外来植物オオキンケイギクを用いた 新しい水辺の環境評価法 16117034 後藤智美 目次 背景 調査 結果 考察 背景 この手法の有用性に注目 身近な河川がきれいなのか? 化学的手法 生物学的手法 きれいな水 汚い水 •水素イオン濃度(pH) •生物化学的酸素要求量(BOD) タニシ •溶存酸素量(DO) この2手法から得られる水質はほぼ一致する •大腸菌群数 ・・・ サワガニ 技術や費用が必要 少し汚い水 大変汚い水 ゲンジボタル アメリカザリガニ 費用がかからない どこでも誰にでもできる 国土交通省や環境省では,1984年から小学生 や一般市民の参加による水質調査を実施 背景 河川には様々な外来植物が生育している 自然的・人為的撹乱 廃水による汚染 外来植物が 侵入しやすい環境 撹乱や乾燥など環境の変化に適応 →のり面や中央分離帯などの緑化に利用 在来植物に比べ,繁殖力が強い →緑化によって侵入したものが定着・優占 在来生態系を破壊 外来植物は愛知県内の河川でも多くみられ, 生物多様性の破壊が懸念されている 外来植物が河川の汚染の程度を測る指標にならないか? •外来植物の生育状況と水質の関連 •外来植物の生育と除草の関連 調査 調査範囲 木曽川(河口から80km) 八百津橋 木曽川 庄内川 記念橋 尾張大橋 50㎞ 庄内新川橋 •流域面積5,275km2 •幹線流路延長229km →ともに木曽三川最大 •「全国一級河川水質状況」 166河川中12位 (国土交通省,2006) 庄内川(河口から50km) •流域面積1,010km2 •幹線流路延長96km •「全国一級河川水質状況」 166河川中156位 (国土交通省,2006) 調査 調査材料 見つけやすく, 誰でも判別が容易 オオキンケイギク 北米原産のキク科多年生草本 花が美しいため,鑑賞用や のり面緑化等に広く利用 繁殖力が強い 撹乱や水質の変化に対応 全国各地で野生化 堤防や河川敷に大群落を形成 在来生態系への影響が懸念 環境省が「特定外来生物」に指定 (2006年) 調査 調査項目 オオキンケイギクの生育状況 生育場所:堤防,高水敷,低水敷 生育量:なし,少し生育している(20株未満), かなり生育している(20株以上) 調査方法:調査範囲を実際に踏査 河川の水質(国土交通省よりデータ提供) 水素イオン濃度(pH),生物化学的酸素要求量(BOD),浮遊物質量 (SS),溶存酸素量(DO), 大腸菌群数:各河川の観測場所の測定値 水域類型の指定:AA,A,B,C,D,E(河川の生活環境項目) 河川の除草(国土交通省よりデータ提供) 除草時期:~6月,~7月,~8月,~9月,~10月 除草場所:堤防,高水敷,低水敷 結果 木曽川 オオキンケイギクの 生育状況 両河川とも河口か ら10km付近~中流 域にかけて多く生育 →都市部や住宅地, 工場の付近 下流や上流にはあ まり生育していない →ヨシや樹木が生育 高水敷や低水敷よ りも堤防に多く分布 庄内川 10km 結果 木曽川 河川の水質 庄内川は中流から下 流にかけて著しく水質 が悪化 両河川とも上流から 中流にかけ,BODの値 は上昇 →汚染が進行 AA 庄内川 C B 10km A 結果 木曽川 河川の除草 調査範囲内はほぼ全域 で除草を行っている 堤防部分のみを除草 両河川とも年2回,6~ 8月までに1回目,9~ 10月までに2回目の除 草を行っている 庄内川 10km 結果 河口から1kmごとに区切り,各区間において オオキンケイギクの有無と水質の各測定値について主成分分析を行う 両河川 ≪木曽川≫ 水質の良し悪しと オオキンケイギクの有無に 関連は認められない ≪庄内川≫ 若干ではあるが,水質と オオキンケイギクの有無に 関連が認められる 同程度の水質でも,木曽川のほうがオオ キンケイギクが多く分布している 考察 オオキンケイギクの生育状況と水質 庄内川では,水質が悪化している地域にオオキンケ イギクが多く生育していた. しかし,木曽川は水質はほぼ一定にも関わらず,オ オキンケイギクが生育している箇所としていない箇 所があった. オオキンケイギクの生育状況は, 河川の水そのものの影響ではなく, 河川の周辺環境の影響によるものである と考えられる. 考察 オオキンケイギクの生育状況と除草 調査範囲内で,除草の時期が大きく違うことがない ため,除草時期がオオキンケイギクの生育に影響を 与えているとは考えにくい. 調査範囲全域で除草が行われているため,除草の有 無がオオキンケイギクの生育に影響を与えているか の判断はできなかった. しかし,刈り取りを継続的に行うことで,オオキン ケイギクの優占が維持されるという報告もある. 年に2回,定期的に除草を行っているこ とがオオキンケイギクの優占に関連があ るのではないかと考えられた. まとめ • 水質だけに注目 木曽川の方が庄内川よりもはるかに良い環境 ⇔オオキンケイギクの個体数は木曽川の方が多い 水質のみで河川の状態を把握するだけでは不十分 外来植物のような,生物多様性に影響を与える要素を 考慮する必要がある. 水質という指標とともに,外来植物を指標植物 として用いることで,河川環境を総合的に判断 していくことが重要. 今後の課題 オオキンケイギク以外で,生態系の撹乱要因を示す 外来植物を洗い出す必要がある 砂防用に多用され、斜面の砂止 め、道路ののり面緑化等に広く 利用され,野生化した. ムシトリナデシコ アレチハナガサ 河川敷や裸地, 荒地などに生育 鑑賞用に導入され, 野生化 シナダレスズメガヤ 木曽川の 水生生物調査 (国土交通省,2006年)
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