相互調整によるエージェントのクラスタ化: コンピュータシミュレーションによる検討 高木英至(埼玉大 学) 相互調整モデルの提案: Social Impact Model の一般型 集団化への一定の含意 少数派の同類選択傾向 少数派相互の近接傾向 クラスタ化(clustering) 分離(segregation) 2つの経路 エージェントの移動 エージェントの態度変化(改宗) Nowak, Latane のSIM ← 態度変化 前提 セル空間にエージェント 距離に応じた相互影響 結果 態度ごとのクラスタ 少数派の残存 少数派はより小さく 相互調整モデル(MAM) 基本的問題:例 個人が行動ルール(例:言語)を持つ 近隣の他者と一致すれば得点が高い → 特定のルールはどの程度一般化するか? MAM SIMとの相違 エージェント状態の多次元性 例:10011 • 多数の状態、態度間の距離 エージェントは自発的に態度変更を模索する 得点の低下=影響圧力 と考えればSIMはMAMの特殊ケース 単なる影響よりはエージェントの自由度が高い 予測:MAM と SIM の共通性 少数派を含め、複数態度のクラスタができる ただし影響力が局所に限定される場合だけ 初期少数派の縮小 規模/度数に基づく構造効果 少数派 確率的に多数派に囲まれやすい 少数派 → 多数派への改宗(効果の累積) 少数派は、相互支持的なクラスタだけが残れる。 MAM の新たな要素 SIM との相違 態度は2つに限定されていない 多数の態度でどのようなクラスタが生じるか? 態度間の距離を想定する 態度間の距離の導入が何をもたらすか? 態度間の距離の効果:予測 優勢な態度のクラスタ → かけ離れた態度の劣勢化 かけ離れた態度間で、中間的な少数派はニッチを見出す? MAM の前提と手順 1 50 x 50 のセル空間、torus ブロック距離 ノイマン近傍 0.8 効果 0.4 0.2 セル間の適合度:態度の値が一 致する次元の数 セル i の態度の適合度 Σ fij・sj/dijn(2) j ∈A Fitness(i) = A:セル i が「相互作用」する セルの集合 fij はセル間の適合度 sj はセル j の強さ、同一(1.0) dij はセル間の距離である. n : 距離係数 = = = = = 0 1 2 3 4 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 距離 10 と 11 : 適合度1 n n n n n 0.6 セルの態度変化 自分のターンで態度の各次元を 確率 0.5 で変更 適合度が上がればその変化を受 け入れる。 離散的なラウンド進行 ターンはランダム 態度:2次元、4種類 (00/01/10/11) MAM のシミュレーション:関心の焦点 SIM 同様のクラスタ化? 距離係数の効果 少数派クラスタが残るのは、影響力が距離によって限定される (距離係数が高い)場合のはずだ。 セルはどの態度のセルと隣接しやすいか? 相互調整/影響に基づく集団化の様相 新たな要因:態度間距離の効果は? 最終セル度数 2500 2000 度数 結果(1): 距離係数の効果 00 01/10 11 1500 1000 500 0 SIM と同じ挙動 以下、態度の初期出現 率に差がある場合 影響が近くに限定される (距離係数が高い)ほ ど; 最大クラスタサイズ 2500 00 01/10 11 1500 1000 500 n=0 n=1 n=2 n=3 n=4 nb 距離係数 平均クラスタ数 45 40 35 クラスタ数 大域的な影響が生じる (距離係数が低い)なら、 多数派が全体を支配。 2000 0 多数派は小さくなる。 クラスタ数が多くなる。 nb 距離係数 最大クラスタサイズ n=0 n=1 n=2 n=3 n=4 30 00 01/10 11 25 20 15 10 5 0 n=0 n=1 n=2 n=3 距離係数 n=4 nb 続き:初期少数派の減少 多数派:初期では過半ではない → 増大、過半を占める 中間派:減少 少数派:より減少 度数 初期度数と最終度数 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 シミュレーション1 初期 度数 シミュレーション1 最終 度数 00 01/10 態度 11 結果(2):隣接状況 隣接する4セルの態度構成 均衡時の隣接比率 少数派が残る条件 1 自集団選択率が高い 多数派ほど自集団選択率が 高くなる Blau らの構造効果 多数派は近隣に同態度の 他者を見出しやすい。 偶然からも生じる 態度が遠いセルとの隣接度 数は小さい。 0.8 比率 0.6 0.4 0.2 0 00 01 10 態度集団 00 01 10 11 11 隣接係数 隣接係数 rij = Ln(Fij/Eij). (3) 最終ラウンドでの度数分布を各態度の出現確率と仮定すると、 隣接セルの態度構成の出現確率は多項分布で表せる。 Fij:多項分布から求めた、態度 j の隣接セルの期待比率 Eij:実際の態度 j の隣接した比率 rij >0 → 態度 j と期待値以上に隣接しやすい rij =0 → 期待値と実際とが一致 rij <0 → 態度 j と期待値より隣接しにくい 均衡時の隣接比率 隣接係数の値 1 比率 0.8 自集団との隣接傾向が高い 少数派ほど、自集団との隣接傾 向が高い 距離が大きい態度のセルからは 遠ざかる 距離が大きい場合を除き、少数 派と中間派は接近する 0.4 0.2 0 00 01 10 11 態度集団 00 01 10 11 隣接係数 3 2 1 係数値 0.6 0 -1 00 01 10 -2 -3 態度集団 00 01 10 11 11 結果(3):態度間距離の作用 初期出現率が同じでも、多数派との距離が遠い態 度は度数が減少する。 シミュレーション1 シミュレーション2 2000 2000 1500 1500 度数 度数 1000 500 1000 500 0 0 00 01/10 11 態度 初期度数 00 01/10 11 態度 最終度数 初期度数 最終度数 結果(3):態度間距離の作用(2) 初期少数派がかえって増大する場合 00,01,10,11の初期出現率が3:1:1:3 初期少数派( 01 と10)はむしろ増加する(シミュレーション3) 1:1:3:3なら少数派は減少(シミュレーション4) 距離が遠い相対的多数派が拮抗するとき、少数派は両者の 間でニッチを見出し、生き残る。 シミュレーション3 シミュレーション4 1000 600 度数 度数 800 400 200 0 00 01 10 態度 初期度数 11 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 00 01 10 態度 最終度数 初期度数 最終度数 11 まとめと考察(1):MAMの挙動 SIM の挙動の再現 クラスタ化 ただし影響力が距離で制限されるときだけ 少数派の減少 態度間距離の効果 多数派から距離のある少数派は減少しやすい 距離のある多数派が拮抗するとき、中間的な少数派は生き残り やすい まとめと考察(2):集団構成への含意 従来の一見矛盾する観測 同類を見出しやすい しかし内部に少数派を抱え込 む(少数派を外側に押しやる ことがない) 少数派は外集団成員と接触し やすい(Blau ら) 少数派は凝集的であるという 「常識」 シミュレーションの含意 接触比率では、少数派は外集 団成員と接触しやすい 構造効果 構造効果を除去した接触係数 では、少数派は自集団選択傾 向が強い 多数派の構成 少数派の構成 同類で密集する(そのときだ け生き残れる) 他の少数派と接近することで 多数派の影響を緩和する →少数派同士の接近傾向
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