2003.3.29 日本物理学会 学部四年生による科学館での 科学実験教室の開催 東工大 理学部 物理学科四年:稼農 広樹、中野 健一 物理学科 :柴田 利明 目次 1.これまでの経緯と目的 2.科学実験教室 3.準備 4.実施と結果 5.まとめと展望 1.これまでの経緯と目的 多摩六都科学館で開催した科学実験教室 東工大柴田研究室と多摩六都科学館の共催 • 第1回 2002.2 「マイナス200℃の世界」 – 渡辺、田窪 東工大卒業論文 2002年3月の物理学会で報告 「大学の物理教育」誌で報告(2002-2号 p45~48) • 第2回 2002.6 「光の正体をさぐれ」 – 渡辺、田窪、稼農、中野 • 第3回 2002.11 「電気と磁石の不思議な関係」 – 稼農、中野、長谷川 • 第4回 2003.2 「宇宙線を観測しよう」 – 稼農、中野、長谷川 目的 ・物理を専門としない一般の人(子供 および大人)に物理の知識を伝える ・物理の魅力についても知ってもらう 学部四年生が主体となって 科学実験教室を企画して実施 2.科学実験教室 概要 ・参加者と対話をしながら実験を行う ・多摩六都科学館の理科実験室で開催 時間:2時間 対象:小・中学生 人数:24人(+保護者) 多摩六都科学館 ・東京都西東京市にある ・小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、 西東京市の5市が共同で運営 ・計100点のさまざまな分野の常設展示、 各種体験教室の開催 ・年間利用者数は約10万人 内容 演 示 型 実 験 説 明 参 加 型 実 験 図:説明の様子 (A2のパネルを 使って説明) 説 明 (繰り返す) 放射線とは? 配布するもの 1.X線の発見 1895年、ドイツのレントゲンという人は 「真空管」という容器の中で気体を放電 させる実験をしているときに、真空管に つけた電極からふしぎな物が出ている ことに気が付きました。 それがどんなふうにふしぎだったのか というと… 真空管 • パンフレット 保護者向けにより詳しい 物理の説明(15ページ程度) • アンケート 参加者の理解と満足の 度合いを調べる(5段階) 2.レントゲンに続いて レントゲンがX線を発見してからわずか 三ヵ月後、今度はフランスのベクレルと いう人がX線によく似たものを発見しました。 ある日、ベクレルはたまたま写真乾板の上に、十字架の形をした ぶんちんとウランの化合物(ウランといくつかの物がくっついてでき ているもの)を置いて引き出しの中にしまっておきました。 後になってその写真を現像してみると、そこには十字架の影が 写っていたのです! ・目にはまったく見えない ・写真乾板(昔にフィルムのかわりにつかっていたもの) に体のなかみ(骨や内臓)を写す レントゲンは、この真空管の電極から出ているものは、目には見えない 光線だと考え、これを「X線」と名づけました。 ~豆知識~ 怪我をしたときや、病気の検査の ときに病院でとってもらうレントゲン 写真は、その名前からわかるように 彼が発見したX線を使ったものです。 “体の中身を写す”という性質を使っ て、骨や内臓の写真をとっているの です。 ウランの化合物 これを見たベクレルは、これはウランからX線のような写真を写す 光線が出ているのだと考え、これをベクレル線と名づけました ~豆知識~ 「ベクレル」という言葉は、放射線の強さを表す単位として 使われています これまでに扱った物理の分野 • 低温 :物質の相転移、低温での物性、熱伝導 • 光 :幾何光学(光の屈折・反射、分光) • 電磁気 :静磁気(磁石)、電磁誘導 • 放射線 :放射線・宇宙線の観測 3.準備 装置、パネルと パンフレットの準備 テーマの決定 リハーサル 実験内容の決定 実施 4.実施と結果 第四回科学実験教室を例として報告 実施日:2003年2月16日 タイトル:『宇宙線を観測しよう』 時間:午後1時~3時(2時間) 参加者:小学2年生~中学1年生 保護者 計 21人 11人 32人 目的 宇宙線・放射線についての物理の面白さと、 正しい知識を伝える 内容 ・導入・・・放電針の実験(10分) ・3つの実験 (1)不思議な箱(20分) (2)宇宙線を観測しよう(30分) (3)不思議な箱をつくろう(60分) ・まとめ 導入(放電針の実験) 目的 : 放射線の電離作用を確認する • 簡易化した放電箱とウラン鉱石を使って、 放射線の電離作用を確認する • ウラン鉱石と普通の石を比較し、ウラン鉱石 でのみ放電が起こることを確認する 図:放電の様子 原理 +HV ・二つの針を向かい合わせに固定し 高電圧をかける (電源はこちらで用意) 印加電圧: +3200~3500V 針の間隔: 2~5mm 針の間を放射線が通る 針 GND 電離した電子により電子なだれが 起こり、放電する 不思議な箱 目的 : 放射線の飛跡を観察し、目でみることで放 射線を確認する • ウラン鉱石からでるα線を霧箱を使って 観察する 図:使用した霧箱 宇宙線を観測しよう 目的 : 宇宙線が放射線の一種であることを理解し た上で、宇宙線の性質を確認 • プラスチックシンチレータと光電子増倍管を 使って宇宙線を観測 • 宇宙線の数を数える • 鉄を透過することを確認 • 天頂角分布を簡単に確認 ・光電子増倍管からの出力をLEDにつなげ、宇宙線を 検出するとLEDが光るようにした ・二つの検出器からの信号についてコインシデンスを とり、二つの検出器を同時に宇宙線が通ったときのみ LEDが光るようにした 不思議な箱をつくろう 目的 : 霧箱の製作 • こちらで説明しながら、参加者は一人ずつ霧箱 を製作する • 完成したら、霧箱を使って放射線の観察を行う アンケートの結果 満足度 理解度 無記入 無記入 おもしろくない ふうう とても おもしろい わからない とても よくわかる ふうう おもしろい わかる ・とてもおもしろい ・おもしろい 82% ・とてもよくわかった ・よくわかった 71% 全体の満足度: 子供平均 90% ,大人平均 86% 全体 88% 5.まとめと展望 まとめ • 物理を専門としない一般の人にその内容と魅力を 伝えることを目的として、学部4年生が主体となっ て科学実験教室を実施した • 現在までに「低温」「光学」「電磁気」「宇宙線・放射 線」について計4回科学実験教室を行った 展望 • 来年度も3回科学実験教室を行うことを多摩六都 科学館側と合意している • 来年度からは「大学生とのふれあいサイエンス」と いうシリーズとして行うことになっている • 第四回の科学実験教室では参加申込者が多かっ たことから、次回は定員を32名に増やす予定 使用する線源 2種類用意: ・燐灰ウラン鉱 ・マントル 燐灰ウラン鉱 238 92 U T h 234 90 (半減期 4.51109 年 ) 演示実験用 各参加者の観察用 マントル ランタン (右図) ランタン(携帯用の灯り)の 発光体に使うもの 微量のトリウムが含まれ、 主にトリウム系列のラドンから出る α線が観察できる 220 86 Rn 216 84 Po 212 82 Pb 半減期 54.5秒(Rn), 0.158秒(Po) Th系列 ・加工したマントル マントルの一部をちぎって針の先につけ、その針を ゴム足に刺してある。これを霧箱の側面につけて使う 観察される飛程 α線の飛程はエネルギーが4~7MeVの範囲では 次の実験式で表される R 0.318E [cm] 3/ 2 今回用いた線源についてこの式から飛程を計算すると 238 92 U 23490Th (4.182MeV) 2.7cm Po (6.282MeV) 216 212 (6.774MeV) 84 Po 82 Pb 5.0cm 220 86 Rn 216 84 5.6cm 天頂角分布と面積あたりの計数について ・宇宙線の天頂角分布 J ( ) J 0 cosn 硬成分 : n 2, J 0 0.82102 / cm2 s sr 軟成分 : n 3, J 0 0.31102 / cm2 s sr 約10cmの鉛を透過する高エネルギー成分を硬成分、 透過せずに止まる低エネルギー成分を軟成分と分類 ・面積Scm2の検出器での計数 I S J ( ) cosd 2S /2 n 1 J cos sin d 0 0 2J 0 S n2 S=1として硬成分と軟成分を 加えると、 I=1.3/min 実際の検出器の面積S=152を 代入すると、I=197/min, 秒当り では、I=3.29/sec と計算される ・コインシデンスをとった場合の計数 検出器1つを使った場合に比べ、立体角が制限されるので 計数は少なくなる ・検出器が円形と仮定 ・検出器の半径を a ,検出器の間隔を b とする S max J ( ) cosd I 0 2SJ0 1 cosn 2 max n2 a =7cm, 但し、 max arctan b a b =10cmとして計算すると、 硬成分・軟成分あわせて:76/min 硬成分のみ:58/min 実際の値、 40~50/min に近い値に 宇宙線の天頂角分布は、天頂角θにより宇宙線が通る大気 の厚さが変わるためと考えられる 宇宙線の通る大気の厚さ: l 地球の半径: a 40 km 大気の厚さ: b 6500 km a 2 l 2 2al cos (a b) 2 l 2 2al cos 2ab b 2 0 l a cos (a b) 2 a 2 sin 2 0 2 : l は最も短くなり、40km : l は最も長くなり、約700km b a 宇宙線 一次宇宙線・・・p, N(~Fe), e, γ 二次宇宙線・・・μ, π, p , n, e ・二次宇宙線の成分 硬成分・・・μ (>0.22GeV), π (>0.4GeV), p (>3GeV), n (>0.3GeV) 軟成分・・・e, μ (<0.22GeV), p(<3GeV) 地上近くで核反応が起こったときにn, p,πが 降ってくる 成分のほとんどはμ
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