退院支援の見える化

愛媛大学
退院支援の見える化
千葉大学予防医学センター臨床疫学
(兼)附属病院地域医療連携部
藤田伸輔
入院期間短縮の目的
患者さんに対して
• 一日も早い健康回復
• ADLの低下を防ぐ
• 社会生活の回復
医療機関として
• 入院待ちを減らす
• 一人でも多くの患者を治療
• 入院単価の向上
退院支援のフローチャート
入
院
申
込
み
入
院
侵
襲
的
治
療
退
院
退
院
支
援
の
依
頼
入退院センターのフローチャート
入
院
申
込
み
退
院
支
援
ス
ク
リ
|
ニ
ン
グ
退
入
院
院
支
援
入
院
侵
襲
的
治
療
侵
襲
的
治
療
退
院
退
院
退
院
支
援
の
依
頼
入退院センターとは
(みちしるべ)
• 入院準備
– 服用薬調査
– 口腔ケア
– 生活調査
– 理解・気持ち調査
– 入院連絡説明
– 入院生活説明
• 入院期間の短縮
– 退院を前提とした入院
– 入院診療の明確化
• 入院連絡の移管
– 入院日連絡
– 入院予定・決定報告
• 入院診療の改善
– 統計指標の整備
全国入院患者数・外来患者数予測
1.2倍
1.04倍
•2010年の状況
に比べて、入院
患者数は1.2倍
に増加、外来患
者数は1.04倍
に増加する。
•2030年以降は
医療需要が低
下する。
入院総数
さらにその後は
• 医学部を作っても戦力と
なるのは8年後
• 今後10年(2020年)を乗り
切る医療が今必要
• 10年を乗り切ればその後
の10年(2030年)は楽にこ
なせる
• その後は医療需要の減少
に対応する必要がある
12-1月-13
手術患者の高齢化
• 12年間に手術患者は急速に高齢化している
• 胃潰瘍手術や胆石症手術は確実に減少した
• 内視鏡下手術は高齢者の手術を容易にした
• 高齢化に伴い関節手術・骨折手術・眼科手術が急増している
1996年
2008年
全国手術患者数予測
手術数
高齢者手術の増加の影響を受けて、手術を要する患者の数は2040年まで増加する。
高齢者のADL確保を目指した手術の増加は入院の短期化・リハビリの強化が必須。
これは外来診療・在宅診療・介護などに影響を与える。
大病院の方向
•
高齢者手術の増加
•
ICUの増強
•
リハビリの強化
•
口腔ケア
•
感染症対策
•
在院日数の短縮
•
ベッド運用の流動化
•
連携部の強化
•
内科の中央部門化
収入
私立大
千葉大
在院日数
地域医療連携とは
•
第1世代:紹介状
•
第2世代:パス
•
第3世代:地域疾病管理
第1世代:紹介状
•
紹介状の歴史
•
•
患者の移動に伴う紹介
•
対等の立場での紹介
•
診療経過を記載
•
おそらくあったと思われるが起源は不明
専門性による紹介
•
知識格差が前提
•
古代エジプト・ハムラビ法典にも専門分化の記述
•
紹介が日常化するのはGP(かかりつけ医)の出現以降
第1世代:紹介状に含まれるもの
紹介状という表現が悪
•
紹介「状」
•
い
診療情報提供書にしよ
う
手紙がその原型
•
•
前文
•
時候のあいさつ
•
前回あった時の話、家族の事、他の患者さんの事など
不要、書くべきではない
主文
•
診療経過
•
診断
•
末文
•
後付
不要
第1.5世代:診療情報提供書
•
患者の健康情報に特化
•
愁訴(患者の訴え)
•
主訴(愁訴の中で疾病管理に最も重要なもの)
•
主訴は診療科によって異なる
•
診断
•
(病状・診療)経過
•
•
受診までの経過
•
受診後の診療と経過
•
既往歴
依頼事項
•
診断・治療の依頼
問題点
記載内容に重要なことが欠落
Flexner(1930)Universities, America, English
and German. Oxford University Press
個人の考え、個性、家族背景など
情報の受手に必要な情報の欠落
今後の見通し
治療計画
生活状況、経済情報など
サマリーは自院用
地域医療連携とは
•
第1世代:紹介状
•
第2世代:パス
•
第3世代:地域疾病管理
第2世代:パス
•
パスの歴史
•
クリティカル・パス手法(CPM)はプロジェクトマネージメントの手法
•
1950年代にDuPont社の Morgan R. WalkerとRemington Rand社のJames
E. Kelley, Jr.がポラリスミサイルの製造のために開発
•
同様の手法は1942年マンハッタン計画(原爆開発計画)でも採用されていた
•
全工程のコスト(費用・材料・時間)と制約条件を記載しプロセスを改善する方
法
第2世代:パス
•
パスの歴史
•
クリティカル・パス手法(CPM)はプロジェクト・マネージメントの手法
•
1950年代にDuPont社の Morgan R. WalkerとRemington Rand社のJames
E. Kelley, Jr.がポラリスミサイルの製造のために開発
•
同様の手法は1942年マンハッタン計画(原爆開発計画)でも採用されていた
•
全工程のコスト(費用・材料・時間)と制約条件を記載しプロセスを改善する方
法
工業界のパス
•
工程管理として利用
•
工期の日程管理
•
並行できる工程を見つけて効率化
•
•
工程の工夫で効率化
改良
常識を破る製品・製造法の開発
•
工程の廃止
•
製品仕様の全面変更
•
圧倒的な性能
革新
工業界でのパスの使い方
•
•
•
労働者の用途
•
業務の指示書
•
全体の中の自分の業務の確認
現場責任者の用途
•
担当部門の進捗管理
•
担当部門の業務改善
経営者の用途
•
全工程の進捗管理
•
革新の追求
パス:医療での活用
•
医療パスの歴史
•
•
入退院管理の流れ
•
イギリスでの医療ソーシャルワーク(社会福祉)で使用
•
1985年にNew England Medical Center (Boston, USA) のKaren Zander and Kathleen Bowerが
開発
医療管理の流れ
•
1983年 アメリカで包括支払い方式がスタート:DRG/PPS
•
入院期間の短縮を真剣に考えるようになった
•
冠動脈バイパス、脳卒中などパスが一気に広がった
•
創傷処置の見直し・抗生剤投与など医療改革が進んでいるl
工業界と医療界でのパスの比較
•
工程管理として利用
工程管理として利用
•
工期の日程管理
•
入院期間の管理
•
並行できる工程を見つけて効率
化
•
?
•
チェック項目とアウトカム設定による
効率化?
•
•
•
工程の工夫で効率化
常識を破る製品・製造法の開発
•
工程の廃止
•
製品仕様の全面変更
•
圧倒的な性能
•
常識を破る診療方法の開発
•
創傷処置の廃止(回数削減)
パスとは関係ないかも?
•
放射線化学療法、内視鏡手術、新
薬など
•
入院期間短縮・治療成績向上
クリパス: クリティカル・パスとクリニカル・パス
• クリティカル・パス
• クリニカル・パス
• Critical pathway
• Clinical pathway
• 重要経路管理法
• 診療の流れ
• 診療プロセスの改善
• 診療の標準化
• バリアンス分析
• パスから外れた症例を分析
• 外れたのはミス? ステージの違い? 気づかなかった条件?
パスの意義: 表面上
業務の標準化
診療の可視化
• ミスの回避
• 業務の効率化
• エラーの早期発見
• 診療計画の可視化
• 診療目標の明確化
• 診療経過の可視化
記載者本人
同職種
業務引き継ぎ
問題の明確化
目標の共有
医療安全
21:58
他職種
患者・家族
解りやすい医療
目標の共有
退院支援の可視化
入
院
申
込
み
退
院
支
援
ス
ク
リ
|
ニ
ン
グ
入
院
侵
襲
的
治
療
退
院
退
院
支
援
福祉制度
交渉先
地域医療連携パス
なぜ可視化が必要なのでしょう
• 私たちの努力をわかってほしいから
• 退院支援に協力してほしいから
退院支援は他科用心
武士は食わねど高楊枝
退院支援における課題
•
•
•
•
かかりつけ医の把握
全医療機関を対象
主治医・病棟と退院支援部門の情報共有
全職種の早期投入と情報共有
全医療機関を対象
• 連携先を限定しない
– 地域全体の医療水準の向上
– 紹介元を開拓
• 連携先の特徴把握は必要
– ハード面:設備、費用、アクセス
– ソフト面:得意な分野(専門)、連携パスへの対応、抗が
ん剤への対応、麻薬への対応、在宅への対応、ソーシャ
ルワーカーの存在など。
かかりつけ医の把握
かかりつけ医
中核病院
紹介元
かかりつけ医
高度先進病院
紹介元
救急
患者/家族への聞き取り
高度先進病院
かかりつけ医ってなんだろう?
GP
契約者の健康管理
内視鏡やCTは使わない
GP
家庭医
総合診療医
プライマリ・ケア
かかりつけ医
家庭医
家族ぐるみの健康管理
内視鏡やCTは使う人もいる
総合診療医
全科を見通した診療
内視鏡やCTを活用
千葉県下の全医療機関を対象
住所や最寄り駅からの検索
紹介・逆紹介の一元管理
紹介・逆紹介状況の管理と公開
退院支援のフローチャート
日々の記録
退
院
支
援
主
治
医
意
向
調
査
中間
サマリ
患
者
意
向
調
査
家
族
意
向
調
査
病状
生活状況
把握
病
棟
カ
ン
フ
ァ
レ
ン
ス
退
院
中間
サマリ
病
棟
カン
ファ
レン
ス
福
祉
制
度
活
用
療
養
交
渉
退院
サマリ
退
院
前
カ
ン
ファ 各病棟の二人担当制
レ 毎週病棟カンファレン
ン
スを開催
ス
(中間サマリ)
退院支援管理
受付から相談までの連携
交渉状況の見える化
同じ情報は1回しか書かない
情報連携
日々の記録からサマリを作成
退院支援進捗管理
退院支援進捗状況を一覧表示
MSWの不安
• 進捗管理ってどういうこと?
• サボっているか心配なの?
• なぜ看護師が私達を管理するの?
退院支援統計情報
今後の展望
• 県下医療機関リスト
• 得意分野などの表示
• 連携実績の表示
• 退院支援サマリ連携
• 診療サマリ連携
• 退院支援進捗管理
• 入院診療進捗管理
• 外来診療進捗管理
• 退院支援統計情報
• 診療統計情報
バリアンス分析
術後肺炎
縫合不全
術後出血
術後せん妄
創感染
その他
•逸脱点を横から眺めるとFish Bone Chartになる
•逸脱症例を数えれば合併症発生率が出る
バリアンス分析で診療プロセスの改善は可能だろうか?
バリアンス分析で診療の異常の検出は可能だろうか?
疾病管理のためのパス
• 診療方針(処方・手術など)はグループで決める
• 観察間隔は一定にする
• 観察項目の共通化(症例ごとの追加は可)
• 終わりのない繰り返しを扱えるパス