ディジタル信号処理 Digital Signal Processing 第19講 Z変換(2) 2.3.2 逆z変換法 • z変換 x(nT)・・→Z[x(nT)]→X(z) • 逆z変換 X(z)・・→Z-1[X(z)]→x(nT) (1)部分分数展開法 P1(z) P2(z) P3(z) Pm(z) • X(z)= + + +・・・・+ Q1(z) Q2(z) Q3(z) Qm(z) のとき,逆変換は m Z-1[X(z)]= Σ Z-1[ i=1 Pi(z) Qi(z) m ] = Σ xi(nT) i=1 例題2.13 逆z変換を求めよ 部分分数に展開して 逆変換は 例題2.14 部分分数展開により逆z変換を求めよ 分子を分母で割った後,部分分数展開すると 従って逆z変換は 例 X(z)=(1-e-αT)/{(z-1)(z-e-αT)} を逆変換せよ z z X(z)= z-1 z-e-αT 表より x(nT)=U0(nT) -e-αT (2)連続除法(冪級数展開法) • Z(z)= a0+a1z-1+a2z-2+・・・・+aMz-M b0+b1z-1+b2z-2+・・・・+bNz-N を展開して Z(z)=c0+c1z-1+c2z-2+・・・・+cM-Nz-(M-N) を得ると,次式が得られる。 例 X(z)=(1-e-αT)/{(z-1)(z-e-αT)} を逆変換せよ 冪級数展開すると X(z)=(1-e-αT)z-1+ (1-e-2αT)z-2+ (1-e-3αT)z-3+・・・・+ (1e-nαT)z-1+・・・・ ∴ x(nT)= 1-e-nαT 4枚前の例と比べると, U0(nT) が1に変わっているが 同じ結果である。 留数定理による逆z変換 教科書外 極 • 解析関数の孤立特異点の一種で、その点の周りでの関数の ローラン展開の主要部(負べきの項)が有限項となるような 点を極という。 • 特異点(singularity)は、ある基準 (regulation) の下、その基 準が適用できない (singular な) 点である。したがって、特異 点は基準があって初めて認識され、「 - に於ける特異点」「 に関する特異点」という呼ばれ方をする。特異点という言葉 は、数学と物理学の両方で用いられる。 • 複素解析における正則関数の正則性 (regularity) に関する 特異点とは、複素関数で微分不可能な点をさす。具体的に は、可除特異点 (removable singularity)、極 (pole)、真性 特異点 (essential singularity) の3種の孤立点がある。有理 関数 1/x に於ける特異点は、x = 0 であり、これは 1 位の極 である。 関数の特異点 • 数学において、特異点とは一般に、与えられた数学 的な対象が定義されない点、または微分可能性の ように、ある性質が保たれなくなるような例外的な集 合に属する点をいう。 • 例えば、関数 f(x)=1/x は x = 0 で ±∞ に発散し、 定義されないので、このとき x = 0 は特異点である という。 • 絶対値関数 g(x) = | x | は x = 0 で微分できないの で、このとき x = 0 は特異点であるという。 • また、y2 = x で定義されるグラフは、点 (0,0) で垂直 な接線を持つので特異点であるという。 • (x,y) 座標系の y2 = x2 で定義される代数集合は、 点 (0,0) で接線を持たないので特異点であるという。 留数について • 解析学において、解析関数 f(z) の孤立特異点 z = a における微分形式 f(z)dz の留数(りゅうすう、residue) Res[f, a], Resz=af(z) とは、以下の積分値である:ただ し、i は虚数単位、積分路 γ は点 z = a を中心とする 十分小さな円(実際には、積分路は、それが複素数平 面から切り取る有界領域が z = a 以外に f(z) の特異 点を含まなければ、どんな単純閉曲線でも良い)。 留数の計算方法 • 孤立特異点 z = a が f(z) の n 位の極であるなら、 (z − a)nf(z) は正則で、とくに とテイラー展開されるので、 つぎのように計算される。 留数定理 • 単純閉曲線 γ と、γ が囲む有界領域 D を考える。D 上で定 義される関数 f(z) が D 内に孤立特異点 a1, a2, ・・・・, an をも ち、それ以外で正則であるならば、 が成り立つ。ただし、積分は γ を D の内点からの偏角が正の 向き(領域を左に望む方向)に進む。これを留数定理(residue theorem)と呼ぶ。 (3)留数定理 P(z) X(z)= Q(z) ki Q(z)=Π(z-z ) , とすると i コーシーの留数定理から x(nT)= 1 ∮ΓX(z)zn-1dz 2πj ={X(z)zn-1の極ziにおける留数Riの和} (5.11) ただし,ΓはX(z)のすべての極を含む反時計回 りの周回積分路 ziがm位の極(ki=m)であるときその留数Riは 例 X(z)=(1-e-αT)/{(z-1)(z-e-αT)} を逆変換せよ • 極は z-1=0 と z-e-αT =0・・・・ともに1位の極 • 留数は (1) z=1 のとき (2) z=e-αT のとき よって 留数定理による逆z変換終わり 2.3.3 z変換のシステム解析への応用 参考資料 零状態応答と零入力応答 また,別の資料では 引用終わり • 零状態応答:入力(が入ってきたり,変化した とき)に対する応答。初期状態には左右され ない。 • 零入力応答(自由応答):初期状態に対する 応答。入力信号の有無には左右されない。 システムの応答を求める 下図はフィルタの一般的な構造である 前図のシステムを差分方程式で表現すると となるが,この差分方程式の解がz変換を用いて 容易に求められることを示す 教科書 例えば,差分方程式が次式の場合 p.33 z変換すると が得られ, これをY(z)について解くと,次式が得られる (2.94) これを逆z変換すれば,システムの応答が求められる 上式の第1項は零状態応答,第2項は零入力応答とよ ばれる これらの和として表される応答を完全応答という 前例 の場合,システムが 零状態にあり,かつx(nT)=δ(nT)であるとき,X(z)=1, y(-T)=0とすると, 逆z変換すると となる • この式は,システムのインパルス応答になっ ている。 • z変換を用いると,解(インパルス応答)が求 まることになる。 ステップ応答の場合 上の差分方程式で,x(nT)=u(nT)とすると,z変換の 結果は となる。部分分数展開し,整理すると となる。逆z変換すると,次式が得られる • ステップ応答の第1項は,大きさ1/(1-n)のステップ信号であ り,どの時刻でも値は変わらない定常項である。・・・定常応 答 • 第2項は{b/(1-n)}×bnとなり,時刻を表す数nによって変化す る。|b|<1なら0に収束する過渡項である。・・・過渡応答 • 収束する前を過渡状態,収束後を定常状態という。 • ちなみに,インパルス応答は過渡項がけである。だから,過 渡応答特性はインパルス応答を調べればよい。 • 上式で,T=0,b=0.5,y(-T)=0とすと, y(nT)=2u(nT)+4×0.5n となる。図示すると, 例を変えて,FIR系を考える y(nT)=a0x(nT)+a1x(nT-T)+a2x(nT-2T) • 上式の場合,x(nT)=u(nT)とすると,z変換は, となるので,逆z変換すると が得られる。第1項は定常項,第2~3項は過渡項である。 例題2.15 差分方程式→z変換 z変換→インパルス応答 • z変換すると • X(z)=1を代入して,逆z変換すると
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