11・日本について

11・日本について
2012.07.06. 青山・文化人類学/文化人類学A
11・日本について
2012/07/06 - [2]
[前回]自文化中心主義/文化相対主義

自文化中心主義とは、自分の文化の基準で周囲をはかり、
自分と異なる点について、ヘンだ・おかしい・間違って
いる・劣っている・遅れている、などと判断する立場


それだけ聞くと、ずいぶんよくないスタンスのようだが、ひとは
誰でも成長過程で「自分の文化」を形づくっている以上、完全に
この見方を排除することは極めて難しい
文化相対主義とは、相手の文化も自文化同様しっかりと
した「体系」を持っており、そのひとびとの間で共有・
学習され、継承・ブラッシュアップされてきたものであ
るから、互いに尊重されあうべきものだ、と考える立場

それだけ聞くと、とてもすばらしいスタンスだが、これを実現す
るためには、i. 相手の文化を(コミュニケーションを重ねた上
で)きちんと認める、ii. 自文化を相対化・客観視する、iii. 全体
の中での位置を(自他ともに)把握することが必要であり、なか
なか簡単に成し遂げられるものでもない
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2012/07/06 - [3]
異文化理解と自文化理解

「ヤノマミの嬰児殺し」と「日本の人工妊娠中絶」とを
対比させることによって、より多角的・相対的な理解へ
たどりつくことができた
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

異文化を「鏡」として、自文化を再度捉え直してみる……文化相
対主義
自文化を「基準」として、異文化を位置づける……自文化中心主
義
異文化をより深く理解するためには、自文化についても
理解を深めておく必要がある
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2012/07/06 - [4]
日本をめぐる一般的な誤解
今度は自分たちのことについてもう一度検証してみよう

日本は「単一民族国家」である?


島国だから(ほぼ)ひとつの民族で、外からの攻撃から守ら
れ平和だった?


イギリス、ニュージーランド、フィリピンなどがそうであるとは言え
ない
日本は「小さな島国」である?


先住民族の代表であるアイヌ、少数民族の代表である在日韓国・朝鮮
人など複数のエスニック・マイノリティが暮らしている
世界の235国・地域の面積で大きい方から
番目
日本は「周囲から切り離された島国」である?


見慣れた地図の向きを変えてみる cf. Asia Map
見慣れた地図では韓半島などが省略されるからそのように感じる
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11・日本について
11・日本について
隣の国はどのくらい近い? (1)
日本から一番近い外国は、つぎのどれ?
1. 北海道北端の稚内~ロシア・サハリン島南端
42km
2. 北海道・択捉島北端~ロシア・得撫島南端
40km
3. 長崎県・対馬北端~韓国・東南端の釜山
48km
4. 沖縄県与那国島西端~台湾・東北端
106km

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2012/07/06 - [10]
隣の国はどのくらい近い? (2)
対馬・比田勝港~韓国・釜山港は約65km、高速船の航
路があり、1.5時間・6500円かかります。では、渋谷か
ら直線で65kmの距離にあるのは、次のどこ?
1. 大宮
28km
2. 小田原
67km
3. 銚子
101km
4. 甲府
102km

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Japanese Ethnic Minorities (1)
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アイヌ/沖縄
自己申告に基づく北海道内のアイヌの人口(2006年・北
海道の調査)は23,782人

この調査において、「アイヌ」とは、「地域社会でアイヌの血を
受け継いでいると思われる人、また、婚姻・養子縁組等によりそ
れらの方と同一の生計を営んでいる人」とした(各市町村が把握
することのできた人口)
ただし、アイヌの血を受け継いでいると思われる方であっても、
アイヌであることを否定している場合は調査の対象とはしていな
い……「自らが表明する人のみを調査対象とした」
北海道外まで含めた全国データは存在しない
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http://www.ainu-assn.or.jp/about03.html
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2010年国勢調査による沖縄県の人口は1,392,818人

このうち沖縄語を自由に操れるのは、おおむね70代以上の人口と
一致するとして14%=20万人ほど
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Japanese Ethnic Minorities (2)
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7,135,407人(2011年1~12月)
震災の影響で前年比24.4%の大幅減少
不法残留者(法務省統計資料より)
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
2,078,508人(全体の1.63%で3年連続減少)(2011年末)
中国(台湾・香港を含む)が674,879人、次いで韓国・朝鮮が
545,401人、以下ブラジル、フィリピン、ペルー、アメリカ……
外国人入国者(短期)(法務省統計資料より)
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外国人
外国人登録者数(法務省統計資料より)
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67,065人(2012年1月1日現在)
この5年間でおよそ1/3にまで減少
おおよそ200万人台半ばか、それ以上(全人口1億2773
万人の約2%以上)の外国人が常時居住・滞留している
と考えられる
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Japanese Ethnic Minorities (3)
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帰化・国際結婚
日本への帰化許可者(法務省統計資料より)
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10,359人(2011年1~12月、帰化不許可者は279人)
うち韓国・朝鮮人5,656人、中国人3,259人
日本の国籍離脱者・国籍喪失者(法務省統計資料より)

離脱者=168人・喪失者=712人(2011年1~12月)

国籍を得れば日本人? 国籍を失えば非・日本人?

国際結婚(夫又は妻が外国人、厚労省統計資料より)
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
30,207組(=全体の4.3%、2010年1~12月)
両方とも日本人は670,007組(2010年1~12月)
これらのカップルから生まれてくる子どもは?


21,966人(=全体の2.1%、2010年1~12月)
両親とも日本人の子は1,049,338人(2010年1~12月)
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Japanese Ethnic Minorities (4)
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http://www.sokanet.jp/sg/FWIM/sn/soka-info/information/outline.html
幸福実現党党員数13,267人
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http://islamjp.com/library/jpmuslim1005.htm
2006年? の創価学会世帯数827万世帯(国内)
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http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/data/st08/statistics2008.pdf
ムスリム人口については統計はないが、一説には日本人約1万
人・外国人約10万人
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http://www.church-info.org/html/churchmap.html
2008年のカトリック人口452,138人(全人口の0.36%)
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宗教?
2002年のプロテスタント人口542,057人
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2010年11月の政治資金収支報告書による、らしい
こうした宗教的な属性によるアイデンティティ意識は、
少なくとも現在の日本においては極めて稀薄
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2012/07/06 - [15]
「日本人」とはいつを基点にするか

日本列島にモンゴロイドが到達する以前(日本列島にヒ
トがまだ渡ってくる前)=4万年前を基点にすれば、全
員が「渡来人」=100%がエスニック・マイノリティ

現状の「日本人」に最も近い定義は、明治維新直後の
1872年壬申戸籍に登録された者の末裔、つまり、1872
年が基点


わたしたちの多くが「日本国籍」のパスポートをもらえ、自分が
「日本人である」と特に疑問もなく思っていられる根拠はここに
ある
これよりあとに「入ってきた」ひとたちが、わたしたち
の感覚では「外国人」あるいは「他民族」ということに
なる
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2012/07/06 - [16]
ここまでを踏まえて考えてみる
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外国は、物理的にも思いがけず近いし、交通機関やメデ
ィアの発達により、ますます近しいものになっている
実際には200~300万人もの外国人が国内には暮らして
いる
年間3万組の国際結婚が成立し、さまざまな民族的出自
を持った子供が生まれている
もともと日本列島に人間はいなかったから、すべての日
本人は(いつの時代かはともかく)「渡来人」の末裔
……であるにもかかわらず、どうしてわたしたちは「日本
は単一民族国家である」というような感覚をもってしまう
のだろうか? インプレッションペーパーに、自分の考え
をまとめてください。