N=51近傍におけるアイソマー探索

中性子数51近傍におけるアイソマー探索
下田研究室
堀稔一
重イオン不安定核
実験グループ
増江俊行
田尻邦彦
共同研究者
小紫順治
長澤拓
西村太樹
あらすじ
目的
測定原理
実験準備・場所
実験
解析
考察
まとめ
今後の課題
実験の目的
中性子数51(魔法数50+1)の
原子核でのアイソマーの探索
アイソマー:γ崩壊の寿命が長い励起準位
普通のγ崩壊の寿命:
10-15 sec
アイソマー: 10-9 sec ~ 10-6 sec ~
数sec ~ 数時間の寿命のものも
なぜアイソマーになるのか?
<Z=偶数>
N=51の場合
N=50の魔法数のコア(芯)が壊れて
原子核が変形する
原子核:球形
N=50,Z=偶数のコア + 中性子1
長寿命
スピンを大きくしながら
励起した場合
原子核が変形
N=48,Z=偶数のコア + 中性子3
原子核:みかん型
測定原理
原子核の励起準位
γ線の同時・遅延計測法によって
アイソマーを探索
γ3
γ1
検出器1
検出器2
生成核
γ線が時間差を持って
2台の検出器で観測
γ4
アイソマー
準位
γ2
~fsecで崩壊
~nsec以上
アイソマーの可能性
γ線の時間情報を使ってアイソマーを探索する
実験条件
反応:
natZn
ターゲット
バッキング
+
40Ar
天然のZn (厚さ 0.0025 ㎜ = 1.8mg/cm2)
+
天然のPb (厚さ 0.0078 ㎜ = 8.8mg/cm2)
ビームのエネルギー: 197MeV
ビームの強度: 0.2pnA
ゲルマニウム検出器: 5台
実験場所:
大阪大学核物理研究センター(吹田キャンパス)
→RCNP (Research Center of Nuclear Physics)
ENコース(東実験室)
加速器: AVFサイクロトロン
東
実
験
室
ENコース
RCNP
AVFサイクロトロン
実験準備
<ビームコースの設計>
*設計図作成 (9月~10月)
ゲルマニウム半導体検出器の架台
ターゲットチェンバー
ビームダンプの架台
*製作 (10月下旬~11月下旬)
業者に委託
*セットアップ (12月上旬)
研究室のみんなとRCNPの方々
*ターゲットの作成 (12月下旬)
ローラーでのばした
1月に本実験
*設計図作成
※ビームコース設計上の留意点
・γ線のS/N比を良くしたい
・統計量を稼ぎたい
○検出器をできるだけ近づける
○ビーム量を減らす
○チェンバーでのγ線の吸収を減らしたい
↓
ターゲットチェンバーはアクリル製
ビームダンプの配置(ビームを止めるもの)
検出器から遠ざけたい
しかし
遠すぎるとビームが拡がる
↓
ターゲット中心から2.3mに
検出器の配置
ビーム軸に対して 30、60、90度の
角度分布が取れるように
〇ビームライン設計
ENコース上流
ターゲットチェンバー
↑
ターゲットを設置
ゲルマニウム検出器
↑
γ線を検出
ソフトウェア : AUTOCAD
ビームダンプ
三次元
↑
ビームを止める
ENコース下流
<新しく設計したもの>
・ターゲットチェンバー
・検出器の架台
(テーブルと検出器固定板) ダクト支え
・ビームダンプの架台
・ダクト支え
ターゲットチェンバー
ビームダンプ架台
テーブル
検出器固定板
*セットアップ
アクリルターゲットチェンバー と ゲルマニウム検出器
*ターゲット製作
ターゲット
天然のZn (厚さ 0.0025 ㎜ = 1.8mg/cm2)
+
天然のPb (厚さ 0.0078 ㎜ = 8.8mg/cm2)
・Zn中での Ar ビームのエネルギー
178 ~ 197MeV
このエネルギー範囲で反応
・Pbは生成核を止めるためのバッキング
ローラーで延ばして製作
実験
実験期間: 2006年 1/11 21:00 ~ 1/13 21:00
この実験でできる複合核
64Zn
30
40Ar →
(49%) + 18
104Cd*
66Zn
30
40Ar →
(28%) + 18
106Cd*
67Zn
30
40Ar →
( 4%) + 18
107Cd*
68Zn
40Ar →
(19%) + 18
108Cd*
30
( ) : 天然のZnの組成比
48
48
48
48
〇複合核からの反応過程
高励起状態 → アルファ、陽子、中性子の放出
アルファ粒子
複合核
中性子
陽子
高エネルギーの
γ線
高エネルギーのガンマ線放出後
ガンマ線
基底状態
これを検出
生成核の見積もり
(CASCADEより)
(N=51の場合)
N = 48~54の核種
66Zn、67Zn、68Zn
95Ru、93Mo、94Tcなど多くの核種ができる
実験結果
2本以上のγ線を同時に観測した場合のγ線スペクトル
緑 Tc
青 Ru
赤 Rh
16種類以上の核種が生成された
特定核種だけのスペクトル
96RuのLevel scheme
96Ruのγ線と同時計測された
スペクトル
96Ruだけ見える
B. Kharraja et al.
Phys Rev C 57(1998)
コインシデンス関係
96Ruだけのスペクトルができる
アイソマーの解析
アイソマーを探索するためには・・・
アイソマーを探索できるスペクトルを作る
アイソマーの探し方
γ1
γ3
検出器1
γ2
γ4
検出器2
生成核
検出器1と検出器2の時間差スペクトル
counts
同時
検出器2が
遅い
γ3
γ1
検出器2が
早い
γ4
γ2
②
①
③
時間差
γ1,γ2を検出
領域①に見える
γ3,γ4を検出
領域②に見える
アイソマー
γγの時間差スペクトル
この領域を見る
240~600nsec遅れてコインシデンスしたγ線のスペクトル
同時のγ線は見えない
遅れたγ線だけ見える
遅い 同時早い
② ① ③
既知のアイソマーを見る
半減期190nsec92Mo
アイソマー
240~600nsecの領域で
見えるはず
遅い 同時早い
② ① ③
240~600nsec遅れてコインシデンスしたγ線のスペクトル
アイソマー経由後のγ線が見える
遅い 同時早い
② ① ③
90Mo:1.12μsec
92Mo:190nsec
94Mo:98nsec
93Tc
:10.2μsec
92
既知のアイソマーが確認できた!
Moのアイソマーが確認できた!
アイソマーの寿命を求める
counts
92Moのアイソマーの時間差、検出数のスペクトルのfitting
時間差(nsec)
結果:270ns
寿命からアイソマーを確認
文献値(190~260nsec)と同程度
240~600nsec遅れてコインシデンスしたγ線のスペクトル
遅い 同時早い
② ① ③
青:同定できてない
未知のアイソマーの可能性あり!
606keVの核種を同定
未知のアイソマーを探索
遅い 同時早い
② ① ③
未知のアイソマーの探索
時間差なしで606keVとコインシデンスしたγ線のスペクトル
94Tc
遅れた領域
アイソマーはない
で見えない!
残念!!
核種の同定できていないγ線
未知のアイソマー可能性あり!
まとめ
1. N=51のアイソマーの探索を行った。
2. RCNPのENコースのビームラインの設計と組み立てを行った。
3. ターゲットを自作した。
4. AVFサイクロトロンからのビーム使った。
5.
natZn
+ 40Ar(197MeV)の反応でのインビームγ線核分光実験を行った。
6. 16種の核種を確認した。
7. 既知のアイソマーを確認した。
8.
92Moの寿命を求めた。
9. 未知のアイソマーを発見する可能性があるピークを確認した。
今後の課題
●未知のアイソマーの探索
240~600nsecでのγ線の同定
600n~2μsecでのアイソマー探索
時間差を変える