経営分析データの入手方法

作成者
杉本善彦
香山聖子
佐伯 健
内部分析…会社内部からの分析なので詳細
なデータを使った総合判断ができる。
外部分析…会社外部からの分析なのでデータの入
手に制約があり、財務諸表分析が中心となる。
経営分析の目的は、会社を全体として評価するこ
とであるが、そのためにはまず、会社の部分を分
析し、その結果を積み上げ、総合的に評価する。
一般利用可能
有価証券報告書、日経経営指標,会社年鑑、会社総監
株主、債権者が利用可能
商法計算書類
経営分析データの入手方法
種類(主な内容)
入手方法、場所
有価証券報告書
会社本店(本社)および主要な支店
大蔵省証券閲覧室
(財務諸表、連結財務諸表の 上場証券取引所
日本証券協会(店頭登録会社)などで
ほか会社の概況など)
閲覧、コピーできる
有価証券報告書総覧
政府刊行物サービスセンターなどで販
(有価証券報告書と同じ)
売されている(株式公開会社)
日経経営指標など出版物
(経営分析結果や会社概要 主要書店で販売されている
など)
商法計算書類等
定時株主総会報告書に添付されてくる
(貸借対照表、損益計算書、 (付属明細書を除く)
利益処分案、営業報告書、 会社本支店で株主、債権者が閲覧また
付属明細書)
はコピーできる
決算広告
日本経済新聞、官報などの広告掲載紙
(貸借対照表、損益計算書の
要旨)
に定時株主総会終了後、掲載される
 計算書類:商法の計算書類規則に従い作成される
例 貸借対照表、損益計算書、営業報告書、利益処分案、付属明細書
 財務諸表:証券取引法の財務諸表規則に従い作成される
例 貸借対照表、損益計算書、利益処分計算書、付属明細書
決
算
→
計
算
書
類
→
↑
定時株主総会前に作成
定
時
株
主
総
会
→
↑
貸借対照表
損益計算書
などの承認を得る
財
務
諸
表
↑
大蔵大臣に提出
会社単位とグループ
の決算書
◎流通市場における企業内容の開示に用
いられる決算書類
内容
1.会社の概況 2.事業の概況
3.営業の状況 4.設備の状況
5.経理の状況 6.企業集団等の状況
ポイント
どんな会社が有価証券報告書を提出して
いるか?
1.貸借対照表
目的:決算日時点での「財政状態」を明ら
かにするため
資金の運用状態
資産の部
資金の調達状態
負債・資本の部
損益計算書
目的:当期の「経営成績」を明らかにする
ため
大まかな流れ
売上総利益→営業利益→経常利益→
税引前当期純利益→当期純利益
ポイント
B/SとP/Lの当期純利益が一致す
る理由
資産
B/S
負債
資本
期首資本
の増加額
P/L
当期純利益
費用(資
本金の減
少)
収益(資
本金の
増加)
貸借対称表・損益計算書に記載されていること
だけでは、詳細な情報が得られない
→
そのため付属明細表に内訳を記載する。
→
つまり、貸借対称表・損益計算書の内訳明
細に当たるのが付属明細表である。
営業報告書
大会社の営業報告書
1.営業の概要
(1)営業の経過および成果
(2)設備投資の状況
(3)資金調達の状況
(4)会社が対処すべき課題
(5)営業の成績および財産の状
況
2.会社の概況
(1)主要な事業内容
(2)主要な事業所
(3)株式の状況
(4)従業員の状況
(5)企業結合の状況
(6)主要な借入先等
(7)取締役及び監査役
(8)決算期後に生じた会社の状
況に関する重要な事実
有価証券報告書(第一部 企業情報)
第一、会社の概況
1、主要な経営指標などの推移
2、会社の沿革
3、資本金の推移
4、株式の総数
5、株式の状況
5の2、取締役または使用人への譲渡
および利益または資本準備金による
消却に係る自己株式の取得状況
6、配当政策
7、株価および株式売買高の推移
8、役員の状況
9、従業員の状況
第二、事業の概況
1、会社の目的および事業の内容
2、経営上の重要な契約
3、研究開発活動
第三、営業の状況
1、概況
2、生産能力
3、生産実績
4、受注状況と生産計画
5、販売実績
第四、設備の状況
1、設備
2、設備の新設、重要な拡充若しくは
改修またはこれらの計画
第五、経理の状況
1、財務諸表
2、主な資産、負債および収支の内容
3、資金収支の状況
4、その他
第六、企業集団等の状況
1、企業集団等の概況
2、企業集団の状況
3、関連当事者との取り引き監査報告
書
第七、株式事務の概要
企業単体の決算とグループの決算
大手ビールメーカー3社の子会社の推移
アサヒ
キリン
サッポロ
平成7年 平成8年 平成9年
89
84
83
79
95
97
30
32
34
ポイント
アサヒだけが子会社減少(H.7からH.9まで)
なくなった会社
1.アサヒビール飲料 2.アサヒビール飲料製造
3.北陸アサヒビール飲料
4.ASAHI BEER INTERNATIONAL HOLDING(EUR
OPE)
このうち、
アサヒビール飲料、アサヒビール飲料製造、
北陸アサヒビール飲料→アサヒ飲料へ
ASAHI BEER INTERNATIONAL
HOLDING(EUROPE)→ASAHI BEER
INTERNATIONAL FINANCE B.V.に
合併
経営のスリム化では?
<比率分析>
<実数分析>
1.相互比率分析
実数そのものを分析対象とす
る
2.構成分析
★ポイント
3.趨勢分析
1200000
200
180
160
140
120
100 %
80
60
40
20
0
1000000
800000
百
万 600000
円
400000
200000
0
平成7年 平成8年 平成9年
売上高
経常利益
売上高経常利益
売上高経常利益
率の指数
それぞれに一長一短あ
り、目的に応じて使い分け
る必要がある。
 貸借対照表=ストックで見た資金の収支
流動資産
流動負債
2,682,892 1,572,697
本
固定資産
4,342,447
固定負債
632.486
自己資本
4,874.155
資産合計
負債資本合計
7,025,340
7,025,340
↓
↓
資金の運用 = 資金の調達
他人資
 フローで見た資金の収支
営業支出
7,503,252
営業外支出
134,881
資産等取得支出
808,394
決算支出等
440,347
営業収入
8,199,955
営業外収入
334,993
借入返済等支出
1,081,705
借入等収入
984,150
資産等売却収入
96,935
事
業
活
動
に
伴
う
収
支
-254,991
資金調達
活動に伴
う収支
-97,555
支出超過
利益の状況をみて判断
1.資本と利益の関係
経常利益
総資本
×100= 総資本経常利益率
2.売上と利益の関係
経常利益
売上高
例)キリンの
3年間の推
移
×100= 売上高経常利益率
キリン
平成9年
売上高経常利
益率
総資本経常利
益率
平成8年
平成7年
0.00% 2.00%
4.00% 6.00%
(
労
働
)
入素 「
生(
資
}の 産 産
投
要)
売上高
生産活動
産出
(製造、加工等)
控除法
付加価値
集計法
全給付原価
売
上
高
(原材料費,外注加工費など
外部から購入したものの原
価)
付加価値
(売上高から前給付原価を差
し引いたもの。租税公課な
ど)
生産額
付加価値
利登
益記
純
息支
払
利
課租
税
公
却減
費価
償
賃
借
料
人
件
費
流動比率と当座比率
会社の支払能力と短期的支払能力
流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)
流動資産が流動負債の2倍が理想
当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)
100%以上あれば支払能力に問題はなく理想的
キリン、アサヒ、サッポロ、三社の当座、流動比率の比較
キリン
アサヒ
サッポロ
当座比率
129,5% 89,0%
45,5%
流動比率
148,6% 68,6%
67,2%
経常収支比率
資金収支状況の基本的指標
キリン、アサヒ、サッポロ三社の経常利益比率
キリン
アサヒ
サッポロ
経常利益比率 108,1%
102,8%
102,0%
経常収入(営業収入+営業外収益)
経常収支比率=
経常支出(営業支出+営業外費用)
×100(%)
•経常収支比率が100%を超えていれば安全
しかし
この比率だけに注目せず
営業収入や営業外支出の各項目にも注意する必要がある
従業員の働き、営業効
率を評価
同業他社との比較に適
している
3社ではアサヒがトップ
H.8,H.9ではキリン
がサッポロより少ない
一人当たり売上高 (単位:百万円) サッポロ
一人当たり売上高 (単位:百万円) アサヒ
一人当たり売上高 (単位:百万円) キリン
平成9年
平成8年
平成7年
0
50
100
150
200
250
会社の経営活動の最
終結果を表す指標のひ
とつ
H.9にサッポロは大幅
の純損失を計上
一人当たり売上高がア
サヒより低かったキリン
が、こちらでは上
一人当たり当期純利益
6.00
4.00
2.00
0.00
-2.00
-4.00
-6.00
-8.00
一人当たり当期
純利益 (単位:
百万円) キリン
一人当たり当期
純利益 (単位:
百万円) アサヒ
平
成
7
年
平
成
8
年
平
成
9
年
一人当たり当期
純利益 (単位:
百万円) サッポ
ロ
従業員を雇用するのに
かかる費用
3社とも3年間で少しず
つながらも上昇
従業員の平均年齢との
兼ね合いは?(キリン
を取り上げて)
一人当たり人件費
一人当たり人件
費 (単位:百万
円) サッポロ
一人当たり人件
費 (単位:百万
円) アサヒ
一人当たり人件
費 (単位:百万
円) キリン
平成9年
平成8年
平成7年
0
5
10
15
キリン
アサヒ
サッポロ
平成7年 平成8年 平成9年
-4.51
-3.5
-9.44
-0.55
6.98
4.4
-1.71
-0.05
-4.84
★会社の成長性がわかる
平成9年に3社とも売り上
げが落ち込んだのは…?
売り上げ伸び率
10
5
0
%
-5
-10
-15
平
成
7
年
平
成
8
年
平
成
9
年
キリン
アサヒ
サッポロ
1.発泡酒の影響
2.平成9年8月以降の天候不順
の影響
3.ワインブーム
4.消費の停滞→不況の影響
キリン
アサヒ
サッポロ
平成7年 平成8年 平成9年
-21.15
-28.89
-3.17
1.46
0.07
6.39
-0.58
1.85
-14.13
平成7年から8年にかけてアサ
ヒ売上伸び率↑なのに何故、経
常利益率↓なのか…。
経常利益伸び率
10
5
0
-5
-10
%
-15
-20
-25
-30
-35
平
成
7
年
平
成
8
年
年度
平
成
9
年
会社の力の消長
がわかる。
キリン
アサヒ
サッポロ
売上原価と営業外費用が平成7
年から8年にかけて大きくふえて
いるためである。
キリン
アサヒ
サッポロ
キリン
アサヒ
サッポロ
平成7年 平成8年 平成9年
40027
27083
20633
6197
6502
7297
4637
5401
-23873
-10.31
-32.33
-23.81
1.2
4.92
12.23
-20.08
16.48 -541.91
処分可能な利益が伸び
ているかを見る指標
当期純利益伸び率
50000
200
40000
-20000
100 当
期
0
純
利
-100 益
伸
-200 び
率
-300 (
折
-400 れ
線
-500 )
-30000
-600
当 30000
期
純 20000
利
益 10000
(
棒
線
0
平成7年 平成8年 平成9年
) -10000
何故サッポロの当期純利益は
急激に落ち込んだのか…。
キリン
アサヒ
サッポロ
キリン
アサヒ
サッポロ
有価証券評価損が222億円でたた
め
キリン,アサヒ、サッポロ三社の従業員平均年齢の推移
7年度
8年度
9年度
キリン
39,2
39,4
39,7
アサヒ
37,8
38,2
38,0
サッポロ
42,0
42,3
42,3
アサヒは、平均年齢が若いせいか若者に好まれて
いる製品を作っている
サッポロの新製品のターゲットは平均年齢と同様に
高い年齢層である
★ラガー・1番搾りの売上高は減少している。
しかし
ラガーは年配の消費者から、強い支持をうけている。
★アサヒ、サっポロと比べても広告費に大差はないが、
キリンのC.M.は3社の中では、1番インパクトが強い。
キリンの売上高・経常利益の伸び
★売上高は減ってき
てきているが、銘柄
が多く、客層が幅広
いため、あらゆる
ニーズに対応でき
る。
百
万
円
1600000
1400000
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
売上高
経常利益
平成7年
平成8年
平成9年
★売上高を伸ばした最大の要因は「スーパードライ」である。
しかし
「スーパードライ」は、辛口で女性には飲みにくい。
そこで
★女性をターゲットにした、
「ファーストレディ」を発売。
★このように、「スーパード
ライ」を主軸としながら
「スーパードライ」とは違う
客層をターゲットにした
ビールが売れれば、これ
からも、成長していくので
は…。
アサヒの売上高・経常利益の伸び
1200000
1000000
800000
百
万 600000
円 400000
売上高
経常利益
200000
0
平成7年 平成8年 平成9年
「エビス」に力を入れてみては…。
→
低価格にしたらもっと売れるのでは
…。
しかし
高級感で売っている「エ
ビス」なので、あまり低価
格にもできないのでは
…。
そこで
最近、発泡酒「ブロイ」を
発売し巻き返しを図って
いる。
サッポロの売上高・経常利益の伸び
700000
600000
500000
百 400000
万
円 300000
200000
100000
売上高
経常利益
0
平成7年
平成8年
平成9年