朝倉介護保険事業者協議会 居宅介護支援部会 研修会 家族の介護負担とメンタルサポート (part II) 平成20年8月18日 処:甘木朝倉市町村会館 太刀洗病院 心療内科 判田正典 背景 ・ 家族が介護が必要になった場合に困る点 (平成15年度 厚生労働省 世論調査より) 「食事や排泄,入浴など世話の負担が重く,十分な睡眠が取れないな ど肉体的負担が大きいこと」(62.5%), 「ストレ スや精神的負担が大きいこと」(57.9%), 「家を留守にできない,自由に行動できないこと」(52.5%), 「介護に要 する経済的負担が大きいこと」(50.3%)などの順。 ・超高齢化社会が到来しつつある現在、要介護者のキーパーソンであ る介護者も高齢である、いわゆる「老老介護」のケースも多くみられる。 高齢キーパーソンの介護疲れによるうつ病の発症というケースは決し て少なくない。 目的 高齢者介護のメンタルケアの面から、介護支援利用 者のみならず、その家族をサポートしてゆく上で介護 キーパーソンのうつ状態および心身疲労の程度の調 査は重要と思われる。 対象・方法 アンケート調査に同意された介護支援利用者の介護キーパーソン 35名 (男性4名、女性31名。 平均年齢 71.4歳) 平成19年6月、平成20年6月に朝倉居宅介護支援部会所属の ケアマネージャー有志の協力により、介護利用者の日常生活 自立度、介護キーパーソンの介護負担度, GDS(高齢者うつ尺度) 等のアンケート調査を行った。 アンケート調査結果 (I) 1)介護利用者の年齢、性別、主疾患 平均年齢 82.8歳 男性 18名、女性 17名 37.1 % 45.7 % 脳出血・梗塞・脳外傷後遺症 認知症 8.6% パーキンソン症候群 8.6% その他 2)介護利用者(障害高齢者)の日常生活自立度 (寝たきり度) J 日常生活はほぼ自立し、独力で外出できる。 A 室内は概ね自立しているが、介助なしでは外出しない。 B 室内で介助必要。日中もベッドが主体、座位保持できる。 C 一日中ベッド上で、介助が必要。 8.6 % 40% 8.6% 42.9 % J A B C 3)認知症のみられる介護利用者の日常生活自立度 I II III IV 社会生活自立 他者の注意で自立 必要に応じ介護が必要 常時頻繁な介護が必要 M 著しい精神症状・問題行動あり。 2..9% I 11.4 % 28.6 % 11.4 % II III IV 45.7 % M アンケート調査結果 (II) 1)介護キーパーソンの年齢、性別、属性 平均年齢 71.4歳 男性 5名、女性 30名 5.7% 8.6% 48.6% 22.9 % 14.3% F妻 F娘 F嫁 M夫 M息子 2)介護キーパーソンの介護時間 a b c d 毎日時間制限あり 週1~3回昼夜問わず 週4~6回昼夜問わず 毎日昼夜問わず(17時間以上) 25.7% 57.1 % 11.4 % 5.7% a b c d 3)介護キーパーソンの健康状態、介護疲労度 a) 健康状態の問題 あり 18名、 なし 17名 b) 介護疲労度 17.1 % 37.1 % 22.9 % 22.9 % なし 軽度あり 中等度あり 重度あり 4)介護キーパーソンのうつ尺度 GDS(老人うつスケール: Geriatric Depression Scale) 平均 14.01 (mean±SD 14.01 ± 7.71) 12点以上は「うつ」の疑い 介護キーパーソンのうつ尺度 GDS 30 GDS ・介護キーパーソンのうつ尺度 GDSは 介護キーパーソンの介護する時間や健康問題の有 無には有意差は認めず、介護疲労度(自覚)の程 度 と有為に相関していた。 ・介護キーパーソンのうつ尺度GDSは介護利用者の GDS 日常生活自立度との有意な相関はなかった。 P < 0.05 A : 介護疲労度(なし~軽度) B: 介護疲労度(中等度~重 度) P < 0.05 25 20 A 15 B 10 5 0 介護時間制限あり 30 P < 0.05 週4日以上昼夜介護 P < 0.05 25 20 A B 15 10 5 0 健康問題あり 健康問題なし 結論 高齢である介護キーパーソンの多くはうつ尺度が高く、 心身疲労の状態にある。 高齢者介護において、介護支援利用者のみならず、介護 キーパーソンを含めた家族のメンタルサポートが改めて 重要であることが今回の調査から示唆された。
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