スライド 1

いまなぜ感染症を勉強するのか?
1.新しい感染症の出現
1)遺伝子の変異などによる新しい病原体の出現(AIDSウイルス?)
2)風土病への接触(AIDSウイルス?)
3)他の動物の感染症がヒト集団に感染(とりインフルエンザウイルス)
4)地球温暖化に伴う媒介動物の生息地拡大(ウエストナイルウイルス)
5)その他
2.再興感染症の出現
1)細菌:結核やコレラなど
2)ウイルス:黄熱病、デング熱、狂犬病など
主な新興感染症
年
病原体
分類
疾患
1973
ロタウイルス
ウイルス
小児下痢症
1977
エボラウイルス
ウイルス
エボラ出血熱
1980
ヒト成人T細胞性白血病ウイルス
ウイルス
成人T細胞性白血病
1982
腸管出血性大腸菌O-157
細菌
出血性大腸炎、溶血性尿毒
症症候群
ヒト免疫不全ウイルス
ウイルス
後天性免疫不全症候群
ヘリコバクターピロリ
細菌
胃炎、胃潰瘍、12指腸潰瘍
1988
ヒトヘルペスウイルス6型
ウイルス
突発性発疹
1989
C型肝炎ウイルス
ウイルス
肝炎
1995
G型肝炎ウイルス
ウイルス
肝炎
1997
トリインフルエンザウイルス
ウイルス
高病原性トリインフルエンザ
1999
ウエストナイルウイルス
ウイルス
ウエストナイル熱
1983
3.院内感染の増加
病原菌を持つ患者からの直接伝播のほかに、汚染物品、医療行為や医療従事者を介する
間接伝播もあり得るので厳重な注意が必要である。
日和見感染以外の正常免疫でも感染する病原菌にも注意する。
(結核、細菌性食中毒、ウイルス性肝炎、ノロウイルスなどの下痢)
4.高病原性トリインフルエンザ
新型インフルエンザの出現の可能性(ヒトからヒトに感染する高病原性トリインフルエンザウイ
ルスが変異の結果できる可能性がある。)
過去における新型インフルエンザ流行
過去の例の一つとしてスペインインフルエンザ(1918年~1919年)がある。世界では人口の
25~30%が罹患し、4000万人が死亡したと推計されており、日本では2300万人が感染
し、39万人が死亡したと記録されている。
感染源となる病原体
1.細菌
1個の細胞からなる。増殖は細胞分裂による。細胞を含まない培地で培養可。
2.真菌
カビや酵母の仲間。増殖は細胞分裂による。細胞を含まない培地で培養可。
3.原虫
単細胞生物。風土病の原因となる。細胞を含まない培地で培養可。
4.クラミジア
球状の病原体。細胞を含まない培地で培養不可。
5.リケッチア
0.3mm程度の病原体。細胞を含まない培地で培養不可。
6.ウイルス
15nmから数百nmの病原体。細胞を含まない培地で培養不可。核酸としてDNAもしく
はRNAのいずれかを持つ。
細菌の増殖速度と感染症発症に必要な菌量
病原菌
発症に必要な菌量
腸炎ビブリオ
コレラ菌
腸管出血性大腸菌O-157
赤痢菌
チフス菌
サルモネラ
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
結核菌
腸管出血性大腸菌O-157、赤痢菌、結核菌 は
の増殖速度は非常に遅い。
105~108
104~108
101~102
101~104
101~103
105~108
105~108
105~108
101~103
増殖速度
7.5~8分
20~30分
20~30分
30~40分
30~40分
30~40分
50~60分
90~120分
11~12時間
個レベルで発症しうる感染力の強い菌だが、結核菌
感染症の成立に必要な6要素
1.病原体の存在
2.病原体の感染力(病原性)
3.接種菌量
4.感染経路
5.感染部位・侵入門戸(カテーテル挿入,褥瘡の存在など)
6.宿主の感受性・抵抗力
病原微生物の毒力、量、経路などが微生物の病原性を決める。
また、病原性と宿主の状態(カテの存在など)や抵抗力のバランスが傷害を
起こすか否かを決める。
感染経路
感染経路
感染の詳細
病原菌
接触感染
直接あるいは器具などを介して
保菌者より感染する。
咳、くしゃみ、会話などで飛び散る
径5mm以上の飛沫を介する感染
性感染症、膿痂疹、
ウイルス性出血熱
インフルエンザ菌、
マイコプラズマ、インフル
エンザウイルスなど
結核菌、水痘、麻疹
レジオネラなど
食中毒、コレラ、ポリオ
赤痢アメーバなど
日本脳炎、黄熱病
マラリア、フィラリアなど
飛沫感染
空気感染
径5mm以下の飛沫核による感染
一般媒介物感染
汚染された食物、水、薬剤、装置
によって感染する
蚊、ハエ、ダニ、ノミなどによって
媒介。
昆虫媒介感染
その他の感染経路
1)母子感染
2)経皮感染
病原体が胎盤を通過して、あるいは
母乳を介して感染。
病原体が皮膚を通過して感染。
3)輸血・切創事故
輸血・血液などで汚染された医療器具
成人T細胞性白血病
AIDSウイルスなど
住血吸虫、レプトスピラ
など
B・C型肝炎ウイルス
など
病原体に対する宿主反応
組織反応
主たる炎症細胞
膿瘍
蜂巣炎(蜂窩織炎)
好酸球性蜂巣炎
リンパ球浸潤
リンパ濾胞形成
形質細胞浸潤
肉芽腫
乾酪肉芽腫
異物肉芽腫
横色肉芽腫
肉芽組織
好中球
好中球
好酸球
T細胞
B細胞
形質細胞
マクロファージ
血管内皮細胞
特徴
限局性病変(急性炎症)
びまん性炎症(炎症性浮腫)
アレルギー、寄生虫感染
慢性炎症、ウイルス感染
慢性炎症、自己免疫疾患
亜急性炎症、梅毒
細胞性免疫反応
結核
異物処理反応
脂質貪食
組織修復反応
加齢に伴う免疫能の低下
T細胞が老化の影響を受けやすい主な理由は、T細胞の補充がほとんど新生児期に限ら
れ、その後十分に補充されないため。したがって、老化に伴って免疫細胞・免疫組織の機
能は多かれ少なかれ低下するが、中でも免疫応答全体をコントロールするT細胞系が特に
影響を受けやすいと考えられている。マクロファージも減少する。
また加齢による胃腸の衰えからくる腸内の細菌バランスの崩壊なども免疫低下の原因と
考えられる。
日和見感染症
病原性がほとんどないか、あっても非常
に弱い病原体が、正常の宿主に対して
は病原性を発揮しないにかかわらず、宿
主の抵抗力が弱っている時に病原性が
発揮されおこる感染を日和見感染といい
ます。
新興感染症の病原体
病原体の種類
ウイルス
リケッチア
クラミジア
細菌
原虫
病原体名
ロタウイルス、エボラウイルス、T細胞性白血病ウイルス
エイズウイルス、C型肝炎ウイルスなど
日本紅斑熱リケッチアなど
肺炎クラミジア
レジオネラ、ヘリコバクター、病原性大腸菌O-157など
クリプトスポリジウムなど
再興感染症の病原体
病原体名
ペスト、ジフテリア、コレラ、百日咳、サルモネラ、炭疸、結核、黄熱病、狂犬病、
耐性病原体感染症(MRSA、耐性肺炎球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性
結核菌、マラリアなど)
高齢者肺炎の特徴
(1)老化による生理機能の低下のため、咳・痰・発熱などの典型的な
臨床症状を欠くことが多く、このため肺炎の発見の遅れにつなが
る可能性がある。
(2)高齢者は様々な基礎疾患(成り立ちの大もとの病気)を持つこ
とが多く、肺炎が重症化しやすくなる。
(3)老化による薬物代謝・排泄機能の低下のため、治療薬の副作用
が生じやすくなる。
(4)その原因として誤嚥(ごえん:異物を誤って飲み込むこと)の関与
が大きい、つまり口腔咽頭内に定着した菌を下気道に吸入するこ
とによって肺炎を引き起こすわけで、肺炎も再発しやすい。