専修大学ネットワーク情報概論 流通業における情報システムと活用 並びに システム開発の実際 2003年7月15日 イノヴェート 目次 • 情報システムを考える基礎知識 • 流通業の情報システム化 – いくつかの事例と投資にたいする考え方 • 最先端の情報活用 – 出る効果と出す効果 – 情報活用は、「出る」から「出す」へ • 開発の実際 – SEの仕事 – RADとウォータフォール・モデル • みなさんに望むこと – 学生時代しかできないことがある – 教育と訓練・事上錬磨 情報システムを考える基礎知識 • この30年間、情報関連機器・ネットワークは、経験的に10 年で – – – – 性能10倍 大きさ10分の1 価格10分の1 つまりコストパフォーマンスは、100万倍 • 情報システムを上手に使った企業・組織とそうでないところ の差は、自ずから開く • 今後、続くかどうかは判らない(あと10年は続く?:予測) – 限界:電気は1ナノセカンド(10億分の一秒)に30センチしか進まな い(参考:<ヘルツ>キロ→メガ→ギガ) – 克服手段:小型化・並列化 流通業の情報システム化-投資 • 投資上の考慮点 – 投資は先にお金が出てゆく – 費用の回収は、後になる – 投資計画はほぼ確実にお金を使う。しかし、回収は、計算にすぎ ない(種々のリスクが後で発生し、実現できるかどうか判らない) – 計算上の回収額は、実投資額の数倍みつもられないと危ない • 効果を挙げるポイント – 業務のボトルネックの発見とそれに対する的確な対処(投資ミニ マム・効果マックス) – 問題の上流解決(情報システム化の前に業務改善で解決できな いか) 最先端の情報活用 (出る効果・出す効果) • 情報システムの効果は – 出る効果=省エネ・省力・経費削減 • ゼロが限界(しかし、まずはこれ) – 出す効果=売上増・粗利増 • 有効活用:基本的に青天井(無限) – 昔の情報システム活用は、まさに出る効果 • 人が減る・工数が減る • だんだん限界に近づく(収穫逓減の法則が効いています) – これからは有効活用=組織知の開発・定着 SEの仕事の難しさ • 2つの相反する世界をつなぐ技術者 – 現実の世界<業務ニーズ・曖昧・我が儘・利益> – コンピュータの世界<プログラム・論理・馬鹿正直・生産性> • 仕事の相手が違う – SE:人間・社会 – プログラマ:コンピュータ • 異なる世界をつなぐ工程 – 要件定義・外部設計 – 内部設計・プログラム • さらに難しいこと – 仕事の規模<画面・帳票・情報の種類・蓄積・加工>とQ(品質)/C(費 用)/D(納期)のバランスを取る・説得する – 現状では、費用見積後に要件が決まる • 他の世界に比べSEの世界が遅れていること – 建築:設計者・監理者・技能者 – システム:分化不完全(ネットワーク・データベース・セキュリティ・プログ ラマ・プロジェクトオーガナイザなど) プロジェクトと組織 -2つの原理原則ー • プロジェクトー短期・戦争(QCDを守れば勝ち・守れなけ れば負け) – Q:品質 ・C:コスト・D:納期 – 目的のためには多少のことも許される • 組織ー永続が目的 – 次世代の準備をする(人を育成する) – 次の時代を考えない組織は崩壊する 情報システム開発・運用 成功のポイント • 「当たり前のことを当たり前にする」 – これがなかなか出来ない – 標準を作る・守る・改善する • ビジネス:成功プロジェクト10件の利益を失敗プロジェクト 1件の損失で食べてしまう – 困難性 • • • • • プロジェクトの一度性(同じ事が繰り返さない) 構成員の離合集散が常(スキルが蓄積しにくい) 変化がつきもの(世の中・人の心)=作り直し 手待ち(物事が決まらない)=時間・工数の無駄 現在のSI(システムインテグレーション)の受注は、仕様確定前に決 まることが多い 開発で目指すこと • テストでは、バグ出しをしない – 開発は、運の要素を極力排除する(研究は結果が出な いかもしれない・開発は必ず結果を出す) • 100回行えば100回成功することが要請される – 正しく管理して開発すれば、バグはそれほど出ない – 目標は、<QCDを守る> • 500本程度の開発では、結合・総合テストを 合わせて一ヶ月程度で終えることを目指す – 目標:バグが出たら、拍手の出る開発 プロジェクト成功のポイント <イノヴェート流> • くどいほど要件・仕様を確認する・進め方を合意する – – – • 「動くのはプログラム」を忘れない-仕様書は動かない – – – • 優れた開発標準を作る・維持する 徹底して教育する・守っているかチェックする ×標準がない・守られない 生産性を守る – – • 人は間違える動物 要件を満たしているか、次工程に移る前に検証する(レビュー・ウォークスルー・テスト) 「直列の電池のたとえ」を忘れない 標準を作る – – – • × 期間優先で見きり発車しない(必ずといって良いほど変更が入る→結果的に長期化・費用増加) 「あれほど確認したのに、変更なんて悪いですね」と相手が思うほど、確認する ここで遅れるのは、必要悪と割り切る(できればスケジュールはこの後で作りたい) (例-COBOL換算・ステップ数/時間)外部設計44・内部設計32・製造/単体テスト20・結合テスト64・総合テスト64 人月約1KS(KS:キロステップ) 無駄をしない – – – 実務に即していない書物も有る。無駄と判断したら、次回から2度と行わない。有効と判断したら、次回も確 実に行う ×変更・やり直し・手待ち(すべてお金の無駄) ○余裕が出来たら、何を先取りできるか考え行う(過ぎ去った時間は戻らない) SE候補者としての皆さんに望むこと-1 • 基本のマスター – 読む力・書く力(理解するとは・論理的に書くとはどういうことか) • 議事録 • たとえばKJ法など – 簿記・法学・経済学・統計など(企業システム)が大切 – とかく応用の学問を学びたがるが、大切なのは基礎的な学問(基 本知識・積み上げ) • 実務での訓練を重視する(「畳の上の水練」は、しないよ り良いが、いざというとき泳げる保証はない) – 「知っている」→「出来る」→「成果を挙げられる」→「他の人を 使って成果を挙げられる」 – 実務が出来ないときは、ケーススタディなど SE候補者としてのみなさんに望むこと-2 • 学生時代しかできないことをする – 色々な<現場の経験>が出来る • (店舗・物流):目的意識があれば最高のチャンス – 勉強して、視点を持っていれば本当によくわかる – (いいところ/悪いところ)(改善点/見習うべきところ) – 戦略を持つ:単位取得をほぼ2年間で終わる。 • 3年生後半と4年生は自由研究→卒業研究につなげる • 定評のある厳しい会社で現場経験をしておく – (体を動かす職場で基本を身につける=アルバイト) • 教育と訓練・事上錬磨 – 普通は、学校を出れば教育が終わり? – SEの世界は、卒業から真の勉強の始まり • 学校での教育は、<過去の問題と解決法>の勉強が主 • 実業界は、毎日新しい明日が来る=新しい問題の発生・解決法の開発 <経験が事上錬磨> • ベースとなる情報システム技術は日進月歩
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