マクロ経済学 II

マクロ経済学 II
第10章
久松佳彰
10章 総需要と総供給:物価の決定
• マクロ経済学では、総需要と総供給という考
え方を利用して、物価についてアプローチす
る。
• ケインジアンと新古典派の論争は、総供給曲
線の形状によって示すことができる。
名目値と実質値
• これまでにGDPや消費や投資を扱うときに、
物価の問題をきちんと考えてこなかった。
• GDPには名目GDPと実質GDPがある。名目
GDPは、生産量が変化しなくても、物価が2
倍になったら名目GDPは2倍になる。
• 同じ名目GDPが2倍になるのでも、物価が上
がって(インフレになって)2倍になるのと、生
産量が増加して2倍になるのとは大違い。
名目値と実質値
•
•
•
•
実質的に考える為に、実質変数を導入する。
Y=p・y
pは物価水準、yは総生産量を表す。
全ての名目変数は、物価と実質変数の積(掛
け算)の形で表すことができる。
• 実質変数の中で、重要なものに実質貨幣残
高(real money balance)がある。
実質貨幣残高
• 名目貨幣量Mを物価pで割ったもの
• 現在市中に流通している貨幣量で、どれだけ
の財・サービスが購入できるかを表したもの
である。
• 財・サービスの単位で表した貨幣量
• 物価pは貨幣と財・サービスの交換比率を表
したものと考えることもできる。
• 1/pを貨幣の購買力と呼ぶ。
物価水準の決定:総需要と総供給
• 経済全体の需要と物価の関係を、総需要曲
線で表し、経済全体の供給と物価の関係を総
供給曲線で表す。
• 物価は経済全体としての需要と供給をバラン
ス(均衡)させる水準に決まる
物価水準
S(総供給曲線)
D(総需要曲線)
総生産量、総需要量
財政政策
投資・貿易動向
労働市場
財市場
資産市場
金融政策
ディマンドサイド(需要側)
総
需
要
総
供
給
資本設備
技術
生
産
活
動
資源
物価
サプライサイド(供給側)
総需要
•
•
•
•
•
•
•
IS曲線とLM曲線を実質変数で表す
IS曲線
Y=C(Y)+I(r)+G
実質化: y=c(y)+i(r)+g
LM曲線
M=L(r, Y)
実質化: M/p=L(r, y)
総需要曲線
• pが高くなると、LM曲線においてM/p(実質貨
幣残高)が減少し、LM曲線は左側にシフトし
て(貨幣供給を減少したのと同じ効果)、均衡
点においてyは減少し、金利は上昇する。
• すなわち、pが高くなると、yは減少する。
• 総需要曲線は、右下がりの線になる。
• 図10-3
総供給
• 総供給の短期的変動を引き起こす重要な要
因は、失業・操業短縮に伴う労働力投入の増
減である。
• 失業率上昇→総供給低下
• 長期的には、投資による資本蓄積、技術進歩
の程度も重要。
• 税制は投資に影響を与えるので重要。
雇用量の決定と労働市場
• 賃金を物価で割ったも
のを実質賃金率と呼び
ます。
• 通常の賃金は、名目賃
金率
実
質
賃
金
l*
Ls
(w/p)**
(w/p)*
(w/p)***
Ld
労働量
新古典派の総供給曲線
• 賃金も物価もスムーズ
に動くときには、雇用水
準と物価水準には関係
がない。常に完全雇用
の状態が実現する。
• 雇用量と強い関係をも
つ生産量も、物価水準
とは関係ない。
• ゆえに、総供給曲線は
垂直になる。
物
価
水
準
L*
労働量
ケインジアンの総供給曲線
• 賃金が硬直的だと総供
給曲線は右上がりにな
る。
• 賃金は契約によって決
まり、柔軟には変わら
ない傾向がある。
• 名目賃金が下方硬直
性を持つ場合(下がら
ない場合)を見よう。
物
価
水
準
完全雇用
不完全雇用
L*
労働量
新古典派のケース(1)
• 貨幣量増大→総需要
増大→物価上昇
物
価
水
準
B
A
y*
y
新古典派のケース(2)
• 海外からの原燃料の供
給の減少→総供給曲
線が左にシフト→物価
の上昇
物
価
水
準
C
A
y*
y*
y
ケインジアンのケース
• 賃金が硬直的だと総供
給曲線は右上がりにな
る。
• 賃金は契約によって決
まり、柔軟には変わら
ない傾向がある。
• 名目賃金が下方硬直
性を持つ場合(下がら
ない場合)を見よう。
物
価
水
準
y