に平均費
用を描く
– これを平均費用曲線
という
平均費用
4500
4
5
産業組織論 5
HW:①生産量5の時
の可変費用と平均
費用を求めて下さい
数量
2
独占の容認
HW:②鉄道会社の固定費用
と可変費用を考えてみよう
規模の経済性がある産業で競争的な価格付
け(価格=限界費用)をすると赤字が発生する
 そのため企業に独占を認める
 しかし,監督官庁は企業を規制する
 公益事業(水道,電気・ガス,電力,鉄道)は
政府の大きな規制下にある
 JRは鉄道運賃を自由に設定できない!
 国土交通大臣の認可や届け出が必要

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産業組織論 5
3
二部料金
基本の経済モデルは製造業者が直接消費者
に財を販売する
 実際は中間に小売業者や卸売業者がある
 二部料金を企業が課すことができる
 固定料金(入園料)と数量に依存した料金

アミューズメントパーク:入園料とアトラ
クションの毎の料金
 テニスクラブ
 携帯電話通話サービス

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4
ディズニーランドのジレンマ
二部料金はエントリー価格と利用料金の2つ
からなる.利用者は固定料金のエントリー
料金 T を支払う.消費する財の数量に応じて
利用料金 P を支払う
 独占企業が二部料金を課したとしよう

独占企業真央が一人の消費者イチローにア
イスショーのチケットを売る
 イチローは複数回アイスショーを見る
 しかし,回数が重なると見る意欲が減る
 真央の限界費用は1000円

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5
イチローの支払意欲
回数
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支払意欲(円)
1
1400
2
1300
3
1200
4
1100
5
1000
産業組織論 5
6
イチローの支払い意欲のグラフ
支払い意欲(円)
1400
1300
1200
1100
1000
1
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1回目の支払い意欲
2回目の支払い意欲
3回目の支払い意欲
4回目の支払い意欲
5回目の支払い意欲
2
3
4
5
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数量
7
ディズニーランドのジレンマ
真央はどのようにエントリー価格と利用料
金を定めれば良いのか?
 もちろん,彼女は利潤を最大化する

真央は二部料金を用いてイチローが支払え
るだけのお金全てを奪える!
 真央はエントリー価格を1000円,利用料金
を1000円に設定する
 イチローは5回真央のアイスショーを見る

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限界費用とイチローの購入量
金額(円)
1400
1300
限界費用=支払意欲
真央の生産量(QM=
5)
限界費用は1000円
1200
1100
1000
需要量
1
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2
3
4
5
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数量
9
イチローの消費者余剰
金額(円)
イチローの消費者余剰=1000円
400+300+200+100=1000円
1400
1300
1200
1100
1000
エントリー料金=イ
チローの消費者余剰
に設定する!
つまりT=1000
需要量
1
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2
3
4
5
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数量
10
真央の生産者余剰
エントリー料金1000円,利用料金1000円を提示
 イチローは5単位購入
 収入=1000+1000×5=1000+5000=6000
 費用=1000×5=5000
 生産者余剰=6000-5000=1000
 イチローの消費者余剰=0
 価格と限界費用が等しいので総余剰は最大化
 しかし,売り手のみが得をしている

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理想的な需要曲線
金額(円)
– 購入量=Q*
– エントリー料金=T*=消費者余剰
需要曲線 – 利用料金= P*=限界費用
消費者余剰=T*
MC
0
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限界費用=P*
数量
Q*
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ドラクエの人気抱き合わせ事件






スクウェア・エニックス社のRPGゲームであるドラ
ゴンクエスト
80年代から90年代にかけての熱狂
発売日には全国の販売店に本作を求めて行列するフ
ァン
熱狂は一部のマニアだけのものではない社会現象
本作を買い求めるために学生が学校を休むこと
売れないソフトなどを本作と一緒に販売する抱き合
わせ商法が問題となった
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藤田屋事件=ドラクエ抱き合わせ
ゲームソフト卸売会社の藤田屋が,人気ゲームソフト「ドラ
ゴンクエストIV 導かれし者たち」の卸売りに際し,「従来の
取引実績に基づいて割り当てる本数以上の購入を望む小売業
者には,在庫中の他のゲームソフト3本を購入するごとに1本
を販売する」と,取引先小売業者に通知した.
 公正取引委員会(公取委)は(1)抱き合わせ販売の中止を小
売店に周知徹底すること,(2)今後は抱き合わせ販売を行わ
ないことを命じる審決(排除措置命令)を下した
(公取委 平成2年(判)第2号 1992年2月28日)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090109/322564/
http://snk.jftc.go.jp/JDS/data/pdf/H040228H02J01000002_/H040228
H02J01000002_.pdf

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マイクロソフト事件





1998年当時はワープロソフトとして一太郎が人気
マイクロソフト社のWordはそれほど人気ではなかった
表計算ソフトはマイクロソフト社のExcelが有意を持つ
消費者は,一太郎とExcelが欲しい
マイクロソフト社はMicrosoft Officeのバンドル・プリインスト
ールの際はWordとExcelをセットで販売する方針一太郎とExcel
といった組み合わせを認めない
公正取引委員会より抱き合わせ販売にあたるとして排除措置命
令が出された
マイクロソフト(株)に対する件 < 勧告審決 > 平成10年(勧)
第21号 平成10年12月14日 独禁法19条(一般指定10項)
http://snk.jftc.go.jp/JDS/data/pdf/H101214H10J02000021_/H101214H
10J02000021_.pdf

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抱き合わせ販売
HW:①身の回りの抱き合
わせ販売の例を考える
抱き合わせをバンドリング(bundling)とも言う
 プリンターを買うのも一種の抱き合わせ
 プリンター本体とインクを買うこと
 本体がエントリー価格,インクが利用料金
 一種の二部料金
 抱き合わせ販売はなぜ悪いのだろう?
 独占企業が抱き合わせ販売で儲ける方法は


企業が顧客の需要にばらつきがあり,価格差
別ができないとき
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バンドルの例1

人気ソフト・ドラクエと不人気ソフト・タダノ
ブクエスト.二人の各ソフトへの支払い意欲
ドラクエ
タダノブクエスト
12000
3000
イチロー
10000
4000
錦織
 真央はドラクエを10000円,タダノブクエスト
を3000円で販売.費用はゼロ
 10000+3000+10000+3000=26000円の収入
 ドラクエとタダノブクエストをパッケージ販売
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産業組織論 5
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バンドルの成功

真央はドラクエとタダノブクエストを14000円で
セット販売する.両者は購入する
両方消費
15000
イチロー
14000
錦織
 14000+14000=28000円の収入
 ばら売りの収入(26000円)よりも収入が増えた!
 いつも上手く行くとは限らない
 イチローはドラクエを高評価,タダノブは低評価
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バンドルの例2
ドラクエ
イチロー
錦織
タダノブクエスト
12000
4000
10000
3000
両方消費
イチロー
錦織
16000
13000
真央は両者を13000円でセット売り
 12000+13000=26000円の収入
 ばら売りと変わらない!

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