第2章補足Ⅱ 2項分布と正規分布についての補足 統計学 2006年度 • 確率変数 - とりうる値(連続変数の場合にはそ の値を含む微小な区間)のそれぞれにある確率が 対応している変数 • 確率分布 - 確率変数のとりうる値(連続変数の 場合にはその値を含む微小な区間)と確率との対応 関係 • 確率分布は、いくつかの種類に分類することができ る。 – 離散型確率分布 2項分布、ポアソン分布、負の2項分布、超幾何分布、・・・ – 連続型確率分布 正規分布、t分布、カイ2乗分布、・・・ d) 2項分布 [定義] 起こりうる結果がAかBかという2つの結果しか起こらな い試行† をn回繰り返したとき、Aという結果がx回おこったと する。このxの確率分布を2項分布という。 † このような試行をベルヌーイ試行という [分布関数] Aが起こる確率をp、Bが起こる確率をq(=1-p)とす ると、2項分布は p(x)=nCxpxqn-x という式であらわすことができる。この式を2項分布の分布関 数という。 [期待値と分散] 2項分布の期待値(平均)は E(x)=np 分散は V(x)=npq となる。 (例) サイコロを3回振る実験では、A(1の目が出る)かB(1の 目が出ない)かという2つの結果しか起こらない試行をn(=3) 回繰り返したとき、A (1の目が出る)という結果がx回おこっ た。このxの確率分布は2項分布(にしたがう)といわれる。 • 1 5 p ,q ,n 3 この例では、 6 であるので、分布関数にあては 6 めると、 p(x) C 1 x 5 3 x となる。 3 x 6 6 • xのとりうる値は0,1,2,3の4つであるので、この分布関数は次 のような関係を表している。 x 1 P(x) 3 C0 6 0 0 5 6 30 1 1 1 C 3 1 6 5 6 31 2 1 C 3 2 6 2 5 6 3 2 3 1 C 3 3 6 3 5 6 33 ※ nCxについて • nCxはn個の中からx個を選ぶ組み合わせの数であり、次の ように定義される。 n Cx n! x!(n x)! • ここで、!は階乗を表す記号であり、次のようなものである。 n! = n ×(n-1)×・・・×2×1 よって、nCxは次のように計算できる。 n (n 1) (n x 1) (n x) 2 1 n Cx x ( x 1) 2 1 (n x) 2 1 x個 n (n 1) (n x 1) x ( x 1) 2 1 x個 たとえば、5人の班の中から2人の委員を選ぶ組み合わせは 5 C2 5 4 20 10(通り ) 2 1 2 となる。 • サイコロを3回振る実験において、1の目が1回出るパターン は、 ○××, ×○×, ××○ の3通りあるが、これはサイコロを 振る3回のうち、何回目に1の目が出るかを考えたものであり、 3 C1 3 3(通り ) 1 である。 • また、nC0は定義のように計算できないので、 nC0=1と特別 に定義する。 • であることから、サイコロを3回 振る実験の分布関数は次のように表すことができる。 3C0=1, 3C1=3, 3C2=3, 3C3=1 x 0 P(x) 5 6 3 1 1 1 3 6 5 6 2 2 1 3 6 2 1 5 6 3 1 6 3 • 離散型確率変数の期待値は、一般に E(x) x P(x) によっ て求めることができるので、 E(x) 0 0.579 1 0.347 2 0.069 3 0.005 0 0.347 0.138 0.015 0.5 となる。 • 確率変数が2項分布にしたがう場合、期待値は E(x) np と して求めることができる。すなわち、すべてのとりうる値と対 応する確率が得られなくても、期待値が計算できるのである。 • この例の場合 E( x) 3 1 1 0.5 となる。 6 2 • また、2項分布にしたがう確率変数の分散は V( x) npq て求めることができる。 1 5 5 • この例の場合 V( x) 3 6 6 12 となる。 とし e) 正規分布 • 2項分布において、nを大きくしていくと、左右対称のつりがね 型の正規分布といわれる分布に近づく。 • 2項分布は離散型確率変数の分布であるが、nを無限に大き くしたとき、xのとりうる値は無限に大きくなる。すなわちxは連 続型確率変数として扱われる。 n=500のとき P (x) 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 144 136 128 120 112 104 96 88 80 72 64 56 48 40 32 24 16 8 0 0 x • 正規分布は平均μ、分散σ2の値によって、中心の位置や山 の高さが変わってくる。 <平均の異なる正規分布> σ=1の正規分布 0.5 μ=0 μ=3 μ=-4 0.4 0.3 0.2 0.1 0 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 <分散の異なる正規分布> μ=0の正規分布 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 σ=1 σ=2 σ=1/2 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 • これらの正規分布は、中心の位置を移動させたり、目盛りの 幅を変える(横に伸ばしたり、縮めたりする)ことによって、全 て同じ正規分布となる。 ※ 標準化と標準正規分布 • 正規分布にしたがう変数は、平均・分散をそろえることによっ て、比較することが可能である。 • さまざまな正規分布における値を、標準正規分布における相 対的な位置に変換し、比較する。
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