「コメントツール」を利用した インタラクティブなライティング指導 第45回外国語教育メディア学会全国研究大会発表スライド 2005/07/30 山西博之 (広島大学大学院博士課程後期) 1 本報告の目的 広島大学外国語教育研究センターの課外講座である ライティング授業において,「コメントツール」 (Microsoft Wordのコメントツール,変更履歴ツール, 脚注ツール)を「媒介」として使用した授業が, 受講者によって,授業がどのように認識され,また受 講者のライティングに対する認識がどのように変容し たのかを報告する。 また,授業担当者の実感も同時に報告する。 2 講座の概要 形式‥課外講座(学部生,大学院生,教職員対象) 名称‥「はじめてのパラグラフ・ライティング -身近な出来事を英語で書いてみよう-」 目的(募集文)‥「初歩のライティング。授業進行や 説明は日本語で行います。ワープロソフト (Microsoft Word) を使って身近な出来事をわかり やすく英語で説明する練習をします。また,インター ネット上でライティングに有益な情報を検索する練 習も行います。」 期間‥2004年10~12月の10週間,計9回 (週1コマ90分) 3 受講者 人数・学年・専攻‥毎回約15名・学部1年~修士2年 (総合科学,機械工学,開発科学,生物生産, 日本語教育,社会科教育,英米文学) 英語学力‥TOEICスコア450~830(平均600前後) 受講理由‥授業初回に受講者が自由記述で記入 (表1)。 →課外講座という性質上,背景,英語学力,受講理由, 出席状況,進捗状況などにおいて個人差が大きい。 →個人差に応じた指導が重要。 4 授業形態 環境‥CALL教室(マッキントッシュ環境)で Microsoft Wordを使ってライティング活動。 ねらい‥CALL教室の環境(PC,ネット設備,参照用 モニタ,カメラ,プリンタなど)を用いてライティング 技能(パラグラフ・ライティングに則った標準的なも の)の効果的な伝達を行うこと。 作文テーマ‥授業初回に受講者が自由記述で希望 したテーマ(表2)。 指導‥① 添削,フィードバックによる指導 ② 受講者一人ひとりに応じた個人的な指導 ③ 受講者全体に対する全体的な指導 5 授業形態 添削,フィードバック による指導(授業後) 「コメントツール」 全体的な指導 (後半40分) 個人的な指導 (前半50分) 6 添削,フィードバック指導(授業後) 授業終了後,CALL教室のサーバー上の授業用フォ ルダに各受講者がWordのファイルを保存することで 作文を回収。 回収したファイル上に,Wordのコメントツールを使用 して,文章構成,内容,文法,語法,スペリングなどの 添削,フィードバックを,受講者の作文に応じて行った (例:要項集, p. 69, Appendix)。 添削における留意点は,Lee(2003)を参照。 添削時間は,受講者一人あたり10~20分。 作文は,次回の授業開始時に授業用フォルダに返却。 7 個人的な指導(前半50分) 受講者は,返却された作文の添削,フィードバック 結果を見ながら,推敲,書き直しを行い,作文の完 成を目指した。 担当者は,受講者一人ひとりのもとに机間指導に 向かい,添削理由やフィードバックの補足の説明や, 受講者からの質問への回答を行った。 机間指導の時間は,受講者一人あたり2~5分。 一人ひとりに応じた十分な「対話」を重視する形式。 質問に回答する際には,CALL教室で利用可能な リソースを活用。 8 全体的な指導(後半40分) 作文中に共通していた誤りや,机間指導中に共通 して生じた質問に対して解説を行った。 パラグラフ・ライティングに関する解説や書籍の紹 介,Wordの使用法などを段階的に指導した(表3)。 作文が完成した受講者は,指定された新しいテー マに適宜取り組んだ。 授業終了時には,受講者はWordのファイルをサー バーに提出すると同時に,2部プリントアウトし,1 部を提出,1部を保管。また,USBメモリやメール添 付でファイルを授業外学習のために持ち帰った。 9 授業の感想(授業,作文の効果) 英作文を通して,接続詞の使い方,文章構成など,英作 文の際に注意すべき点についてよく知ることができた。 今まで “because”や “but”などの接続詞をどのように使 うか知らなかったし,どのような英文が正しいか分から なかったので,この授業では,英文を書くという作業と, それを先生によってチェックしてもらうことが重要である ことが分かった。 この授業を取り始めてから,英語でものを書くのに慣れ てきた気がする。 英語を勉強しようかなという気になったので,きっかけと して良かった。 10 授業の感想(CALL教室) ネットにつながっているパソコンで英作文ができたので,情 報を得たい時は検索できたり,辞書機能を使用できたりと, とても効率よく出来たと思う。 便利なツールの利用方法なども紹介してもらえたので,とて も役に立った。 英語の本や役に立つホームページを教えてもらえたこと, コーパスの利用の仕方などを教えてもらえたことが良かった。 文章力だけではなく,インターネットを使ってよい情報源を手 に入れる方法が身についた。ありがたいことには,マッキン トッシュでのワードソフトの使い方もわかるようになった。 11 授業の感想(添削,フィードバック) 先生は私たちの英語のエッセイを丁寧に訂正してく れ,そのことは,私たちにとって英語を上達させるの に大変役立った。 英語で書くのはすごく難しいけれど,自分が書いた 英文が正しくなって返ってきて,楽しかった。 Wordの機能を使って,誤りを指摘してもらったので テキストの中のどこにどのような誤りがあるのか分か りやすかった。 12 授業の感想(個人的な指導) 毎回添削を返してくれることや,必ず直接話して,添 削内容について確認できることなど,すごく安心でき た。 先生は私たちの作文に関する問題に気を遣って,い つもそれを実際に直接話すことで解決できるように してくれて感謝している。 13 授業の感想(全体的な指導) 先生は作文の書き方を分かり易く説明してくれた。 TOEFLの英作文の書き方やそれに関するウェブペー ジの紹介,ビジネスレターの書き方といった実用的な ものまで,あらゆる英作文をパターン別に指導してい ただけたので,とてもためになった。 先生は,私たちにとって役立つ本を推薦してくれた。私 はそれらの数冊を買ったが,とてもためになった。 14 授業の感想(その他) 拘束力のないコースの中,課題をどうするのか,期限をどう するかなど,大変だったと思うが,参加者としては,「ゆるや かな」決まりごとの中進められたのがよかったと思った。 授業に参加することで,英語を書く力だけでなく,読む力も向 上させることができた。例えば,TOEICのリーディングセク ションで,より意識的に問題に取り組めるようになった。 英語の文をもう少し豊かに書けるような表現,つまり,これが できればもっとrichな表現になると思われるものを紹介して いただけたら良かったと思う。 他の受講者が書いた作文を見てみたかったと思う。 15 まとめ 今回,「コメントツール」を媒介として行ったライティ ング指導は,受講者に概ね好意的に認識され,受 講者の英作文に対する認識もより意識的になった と言える。 ただし,今回のインタラクティブであったのは,「担 当者と受講者」,「受講者とPCを通じた環境」で あったため,今後は「受講者同士」のインタラクショ ンを効果的に取り入れていく必要もあると言える。 16 参考文献 Lee, I. (2003). L2 writing teachers’ perspectives, practices and problems regarding error feedback. Assessing Writing, 8, 216–237. ご静聴ありがとうございました。 http://home.att.ne.jp/banana/yamanishi/kenkyu.html 17
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